ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

チャイコフスキー/くるみ割り人形、眠りの森の美女、白鳥の湖

2013-08-27 22:42:30 | クラシック(管弦楽作品)
チャイコフスキーと言えば後期の3大交響曲、ピアノ協奏曲第1番、ヴァイオリン協奏曲と超有名曲がいくつもありますが、一般的な認知度と言う点では言えばやはり三大バレエ、「くるみ割り人形」「眠りの森の美女」「白鳥の湖」にとどめをさすのではないでしょうか?特に「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」はクラシックに何の興味もないお茶の間の老若男女でも「あ!この曲知ってる!」という曲のオンパレードです。多くはCMで使われていて、中には変な歌詞をつけてパロディにされたりしてますが、それも昔から広く親しまれていることの証左です。どれもバレエの付随音楽で、それぞれ全曲で演奏すると一番短い「くるみ割り人形」でも約1時間30分、「眠りの森の美女」が3時間、「白鳥の湖」で2時間と大作揃いですが、よほどのマニアでない限り全曲盤を聴く必要はなく、管弦楽版のハイライトでいいでしょう。3大バレエは昔からあらゆる名指揮者が録音していますが、収録曲もだいたい似通っているのであとは好みの問題。そんな中で私が選んだのはアレクサンドル・ラザレフ指揮ボリショイ劇場管弦楽団のCDです。最大の魅力は1000円という廉価ですが、帝政ロシア時代から続く本場の名門オケだけあって演奏も超一流なので安心です。



まず「くるみ割り人形」ですが、3大バレエの中でもお茶の間浸透度では随一ですね。超定番の「花のワルツ」「行進曲」に加え、最近は「葦笛の踊り」もソフトバンクのCMで有名になりました。他にも弦楽合奏がキュートな「序曲」、力強いロシアの民族舞踊「トレパーク」も捨て難いですね。私は唯一このバレエだけはニューヨークで本物の舞台を見たことがありますが、それはそれは素晴らしかったですね。「眠りの森の美女」は3作の中では一番マイナーですね。あえて言えば「ワルツ」がどこかで聴いたことあるぐらいか。ただ、曲はどれもいいですね。「序奏」「アダージョ」「パノラマ」と優雅なメロディの曲が多いのが特徴です。続く「白鳥の湖」は小学生でも知っている例の哀調を帯びた主題「情景」が何と言っても有名。ややコミカルな曲調の「小さな白鳥の踊り」もいろいろな場面で使われていますね。ただ、個人的に好きなのはむしろアップテンポの曲の方。軽やかな「ワルツ」、ハンガリー舞踊の「チャルダーシュ」、ポーランドの民族舞曲「マズルカ」と意外と明るく楽しい曲が多いです。
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ブラームス/大学祝典序曲&ハンガリー舞曲

2013-08-25 14:01:12 | クラシック(管弦楽作品)
ブラームスについては過去にも交響曲第2番および第3番を取り上げましたが、古典主義の王道を行く重厚な曲作りに敬意を表しつつも、どこか堅苦しい印象を持っているのも事実です。ただ、今日ご紹介する2曲はそんなブラームスのの中では比較的お気楽な印象のある作品です。一つは「大学祝典序曲」。これはブラームスが大学の名誉博士号をもらったお礼としてブレスラウ大学に献呈した作品です。祝典用に作られただけあってブラームスには珍しく陰のない曲で、終始明るく華やかなままフィナーレを迎えます。実はこの曲には当時の学生たちが口ずさんでいた学生歌が4つも引用されているそうですが、そんな世俗の歌をうまく編曲し、壮麗な管弦楽曲に仕立て上げたブラームスの手腕はさすがです。

続く「ハンガリー舞曲」は合計21曲から成るピアノ連弾曲で後にオーケストラに編曲されたものだそうです。うち前半10曲は純粋なブラームスの作曲ではなく、ハンガリー出身のジプシー楽団の持ち歌をブラームスが編曲したようです。なので当時から盗作で訴えられたりと一悶着あったとか。確かにこれらの楽曲からは民族音楽が持つむせ返るようなエネルギーは感じられても、ブラームスらしさは全く感じられません。あくまでブラームス編ジプシー音楽集という解釈で聴くのが正しいような気がします。ちなみに日本でもCM等で圧倒的に有名な第5番はこの前半部分です。後年、ブラームスは今度は編曲ではなく自分が作った11曲を追加で発表しますが、決してポピュラーとは言えないのは皮肉なところです。実際、魅力的なのは前半部分だと思います。



CDですが、この2曲が同時に収録されているハインツ・レーグナー指揮シュターツカペッレ・ドレスデンのものをご紹介します。「大学祝典序曲」はブラームスの交響曲と一緒に収録されていることが多いですが、さすがに交響曲の後で聴くとやや劣ります。その点、軽めの「ハンガリー舞曲」と聴くと良さが際立ちます。「舞曲」の方も単品で聴くと同じような曲調ばかりで飽きが来ますので、このカップリングがベストではないでしょうか?
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フランス序曲集(フルネ)

2013-08-24 16:42:25 | クラシック(管弦楽作品)
今日はちょっと趣向を変えていろいろな作曲家の作品が入ったオムニバス形式のCDをご紹介しましょう。全てフランスの作曲家でボワエルデュー、ベルリオーズ、グノー、マスネ、ラロ、デュカス、ピエルネらによる序曲集です。時代的には19世紀前半から20世紀初頭までをカバーしており、様式も曲調もさまざまですがどれもクオリティが高く、まさに掘り出しモノの1枚です。演奏はジャン・フルネ指揮オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団。フランス音楽の権威であるフルネだけあって、実にシブい選曲にうならされます。本盤でしか聴くことのできないレア楽曲もあるので実に貴重な1枚と言えるでしょう。



1曲目はボワエルデューのオペラ「白衣の婦人」序曲。ボワエルデューと言われても誰それ?ですが、19世紀初頭に活躍した作曲家だそうです。曲調的には同時代のロッシーニに似た明るく華やかな作品です。2曲目はベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」。マイナー曲揃いの本CDの中で唯一メジャーな楽曲です。ゆったりした前半部分から、後半一気にエネルギッシュな展開に変わり、カーニバルの様子が絢爛豪華なオーケストレーションで描かれます。3曲目は「アヴェ・マリア」で有名なグノーによるオペラ「ミレイユ」序曲。オペラ自体は今ではほぼ上演されることはありませんが、この序曲は力強い行進曲風の旋律が実に魅力的です。4曲目は「タイスの瞑想曲」で知られるマスネによる「フェードル」序曲。マスネの中でもマイナーな作品で、まさに本盤ならではのレア選曲ですが、重々しい序盤から勇壮な中間部分、ついで現れる甘美な主題とドラマチックな展開が魅力の1曲です。

5曲目は「スペイン交響曲」のラロによるオペラ「イスの王様」の序曲。ちなみにイスとは座る椅子ではなく伝説の古代都市の名前だそうです。メランコリックな序盤から荒々しい中間部分を経て、7分過ぎからチェロ独奏で奏でられる美しい主題が絶品です。6曲目は「魔法使いの弟子」のデュカスによる「ポリュークト」序曲。一聴したところ単に暗いだけの掴みどころのない曲かと思いますが、聴きこむとハッとした美しさに目を見張らされます。デュカスの作品の中でも以前に取り上げた交響曲第2楽章あたりに雰囲気が似てるかもしれません。7曲目はピエルネの「ラムンチョ」序曲。ピエルネは生前指揮者として有名だったそうで作曲家としてはマイナーですが、この曲はバスク地方の民謡を題材にしたエネルギッシュかつカラフルな旋律に彩られた名曲です。以上、全7曲どれも甲乙つけがたい名曲揃い。ずばり名盤です!
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ラヴェル/ダフニスとクロエ

2013-08-23 18:25:56 | クラシック(管弦楽作品)
本日はフランスの作曲家、モーリス・ラヴェルの「ダフニスとクロエで」をご紹介します。ギリシャ神話に題材を得た同名のバレエのために作曲されたもので、全13曲55分にもおよぶ大作です。“管弦楽の魔術師"と呼ばれるラヴェルの緻密で華麗なオーケストレーションが極限まで発揮された作品で、個人的には「ボレロ」やピアノ協奏曲を凌ぐ彼の最高傑作だと高く評価します。混声合唱が効果的に使われているのも印象的ですね。一応、各曲ごとにバレエの場面に応じたタイトルが付けられていますが、全編切れ目なく演奏されるのでトータルで一つの曲とみなすのが正解でしょう。ただ、その中でも特にと言われれば、「序奏」と第3部の「日の出」が素晴らしいですね。特に後者は目をつむって聴けばまるで眼前に鮮やかな景色が広がるかのような幻想的な音世界です。



この「ダフニスとクロエ」は古今東西さまざまな名指揮者が録音していますが、その決定盤の一つとして知られているのがアンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団のCDです。録音は1962年と半世紀も前ですが、録音も古さを感じさせませんし、オーケストラ、合唱も終始テンションを維持しています。クライマックスの「全員の踊り」の合唱が終わった瞬間に思わず拍手したくなりますね。
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ファリャ/恋は魔術師、三角帽子

2013-08-07 23:06:25 | クラシック(管弦楽作品)
19世紀末から20世紀前半にかけてヨーロッパ各地で国民楽派と呼ばれる動きが活発になりました。従前の古典主義・ロマン主義の音楽に民族音楽の要素を加えたもので、スペインではアルベニス、ファリャがその代表格ですね。2人については以前にも「イベリア」&「スペインの庭の夜」でご紹介しました。うちマヌエル・デ・ファリャについては他にも2つの有名なバレエ音楽を残しており、それが今日取り上げる「恋は魔術師」と「三角帽子」です。両作品ともスペイン情緒が極めて濃厚で、ここまで来ると“民族音楽の要素の入ったクラシック”と言うより、“クラシック風演奏による民族音楽”と言った方が適切かもしれません。




「恋は魔術師」は全13曲、25分強の作品です。うち4曲はソプラノ独唱入りで、全編に渡って情熱的なフラメンコ風の旋律に溢れています。中でも第8曲「火祭の踊り」が圧巻ですね。1曲だけ優しい子守歌風の「無言劇」が一服の清涼剤的役割を果たしています。「三角帽子」も同じくスペインの民族舞踊をダイレクトに取り入れており、それぞれの踊りにちなんだ「ファンダンゴ」「セギディーリャス」「ファルーカ」「ホタ」などの曲が収録されています。特に野性的な「ファンダンゴ」と、フィナーレを飾る絢爛豪華な「ホタ」が素晴らしいですね。この両作品は人気作品だけあってディスクもそれなりに出回っていますが、私が買ったのはカルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団のCDです。スペインの美しい景色を切り取ったジャケも美しいですが、EMIの再発盤で999円という価格が決め手ですね。
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