ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

フレディ・ローチ/ダウン・トゥ・アース

2017-01-24 13:02:16 | ジャズ(ソウルジャズ)

2017年第2弾は先日のビル・エヴァンスから一転して、濃厚なオルガン・ジャズをご紹介しましょう。オルガン・ジャズと言えば、何と言っても以前に紹介したジミー・スミスが第一人者ですが、それ以外にもブルーノートにはベビーフェイス・ウィレット、ジョン・パットン、ラリー・ヤング、ロニー・スミス、ルーベン・ウィルソンそしてこのフレディ・ローチ等が在籍しており、60年代ブルーノートが強力にプッシュしていた路線です。ただ、日本のジャズファンのテイストにはこう言ったコッテリしたジャズはあまり合わないのか、あまり取り上げられることはないですね。かく言う私も特にオルガン・ジャズの愛好者というわけではありません。一連のオルガン・ジャズの作品群にはジャズと言うより、むしろR&B寄りのものも多く、ノリは良いけど深みはイマイチ、と言った作品も正直多いんですよね。そんな中で今日取り上げる「ダウン・トゥ・アース」はタイトル通りアーシーな要素をたっぷり含みながら、楽曲の質も高く、繰り返し聴いても飽きない内容となっています。



録音は1962年8月。ローチは前年にテナー奏者アイク・ケベックの「ヘヴィ・ソウル」にサイドマンとして参加し、本作が初のリーダー作となります。メンバーはローチに加え、パーシー・フランス(テナー)、ケニー・バレル(ギター)、クラレンス・ジョンストン(ドラム)から成るカルテットです。パーシー・フランスと言うテナー奏者に関してはあまり聞いたことがありませんが、おそらくR&B畑の人でしょう。注目すべきは個人的にナンバーワン・ジャズギタリストと崇めているバレルの参加ですね。実際にアルバム全編に渡って素晴らしいプレイを披露しており、リーダーのローチと同等かそれ以上の目立ち具合です。1曲目“De Bug”で、テーマの後に続くバレルのソウルフルなギターソロがたまりませんね。リーダーのローチはと言うと、もちろんファンキーなオルガンを聴かせてはくれますが、どちらかと言えば作曲者として大きく貢献していると思います。ヘンリー・マンシーニが作曲したミュージカルナンバー“Lujon”(これもまたなかなかの佳曲です)を除いて他の5曲は全てローチの描き下ろしですが、単にノリが良いだけでなくメロディもツボを抑えており、思わず口ずさみたくなるキャッチーなナンバーばかりです。特に“Althea Soon”と“More Mileage”の2曲が強くお薦めです!

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ビル・エヴァンス/ライヴ・イン・トーキョー

2017-01-13 23:38:36 | ジャズ(ピアノ)

遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。今年もマイペースでちびちびと更新していきたいと思います。さて、新年第1弾は昨年末に引き続きビル・エヴァンスです。ジャズを聴き始めて20年。今さらながらビル・エヴァンスの魅力を再確認する今日この頃です。前回は1967年のニューヨーク、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ盤でしたが、今日取り上げるのはその6年後、1973年1月に東京の郵便貯金ホールでのコンサートの様子を録音したものです。この時はちょうどビル・エヴァンスが待望の初来日を果たした時で、日本のジャズファンの間では静かなフィーバーが巻き起こっていたとか。私はちょうどその年の夏に生まれたので、当時の様子は知るべくもありませんが、バリバリの大物ジャズメンが来日するのはまだ珍しかった頃ですから、2週間のツアー公演は連日の大盛況だったようですよ。メンバーはビル・エヴァンス(ピアノ)に加え、エディ・ゴメス(ベース)とマーティ・モレル(ドラム)からなる当時のレギュラー・トリオ。以前ご紹介した「ザ・ビル・エヴァンス・アルバム」と全く同じ布陣ですね。



収録は全9曲。そのうち“My Romance”“Gloria's Step”、アンコールに応えて演奏されるラストの“On Green Dolphin Street”等リヴァーサイド時代の名曲も再演されますが、それ以外はむしろ新しいレパートリーが中心です。日本のファン向けにお馴染みの定番曲だけで済ませることも可能だったはずですが、あえてそうしなかった所にエヴァンス・トリオの姿勢がうかがえますね。個人的に素晴らしいと思うのは最初の2曲。まず、“Mornin' Glory”はボビー・ジェントリーというカントリー歌手の曲だそうですが、正直オリジナルは大して有名とは言えません。続く“Up With The Lark”も名作曲家ジェローム・カーンが1946年の映画のために書いた曲ですが、これもカーンの数多いスタンダード曲の中では取り上げられることも少ない地味な曲です。それらマイナーな曲が、エヴァンス・トリオの瑞々しい演奏によって、美しいピアノトリオの名曲に生まれ変わるのですから、まさにマジックですね。この2曲はその後エヴァンスのレパートリーに加わり、さまざまな所で再演されます。この2曲以外にも、もとはメキシコの歌謡曲だったと言う美しいバラード“Yesterday I Heard The Rain”、クレア・フィッシャーのカバー“When Autumn Comes”等が捨て難い魅力を放っています。もちろん前述の“My Romance”等のお馴染みのナンバーの時は観客達の「待ってました!」的な盛り上がりがこちらに伝わってきます。以上、エヴァンスの数あるライブ盤の中でも決して過去の名盤達に引けを取らない出来ではないでしょうか?最後に司会者の方が「どうぞ拍手をお願いします」と日本語で締めくくるのが微笑ましいです。

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