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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

エルムの街

2015-12-08 22:59:04 | 津軽のいろいろ
青森県五所川原市へ行った。初めての訪問ではなかったが、前も今回も、ほんの少ししか街を見ることはできなかった。
今回、話には聞いていた「エルムの街」へ、これまたほんの少しだけながら、初めて行ったお話。


五所川原市は、弘前市とは25キロほど離れている。
かつては五所川原駅周辺に複数の百貨店があり、あの「中三(なかさん)」の創業地(2006年に閉店)でもある。

1992年、五所川原駅から西へ3キロほど行った隣の柏村(現・つがる市)に、「イオン柏ショッピングセンター(現・イオンモールつがる柏)」がオープン。(全国初のイオンショッピングセンターだったそうだ。秋田市御所野のイオン秋田SCは1993年)
イオン柏に客を奪われることに危機感を抱いた、中三など五所川原の商工業者たちが立ち上がり、五所川原駅の南東1.3キロほどの所に造ったショッピングモールが「エルムの街」。地元百貨店の1つが提携していた縁があったらしく、イトーヨーカドーが核テナント。1997年12月オープンだそうで、僕が弘前にいた頃だけど、記憶はない。

その後、エルムの街の経営は順調だそうだ。弘前や青森からも来店者がいるようだ。
しかし、五所川原市中心部の衰退には拍車がかかってしまい、五所川原駅周辺の百貨店がすべてなくなるという、皮肉な事態も起きてしまっている。

ただ、地方都市中心部の衰退は五所川原以外のどこでも起きている。それに、仮にエルムの街がなければ、お客はごっそりとイオンつがる柏へ流れていたことだろう。その意味では、エルムの街は成功なのではないかと思っていた。


エルムの街は、郊外型ショッピングセンターの範疇に入る。
一般に郊外型ショッピングセンターは、自家用車での来店を想定している。だから、駐車場は多いけれど、市街地からの路線バスは運賃が高かったり、本数が少なかったりすることがある。
しかし、エルムの街では、公共交通でのアクセスも良好。(五所川原駅からなら歩いても20分弱だけど)
五所川原商工会議所が弘南バスに委託する形で、エルムの街に乗り入れる3路線の「商店街循環バス」を運行している。運賃は120円均一(1999年から2008年までは100円)。
【2016年10月に路線が再編されました。以下はそれ以前の状況です】変更後についてはこちら参照。
市内の住宅地を循環する2路線は、9時から18時台まで1時間に1本。
そして、五所川原駅前からは9時から21時台まで30分間隔と、地方都市としては驚異的な運行時間帯・本数。

五所川原駅発に乗ってみた。「エルムの街直行バス・立佞武多号」という名前があるようだけど、その名はほとんど使われていなさそう。
五所川原駅向かいのレトロな(特に内部)案内所に、白地に赤で「ELM」と大きく書かれた、中型バスがやって来た。(循環線には、色違いの同型車が使われていた)
弘南バスの一般路線用車両にラッピングしたらしい、純正の日野レインボー。ワンステップで、座席が硬い仕様なので、2000年前後の製造と思われる。【9日追記】号車番号表示は車外にはなし。車内には表記があってメモしたのだけど、不覚にも消してしまった…
【2016年1月5日追記】メモを発見! 「51305-3」号車だった。2001年導入で、ネットの情報によれば51303~51305の3台が、色違いのエルム専用車両になっているそうだ。車外には運転席窓の下にのみ号車表示あり。緑色の「51303-3」では「5130“5”-3」と誤表記されてしまっているとのこと。

この3路線は、おそらく弘南バスでは唯一、「運賃先払い」かつ「中ドアから降車」する方式。
特に運賃先払いについては、ほとんど明示されていないし、津軽に限らず地方在住者としては戸惑う。

乗ったのは土曜日の19時台の便。乗客は僕1人だけなのは、まあ予想通り。
車内放送は一般路線バスと同じ。途中バス停は、同じルートの一般路線バスよりは少ないみたいだが、乗降ともにできるようだ。
途中からも誰も乗らず、10分弱で、エルムの街の玄関の1つに横付けされて、中ドアが開いた。やっぱり中ドアから降りるのも戸惑う。

5分後に駅に戻る便になるのだが、3人が乗車した。
採算が取れているのかは不明だが、こんな時間でもちゃんと利用されている。
暗いし中途半端なアングルですが、エルムの街の一部
駐車場はけっこう埋まっている。

エルムの街は、2階建ての建物にイトーヨーカドーと専門店が入る本体と、別棟のヤマダ電機、ニトリ、温泉、ホテルなどからなる。
敷地外のようだが、近くの青森県警の交番まで「エルムの街交番」という名前。地名ではないものの、それだけ親しまれているのだろう。

イトーヨーカドーといえば、弘前店やかつての秋田店のような高いビルを連想する者としては、2階建てで平べったいのはイトーヨーカドーらしくない。
イオンではよくある形式だし、北海道の帯広のヨーカドーもこんな感じだった。

本体の専門店部分では、吹き抜けの長い通路沿いに店が並び、御所野のイオンモール秋田や、イオンタウン弘前樋の口に似ている。
僕はショッピングモールにはほとんど行かないので、比較できないし判断基準がなく、エルムの街が良いのか悪いのかはよく分からない。
土曜日の夜ということもあるだろうが、家族連れさらには高齢者など、たくさんのお客が店内にいた。この状態なら「にぎわっている」と見るべきでしょう。
イトーヨーカドーの食品売り場部分は、弘前店の通路を広くしたような感じで、扱い商品や配置はおおむね同じ。折込チラシも共通。
【9日追記】専門店には、ABCマートや宮城の抹茶クリーム大福の喜久福(井ヶ田製茶)も出店。秋田など他地域ではイオンモールに出店することもあるテナントだが、ここではイオンモールつがる柏ではなく、エルムの街に入っているのが、興味深い。



五所川原は、市街地はともかく、街全体で見れば、なかなか健闘していて活気があるようにも感じられた。
秋田市では、外旭川地区にイオンタウン(イオンモールとは別会社)進出が計画されているのに対し、市や商工業界は乗り気ではない。その気持ちは当然といえば当然だけど、「反対! 何が何でも反対!!」と言うばかりに感じられてならない。それでは、最後に残るのは、既にほぼ壊滅的な既存商店街だけになってしまいそう。消費者にそれで我慢しろと言うのだろうか。

反対するのならば、「自分たちはこんなことができるから、それをやります。だからイオンタウンがなくてもお客は困らない。だからイオンタウンには反対」と言うのならまだしも。
五所川原では、その結果としてエルムの街ができて、イオンモールつがる柏と互角に渡り合えているのだ。
秋田市の商工業界には、五所川原のような気概が必要ではないだろうか。


最後に、エルムの街の出入り口。
自動回転ドア
かつて、ダイエー弘前店があった頃のジョッパル(現・ヒロロ)にあったものと、だいたい同じ。【11日追記】ジョッパルのは枠が銀色だった。それ以外の大きさとか動いている感じ(ちなみに時計回り)はきわめてよく似ていると思う。
ジョッパルでは、2004年の六本木ヒルズの事故を受けて、引き戸の自動ドアに交換されていたので、懐かしい。
エルムの街では、おそらく挟まれないためのガードのような枠を取り付けて、使い続けていたようだ。
入るタイミングを見計らって、中では予想以上にゆっくり歩くという、自動回転ドアの存在意義に疑問を感じつつ通過する体験を、久々にすることができた。(写真のように、脇の手押しドアから出入りする人も多い。そのほうが無難かも)

【2018年5月27日追記】回転ドアについて補足。
国土交通省が全国の大型自動回転ドアの設置状況をまとめた資料があった。対象は2004年4月時点で報告された、直径3メートル以上のもの。
青森県では6施設。ダイエー弘前店が2台、エルムの街は8台で1997年、2000年、2003年と3度に分けて設置されたようだ。
ほかには、青森市のイトーヨーカドー青森店に2000年設置が2台、青森ワシントンホテルに1996年設置が1台、八戸市の八食センターに2003年設置が1台、設置時期不明・調査時点で回転停止で、むつ市のむつショッピングセンター中央店(ダイエーアークスプラザ)に1台。
秋田県は3施設で、1999年開学の秋田県立大学の秋田キャンパスに2台、本荘キャンパスに5台。1998年移転新築の秋田赤十字病院に2台。日赤病院については、当時の宮下正弘院長が、2018年5月の秋田魁新報のインタビュー連載「シリーズ時代を語る」の中で、移転地が「周囲が田んぼで強風が吹き、特に冬場は横殴りの吹雪に見舞われ、通常の横開きドアでは対応できないからです。設計会社ともかなり協議しましたが、回転ドアしかないという結論でした。」としているが、導入後は患者から戸惑う声が寄せられたとのこと。
コメント (7)
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