ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

管弦楽小品集(ネーメ・ヤルヴィ)

2019-01-25 12:10:34 | クラシック(管弦楽作品)
前回のニールセンに引き続きネーメ・ヤルヴィ指揮イェーテボリ交響楽団のCDで「ロリポップス」と題された管弦楽小品集をご紹介します。ロリポップは直訳すれば飴玉のことですが、以前に取り上げたトーマス・ビーチャムの小品集も同じ題名でしたのでそちらを意識したのかもしれません。マイナー作曲家の、しかもワルツやオペラ序曲等軽めの曲ばかりで、購入時には正直あまり期待していなかったのですが、なかなか楽しめる内容でした。全12曲ありますが全て名曲と言うわけではありませんのでお気に入りの5曲だけピックアップします。



まずは1曲目。「メリー・ウィドウ」で有名なフランツ・レハールの「金と銀」と言うワルツです。題名通り金銀が散りばめられたようなきらびやかな曲で、ありし日のウィーンの舞踏会の様子が目に浮かびます。フィナーレの盛り上がりが最高ですね。続いて3曲目、有名なワルツでエミール・ワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」。名前はドイツ風ですが19世紀後半に活躍したフランスの作曲家だそうです。作曲家自体は今ではすっかりマイナーですが、この曲は有名で色々なところでBGM使としてわれています。私などは子供の頃にやっていたマーガリンのCM♪パンにマリーナ、を思い出します。

お次は5曲目、シャルル・グノーのオペラ「ファウスト」から「ファウストのワルツ」。夢見るような華麗なワルツの調べから後半に向けて怒濤の盛り上がりを見せるあたりが圧巻です。7曲目、エミール・レズニチェクの「ドンナ・アンナ」序曲は恥ずかしながら曲名も作曲家名も全く聴いたことありませんが19世紀末にプラハを中心に活躍したそうです。民族的にはチェコ人のようですが、ドヴォルザークやスメタナらいわゆる国民楽派ではなく、普通のドイツ・ロマン派のようです。この曲は同名のオペラの序曲ですが、疾走感あふれるオーケストレーションと思わず口ずさみたくなるようなう歌心ある旋律が融合した名曲と思います。

最後は12曲目、スウェーデンのヒューゴ・アルヴェーンの「夏至の徹夜祭」。ワルツや序曲ばかり集めた本CDの中では異色ですが、オケがスウェーデンのイェーテボリ交響楽団と言うことでご当地ものを収録したのかもしれません。北欧の短い夏を楽しむ人々の様子を描いた曲で、全編親しみやすい旋律に彩られています。冒頭の部分が「きょうの料理」のテーマ曲に酷似していますが、もちろん時代的にはアルヴェーンの方が先(1901年の作曲)ですので、「きょうの料理」の方がパクリでしょう。序盤のユーモラスで楽しげな雰囲気の後、北欧の夕暮れを思わせるようなやや哀愁感漂う旋律が続き、最後は再び冒頭の主題をフルオーケストラで演奏して華々しく終わります。13分ほどの間に色々な要素がギュッと詰まった名曲中の名曲だと思います。ここで紹介しなかった曲は正直まあまあと言ったところですが、この5曲だけでも買う価値はあると思います。
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ニールセン/管弦楽作品集

2019-01-22 12:08:28 | クラシック(管弦楽作品)
本日はデンマークの国民的作曲家カール・ニールセンをご紹介します。欧米ではフィンランドのシベリウス、ノルウェーのグリーグと並んで北欧を代表する作曲家とみなされていますが、日本での知名度はお世辞にも高いとは言えませんよね。かく言う私もこれまで交響曲第4番「不滅」や3つある協奏曲(ヴァイオリン、フルート、クラリネット)を聴いたことがありますが正直取っつきにくいなあと言うのが率直な感想です。聴き込めば評価も変わってくるのかもしれませんが、これまではその機会もなかったというのが正直なところです。そんな中で購入したのが今日ご紹介するネーメ・ヤルヴィ指揮イェーテボリ交響楽団のニールセンの管弦楽作品集。交響曲や協奏曲等の大作は外して、小品ばかりを集めたCDですがこれがなかなか良かったです。



CDはまずオペラ「仮面舞踏会」の序曲から始まります。これが素晴らしい出来で、協奏曲等に見られた取っつきにくさはまるでなく、華やかで力強い作品です。同じく「仮面舞踏会」からの「ひなどりの踊り」も良いですね。続いては10分前後の単品が4曲。「フェロー諸島への幻想への旅」は北大西洋の島々への航海をイメージした曲で、静かな始まりから中盤に向けて徐々にドラマチックに盛り上がっていくあたりが聴き所。「ヘリオス」はギリシャ神話の太陽神のことで、ギリシャ旅行中のニールセンがエーゲ海の日の出にインスピレーションを受けて作曲したそうです。これは個人的にはニールセン随一の名曲と言ってもよく、幻想的な導入部から高らかに盛り上がる中間部、その後に続く抒情的な旋律も文句なしの傑作です。「サガの夢」は前2曲に比べると暗い曲調ですが、終盤にロマンチックな旋律が現れます。「パンとシリンクス」もギリシャ神話に題材を取った作品ですが、こちらも不安げな旋律が主でやや取っつきにくいかな?最後は「アラジン組曲」。言うまでもなくアラビアン・ナイトの「アラジンの魔法のランプ」(ジャケットにもランプの絵が描かれています)に題材を取った曲で、全編エキゾチックな旋律に彩られています。クラシックの世界でアラビアン・ナイトと言えば何と言ってもリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」と言う不朽の傑作があり、それに比べると規模・内容とも劣りますが、悪くはない作品です。以上、取っつきにくいと思っていたニールセンもそうでもないぞ、という1枚でした。特に「仮面舞踏会」と「ヘリオス」は名曲と言って良いと思います。今後は彼の交響曲も聴き直してみたいと思います。
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ハイドン/パリ交響曲集

2019-01-18 22:30:23 | クラシック(交響曲)
昨年から個人的にハイドンがマイブームですが、今日は「パリ交響曲」を取り上げたいと思います。ハイドンの交響曲と言えば93番以降の「ロンドン交響曲」が有名ですが、82番から87番までの6曲の交響曲も「パリ交響曲」と呼ばれ、通の間では人気です。名前の由来はこの6曲がパリを拠点とするコンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピックと言うオーケストラのために書かれたためです。このオーケストラは室内楽編成が主流だった当時のオーケストラの中では破格の大編成だったと言われており、結果として曲の内容もそれまでの交響曲から大きく進化しています。ハイドンの交響曲と言えば彼が宮廷音楽家だった頃に書かれた第44番「悲しみ」や第45番「告別」も有名ですが、それらの曲が規模も小さく、内容的にも何となくバロックの名残を感じさせるのに対し、パリ交響曲になると明らかにモーツァルトやベートーヴェンらにつながるものが感じられます。

このパリ交響曲集はカラヤン&ベルリン・フィルや古楽器のシギスヴァルト・クイケンらのCDもありますが、私が購入したのはクルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団の3枚組セットです。では、各曲の内容をかいつまんで見ていきましょう。



まずは第82番。「熊」の愛称で親しまれていますが、由来は第4楽章冒頭の低音が熊のうなり声みたいだからだとか。他の曲もそうですがハイドンの交響曲のニックネームは適当ですね。ただ、曲自体は充実しており、特に第1楽章が素晴らしいです。序奏なしでいきなり力強く始まる勇壮な曲調で、後のベートーヴェンへと続く古典派時代の幕開けを感じさせます。第4楽章も熊のうなり声はこじつけにしても、これまた力強く魅力的な旋律に彩られています。ただ、中間楽章はやや退屈ですかね。以前も述べましたが、ハイドンの交響曲は中間楽章、特に第3楽章のメヌエットがワンパターンで聴いていてついついスキップすることが多いです。

続いて第83番。こちらの愛称は「めんどり」です。第1楽章の冒頭は悲劇的な曲調ですが、それに続いて現れるややユーモラスな旋律が鶏の鳴き声を思わせることから名前が付いたようです。相変わらず適当ですね。第2楽章アンダンテも優雅を通り越してやや暗いくらいで、「熊」と比べて全体的に哀愁漂う印象です。ただ、第4楽章は思わず踊り出したくなるような生き生きとしたヴィヴァーチェです。キビキビとした弦楽アンサンブルがハイドンならではです。

第84番は特に愛称も付いておらず地味な存在ですが、第1楽章に関しては素晴らしい出来です。厳粛な序奏が1分半続いた後、華やかでめくるめく旋律が現れというスタイルはその後のロンドン交響曲でも踏襲され、ハイドンの十八番(おはこ)になります。第2楽章は穏やかなアンダンテ、第3楽章はいつも通りのメヌエットで、第4楽章ヴィヴァーチェもまずまずと言ったところ。

第85番は「王妃」の愛称を持っており、一説には時のフランス王妃マリー・アントワネットがこの曲を気に入っていたからと言われていますが、真偽はよくわかりません。第1楽章は愛らしい副題とは裏腹にメランコリックな旋律で、なんかイメージが違います。ただ、この曲に関しては珍しく第2楽章が最も良く、一転して思わず口ずさみたくなるような親しみやすい旋律。「王妃」の由来も、この楽章の雰囲気から来ているかもしれません。第4楽章は急速調のプレストで締めくくります。

第86番は特に愛称も付いていませんが、個人的にはパリ交響曲の中でもベストの出来だと思います。第1楽章はゆったりした序奏の後に魅惑の旋律が次々と現れる名曲で、中間部の勇ましさはベートーヴェンをも想起させます。第2楽章は一転して厳かな雰囲気のラルゴでこの曲も捨てがたい。第3楽章メヌエットはパリ交響曲の中ではマシな方ですがそれでも単調です。第4楽章は疾走感あふれるアレグロ・コン・スピリートで序盤の弦楽合奏が上り詰めていく感じが圧巻です。中間部のはねるような旋律も魅力的。プロコフィエフの有名な「古典交響曲」はハイドンを意識して書いたとのことですが、この第4楽章なんてまさにそんな感じですね。

最後は第87番。珍しく序奏なしにいきなり主題が始まりますが、まるで第86番フィナーレの続きのような疾走感あふれる曲調です。第2楽章と第3楽章は残念ながら特に聴き所もないのでスキップ。この曲は第4楽章が一番良く、開放感にあふれたヴィヴァーチェで締めくくります。以上全6曲。どれも似たような曲と言えばそうなのですが、聴きこむとそれぞれの魅力がわかってきます。特に第86番はもっと知られても良い名曲ではないでしょうか?
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トランペット&トロンボーン協奏曲集

2019-01-08 12:44:42 | クラシック(協奏曲)
本日取り上げるのはトランペット協奏曲とトロンボーン協奏曲のオムニバスです。最近個人的にハイドンがブームということもあり、ハイドンのトランペット協奏曲を聴くために今日ご紹介するCDを購入したのですが、それ以外の曲も粒揃いの佳曲揃いでまさに掘り出し物の1枚でした。収録はトランペット協奏曲が2曲(ハイドン&フンメル)、トロンボーン協奏曲が2曲(フェルディナント・ダヴィッド&ヴァーゲンザイル)。演奏はデイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団でソリストがジェフリー・セガール(トランペット)とマイケル・ベルトンチェロ(トロンボーン)です。



まずはトランペット協奏曲から。トランペット協奏曲はバロック時代に多く作曲され、ヴィヴァルディやタルティーニ、テレマンあたりの曲もありますが、そこら辺の音楽は正直言って私の好みではない。ところが古典派やロマン派になると極端に数が少なくなり、本CD収録のハイドンとフンメルぐらいしかありません。ただ、この2曲に関しては文句なしの名曲だと思います。ハイドンの作品は1796年、彼が64歳の時の作品で、時期的には一連のロンドン交響曲を書き上げた後、「天地創造」「四季」などのオラトリオに取り掛かる前の作品です。つまり、作曲家として円熟の極みにいた時の曲ですから悪かろうはずがありません。トランペットの華やかな音を最大限に活かしつつ、ハイドンお得意の切れ味鋭い弦楽アンサンブルも楽しめる至上の逸品です。

一方のフンメルはフルネームをヨハン・ネポムク・フンメルと言い、ベートーヴェンとほぼ同時期に活躍した作曲家のようです。生前はバレエ音楽やピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲をはじめ多くの作品を残し、ベートーヴェンと並び称されるほどの高い評価を受けていたようですが、今ではこのトランペット協奏曲ぐらいしか演奏されません。ただ、この曲はハイドンや20世紀のアルチュニアンと並んでトランペット協奏曲の最重要レパートリーと言って良く、多くの録音が残されています。曲調は古典派の王道を行くもので、旋律は明快で特に第3楽章は節を付けて歌いたくなるようなわかりやすさです。あるいはこのわかりやすさが深みがないと判断され、その後の低評価につながったのかもしれませんね。

続いてはトロンボーン協奏曲。こちらはトランペット協奏曲以外に数が少なく、特に19世紀以前はほとんど作品が見当たりません。モーツァルトの父であるレオポルト・モーツァルトやリムスキー=コルサコフなんかの作品もあるようですが、本作に収録されているのはフェルディナント・ダヴィッドとゲオルク・クリストフ・ヴァーゲンザイルという作曲家の作品。どちらも無名ですが前者のダヴィッドはメンデルスゾーンとほぼ同時期に活躍したドイツの作曲家で生前はヴァイオリニストとして有名だったそうです。なんでもあのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調(いわゆる「メン・コン」)の初演は彼なんだとか。ヴァイオリン協奏曲も5曲残したそうですが、なぜかそれらが演奏される機会は皆無で、もっぱらトロンボーン協奏曲(正確に言うとトロンボーンと管弦楽のためのコンチェルティーノ)だけが後世に残っています。ただ、この曲は本当に素晴らしい曲で、旋律もロマン派の王道を行くものですし、ソロ部分もまるでヴァイオリン協奏曲を思わせるような華やかさです。トランペットとはまた違う迫力あるトロンボーンが高らかにソロを歌い上げる部分が素晴らしいですね。最後のヴァーゲンザイルは18世紀半ばに活躍したオーストリアの作曲家。年代的に完全にバロック時代なので、上述の3曲とはやや毛色が違います。曲もまあまあと言ったところです。
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