ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

スタン・ゲッツ・アット・ラージ

2017-05-02 12:56:24 | ジャズ(クールジャズ)

前回に引き続きスタン・ゲッツを取り上げたいと思います。今年はゲッツの生誕90年とかでヴァーヴから旧作が大量にリリースされています。既に所有している作品も多いのですが、先週の「ノーバディ・エルス・バット・ミー」や本作などこれまで再発売の機会があまりなかった作品も含まれていて、ゲッツのファンとしては嬉しい限りです。本作は1960年1月に北欧のコペンハーゲンで録音されたもの。ゲッツの北欧移住に関しては以前に「インポーテッド・フロム・ヨーロッパ」でも述べましたが、本国アメリカで麻薬絡みで逮捕されたこと、当時の妻モニカがスウェーデン人だったことも相まって1958年から1960年まで2年間の逃避生活を送っており、本作もその期間中に録音されたものだそうです。したがって、ゲッツ以外のメンバーはすべて現地のミュージシャンで、ピアノがヤン・ヨハンソン、ベースがダニエル・ジョーダン、ドラムがウィリアム・ショッフェという布陣です。



曲は全14曲、CD2枚組というボリュームです。割合的にはスタンダードが半分、自作または他のジャズメンが書いたオリジナル曲が半分という割合です。14曲全てを紹介するのは大変なので、お薦めだけを列挙することにします。まず、CD1枚目の2曲目“Pammie's Tune”は娘のパメラに捧げた自作曲で快適なミディアム・チューン。3曲目“Amour”もゲッツ自作で、穏やかなバラード演奏。4曲目“I Like To Recognize The Tune”はロジャース&ハート作のスタンダードで、珍しくゲッツのボーカルが入っています。(と言っても曲の出だしと後半に♪I Like To Recognize The Tune~と口ずさむだけなのですが・・・)。残念ながら声はダミ声で音程も外れており、歌唱センスのないことが一発でわかりますが、その後に続くメロディアスなアドリブは素晴らしいの一言。ゲッツにとっての“歌”はあくまで声ではなく、テナーで表現するものだったと言うことですね。7曲目“The Folks That Live On The Hill”はジェローム・カーン作のスタンダードだそうですが、他であまり聞いたことがありません。こちらも美しいバラードで、まろやかなテナーの音色に魅了されます。

続いてCD2枚目。1曲目は自作曲の“Cafe Montmartre Blues”。カフェ・モンマルトルとはコペンハーゲンにあった有名なジャズクラブで、ゲッツもたびたび演奏していたようです。曲自体はレイジーなテンポのブルースで、ゲッツの野太いテナー・プレイが聴けます。2曲目“He Was Too Good To Me”はこれもロジャース&ハート作の知られざる名バラードです。3曲目“Younger Than Springtime”は大ヒットしたミュージカル「南太平洋」からの1曲でミディアムテンポの快適なナンバー。ゲッツの歌うようなテナーが絶品です。5曲目“Land's End”はブラウン&ローチ・クインテットに在籍していたハロルド・ランドの曲で、かの名盤「スタディ・イン・ブラウン」にも収録されていた曲です。クール派の代表格とされるゲッツにしては意外な選曲ですが、プレイの方はなかなか力強いもので、ゲッツの間口の広さが感じられる1曲です。6曲目も他のジャズメンのカバーで、こちらはデイヴ・ブルーベック作の“In Your Own Sweet Way”。マイルス・デイヴィスやウェス・モンゴメリーの演奏で知られていますが、ゲッツの演奏もそれらに遜色ない出来栄えです。以上、2枚組というボリュームですが、各曲のクオリティも高く決してダレることの内容です。演奏面ではほぼゲッツの独壇場と言って良いですが、ピアノのヤン・ヨハンソンもキラリと光るソロを随所に見せてくれます。

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