ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

デュカス/交響曲、魔法使いの弟子、ラ・ペリ

2013-06-26 23:05:10 | クラシック(交響曲)

ポップスの世界では1曲だけヒットを飛ばして消える“一発屋"と呼ばれる人たちがいますが、クラシックの世界でも似た境遇の人はいます。「惑星」のホルスト、「カルミナ・ブラーナ」のオルフ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のマスカーニ等がそうですね。今日ご紹介するポール・デュカスも一般的には「魔法使いの弟子」1曲のみで知られているのではないでしょうか?ディズニー映画「ファンタジア」でも使われたこの曲はクラシック初心者でもどこかで聴いたことがあるはずです。ただ、本当は彼のことを“一発屋”扱いするのは失礼な話かもしれません。デュカスにはたった1曲ながら素晴らしい内容の交響曲がありますし、「ラ・ペリ」という優れたバレエ音楽を残しているからです。本日はその全てが収録された貴重な録音として、ジャン・フルネ指揮オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団のCDをピックアップします。



まず、交響曲ですが、演奏される機会も少なくディスクもほとんどありませんが、同時代のフランクの交響曲と比較しても遜色ない内容だと思います。3楽章しかありませんが、それぞれが10分以上のボリュームで聴き応えもたっぷり。ややブラームス的な重厚な第1楽章、フランス的繊細さを感じさせる幻想的な第2楽章、壮麗なフィナーレを迎える第3楽章と構成も見事です。意外と言っては失礼ですが、新古典主義の王道を行く正統派のシンフォニーですね。バレエ音楽「ラ・ペリ」も素晴らしい。華やかなファンファーレに引き続き、ゆったりとしたテンポで幻想的なメロディが奏でられます。オーケストレーションも実に華やか。こちらは交響曲より15年ほど後の1910年の作品ですので、同時代のドビュッシーやラヴェルに通ずる印象派的要素が感じられます。最後にご存じ「魔法使いの弟子」ですが、こちらは聴いていて楽しくなるエンターテイメント性あふれる曲。魔法使いの弟子がいたずらで魔法をかけたが失敗して右往左往する様がユーモラスに表現されています。以上、決して多作ではありませんが、デュカスが卓越したメロディメーカーだったことがよくわかる1枚。お薦めです。

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カリンニコフ/交響曲第1番&第2番

2013-06-22 23:38:48 | クラシック(交響曲)
今日はロシアの作曲家ヴァシリー・カリンニコフを取り上げます。誰それ?と思う人もいるかもしれませんが、19世紀末に2曲の交響曲及びいくつかの管弦楽曲、ピアノ曲を残して34歳の若さで結核に倒れた夭折の作曲家です。いわゆるクラシックの偉人伝に名前が乗るような存在ではありませんが、今回UPする2曲の交響曲は一部ファンの間で根強い人気を誇っており、“知る人ぞ知る”隠れ名曲となっています。時代的にはチャイコフスキーの一世代下でグラズノフやラフマニノフとほぼ同世代。同時期のロシアの作曲家が概ねそうであったように、西欧のロマン派音楽の影響を強く受けつつも、ロシアの民族音楽を大胆に取り入れた非常にわかりやすい旋律を特徴としています。実際、第1番の第1楽章の出だしなんて歌謡曲か?と思わせるぐらいベタなメロディですしね。正直、芸術的な深みはあまり感じられないので、そこら辺がメジャーに成り切れなかった原因かもしれません。ただ、逆に言えばクラシック初心者でも取っつきやすい大衆性にハマる人も多いのではないでしょうか?



第1番、第2番とも構成はほぼ同じで、作品全体の主題を奏でる雄大な第1楽章。静謐な緩徐楽章の第2楽章。民族舞踊を思わせる陽気なスケルツォ風の第3楽章。そしてそれまでの楽章の主題を繰り返しながら、壮大なフィナーレへと向かう第4楽章という構成です。どれも親しみやすい旋律ばかりですが、中でも第2番第2楽章のアンダンテ・カンタービレの哀愁を帯びた美しさは特筆すべきですね。CDは何種類か出ていますが、さすがに有名指揮者のものはあまりなく、唯一メジャーな名前だったウラジミール・アシュケナージ指揮アイスランド交響楽団のものを買いました。アシュケナージはロシア出身の世界的指揮者ですが、1963年に西側に亡命し、アイスランド国籍を取得しているので、いわば地元オケとの共演と言えます。アイスランド響の方も小さな島国のオケながら近年実力を高く評価されているそうですね。今後、他のCDも発売されるかもしれませんが、現時点ではカリンニコフ入門には最適の1枚と言えるのではないでしょうか?
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リヒャルト・シュトラウス/英雄の生涯

2013-06-21 23:32:29 | クラシック(管弦楽作品)
本日はドイツの大作曲家、リヒャルト・シュトラウスを取り上げたいと思います。当ブログでも最晩年の傑作「4つの最後の歌」を以前にUPしており、2回目のピックアップですね。19世紀後半の後期ロマン派の時代から第二次大戦後まで息の長い活動をした人ですが、作風は年代によって明確に変化しており、主に20代から30代にかけてがド派手なオーケストレーションによる交響詩の数々を、40代以降はオペラを中心に作曲活動を行いました。今日ご紹介する「英雄の生涯」は34歳の時の作品で、全部で7つある交響詩の中でも最後の作品です。演奏時間も約45分あり規模的にも最大ですね。管弦楽法を極めたリヒャルト・シュトラウスの作品の中でも最もスケールの大きい楽曲と言われ、全編にわたって絢爛豪華な音絵巻が繰り広げられます。



音楽は一人の“英雄”の生涯が恋愛、戦争、隠遁など6つのテーマで描かれます。定説によると“英雄”とはリヒャルト・シュトラウス自身のことで、30代にして功成り名を遂げた自らの人生をナルシシスティックに描いたものだとか。真実だとすると鼻持ちならない野郎ですが、曲そのものはその才能を裏付けるかのように色彩豊かなオーケストラサウンドと美しい旋律に彩られた名曲です。冒頭の勇壮な英雄の主題、愛する伴侶と結ばれる場面の幸福感に満ちた旋律も素晴らしいですが、荒々しい戦闘の場面等を乗り越えた後に訪れるエピローグが出色の出来です。英雄が激動の生涯の幕を下ろす様を消え入るようなバイオリンソロと静かに燃え上がるオーケストラで描ききった感動のフィナーレです。

そんな「英雄の生涯」のCDはリヒャルト・シュトラウスの他の交響詩との様々な組み合わせで発売されていますが、私が買ったのは「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を併録したダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団のCDです。ティル・オイレンシュピーゲルは民話の登場人物で、とんち話やいたずら話で有名なドイツ版一休さんとでも言うべき存在だとか。15分ほどの小品ですが、ティルのいたずらの数々を明るくカラフルなオーケストレーションで表現した非常に親しみやすい名曲です。
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サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番

2013-06-20 23:08:04 | クラシック(協奏曲)
今日はひさびさにヴァイオリンの名曲ということで、フランスの作曲家カミーユ・サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番をご紹介します。番号からもわかるようにサン=サーンスはこれ以前にヴァイオリン協奏曲を2曲書いていますが、いずれも20代の頃に書かれた作品で今では演奏される機会はほぼありません。一方、この第3番は脂の乗り切った40代半ばにものした傑作で、古今のヴァイオリン協奏曲の中でもベスト10には必ず入るであろう名曲です。私もバレンボイム指揮パールマン盤を既に持っていますが、同じサン=サーンスの「ハバネラ」と「序奏とロンド・カプリチオーソ」がセットで収録されているということで、フランスの名ヴァイオリニスト、オーギュスタン・デュメイのCDを買ってみました。ちなみにオーケストラは日本人の矢崎彦太郎指揮のモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団です。



まず、ヴァイオリン協奏曲ですが、全編に渡って哀調あふれるヴァイオリンと重厚なオーケストラが融合したドラマチックな展開が魅力。第1楽章、第3楽章ともマイナー調のやや重苦しい出だしですが、中間部分で一転して現れる夢見るような美しい旋律が素晴らしいですね。第2楽章はロマンチシズムの極致とでも言うべき激甘のメロディで、特に主題部分は歌詞をつけて歌いたくなるほどです。「ハバネラ」は文字通りキューバの民族舞曲ハバネラにインスピレーションを受けて作曲されたもの。ビゼーの「カルメン」にも同名のアリアが収録されていますが、ヴァイオリンのために書かれた本曲も思わず口ずさみたくなるような素朴なメロディが印象的です。終盤の怒涛の超絶技巧も聴きモノです。「序奏とロンド・カプリチオーソ」も同じく高い技巧が要求される曲でヴァイオリニストの腕自慢でよく演奏されます。スペイン出身のパブロ・サラサーテのために書かれた曲だけあっていかにもスペインらしい情熱的な旋律です。
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フランク/交響曲 & ダンディ/フランスの山人の歌による交響曲

2013-06-15 12:17:42 | クラシック(交響曲)
本日は19世紀後半にフランスで活躍した2人の作曲家による交響曲をご紹介しましょう。セザール・フランクとヴァンサン・ダンディ。前者は交響曲以外にもヴァイオリン・ソナタ、ピアノ五重奏曲なども残しているポピュラーな存在ですが、後者のダンディはかなりマイナーですね。生前はオペラを6曲、交響曲を4曲発表するなど精力的に活動していたようですが今でも演奏されるのはこの「フランスの山人の歌による交響曲」のみ。それでさえ決してメジャーとは言えません。フランクの交響曲は古今を問わず様々な名指揮者が録音していますが、ダンディの作品で事実上CDで出回っているのはこのシャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団のものだけではないでしょうか?フランス音楽を得意とするデュトワならではの貴重な録音ですね。



まず、フランクから。出身はベルギーですが、10代の頃にパリに移住し、後にフランスに帰化したそうです。遅咲きの作曲家として知られ、有名なヴァイオリン・ソナタも唯一の交響曲も60代半ばの作品。ようやく名声を得たと思った直後に馬車との接触事故が原因で68歳で死ぬという不遇の生涯を送った人です。作風は古典の王道を行くもので、フランスっぽいというよりむしろ同時代のブラームスを思わせる重厚な作風です。重々しい冒頭部分に続いて美しい主題の現れる第1楽章、雄大な第3楽章が素晴らしいです。

続いてダンディの交響曲はタイトルにあるようにフランス南部の山岳地帯に伝わる牧歌をモチーフに作曲されたもので、素朴で親しみやすい楽曲です。交響曲でありながらピアノ独奏があるのも特徴で、本盤でもジャン=イヴ・チボーデというピアニストが美しいピアノを聴かせてくれます。ただ、ピアノ協奏曲と違い、主役はあくまでオーケストラなので、そこまで大々的にフィーチャーされるわけではありません。このピアニストの中途半端な扱いがコンサートなどであまり演奏されない原因なのかもしれません。ただ、楽曲そのものは美しい旋律に満ちあふれた非常に魅力的なものです。ピアノが優しい旋律を奏でる第1楽章、壮麗なクライマックスを迎える第3楽章が絶品ですね。もっと多くの人に知られて欲しい名曲だと思います。
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