本日はカウント・ベイシーのルーレット・レーベルの再発コレクションからの1枚です。ルーレット時代のベイシー楽団と言えば「アトミック・ベイシー」「チェアマン・オヴ・ザ・ボード」等の名盤が有名ですが、今日ご紹介するのはビッグバンド作品ではなく、当時バンドの花形ソリストだったエディ・ロックジョー・デイヴィスのテナーを大々的にフィーチャーしたコンボ作品です。ロックジョーはR&Bの流れを組むソウル・ジャズ界の大物として名門プレスティッジに20枚近くのリーダー作を残していますが、なぜか日本では彼の作品は全くと言っていいほど無視され、CDでお目にかかる機会はまずありません。どうやら彼のようにブリブリ吹き鳴らすテナーは“ホンカー”と呼ばれ、ジャズを芸術と崇める評論家からは大衆音楽として切って捨てられたようです。ただ、本場アメリカでのステイタスが高かったということは、御大ベイシーが全面的にバックアップした本作からもわかります。ベイシー楽団には他にもフランク・フォスター、フランク・ウェス、エリック・ディクソンら名だたるテナー奏者がいましたが、ここまで大きくフィーチャーされたのはロックジョーだけですからね。
メンバーは計6人。ベイシー楽団の3人、つまりカウント・ベイシー(ピアノ)、ジョー・ニューマン(トランペット)、ブッチ・バラード(ドラム)とエディ・デイヴィス・トリオ、つまりロックジョー(テナー)、シャーリー・スコット(オルガン)、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)の3人の組み合わせです。名義上のリーダーであるベイシーがソロを取る場面は少なく、代わりに女流オルガン奏者として売り出し中だったスコットがソロにバッキングに大活躍し、濃厚なソウル・ジャズの雰囲気を醸し出しています。曲はスタンダードが6曲とロックジョーのオリジナルが4曲。オリジナルはどれもR&B色の強いコテコテの曲ばかりで、特にスコット→ベイシー→ニューマン→ロックジョーが次々と卓越したソロを取るブルース“A Misty One”が秀逸です。スタンダードは“Broadway”“Marie”等アップテンポのナンバーではロックジョーがホンカーの本領を発揮してワイルドにブロウしまくりますが、スローナンバーの“Don't Blame Me”“Save Your Love For Me”では一転してダンディズムあふれるバラード・プレイを聴かせてくれます。個人的にはバラードの方により魅力を感じますね。日本では不当に過小評価されたロックジョーですが、その実力を知る上でも聴いて損はない1枚です。なお、録音年月は1957年12月です。
本日も「ジャズ・コレクション1000」シリーズからつい先日発売されたジジ・グライス&ドナルド・バードの“ジャズ・ラブ”の作品をご紹介します。ジャズ・ラブについては以前本ブログでもコロンビア盤をUPしましたが、ジジとバードによる双頭コンボです。活動期間は1957年の1年のみですが、その間に様々なレーベルに計6枚のアルバムを残しました。本盤はRCAに吹き込まれた1枚で、録音当時はお蔵入りになったものの1970年代になってレコード化された作品だそうです。メンバーはジジ(アルト)とバード(トランペット)のリーダー2人に加え、ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)といずれもハードバップ・シーンを代表する名手ばかりが名を連ねています。
曲は全6曲。3曲目のレイ・ブライアント作“Splittin'”を除いて全てメンバーのオリジナル曲が占めています。以前のエントリーでも述べたようにジャズ・ラブのラブはLoveではなく実験室のLabのことですが、音楽そのものには実験的要素は全くなく、むしろ直球ど真ん中のハードバップ・チューンばかりです。1曲目のジジ作“Exhibit A”はブラウン=ローチ・クインテットの“Parisian Thoroughfare”を彷彿とさせるような明るくエネルギッシュなナンバー。2曲目の“Capri”もジジ作で、アート・ファーマーとの「ホエン・ファーマー・メット・グライス」でも演奏されたジジの代表曲です。個人的にはバードの切れ味鋭いラッパが聴ける本作の方が高評価ですね。4曲目“Byrd In Hand”はバードが書いたミディアム・チューンで、やや哀調を帯びたメロディが印象的な隠れ名曲です。5曲目“Passade”“Ergo The Blues”はハンク・ジョーンズのオリジナルで、特にファンキーな後者が素晴らしいです。以上、曲良し演奏良しと文句なしの1枚ですが、長らくCD化されずに幻の名盤と化していただけに、今回の再発は嬉しい限りですね。
ここ1年あまりクラシック、特に声楽曲の奥深い世界にどっぷりはまり込んでいましたが、CD収集も一段落したので本業(?)のモダンジャズ名盤探しに戻りたいと思います。今日は先日発売された「ジャズ・コレクション1000」シリーズからデイヴ・ベイリーのエピック盤「ワン・フット・イン・ザ・ガター」を取り上げます。デイヴ・ベイリーと言えば、ドラマーとしてジェリー・マリガンのバンドに長く在籍し、他にもルー・ドナルドソンの「ブルース・ウォーク」やアート・ファーマーの「モダン・アート」等にも顔を出しています。自身名義ではジャズラインというマイナー・レーベルに残した「バッシュ!」が隠れ名盤として有名ですね。私も所有していますが、ケニー・ドーハム、カーティス・フラー、トミー・フラナガンら一流ジャズメンの共演もあり、なかなかクオリティの高い作品です。本作はその「バッシュ!」の前年の1960年に録音されたセッションですが、こちらも通好みのメンツが脇を固めています。トロンボーンのフラーは「バッシュ!」と同じですが、トランペットがエリントン楽団でも活躍したベテランのクラーク・テリー、テナーがホレス・シルヴァー・クインテットのジュニア・クック、ピアノが「アス・スリー」で当時ブルーノートから売り出し中だったホレス・パーラン、ベースがペック・モリソンという布陣です。
曲はCDにはボーナストラックで"Brownie Speaks"が入っていますが、もともとのレコードには3曲のみ。ただし、どれも10分を超える長尺の演奏で、各人のソロがたっぷり収められています。とは言え、リーダーである肝心のベイリーのドラム・ソロはなく、ひたすら裏方に徹しているのが面白いですが・・・1曲目はタイトルチューンでもある"One Foot In The Gutter"。テリーのオリジナルとのことですが、どこかで聞いたことのあるようなスローテンポのブルースです。2曲目はセロニアス・モンクの"Well, You Needn't"。マイルス・デイヴィスも好んで取り上げたナンバーですが、切れ味鋭いマイルスの演奏に加えて、こちらはミディアム・テンポの快適なハードバップです。3曲目はクリフォード・ブラウンの"Sandu"。本家はかの名盤「スタディ・イン・ブラウン」に収録されていた5分弱の曲ですが、本セッションでは20分にもわたってメンバー達が延々とソロを繰り広げます。特に冒頭のテーマ演奏のあと5分以上も続くカーティス・フラーのトロンボーン・ソロが圧巻です。スタジオの中にオーディエンスを入れて録音されたらしく、随所で拍手が入っているのもご愛敬。終始リラックスした雰囲気の中で行われたご機嫌なジャム・セッションの記録です。ベイリーは他にもエピックに2枚のアルバムを残しており、今回再発されたのでまたそれらも聴いてみたいと思います。
「V字」「オックスフォード」ともに曲の構成はほぼ一緒で、第1楽章は優美なアダージョから始まり、続いていかにもハイドンらしい華麗な旋律が次々と現れます。第2楽章は穏やかで夢見るような美しい旋律ですが、「V字」の方は途中で何度か短調のドラマチックな変奏が挟まれるのが印象的。第3楽章はどちらも箸休め的なメヌエット。第4楽章はエネルギッシュなフィナーレで、こちらは「オックスフォード」の方がより急速調で旋律も魅力的です。CDはレナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のものを買いました。もちろん古楽器ではなく現代楽器による演奏です。2曲とも25分前後の小品で、一聴した限りでは軽い印象を受けますが、聴き込むと意外と味わい深い作品です。