ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

デューク・ピアソン/ハニーバンズ

2012-08-31 22:35:12 | ジャズ(モード~新主流派)
本日はデューク・ピアソンの1965年作品「ハニーバンズ」を取り上げます。デューク・ピアソンはピアニスト、アレンジャー、そして作曲家としてマルチな能力を発揮したモダンジャズきっての才人であり、特に60年代にはブルーノートの中心人物として多くの名作を生み出しました。同レーベルに残した「プロフィール」、「スウィート・ハニー・ビー」、「ザ・ライト・タッチ」などは日本のジャズファンにもお馴染みですね。そんなピアソンですが、アトランティックにも2枚だけリーダー作を残しており、そのうち1枚がこの「ハニーバンズ」です。



ジャケットにノネット(九重奏団)とあるように、計9人からなる小型ビッグバンドで、ピアソン以外のメンバーはジョニー・コールズ(トランペット)、ジョージ・コールマン(テナー)、ジェイムズ・スポールディング(アルト)、ペッパー・アダムス(バリトン)、ガーネット・ブラウン(トロンボーン)、レス・スパン(フルート)、ボブ・クランショー(ベース)、ミッキー・ローカー(ドラム)となっています。ただし、ソロを取るのは主にピアソン、コールズ、コールマンの3人で後はもっぱら伴奏に徹しています。

内容はピアソンの高い作曲能力を示すように6曲中5曲が自作曲です。当時流行のジャズロック調の“Honeybuns”はやや軽すぎる気もしますが、続く“New Girl”はメロディ、アレンジともに最高にクールな名曲。ブルーノート盤「イントロデューシング・デューク・ピアソンズ・ビッグバンド」でも再演されたピアソンの代表曲です。“Is That So”“Heavy Legs”も同じ流れを組むモーダルなナンバー。一転して美しいバラードの“You Know I Care”はジョー・ヘンダーソンの名演で有名ですが、作曲者によるバージョンもなかなかです。“Our Love”だけはピアソン作ではありませんが、作曲は何とあのチャイコフスキー。幻想序曲「ロメオとジュリエット」のメロディをジャズ風にアレンジしたものらしいです。これがまたうっとりするロマンチックなアレンジで、ピアソンのアレンジャーとしての才能を実感することができます。いかにも60年代チックなポップなジャケットですが、中身は結構充実した1枚です。
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デイヴィッド・ニューマン/ファットヘッド

2012-08-30 23:31:42 | ジャズ(ソウルジャズ)
本日はアトランティックの看板ミュージシャンの一人であるサックス奏者デイヴィッド・ニューマンの1960年の初リーダー作「ファットヘッド」を紹介します。彼の作品は以前にも「ストレイト・アヘッド」を取り上げましたが、そちらはウィントン・ケリー・トリオをバックにした正統派ジャズだったのに対し、こちらは彼が所属していたレイ・チャールズ・バンドのメンバーを中心にしたR&B色の強い内容。バンドの同僚であるハンク・クロフォードの「モア・ソウル」の兄弟作品と言ってもいいかもしれません。



メンバーはリーダーのニューマン(テナー&アルト)に加え、マーカス・ベルグレイヴ(トランペット)、ハンク・クロフォード(バリトン)、レイ・チャールズ(ピアノ)、エドガー・ウィリス(ベース)、ミルト・ターナー(ドラム)の6人。何と言ってもレイ・チャールズの参加が目を引きますが、ここでの彼は歌声も披露せずひたすら一ピアニストに徹しています。随所にソロも聴かれますが、意外と正統的なプレイです。曲目は当然のごとくファンキーなナンバーが中心。歌心あふれる冒頭の“Hard Times”、疾走感あふれる“Bill For Bennie”、ハードバピッシュな名曲“Sweet Eyes”などソウルフレイバーたっぷりのジャズが堪能できます。他ではキャッチーなスタンダード曲“Mean To Me”、マイナームードあふれるガレスピーナンバー“Tin Tin Deo”もいいですね。
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シェリー・マン/ボス・サウンズ!

2012-08-28 11:14:01 | ジャズ(ウェストコースト)
前回のフィリー・ジョー・ジョーンズに続きドラマーのリーダー作を紹介します。今回はウェストコーストジャズの中心人物でもある白人ドラマー、シェリー・マンの作品ですね。西海岸には他にメル・ルイス、スタン・リーヴィという名手がおり、ウェストコースト3大ドラマーと呼ばれたりしていますが、マンの場合はリーダー作が多いので知名度的には一番高いかもしれません。特にコンテンポラリー盤「マイ・フェア・レディ」、インパルス盤「123」あたりは定番ですね。



本作「ボス・サウンズ!」はウェストコーストジャズが全盛だった50年代半ばよりぐっと時代の下がった1966年の作品。アトランティックに移籍して最初の吹き込みとなります。メンバーはコンテ・カンドリ(トランペット)、フランク・ストロージャー(アルト)、ラス・フリーマン(ピアノ)、モンティ・バドウィグ(ベース)そしてマン(ドラム)からなるクインテット。カンドリ、フリーマン、バドウィグなど50年代からの盟友も参加していますが、新世代のミュージシャンであるストロージャーの存在が作品に新たな風を吹き込んでいます。

実際、6曲中ストロージャーが“Idle One”“Frank's Tune”の2曲を提供しており、どちらもアルバムのベストトラックと言ってよい出来。特にキャッチーなメロディが印象的な“Frank's Tune”は60年代ジャズ屈指の名曲でしょう(ジャック・ウィルソンの名盤「イースタリー・サウンズ」でも取り上げられてましたね)。静かに盛り上がるモーダルな“Idle One”も名演です。他にも哀愁漂うメロディが印象的な“Wandering”、フリーマン作の熱血ハードバップ“You Name It”など魅力的なトラックが並んでいます。冒頭の“Margie”だけはフリーっぽさを狙ったのか調子っぱずれの演奏なのが玉にキズですが・・・ウェストコーストと言えば、60年代以降はほとんど取り上げられることはありませんが、どっこいこんな硬派な作品もあるんだよということを知らしめてくれる貴重な記録です。
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フィリー・ジョー・ジョーンズ/フィリー・ジョーズ・ビート

2012-08-24 21:32:22 | ジャズ(ハードバップ)

本日は名ドラマー、フィリー・ジョー・ジョーンズが1960年にアトランティックに録音した「フィリー・ジョーズ・ビート」を取り上げます。本ブログでは以前にもエルヴィン・ジョーンズとの共演作「トゥギャザー!」を取り上げているので2度目ですね。前回はドラムが大々的にフィーチャーされた作品でしたが、本作はトランペットとテナーを加えたオーソドックスなクインテット編成です。



メンバーはリーダーのフィリー・ジョー(ドラム)に加え、マイケル・ダウンズ(コルネット)、ビル・バロン(テナー)、ウォルター・デイヴィス・ジュニア(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)。デイヴィスとチェンバースはまあいいとして、フロントの2人があまり馴染みがないですね。ビル・バロンはピアニストのケニー・バロンのお兄さんということしか知りませんし、マイケル・ダウンズに関しては名前を聞いたことすらありません。解説によると白人らしいですが、これがまた小型版ナット・アダレイとでも言うべき小気味よいプレイを聴かせてくれます。バロンのテナーも意外と正統派ですね。

曲目はどれもミドルからアップテンポのナンバー。マイルスの名演で名高い“Dear Old Stockhokm”、ディジー・ガレスピーの“Two Bass Hit”“That's Earl Brother”、フィリー・ジョーのオリジナル“Got To Take Another Chance”、メロディの印象的な“Muse Rapture”などこれぞハードバップと言うべき演奏が全編にわたって繰り広げられます。フィリー・ジョーは随所でドラムソロを披露しますが、決して前に出すぎることなくダウンズやバロンら無名の若手をバックで盛り立てているところが好ましいですね。

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カウント・ベイシー/ジス・タイム・バイ・ベイシー

2012-08-23 23:11:01 | ジャズ(ビッグバンド)
本日はジャズ・ベスト・コレクション・シリーズから、カウント・ベイシー楽団がリプリーズに残した傑作「ジス・タイム・バイ・ベイシー」を紹介します。ビッグバンドジャズにおいてデューク・エリントン楽団と共に横綱の位置を占めるベイシー楽団ですが、個人的な好みを言えばベイシー楽団の方がより黒人らしい躍動感があって好きですね。特に50年代後半から60年代前半にかけてはまさに黄金時代で、この頃の彼らの作品はどれを聴いてもハズレなしと言っても過言ではないでしょう。1963年発表の本作ももちろん例外ではありません。



メンバーは計18人。全員は列挙しませんが、トランペットのサド・ジョーンズ&アル・アーロンズ、テナーのフランク・フォスター、テナー兼フルートのフランク・ウェス&エリック・ディクソン、アルトのマーシャル・ロイヤルら名だたる名手達で構成される重厚なホーンセクションはまさに絢爛豪華の一言。もちろんリズムギターの“ミスター・リズム”ことフレディ・グリーン、ベースのバディ・カトレット、ドラムのソニー・ペイン、そしてピアノの御大ベイシーから成るお馴染みのリズム・セクションも強力ですし、かてて加えて編曲がクインシー・ジョーンズですから文句のつけようがないラインナップですね。

そんなオールスター軍団が演奏するのは副題“Hits Of The 50s & 60s”のとおり当時のヒット曲ばかり。トニー・ベネットの名唱で知られる“I Left My Heart In San Francisco”、レイ・チャールズの“I Can't Stop Loving You”、映画「ティファニーで朝食を」で有名な“Moon River”、ヴェンチャーズ“Walk, Don't Run”などジャズファン以外にもお馴染みのオールディーズナンバーがずらりと揃っています。ただ、それらのナンバーは正直ベタ過ぎてやや面映ゆい気も。個人的にはそれ以外の曲の方が好きですね。ホーンセクションが炸裂するオープニングの“This Could Be The Start Of Something”、ウェス&ディクソンのフルートが印象的なスローテンポの“The Swingin' Shepherd Blues”、マーシャル・ロイヤルのアルトが美しい名バラード“What Kind Of Fool Am I”、シナトラのヒット曲を見事にアレンジした“Nice 'N' Easy”などがお薦めです。
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