本日はルー・ドナルドソンの「ルー・テイクス・オフ」をご紹介します。ロケット発射がドーンと写るジャケットが印象的ですが、これは録音日である1957年12月15日の2ヶ月前にソ連が打ち上げた世界初の人工衛星スプートニク1号をイメージしていると思われます。オープニングの曲名もそのものズバリ"Sputnik"ですし。当時は東西冷戦の真っただ中。米ソが熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた中、ソ連に先を越されたアメリカではいわゆる”スプートニック・ショック”が巻き起こったそうです。その影響が音楽にも及んだ、てのは大袈裟で単に話題に乗っかっただけでしょうね。演奏そのものは超ストレートなハードバップです。
メンバーは同年発表の「ウェイリング・ウィズ・ルー」に引き続きドナルド・バード(トランペット)が参加し、そこに当時ブルーノートが絶賛売り出し中だったカーティス・フラー(トロンボーン)を加えた3管編成で、リズムセクションを務めるのはソニー・クラーク(ピアノ)、ジョージ・ジョイナー(ベース)、アート・テイラー(ドラム)です。全4曲。歌モノスタンダードはなく全てジャズ・オリジナルです。1曲目"Sputnik"はドナルドソンのオリジナルとありますが、スタンダードの"What Is This Thing Called Love?" を急速調にしたものです。もう1曲のオリジナル"Strollin'"はシンプルなブルース。残りの2曲はビバップの古典で、チャーリー・パーカーの"Dewey Square"とディジー・ガレスピーの"Groovin' High"です。どの曲も特に凝ったアレンジをするわけでもなく、メンバーがただ気持ちよく演奏しているだけです。こう言う作品は正直言って解説に困るのですが、内容が悪いわけでは全然なく、十分鑑賞に値する音楽が生み出されるのが黄金期ブルーノートのすごいところですね。難しいことを考えずにオールスターメンバーが生み出す音に身を任せるのが一番ですね。