最近はジャズの旧譜の再発売もあまりなく、更新もすっかり滞っていました。5月下旬にタイム・レコード・ジャズ・クラシックスというシリーズが発売されましたが、その中からピート・ルゴロの作品を取り上げたいと思います。タイム・レコードは1950年代末から60年代初頭にかけて存在した短命のレーベルですが、ソニー・クラーク、ケニー・ドーハム、スタンリー・タレンタインらビッグネームの作品が揃っていることもあり、ジャズファンからは一目置かれているレーベルかもしれません。ただ、それらの作品は既に所有済みのため、今回私が購入したのは本作です。ピート・ルゴロと言われても一般のジャズファンはピンと来ないかもしれませんが、主に西海岸で活躍したアレンジャーで、スタン・ケントン楽団にも在籍。ジューン・クリスティ(本ブログでも過去に「フェア・アンド・ウォーマー」を紹介)やフォー・フレッシュメンらボーカル作品の編曲でも名を挙げています。他に映画音楽やTVドラマの編曲も多く手掛けており、実際この作品も「スリラー」というTVドラマのサントラだそうです。昔のアメリカのTVドラマと言えば「スパイ大作戦(Mission Impossible)」や「アンタッチャブル」なんかは有名ですが、この「スリラー」というのは聞いたことがありませんねえ・・・
肝心の内容ですが、ケントン楽団でアレンジャーを務めたこともあり、同楽団のメンバーを多数起用しています。すなわちトランペットのドン・ファガーキスト、トロンボーンのフランク・ロソリーノ、テナーのボブ・クーパー、アルトのバド・シャンク、ギターのローリンド・アルメイダ、ヴァイブのラリー・バンカー等ですね。いずれもウェストコーストを代表する名手ばかりです。とは言え、あくまでドラマのサントラということもあって、各人が長々とソロを取る場面はなく、ストリングスをバックにしたゴージャスなサウンドの中、各楽器の短いソロが随所に挟まれるといった感じです。なので、本格的なジャズ作品を期待すると少し肩透かしを食らうかも。とは言え、ルゴロの作った曲はどれも魅力的で、普通にサントラとして聞いても楽しめます。メインテーマでもあるおどろおどろしい“Theme From Thriller”、ラテン調の情熱的な“Voodoo Man”、美しいバラードの“Girl With A Secret”、本作中最もジャズ度が高いスインギーな“Twisted Image”、ローリンド・アルメイダのギターが哀愁を誘う“Rose's Last Summer”、ラリー・バンカーのヴァイブが印象的な“Worse Than Murder”等小粒ながらもキラリと光る曲が揃っています。