ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

メンデルスゾーン/交響曲第2番「讃歌」

2018-10-23 12:23:18 | クラシック(交響曲)
本日はメンデルスゾーンの交響曲第2番をご紹介します。メンデルスゾーンの交響曲については第3番「スコットランド」と第4番「イタリア」が群を抜いて有名で、この第2番については上演機会もそんなに多くはありません。ただ、個人的には第2番が劣っているとは思いませんし、むしろスケールの点では上回っているとさえ思います。この曲の特徴は前半が純粋なオーケストラのみの交響曲、後半が合唱付きの交響曲と2部構成になっていることです。言ってみればメンデルスゾーン版「第九」と言ってもいいかもしれません。メンデルスゾーンは本ブログでも「聖パウロ」「エリヤ」という2つのオラトリオをご紹介したように、声楽の分野でも多くの傑作を残していますので、交響曲と声楽曲を融合させた本作はメンデルスゾーンを象徴する作品と言ってもいいかもしれませんね。



曲はトロンボーンが高らかに壮麗な主題を歌い上げて幕を開けます。この主題は合唱の部分でも繰り返し使われ、フィナーレでも登場するなど本作の基本テーマとも呼べる存在です。続く第2楽章はやや哀調を帯びたアレグレット。続く第3楽章は穏やかなアダージョで後半への橋渡し的な役割を果たしています。後半は神を讃える合唱曲。オープニングの主題を合唱で歌い上げた後、ソプラノ2名とテノール1名も独唱に加えながら神への感謝を歌い上げていきます。中でも感動的なのは第8曲の「夜は過ぎ去った」で、合唱とオーケストラが一体となって空前の盛り上がりを見せます。その後慈愛に満ちたコラール「もろびとよ、心と口と手をもって」でいったんクールダウンした後、フィナーレに向けて再び盛り上がっていきます。最後は冒頭の主題をフルコーラスで歌い上げて幕を閉じます。CDは数こそ多くありませんが、カラヤン、ドホナーニ、サヴァリッシュあたりの巨匠が録音を残しています。私が購入したのはヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮ベルリン・フィルのものです。独唱者に日本人メゾソプラノ歌手の白井光子さんが加わっています。youtubeだとマルクス・シュテンツ指揮オランダ放送フィルのものが視聴可能なので、是非ご一聴あれ。
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ウェーバー/オペラ序曲集

2018-10-16 12:33:26 | クラシック(管弦楽作品)
本日はカール・マリア・フォン・ウェーバーの序曲集をご紹介したいと思います。一般的にドイツ音楽の王道と言えばベートーヴェン~メンデルスゾーン~シューマン~ブラームスの流れで語られることが多く、ウェーバーについてはオペラ「魔弾の射手」の作者として知られてはいるものの、それ以上の評価はされていないような気がします。特に日本においてはそうですね。ただ、本来はベートーヴェンとメンデルスゾーンの間にウェーバーを入れてもいいくらいだと個人的には思います。彼の書いた作品はどれもロマン派の王道を行く堂々とした構成で、メロディの起承転結もはっきりしており、内容的にも親しみやすいものばかりです。ただ、そのわかりやすさが“ベタ”という評価につながっているのかもしれません。ここではオペラ序曲集を取り上げていますが、2曲あるクラリネット協奏曲も傑作ですし、小品ではありますがピアノと管弦楽のためのコンツェルトシュトゥック、本ブログでも取り上げたホルン・コンチェルティーノなんかも魅力的な一品です。



ウェーバーは生涯で8つのオペラを書きましたが、そのうち現在でも上演される機会が多いのは前述の「魔弾の射手」くらいです。その他のオペラについては音楽はともかく、ストーリーに魅力がないのかほとんど舞台にかかることはありません。ただ、序曲に関してはコンサートで取り上げられる機会も多く、「魔弾の射手」序曲を筆頭に、「オベロン」序曲、「オイリアンテ」序曲も有名です。どの曲もオペラの内容を凝縮したような構成で、劇中のアリアを主題として随所に盛り込みながら、ドラマチックな管弦楽曲に仕立て上げています。今回購入したヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルによるウェーバー序曲集にもその3曲はもちろん収録されていますが、それ以外の曲もなかなか魅力的です。冒頭の荒々しい展開が印象的な「精霊の王」序曲、16歳の時に書かれたとは思えない堂々とした構成の「ペーター・シュモル」序曲も聴き応えあります。

曲によってはベートーヴェンに雰囲気が似ているところもありますが、時代的にはむしろこの2人はかぶっていて、ウェーバー自身が影響を受けたのはベートーヴェンではなく、その前のハイドンやモーツァルトだそうです。ウェーバーはむしろベートーヴェンをライバル視していて、彼の交響曲第7番を聴いて「ベートーヴェンは精神病院行きだ」と酷評したなどのエピソードも残っています。今では比較にすらならないほど人気・評価ともに隔絶しており、私個人もベートーヴェンの方が圧倒的に優れているとは思いますが、ウェーバーの才能ももう少し高く評価されても良いのではないかと思います。
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ドヴォルザーク/交響曲第6番

2018-10-11 12:21:15 | クラシック(交響曲)
本日はドヴォルザークの交響曲第6番をご紹介したいと思います。ドヴォルザークの交響曲と言えば第9番「新世界より」が圧倒的に有名で、次いで第8番第7番が取り上げられる機会が多いですね。初期の交響曲については余程ドヴォルザーク好きの人でもない限り聴く機会はないのでは?ただ、この6番については後期の傑作群へとつながる作品として一部では評価の高い作品のようです。



作曲は1880年、ドヴォルザークが39歳の頃です。第7番を紹介した際にも書きましたが、この頃のドヴォルザークの交響曲はブラームスの影響がかなり見受けられます。スメタナとともにチェコ国民楽派の開祖として知られるドヴォルザークですが、当時のチェコはハプスブルク帝国の一部でドイツ/オーストリア文化の影響下にありましたし、また個人的にもブラームスと親交があったようなので影響は当然といえば当然でしょうか。特に壮麗な雰囲気の第1楽章、優美な第2楽章アダージョはかなりブラームスっぽいです。ただ、第3楽章についてはフリアントという民族舞踊を大胆に取り入れており、この頃からチェコ音楽としての個性を強く打ち出しています。後の「新世界」第3楽章の原型とも言えますね。第4楽章は再びブラームスっぽい旋律で、堂々としたフィナーレを迎えます。

CDですが、ドヴォルザークだけあってノイマンやクーベリック、アンチェル等チェコ人指揮者のCDが定番ですが、私が買ったのはオットマー・スウィートナー指揮シュターツカペッレ・ベルリン盤です。上述のとおりかなりブラームスっぽい曲なので、ドイツ/オーストリア音楽の権威であるスウィートナーなら違和感ない、どころかバッチリの名演です。このCDには序曲「オセロ」も収録されています。この曲は「自然と人生と愛」三部作の1つですが、三部作の中では「謝肉祭」だけが有名になっており、他の2曲はあまり演奏される機会はありませんが、なかなかドラマチックな名曲だと思います。
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ブラームス/ピアノ協奏曲第1番

2018-10-09 22:45:05 | クラシック(協奏曲)
本日はブラームスのピアノ協奏曲第1番をご紹介したいと思います。今では4曲の交響曲が代表作として挙げられるブラームスですが、彼が交響曲第1番を書き上げたのが43歳の時。若い頃のブラームスはピアニストとして活躍しており、作曲家としてもピアノ作品や室内楽曲が中心で、管弦楽付きの大作はほとんど残していません。そんな中で異彩を放っているのがこのピアノ協奏曲第1番。ブラームス24歳の時に書かれた本作は、彼のオーケストラ作品の中でも最も初期の作品に位置づけられます。ただ、若い頃に書かれたからと言って決して内容が明るいわけではないのがブラームス。良く言えば重厚で壮麗、悪く言えば重くて暗い曲作りはこの頃から顕著です。



特に第1楽章冒頭の仰々しいまでの重々しい響きはとても20歳前半の青年が書いたものとは思えません。ピアノが登場するのも4分以上経ってからで、当時から交響曲風の曲作りを目指していたのがわかります。中間部は一転してロマンチックな旋律で、ピアノが波間をたゆたうように美しい旋律を奏でていきます。続く第2楽章アダージョは胸に沁みる美しいアダージョ。最後は消え入るように静かに幕を閉じます。第3楽章は一転して躍動感あふれるロンド。印象的なバロック風の主題を繰り返しつつ、ピアノの超絶技巧を随所に挟みながらフィナーレに向けて徐々に盛り上げていくところが最高です。聴けば聴くほど味の出てくる傑作と言ってもよく、さすがはブラームスと言ったところです。ただ、彼が続く第2番のピアノ協奏曲を書くのはなんと20年以上後の48歳の時。完璧主義として知られたブラームスだけに中途半端な作品は発表したくなかったのでしょうが、もっとこのジャンルの作品を残してくれれば良かったのにと思わざるをえません。

CDですが、ブラームスだけあって古今の名手、名指揮者達が多くの録音を残していますが、私が買ったのはエレーヌ・グリモーのピアノ、クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペッレ・ベルリン盤です。今ではすっかりベテランとなったグリモーですが、録音当時は28歳。美人ピアニストとして売り出していた頃です。演奏の方も一級品で、フィナーレの盛り上がりは圧巻です。
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バーンスタイン/ウェスト・サイド・ストーリー、波止場、ファンシー・フリー

2018-10-04 23:16:12 | クラシック(管弦楽作品)
本日はレナード・バーンスタインの作品をご紹介します。カラヤンと並んで20世紀後半を代表する指揮者として君臨していたバーンスタインですが、一方で作曲家としても多くの作品を残しており、3曲の交響曲をはじめ、ヴァイオリンやフルートのための協奏的作品、さらには合唱曲やミサ曲も残しています。また、ミュージカルや映画音楽の作曲もこなし、特に「ウェスト・サイド・ストーリー」はブロードウェイでロングランとなっただけでなく、映画としても世界中で大ヒットを記録しました。。ただ、生前のバーンスタインはあくまで指揮者として評価されており、作曲家として高く評価されているとは言い難いものがありました。保守的なクラシックの世界においてはミュージカルや映画音楽は大衆向けの音楽であり、オペラや交響曲と比べると一段低く見る傾向が強かったのでしょうね。ただ、そんな風向きも最近は変わりつつあり、特に今年2018年はバーンスタインの生誕100周年ということもあり、生地アメリカだけでなく世界中のオーケストラがこぞってバーンスタインの作品を取り上げ、演奏しています。没後20年近くたってようやく作曲家バーンスタインの評価が確立してきたと言っていいでしょう。



とは言え、CDについてはまだまだ数も少なく、出回っているのはほとんどがバーンスタイン自身が指揮して録音したものばかりです。今日取り上げるCDも彼がニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を務めていた1960年代の録音です。曲は4曲。まず、最初はオペラ「キャンディード」の序曲。以前にもプレヴィン指揮のものをご紹介しましたが、エネルギッシュな名曲だと思います。続いては「ウェスト・サイド・ストーリー」からのシンフォニック・ダンス。劇中の挿入歌を組曲風にまとめたもので、有名な「ジェット・ソング」「マンボ」「マリア」「サムウェア」等がオーケストラ用にアレンジされています。ただ、同じく有名な曲である「トゥナイト」や「アメリカ」は含まれていません。なぜでしょうね?

続いては映画「波止場(On The Waterfront)」からの交響組曲。監督がエリア・カザン、主演がマーロン・ブランドで1954年に公開された作品で、アカデミー賞作品賞も受賞した名画です。私も映画を見たことがありますが、ミュージカルではないのでその時は音楽のことまで気が回りませんでした。20分弱の作品ですが、ホルンが吹く印象的なテーマ、ヒロインとの恋愛シーンで使われる美しい愛のテーマが聴きモノです。「ウェスト・サイド・ストーリー」に比べれば地味ですが、なかなかの佳曲だと思います。最後がバレエ「ファンシー・フリー」の組曲。こちらはジャズやラテン音楽の要素がかなり濃厚で伝統的なバレエ音楽とは一線を画す内容ですが、ジャンルを超越したバーンスタインの音楽性がよくわかる作品です。
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