本作「バンピン」はその一連のイージー・リスニング路線の最初の作品で、1965年5月の録音。アレンジャーにはかつてメイナード・ファーガソン楽団でトロンボーン奏者としても活躍していたドン・セベスキーを起用しています。ボーナストラックを含めて全11曲。1曲だけコンボ編成の“Tear It Down”が収録されていますが、後は14人編成のストリングスが加わっています。タイトル曲のスローブルース“Bumpin'”やセべスキー作のな“Musty”等、いかにもウェスらしいファンキーな曲もありますが、ハイライトはやはりウィズ・ストリングスならではの甘いバラードでしょう。特に素晴らしいのが3曲目の“A Quiet Thing”。「フローラ、赤の脅威」という聞いたこともないミュージカルで主演のライザ・ミネリが歌っていた曲だそうですが、ウェスの美しいギターの音色とロマンチックなストリングスが合わさって極上のバラード演奏となっています。ウェスの自作バラード“Mi Cosa”やボサノバ風に料理された“Here's That Rainy Day”等も素晴らしい出来です。セべスキーとウェスの蜜月はその後も続き、前述の「カリフォルニア・ドリーミング」「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」、そして「ロード・ソング」と次々とヒット作を生み出していきます。個人的には王道ハードバップを愛好する私ですが、たまにはこういう作品もいいんでないの、と思わせてくれる充実の内容だと思います。
本作「バンピン」はその一連のイージー・リスニング路線の最初の作品で、1965年5月の録音。アレンジャーにはかつてメイナード・ファーガソン楽団でトロンボーン奏者としても活躍していたドン・セベスキーを起用しています。ボーナストラックを含めて全11曲。1曲だけコンボ編成の“Tear It Down”が収録されていますが、後は14人編成のストリングスが加わっています。タイトル曲のスローブルース“Bumpin'”やセべスキー作のな“Musty”等、いかにもウェスらしいファンキーな曲もありますが、ハイライトはやはりウィズ・ストリングスならではの甘いバラードでしょう。特に素晴らしいのが3曲目の“A Quiet Thing”。「フローラ、赤の脅威」という聞いたこともないミュージカルで主演のライザ・ミネリが歌っていた曲だそうですが、ウェスの美しいギターの音色とロマンチックなストリングスが合わさって極上のバラード演奏となっています。ウェスの自作バラード“Mi Cosa”やボサノバ風に料理された“Here's That Rainy Day”等も素晴らしい出来です。セべスキーとウェスの蜜月はその後も続き、前述の「カリフォルニア・ドリーミング」「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」、そして「ロード・ソング」と次々とヒット作を生み出していきます。個人的には王道ハードバップを愛好する私ですが、たまにはこういう作品もいいんでないの、と思わせてくれる充実の内容だと思います。
全10曲。全てアレンジャーであるニール・ヘフティが書き下ろした新曲です。へフティとベイシー楽団はルーレット時代の「アトミック・ベイシー」「ベイシー・プレイズ・ヘフティ」でもタグを組んでおり、本作が久々の共演です。62年という時代を反映してか、ポップなR&B風の“Ain't That Right”のような曲もありますが、基本はベイシー楽団の伝統である古き良きスイングスタイルを踏襲した曲作りです。中でもお薦めはベイシーの軽妙なイントロに導かれるようにバンド全体が強烈にスイングする“I'm Shoutin' Again”、サド・ジョーンズのトランペットを大きくフィーチャーしたドスの利いたブルース“The Long Night”、フランク・フォスターのファンキーなテナーとそれに続くホーンアンサンブルが見事な“Jump For Johnny”、へフティ作の名曲“Li'l Darlin'”を何となく思い起こさせる歌心あふれるバラード“Rose Bud”あたりですかね。ベイシー楽団の数多い作品の中では地味な1枚ですし、内容の方も特筆すべきほどではありませんが、名手達によるソロと一糸乱れぬアンサンブルはさすがの安定感を誇っています。と言うより、この頃のベイシー楽団にハズレなどほとんどありませんが・・・
前回はハーブ・ゲラーを取り上げましたが、今回は同じハーブでもポメロイの方です。と言っても一般のジャズファンからしたらゲラー以上に「誰それ?」かもしれませんね。ボストン出身の白人トランペッターで、同地のジャズシーンにおいては重鎮的存在だったようですが、いかんせんローカル的な存在で録音数も多いとは言えません。CDとして日本で出回っているのは、同じくボストン出身のバリトン奏者サージ・チャロフと共演した「ボストン・ブロウ・アップ」ぐらいですかね。後はジョン・ルイスのビッグバンド作品やアニタ・オデイやアイリーン・クラールの歌伴で名前を見るくらいです。そんな通好みのジャズマンの作品ですが、例のJAZZ MASTERS COLLECTIONシリーズでこのたび発売となりました。1957年吹き込みのルーレット盤で、タイトルは1955年公開の映画「慕情(Love Is A Many-Splendored Thing)」をパロったものと思われます。総勢17名から成るビッグバンド作品で、ゲストでテナーのズート・シムズが参加している以外は全員が地元ボストンのミュージシャンばかりと思われます。ほとんどが無名ですが、トランペットのジョー・ゴードン、アルトのブーツ・ムッスリ、ピアノではなくテナーで参加しているジャッキー・バイアード、後にスタン・ゲッツとも共演するベースのジョン・ネヴェスあたりは名前が知られているかもしれません。なお、本作には参加していませんが、チャーリー・マリアーノもボストン出身で後にポメロイ楽団に在籍しています。
曲は全11曲。タッド・ダメロンの“Our Delight”やベイシー楽団の“Feather Merchant”“It's Sandman”等のカバーもありますが、基本的にはメンバーのオリジナル曲が中心です。全てが名曲と言うわけでもありませんが、重厚なトロンボーンアンサンブルで始まる1曲目“Blue Grass”、ムッスリ作の急速調ナンバー“Jack Sprat”、ジャッキー・バイアードが書いた幻想的なバラード“Aluminium Baby”、ポメロイ作のパワフルな“No One Will Room With Me”等が聴きモノです。演奏の方はさすがにベイシー楽団やエリントン楽団と比べるとアンサンブルがこなれておらず、勢い任せの面は否めませんが、それでもエネルギッシュなビッグバンドサウンドは一聴の価値があります。ソロ奏者としては既に挙げたズート・シムズやジョー・ゴードン、ブーツ・ムッスリあたりが見事なプレイを繰り広げる一方で、それ以外のレニー・ジョンソン(トランペット)、ヴァーティ・ハルチュニアン(テナー)、ディーン・ハスキンズ(バリトン)、ジーン・ディスタシオ(トロンボーン)、レイ・サンティシ(ピアノ)等の無名ミュージシャン達も活きのいいソロを聴かせてくれます。なお、リーダーであるポメロイ自身は“Theme For Terry”で短いソロを取りますが、他はアンサンブル要員でもっぱらバンドリーダーに徹しています。ジャズ史で取り上げられることはほとんどありませんが、50年代のボストンのジャズ・シーンの熱気を伝える掘り出し物の1枚と思います。
本日はJAZZ MASTERS COLLECTIONシリーズからハーブ・ゲラーの作品をご紹介します。ゲラーと言えば50年代の西海岸を中心に活躍した白人アルト奏者ですが、一般的なジャズファンの認知度はいかほどでしょうか?同時期に活躍したアート・ペッパーやバド・シャンクに比べればワンランク低いのが実情かもしれませんね。ただ、実力は決して彼らに劣りませんよ。スタイル的にはチャーリー・パーカーの影響を強く受けており、当時流行のウェストコーストジャズよりもだいぶハードバップ寄りなのが特徴です。アルバムとしては奥方であるピアニストのロレイン・ゲラーと共演したエマーシー盤「ゲラーズ」、ケニー・ドーハムやハロルド・ランドと共演したハードバップ色の濃い「ファイアー・イン・ザ・ウェスト」が知られていますが、ジュビリー・レコードに1957年に吹き込んだ本作も知られざる傑作です。クインテット編成でメンバーはゲラーのほかに、ヴィクター・フェルドマン(ヴァイブ)、ウォルター・ノリス(ピアノ)、リロイ・ヴィネガー(ベース)、トニー・ベイズリー(ドラム)という顔ぶれです。後にピアニストとしても活躍するフェルドマンは同年にイギリスから移住してきたばかりで、本作ではヴァイブに専念しています。また、ノリスもフリー・ジャズの旗手オーネット・コールマンと共演したりしていますが、ここではもちろん正統派のプレイに徹しています。
全5曲。レコードで言うA面3曲がゲラーの自作曲で、B面2曲がスタンダード曲という構成です。1曲目は“Nightmare Alley”というユニークなタイトルの曲。哀調あふれるマイナーキーのメロディの曲で最初はスローテンポ、途中から倍速となり、ゲラーをはじめメンバーの熱いソロが繰り広げられます。2曲目の“A Cool Day”はいかにもウェストコーストらしい爽やかなミディアムテンポの曲で、ノリス→ゲラー→フェルドマンの順で軽快にソロを取って行きます。3曲目“The Princess”もシャープなウェストコーストジャズという感じ。4曲目“Change Partners”はフレッド・アステアがヒットさせたというスタンダード曲。モダンジャズでの演奏は珍しいですが、なかなか魅力的なメロディを持つ名曲です。原曲はロマンチックなバラードですが、ここではアップテンポで演奏されており、ドライヴ感満点の名演となっております。ラストを飾る“It Might As Well Be Spring”は言わずとしれたリチャード・ロジャースの名曲。ノリス→フェルドマンの端正なソロに続くゲラーの歌心あふれるアルトが胸に沁みます。4本のサックスの前で金髪美女が奇妙なポーズを取るジャケットのセンスはいただけませんが、サヴォイと並ぶ珍ジャケの宝庫であるジュビリーならではのご愛敬です。内容的にはウェストコーストの隠れ名盤と言ってよいでしょう。
アルバムはまず、スタンダードの“On Green Dolphin Street”で幕を開けます。マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスの演奏が有名ですが、本作もミルトの涼しげなヴァイブが印象的ななかなかの好演だと思います。続くミルト自作の哀愁漂うバラード“Heatstrings”を経て、3曲目はナット・アダレイ作の必殺ファンキー・チューン“Work Song”。これがまた会心の出来で、アダレイ兄弟の本家バージョンに負けない出来だと思います。ミルトのファンキーなマレットさばきに触発されたピーターソンの“真っ黒”なピアノに注目です。4曲目の“John Brown's Body”は19世紀に作られたトラディショナル・ナンバーだそうですが、日本では♪ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた~、の替え歌で有名ですね。もちろんここでは2人の手によりブルースフィーリングたっぷりに演奏されており、童謡の面影はありません。5曲目の“A Wonderful Guy”はミュージカル「南太平洋」の曲らしいですが、ピーターソンのカクテル調のピアノとミルトの涼しげなヴァイブが融合した心地よいミディアムチューンです。ラストはミルト自作の“Reunion Blues”で締めくくり。これも“Work Song”に負けず劣らずのファンキー・チューンで、2人がノリノリのソロを繰り広げます。以上、全6曲どれも聴き応えのある内容で、さすがはビッグネーム同志の共演に恥じない出来と思います。