ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ライネッケ、ブゾーニ&ニールセン/フルート協奏曲

2019-05-16 22:25:58 | クラシック(協奏曲)
今回は少しマイナーなフルート協奏曲の作品集です。フルート協奏曲はバロックから古典派の時代にかけては人気のジャンルで、特にヴィヴァルディやモーツァルトの作品群が有名ですが、19世紀のロマン派の時代になるとほとんど作曲されなくなりました。その中で貴重な存在がカール・ライネッケの作品です。ライネッケは19世紀の後半に活躍したドイツの作曲家で、生前は3曲の交響曲、4曲のピアノ協奏曲、その他にオペラ等も残したようですが、今でも演奏されるのはこのフルート協奏曲ぐらいです。本作はライネッケの最晩年、84歳の時に書かれたもので、作曲年は1908年と20世紀に入ってますが、内容的には完全にロマン派です。特に聴きどころが第1楽章で、思わず口ずさんでしまうような歌心あふれる旋律で、美しいフルートの音色が胸に染み渡ります。哀調を帯びた緩徐楽章の第2楽章、快活なフィナーレの第3楽章もなかなかの出来です。全体で21分ほどとコンパクトで聴きやすいのも良いですね。



CDはあまり種類も多くなく、私が購入したのはソリストがオーレル・ニコレというフランスのフルート奏者、クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のものです。本作にはライネッケの他にイタリアの作曲家フェルッチョ・ブゾーニの「フルートと管弦楽のためのディヴェルティメント」とデンマークの作曲家ニールセンのフルート協奏曲が収録されています。前者のブゾーニについては、これまで名前は聞いたことありますが、実際に作品を耳にするのは初めてです。作曲は1920年と現代の作品ですが、モーツァルトの時代を思い起こさせるような軽妙な曲調です。後者のニールセンについては少し前にアップした管弦楽作品集の頁でも述べましたが、3つある協奏曲(ヴァイオリン、フルート、クラリネット)はお世辞にも親しみやすいとは言えない。1926年に完成した本作も、全体的には緊迫感漂う内容です。ソロの部分は激しく情熱的で、オーケストラも甘い旋律はほとんど出てこずむしろ不安げな曲調。そんな中、時折曇り空に光が差すような美しい旋律が現れるのが印象的です。
コメント

リヒャルト・シュトラウス/オーボエ協奏曲

2019-05-09 22:28:31 | クラシック(協奏曲)
ひさびさの更新です。本日はリヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲を取り上げます。リヒャルト・シュトラウスは本ブログでも過去にたびたび紹介しました。代表作は一連の交響詩で「英雄の生涯」「ドン・ファン」「ツァラトゥストラはかく語りき」等いずれもスペクタキュラーなオーケストラ・サウンドとやや過剰なまでのロマンチックな旋律に彩られています。ただ、このオーボエ協奏曲はやや趣が違います。まるでモーツァルトを思い起こさせるような古典的かつ天国的な響きで、とても現代に書かれた作品とは思えません。作曲は第二次大戦直後の1945年。81歳のシュトラウスが書いた晩年の傑作です。その3年後に書かれた「4つの最後の歌」もそうですが、最晩年のシュトラウスの楽曲は過剰な演出や装飾を排し、ひたすらメロディの美しさのみを追求していたようですね。大作曲家の老いの境地というものでしょうか?澄み切った美しさの中に華やかさを併せ持つ第1楽章、胸に沁みる美しい緩徐楽章の第2楽章、そして快活なフィナーレの第3楽章。どれも素晴らしいです。



CDはフランソワ・ルルーのオーボエ、ダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団のものを買いました。2010年の演奏ですので、比較的新しい録音ですね。ルルーはフランスが生んだ世界的オーボエ奏者で、指揮者としても活躍していますが、ここではオーボエに専念しています。本CDには同じくリヒャルト・シュトラウスの楽曲の中でオーボエが活躍する作品である「13管楽器のためのセレナード」「13管楽器のための組曲」が収録されています。文字通り13人編成の室内楽演奏で、13楽器とはフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットが各2本ずつ、コントラファゴット1本、ホルンが4本と言う編成です。こちらはリヒャルト・シュトラウス最初期の作品でセレナードが17歳、組曲が20歳の時の作品です。上述のオーボエ協奏曲とはなんと60年以上もの年月の開きがありますが、面白いことに曲調はよく似ており、どちらも爽やかなメロディの小品です。ド派手な交響詩群とはまた一味違うリヒャルト・シュトラウスの魅力が味わえる1枚と言って良いでしょう。
コメント