ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

シェリー・マン/アット・ザ・ブラックホーク

2017-12-19 12:28:24 | ジャズ(ウェストコースト)
約3週間ぶりの更新です。しばらく間が空きましたが、決してジャズを聴いていなかったわけではなく、今日ご紹介するシェリー・マンのライヴ盤を聴きこむのに時間がかかったためです。モンクやマイルスのライヴ録音でも知られるサンフランシスコの名門クラブ、ブラックホークで1959年9月22日から24日の3日間にかけて収録されたこの作品。なんとCDにして5枚(!)というヴォリュームです。2枚組のライヴアルバムは珍しくありませんが、5枚組と言うのは聞いたことありませんね。別テイクや間奏を抜きにしても全19曲、4時間に迫ろうかと言う長さです。普通これだけ長いと聴く方もダレてきますが、本作に関してはそれもなくシェリー・マン率いるクインテットの充実した演奏が楽しめます。さすがに全てが名曲とまではいきませんが、Vol.1からVol.5まで満遍なく聴き所があり、飽きさせません。



さて、シェリー・マンと言えばスタン・リーヴィ、メル・ルイスと並んで西海岸を代表するドラマーで、50年代のウェストコースト・ジャズを語るには欠かせない人物です。アンドレ・プレヴィンのピアノをフィーチャーした「マイ・フェア・レディ」やバーニー・ケッセル、レイ・ブラウンと組んだ一連のポール・ウィナーズ名義の作品が代表作ですね。それらの作品はいかにもウェストコーストらしい明るく洗練されたものですが、本作の雰囲気は全然違います。メンバーを見るとジョー・ゴードン(トランペット)、リッチー・カミューカ(テナー)、ヴィクター・フェルドマン(ピアノ)、モンティ・バドウィグ(ベース)という面々で、ゴードン以外は全員西海岸で活躍していた白人ですが、ここで繰り広げられる演奏はまさにハードバップそのもの。選曲もタッド・ダメロン“Our Delight”、ベニー・ゴルソン“Step Lightly”“Whisper Not”、ホレス・シルヴァー“How Deep Are The Roots”、シブいところではローランド・アレクサンダーの“Cabu”と黒人ハードバッパー達の曲を取り上げています。“Poinciana”や“What's New”等の歌モノスタンダードもありますが、演奏はアグレッシブそのもの。もともと東海岸で活躍していたゴードンのブリリアントなトランペットもさすがですが、レスター派の歌心あるテナー奏者というイメージだったカミューカがブリブリと長尺のアドリブを繰り広げる様は圧巻です。

もちろん単にハードにプレイするだけではありません。スタンダードの“Just Squeeze Me”や“This Is Always”は正統派のバラード演奏ですし、マン自作の19分に及ぶ大曲“Black Hawk Blues”ではメンバー全員で腹にズシリと来るブルースを聴かせてくれます。その他ではヴィクター・フェルドマンがビル・エヴァンスばりのトリオ演奏を聴かせてくれる“Wonder Why”や、コール・ポーター作のスタンダードを軽快なミディアム・チューンに料理した“I Am In Love”も素晴らしい出来です。以上、選曲・演奏内容ともに文句のつけようのない傑作だと思います。
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