ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

シャーリー・スコット/クイーン・オヴ・ジ・オルガン

2021-02-18 17:00:55 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日は女流オルガン奏者シャーリー・スコットのインパルス盤をご紹介します。本ブログでも夫であるスタンリー・タレンタインのページ(「ディアリー・ビラヴド」「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」)で取り上げましたね。1950年代後半から名門プレスティッジに多くの録音を残し、リーダー作だけでも20枚を超える売れっ子でした。オルガン奏者としては性別の括りを超えてジミー・スミスに次ぐ人気だったと言っても過言ではないでしょう。デビュー当初はエディ・ロックジョー・デイヴィスと共演することが多かったですが、1960年にタレンタインと結婚してからは夫婦で多くの共演作を残しています。契約の関係もありブルーノートから発売されるものはタレンタイン名義、プレスティッジとインパルスから発売されるものはスコット名義ですが実質は2人の共同リーダー作と言って差し支えないと思います。本作は1964年12月にニュージャージー州にあるクラブで録音されたライブ盤です。メンバーはスコット(オルガン)、タレンタイン(テナー)、ボブ・クランショー(ベース)、オーティス・フィンチ(ドラム)です。

曲は全5曲。ただし、最後の”The Theme”は1分だけのエピローグのようなもので実質は4曲です。1曲目はスタンダード”Just In Time”でのっけからタレンタインのテナーが絶好調です。ライブと言うこともあってかいつも以上にブリブリ吹きまくっているのですが、決して野暮ったくはならずメロディのツボはしっかり押さえています。スコットのオルガンソロも充実しているのですが、どちらかと言うとアルバム全体を通じてタレンタインの目立ち度の方が高い気がしますね。2曲目はエリントン・ナンバーの”Just Squeeze Me”でこちらは落ち着いたバラード演奏で、出来はまずまずと言ったところ。3曲目の”Rapid Shave”は他では聞いたことがない曲ですがおそらくはR&Bナンバーでしょう。これぞソウルジャズと言ったノリノリのナンバーです。4曲目”That's For Me”はロジャース&ハマースタインのミュージカル曲。どちらかと言うとマイナーな曲ですが、ここではミディアムテンポで料理されています。タレンタインの歌心あふれるマイルドなテナーとスコットのオルガンが醸し出す快適なグルーブ感が最高です。以上、スコットのリーダー作ではありますが、タレンタインのファンも必聴の1枚です。

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秋吉敏子&チャーリー・マリアーノ/トシコ=マリアーノ・カルテット

2021-02-10 18:42:34 | ジャズ(モード~新主流派)

私がジャズを本格的に聴き始めた1990年代半ば頃、ちょうど日本人ピアニストの大西順子が注目されていました。当時の宣伝文句が「日本人として初めて名門ブルーノートと契約!」とか言うものでした。その後2000年代に入ると山中千尋が登場し、こちらも名門ヴァーヴ・レコードと契約し、話題になりました。他にもアキコ・グレース、上原ひろみ等世界を股にかけて活躍する日本人女性ピアニストは今では珍しくありません。(個人的体験でいくと、山中千尋とアキコ・グレースの演奏はライブで聞いたことがあります。)ただ、そんな彼女達の大・大先輩と呼べるのが今日ご紹介する秋吉敏子です。1929年満州生まれで、戦後に日本に引き揚げてから演奏活動を開始。1953年に当時来日していたオスカー・ピーターソンに才能を見出され、翌年にノーグラン(後のヴァーヴ)から「トシコズ・ピアノ」を発表。リズムセクションがハーブ・エリス、レイ・ブラウン、J・C・ハードという凄いメンツです。当時はまだ日本が戦争で焼け野原になって10年も経っていない時代。経済面でも文化面でも日米の差が歴然としていた時代ですから、彼女の本場アメリカでの成功はまさに快挙でした。その後もアメリカに渡ってコンスタントに演奏活動を行い、1959年に白人アルト奏者のチャーリー・マリアーノと結婚。残念ながら67年に離婚してしまいますが、今度はテナー奏者のルー・タバキンと再婚。トシコ=タバキン・ビッグバンドを結成し、「孤軍」をはじめ多くの作品を残します。その功績を鑑みると、現代に至るまで国際的に最も成功した日本人ジャズ奏者と言ってよいのではないでしょうか?

今日ご紹介するのは秋吉が当時の夫チャーリー・マリアーノと組んで1960年にキャンディド・レーベルに吹き込んだ1枚です。2人が見つめあうジャケットからも当時はラブラブだったんだろうな~というのが想像できます。なお、2人以外のメンバーはジーン・チェリコ(ベース)とエディ・マーシャル(ドラム)です。マリアーノはボストン出身ですが、50年代半ばは西海岸で活躍。ベツレヘムを中心に多くの吹き込みを残しています。そこでの演奏はチャーリー・パーカーの影響を強く受けたと思しき正統派ビバップですが、ここでは60年と言う時代的背景もあってかモードジャズ風の演奏です。もう少し後になるとフリージャズにはまったり、インド音楽を取り入れるなどかなりアバンギャルドな活動をするマリアーノですが、この頃の演奏は普通に聴けます。秋吉のピアノはそこまで激しく自己主張するわけでもなく、どちらかと言うと夫のマリアーノの方が前に出ている感じですが、バッキングにソロにしっかり演奏をまとめています。1曲目の"When You Meet Her"と2曲目”Little T”はどちらもマリアーノの自作曲で、前者はなかなかアグレッシブな演奏で。後者は13分近い長尺でやや思索的な感じのするモーダルな曲です。4曲目の”Deep River”は有名な黒人霊歌をマリアーノが朗々と歌い上げます。3曲目の”Toshiko's Elegy”と5曲目の"Long Yellow Road"は秋吉の自作曲で、どちらも後年にトシコ=タバキン・ビッグバンドで演奏されています。ビッグバンド版の方が有名ですが、コンボ版もなかなか出色の出来です。

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