ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

サン=サーンス/交響曲第3番

2014-08-23 18:02:24 | クラシック(交響曲)
お盆休み等も挟み、久々の更新となりました。本日はフランスの作曲家、カミーユ・サン=サーンスの代表作である交響曲第3番を取り上げます。サン=サーンスと言えば19世紀後半に活躍したロマン派の巨匠ですが、同時代のブラームスやチャイコフスキー、ドヴォルザークなどと比べると地味な印象は拭えません。フランスの作曲家と言うくくりで言っても、彼の一つ下の世代のドビュッシーやラヴェルの方がネームバリューがあるのでつい過小評価されがちです。ただ、彼の作品はヴァイオリン協奏曲と言い、チェロ協奏曲と言い、本当にメロディが豊かで親しみやすいものが多いですね。この交響曲第3番にしても全編魅力的な旋律に溢れた文句なしの名曲と思います。

曲は2楽章で構成されていますが、実際はそれぞれに1部と2部があり、聴いた感じではオーソドックスな4楽章形式と代わりありません。第1楽章はざわめくような不安げな旋律で始まり、そこから優美なポコ・アダージョの第2部に移ります。第2楽章は再び重苦しい第1部で幕を開け、続いてパイプオルガンによる荘厳な響きとともにクライマックスの第2部を迎えます。この部分があまりにも印象的なため、実際にオルガンが使われるのはごく一部にもかかわらず、交響曲全体が「オルガン」の愛称で親しまれるようになりました。ただ、聴いていただければわかるように他の部分も合わせて、トータルで高い評価を与えるべき作品と思います。



CDはエマニュエル・クリヴィヌ指揮国立リヨン管弦楽団のものを買いました。数あるディスクの中から本盤を選んだ理由は、サン=サーンスの交響詩が3曲収録されていることです。そのうち「死の舞踏」は他にもたくさんのCDが出回っていますが、「オンファールの糸車」と「ファエトン」は収録CDも少ないので貴重です。「オンファール」「ファエトン」ともにギリシャ神話から題材をとったらしいですが、話の内容は割愛します。「オンファール」は冒頭の愛らしげな糸車の主題が印象的。「ファエトン」は運動会の行進曲にも使えそうな勇壮なメロディです。「死の舞踏」は題名だけ見るとおどろおどろおしいですが、実際はユーモラスささえ漂うキャッチーなメロディで、独奏ヴァイオリンも大活躍します。サン=サーンス入門には最適な1枚としてお薦めします。
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チャイコフスキー/交響曲第6番

2014-08-10 12:24:24 | クラシック(交響曲)
ブルーノートお蔵入りシリーズも一通り聴きましたので、しばらくはクラシックのCDを取り上げていきたいと思います。今日ご紹介するのはチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」です。実はこの作品、私がまだクラシック初心者だった大学生の頃にカラヤン指揮ベルリン・フィル盤を買ったのですが、その時にはあまり魅力がわからず、いつの間にやら中古CDに売り払っておりました。当ブログでも過去に第4番第5番を取り上げていますが、その際に第6番「悲愴」は暗くてイマイチみたいなことを調子に乗って書いております。すいません、前言撤回します。「悲愴」は普通にいい作品です。20歳の若僧には理解できなかっただけのことなんですよね。



この曲はチャイコフスキーが1893年に53歳で死ぬ直前に書かれたものです。「悲愴(Pathetique)」というタイトルもあって何か不吉なものを感じさせますが、彼の死因はコレラによる急死であり、別にチャイコフスキー自身が遺作と意識して書いたわけではないようですね。ただ、悲愴な雰囲気はそこここに漂っております。特に第4楽章。交響曲の終楽章と言えば、通常はフルオーケストラで華々しくジャジャーン♪と終わるのですが、この曲は終楽章が最も悲しげな旋律でしかも消え入るようにエンディングを迎えるという異色の展開。これ、きっと最初に聴いた観客は「え?終わり?ウソ?」と戸惑ったでしょうなあ。むしろこの曲のハイライトは第1楽章にあり、とりわけ甘美な第2主題は後に「星降る夜の物語」というタイトルでグレン・ミラーがヒットさせるなどしたため非常に有名です。チャイコフスキーならではのベタな旋律ですが、やはり抗いがたい魅力があります。ロシア民謡を思わせる爽やかなワルツの第2楽章、勇壮な行進曲風の第3楽章も悪くないです。

CDは朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団のものを買いました。朝比奈さんは言うまでもなく日本を代表する名指揮者で、2001年に亡くなられるまで大阪フィルを指揮しておられたようですが、残念ながら私は生前にライヴを聴くことは一度もありませんでした。ブルックナーの大家として世界的に有名ですが、チャイコフスキーやリムスキー=コルサコフなどロシア物も得意だったようですね。1982年、フェスティバルホールのライブ録音で、曲の終りの「ブラボー!」という歓声に思わずこちらも唱和してしまう名演です。
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スタンリー・タレンタイン/Z.T.’sブルース

2014-08-03 18:08:44 | ジャズ(ハードバップ)
ここ1カ月ほどブルーノートのお蔵入りコレクションをご紹介してきましたが、もちろん全てが名盤という訳ではありません。グラント・グリーンの初期作品やジャッキー・マクリーン、ソニー・クラーク、アート・ブレイキーのアルバムも買いましたが、やはりどこか物足りない出来で、お蔵入りも納得という内容でした。そりゃそうですよね。もともとレコード会社側に何か不満があって発売されてないわけですから。でも、今日も取り上げるスタンリー・タレンタインの作品に関してはハズレなしですね。「ジュビリー・シャウト」「カミン・ユア・ウェイ」も良かったですが、この「Z.T.’sブルース」も充実の出来。60年代前半(本作録音は1961年9月)のタレンタインは本当に手のつけられないぐらい絶好調だったんでしょうね。



ただ、この作品ですが同時期のタレンタイン作品とは毛色が違います。まず、サポートメンバーがホレス・パーラン・トリオではなく、グラント・グリーン(ギター)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)という顔ぶれと言うこと。特にブルーノートにはあまり客演しないフラナガンの名前が目を引きますね。個人的にはウィントン・ケリーと並んでハードバップ・ピアニストの最高峰と目しているフラナガンの参加は嬉しい限りです。ソウルフルなプレイが持ち味のグラント・グリーンも意外と端正なプレイで演奏を盛り立てます。もう一つの特長が本作がスタンダード中心の選曲だということ。全7曲中オリジナルはタイトル曲の“Z.T.'s Blues”だけで、後は全て有名なスタンダード曲。こういう構成は耳馴染みがいい反面、よほど演奏がしっかりしてないと没個性に陥ってしまうんですが、タレンタインの絶好調のアドリブとフラナガンを中心としたリズムセクションの的確なサポートでどの曲も水準以上の出来栄えに仕上がっています。ダンディズム薫るバラード“More Than You Know”“For Heaven's Sake”、アップテンポで演奏するドライブ感溢れる“The Way You Look Tonight”“Be My Love”、ミディアムテンポに料理した“I Wish I Knew”、そしてラヴェルのクラシック曲「亡き王女のためのパバーヌ」をお洒落なジャズにアレンジした“The Lamp Is Low”。どれも原曲のメロディを損なわず、それでいてジャズのグルーブ感も十二分に伝わってくるという理想的なスタンダード集となっています。タレンタインの間口の広さを実感させられる1枚ですね。
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リー・モーガン/ザ・ラジャー

2014-08-02 11:13:03 | ジャズ(モード~新主流派)
本日はリー・モーガンです。意外なことですが、本ブログで彼のアルバムを取り上げるのは初ですね。私のフェイバリット・ジャズメンの一人なのですが、言われてみれば2年前にブログを始めてから新譜を買ったことはないかもしれません。モーガンは1956年に18歳の天才トランペッターとして颯爽とデビュー。以来、激動のジャズシーンを全速力で駆け抜けました。1972年、享年33にして浮気相手にピストルで射殺されるという悲劇的な最期もジャズファンの語り草となっています。音楽スタイル的には50年代はバリバリのハードバップでしたが、60年代に入ると8ビートを取り入れたいわゆる“ジャズ・ロック”で一世を風靡し、一方でモード/新主流派の面々とも共演するなどうまく時代の流れに乗っています。1966年録音の本作「ザ・ラジャー」では当時流行のボサノバやポップヒットのカバーなど、さらに柔軟な姿勢を打ち出していますが、残念ながらお蔵入りとなってしまいました。やや商業主義的過ぎたとの判断でしょうか?



一応サポートメンバーはハンク・モブレー(テナー)、シダー・ウォルトン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ビリー・ヒギンス(ドラム)という面々ですが、確かに50年代のような熱血ハードバップを期待して聴くと、特に演奏面では軟弱に聞こえてしまうのは否めません。ただ、本作は楽曲の魅力でそれを補っています。1曲目カル・マッセイの“A Pilgrim's Funny Farm”は「巡礼者のおかしな農園」というユニークなタイトルが付いた曲。どことなく間の抜けた、それでいて愛らしいメロディが印象的です。2曲目“The Rajah”はモーガン自作のジャズ・ロックですが、正直これはイマイチかな?3曲目“Is That So”もまあまあ。お薦めは後半の3曲です。4曲目“Davisamba”はピアニストのウォルター・デイヴィスが作ったとか言うボサノバ曲ですが、これがなかなかの名曲。モーガンのソロも好調です。続く“What Now My Love”はソニー&シェールのヒット曲ですが、ここではバラードで料理されています。モーガンのバラードプレイの見事さはあらためて言うまでもないでしょう。ウォルトンのピアノソロも美しいです。ラストの“Once In A Lifetime”はあまり聴いたことないミュージカル曲ですが、これもモーダルなアレンジが施された名曲に仕上がっています。いかにも間に合わせで作りました的なジャケットから特に期待せずに買いましたが、意外と拾いモノの佳作でした。
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