ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

モダン・ジャズ・ディサイプルズ/ライト・ダウン・フロント

2014-01-27 23:19:53 | ジャズ(ハードバップ)
本日は以前にも取り上げたシンシナティ出身のジャズコンボ、モダン・ジャズ・ディサイプルズの第2作「ライト・ダウン・フロント」をご紹介します。彼らは結局この2枚のアルバムをプレスティッジに残しただけで解散。個々のメンバーでその後有名になった人も特にいないという超マイナーグループなんですが、前作に引き続きこの作品も素晴らしい出来です。これほど高い音楽性を誇りながらなぜメジャーになれなかったのか?原因はいろいろとあると思いますが、大きな要因が流行の変遷。本作が発表された1960年は既にジャズの本流はハードバップからモードジャズに移りつつあり、さらにはフリージャズも市民権を得はじめていた頃。ゆえに何の変哲もないハードバップを演奏する彼らは時代遅れと見なされたのかもしれません。



メンバーは前作からドラムがロン・マッカーディからスリム・ジャクソンに交代し、他はカーティス・ペグラー(アルト)、ウィリアム・ケリー(ノーマフォン)、ビリー・ブラウン(ピアノ)、リー・タッカー(ベース)と同じメンバー。個々のプレイも素晴らしいですが、特筆すべきは楽曲のクオリティの高さ。全8曲中3曲がメンバーのオリジナルで、ペグラー作のファンキーなタイトルチューン“Right Down Front”を始め、同じくペグラー作で愛らしいメロディの“Ros-Al”、ケリー作の軽快なバップ“Kelley's Line”と粒揃い。他はカバー曲ですが、美しいバラード“Along Came Cheryl”、スインギーに料理された“Autumn Serenade”、ジーン・アモンズ作のブルース“The Happy Blues”などマイナーながらも味わい深い曲ばかり。一曲だけ有名スタンダード“My Funny Valentine”が含まれているがこれが一番凡庸な出来だったりするのが何とも皮肉ですが・・・
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ベニー・グリーン/ウォーキング・ダウン

2014-01-25 10:18:50 | ジャズ(ハードバップ)
本日はプレスティッジの再発シリーズからトロンボーン奏者ベニー・グリーンの作品をご紹介します。以前UPした「ベニー・グリーン・ウィズ・アート・ファーマー」と同じ1956年の録音。グリーン以外のメンバーはエリック・ディクソン(テナー)、ロイド・メイヤーズ(ピアノ)、ソニー・ウェルズリー(ベース)、ビル・イングリッシュ(ドラム)です。正直、黄金時代のプレスティッジにしては地味なメンバーだなというのが最初の感想でしたが、無名のメイヤーズのピアノも良いですし、何よりエリック・ディクソンのテナーが素晴らしいですね。ディクソンと言えば後年カウント・ベイシー・オーケストラに入団し、そこではサックスよりもむしろフルートを吹く印象が強いですが、本作でのソウルフルかつ骨太なプレーは時に主役のグリーンを凌ぐインパクトです。

 

全5曲ありますが、聴き所は最初の2曲でしょう。どちらも12分超の大作で、最初の“Walkin' Down”はマイルス・デイヴィスの演奏で有名なあの“Walkin'”を最初は急速調、ついで普段聴き慣れたミディアムテンポ、最後は超スローブルースで演奏するというユニークな企画。グリーン、ディクソン、メイヤーズがそれぞれのテンポでたっぷりとファンキーなアドリブを聴かせてくれます。普段は白人ジャズも好んで聴く私ですが、こういう黒人ならではの真っ黒なジャズを聴くとやはり魂が揺さぶられるものを感じますね。続く“The Things We Did Last Summer”は「過ぎし夏の思い出」の邦題でも知られるスタンダード曲。前半はムードたっぷりのバラード演奏ですが、後半にこれもテンポが変わってミディアムテンポのスウィンガーに、1曲で2度楽しめる趣向になっています。残りは自作曲の“East Of The Little Big Horn”、スタンダードの“It's You Or No One”“But Not For Me”でどれもミディアムテンポの軽快な演奏です。
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ジジ・グライス/セイイング・サムシン

2014-01-17 10:25:17 | ジャズ(ハードバップ)
ジジ・グライスはモダンジャズ界きってのインテリです。同時代のジャズメン達がクラブでのライヴやビッグバンドでの下積みを経たいわゆる“現場叩き上げ”なのに対し、ジジは名門ボストン音楽院で学士号を取得。その後はさらにフルブライト奨学金でパリに留学。作曲家のオネゲルらに師事し、交響曲や室内楽の作曲法を学んだとか。こんな経歴のジャズメンは他にいません。ただ、彼の不思議なところは、クラシック音楽の影響がその後の演奏からほとんど感じられないところ。50年代のジジはクリフォード・ブラウン、アート・ファーマー、ドナルド・バードら錚々たる面々と共演していますが、そこでの演奏は紛れもない純正ハードバップ。“Minority”“Nica's Tempo”等残された多くの自作曲もコテコテのバップチューンです。高度な音楽教育を受けながらもジジの心をとらえたのは結局バップだったということなのかもしれません。



本作「セイイング・サムシン」はそんなジジが1960年にプレスティッジ傍系のニュージャズに残した作品。参加メンバーはジジ(アルト)に加え、リチャード・ウィリアムズ(トランペット)、リチャード・ワイアンズ(ピアノ)、レジー・ワークマン(ベース)、ミッキー・ローカー(ドラム)。中でもウィリアムズはジジの片腕と言っても良い存在で、この頃の彼の作品には必ず顔を出しています。知名度は低いですが、高らかに鳴るトランペットの腕前は一級品です。

演奏はハードバップからさらにコテコテ度を増し、ブルースへの傾倒が感じられる内容となっています。全6曲、既知の曲が1つもないので、最初聴いた時はパッとしませんが、繰り返し聴くうちにそれなりに愛着が湧いてきます。中でもお薦めはドラマチックな“Blues In The Jungle”、ゴスペル調の“Down Home”あたりでしょうか。その後、ジジはニュージャズに2つ、マーキュリーに1作(以前に紹介した「レミニシン」)を残し、表舞台から忽然と姿を消します。その後の彼は子供たちへの音楽教育に力を注いでいたとか。若い頃に学んだ音楽理論はその時に役立ったのでしょうか?
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オリヴァー・ネルソン/テイキング・ケア・オヴ・ビジネス

2014-01-15 23:50:11 | ジャズ(ハードバップ)
本日はオリヴァー・ネルソンがプレスティッジの傍系レーベルであるニュージャズに残した「テイキング・ケア・オヴ・ビジネス」をご紹介します。ネルソンと言えば後年はもっぱらアレンジャーとして活躍し、スタンリー・タレンタイン「ジョイライド」、ソニー・ロリンズ「アルフィー」、リー・モーガン「デライトフリー」等多くの名作を手掛けていますが、サックス奏者としても一流でリーダー作も多く残しています。そのうち最も有名なのはエリック・ドルフィーやビル・エヴァンスの参加で名高いインパルス盤「ブルースの真実」でしょうが、本盤も知名度こそ低いものの内容はバラエティに富んだ隠れ名盤と言ってよい出来です。



録音は1960年。メンバーはレム・ウィンチェスター(ヴァイブ)、ジョニー・ハモンド・スミス(オルガン)、ジョージ・タッカー(ベース)、ロイ・ヘインズ(ドラム)から成る変則的クインテットです。オルガン入りと聞くとソウルジャズと言って敬遠する方もいるかもしれませんが、レム・ウィンチェスターのクールなヴァイブが加わることによって、ファンキー一辺倒とも違う独特のリラックスしたムードが漂っています。全6曲、うち4曲がネルソンの自作曲。3曲目の“In Time”だけは好みではないですが、後はどれも素晴らしいですね。特にコルトレーンに捧げたスローなブルース“Trane Whistle”、レムのヴァイブが大活躍する“Lou's Good Dues”は名曲・名演と言っていいでしょう。それ以外も、ラストの快調なハードバップ“Groove”、ロリンズのカバー“Doxy”、1分半にわたるアルト独奏が聴ける美しいバラード“All The Way”など出色の出来栄えです。ネルソンは曲によってテナーとアルトを使い分けますが、時にソウルフルに時にモーダルにそして時にメロウにと変幻自在のプレイを聴かせてくれます。テナーを脇に挟んでネルソンがにっこり笑うジャケットも素敵な一枚ですね。
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ボブ・ハーダウェイ/ルーズ・ブルー

2014-01-13 22:52:35 | ジャズ(ウェストコースト)
前回に引き続きベツレヘムのリイシューからウェストコーストの白人テナー奏者ボブ・ハーダウェイの作品をご紹介します。と言っても誰それ?と言うのがほとんどのジャズファンの反応でしょう。かく言う私も彼に関する予備知識はほぼゼロに等しかったです。リーダー作は1955年発表の本作のみ、サイドでの参加も数枚しかないというまさに幻のジャズメンです。でも、一度聴いてみればその腕前には感心させられるばかりです。意外と野太いトーン、滑らかなフレージング、次々と繰り出されるメロディアスなアドリブ。どれを取っても一級品で、同時期に西海岸で活躍したリッチー・カミューカやビル・パーキンスらと比べても全く遜色ないと言っていいでしょう。これほどの名手でありながら、なぜ録音に恵まれなかったのかはよくわかりません。ただ、当時の西海岸では映画やテレビなどのスタジオミュージシャンとしての仕事が豊富にあり、ハーダウェイももっぱらそっち方面で活躍していたそうです。テナー一本でアドリブを追求するより、安定した仕事を選んだというのが真相かもしれませんね。



全8曲。全てにマーティ・ペイチがピアノで参加しており、軽妙洒脱な演奏でリーダーを盛り立てます。さらに前半4曲ではラリー・バンカーがヴァイブで参加。マックス・ベネット(ベース)、アート・マーディガン(ドラム)を加えたクインテット編成です。後半4曲はバンカーが今度はドラムに回り、ベースのジョー・モンドラゴンとのカルテットです。8曲のうち6曲がスタンダードで、冒頭の“Irrestible You”はじめ明るくポジティブなウェストコーストサウンドが楽しめます。“Spring Is Here”“I Cover The Waterfront”などバラード演奏も悪くないですね。ただ、本作のハイライトはハーダウェイの自作曲でタイトルにもなっている“Lou's Blue”。疾走感あふれるハードドライヴィングなナンバーで、ハーダウェイ→バンカー→ペイチと軽快にソロが受け渡されていきます。3分半ほどの短さの中にウェストコーストジャズの魅力が詰まった隠れ名曲と言っていいでしょう。
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