広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

祝・パンケーキと校歌

2018-08-23 00:48:32 | 秋田のいろいろ
スポーツ全般に興味はないし、硬式高校野球が過剰にもてはやされることには疑問を感じる(※)けれど、第100回全国高等学校野球選手権記念大会で、秋田県代表の「金農(かなのう)」こと県立金足(かなあし)農業高等学校が準優勝したことは、称賛して喜ばないわけにはいかない。
ここまで来てあと一歩だったのはちょっと惜しいけれど、大大大健闘。
秋田県の活性化と全国からの秋田のイメージアップにも大いに貢献している。
※1 高校スポーツ競技は他にもたくさんあり、多くの高校生が努力して素晴らしい結果を出しているはず。例えば軟式野球では、秋田県立能代高校が何度も優勝・準優勝しているのに、あまり取り上げられないし、秋田県民もほとんど知らない。硬式と軟式でなぜここまで違うのか。
※2 夏休み中というのは分かるけれど、いちばん暑い時期に、しかも地方大会から何試合も集中して続くことは、過剰な負担ではないか。応援団や他の部活動を含む日程・資金・体調面、選手の将来にわたる肉体的ダメージがあるだろう。
1984年に金足農業の決勝進出を阻止した桑田真澄氏が、奇しくも今回の準優勝の始球式に登板。その際、連日連投する投手を気づかうとともに「我々大人は投球制限を設けるなどルール作りが必要」と述べている。
広い意味では、最近話題の「ブラック部活」、教職員の過重労働の面でも、改善の余地があるのでは。
【25日補足】秋田県では、医学研究団体と県高野連が「スポーツドクター制」を実施しており、今回の金農にも医師や理学療法士が帯同して、ケアに当たったとのこと。

秋田魁新報では試合ごとに号外が出された。22日付朝刊(夕刊はないけど)では、本来の新聞の外側に、大きな写真を載せた1枚(A~D面と称する4ページ分)をかぶせて追加するという、東北六魂祭の時と同じ手法の特別紙面。【25日補足】コメント欄の通り「ラッピング紙面」と呼ばれる手法。
右が特別紙面
1面の下の広告も紫色で、秋田スズキによる新車購入時の純正プションが2万1600円分多くもらえるという、さっそくの便乗(失礼)キャンペーン。
22日付以外の通常版や号外も含めて、見出しの文字色(または反転した地色)は金農のスクールカラーである紫色が使われた。


それにしても、秋田県代表は、1915(大正4)年の第1回大会以来103年ぶりに、第100回大会で決勝進出という、ドラマのような展開(戦争中の中断があるので、年数と回数が一致しない)。
第1回大会は、県ごとの代表ではなく、ブロック代表で10校だけが出場し、しかも東北地方の予選には3校しか出なかった(しかもすべて秋田県内)そうで、準優勝への道のりは今よりずっと短かったようだ。
最近の他都道府県の出場校レベルの高さからしても、秋田県代表が決勝へ進むことなど、もうないと、多くの秋田県民はあきらめていたはず。
それがあれよあれよと勝ち進んだ。
選手は、全員が、学校のある秋田市とその周辺の出身。公立高校や農業高校が決勝まで進むのも珍しく、快進撃が全国的に注目された。

ただ、2013年に3回戦まで進んだ青森県代表・弘前学院聖愛は、選手全員が津軽地方の出身だったそうで、私立でもそういうところもある。
反対に、バスケットボールだけど、秋田県立能代工業高校は、県外から選手を連れてきている。
また、最近は、秋田県の高校野球全体のレベルアップを目指して、県ぐるみで強化プロジェクトを行なっている。科学的な分析などもしているようで、それなりにお金がかかっていそう。
金農もその対象だったから、必ずしも、貧乏で泥臭い力任せの練習や試合ばかりをしていたわけではないのだろう。私立のほうが資金やできることに余裕があるのは確かだけど、公立も昔とは違うのかもしれない。


以下、快挙に関連した話。
●金農パンケーキ急きょ
今回の快挙のおかげで、野球のことなど扱わない当ブログのアクセスが少し増えた。2012年の金農パンケーキの記事があったから。
金農の生徒とローソン(とたけや製パン)が開発して、秋田県内のローソン限定・期間限定で販売されるパンケーキで、2013年以降も毎年改良を重ねながら(デニッシュなどのバリエーションも)、初夏に発売されている。※2013年2016年にも紹介しました。

その記事の冒頭で、
「「金農(かなのう)」とは、秋田市北端の金足(かなあし)地区にある、県立金足農業高等学校の略称。
歴史が古い学校であり、農業県秋田といえども農業系高校・学科の統廃合が進む中、大規模な農業高校として名を馳せている。高校野球をはじめとする部活動も有名。」
と書いていたのが、検索に引っかかったのかなと思っていたら、それだけではなかった。

準優勝したからには、来年のパンケーキには銀箔でも載せないとね…などと思っていたら、発売を終えていた2018年版が急きょ再発売されることになった。それを知ってのアクセスもあるようだ。
再発売について、ローソンのホームページには今のところ未掲載。マスコミ各社が伝え、NHKでは「ローソン」の名前も出した上での全国放送。
今回も秋田県内のローソン限定で、8月23日から2週間程度販売。原料調達の都合上、初回発売時は秋田県産リンゴを使っていたのが、今回は中国産を使用。
どうせなら秋田県外でも売ればいいのに。NHKの報道では「秋田限定」と言っていなかった気がするので、勘違いして探し回る県外の人がいるかも。【23日補足】再発売の秋田県内での売れ行きを踏まえて、県外発売(県外としては初の販売)も検討しているとの報道があった。

【30日追記】金農パンケーキとは別に、たけや製パンと県内の高校3校がコラボして昨年秋に発売したバナナボートの派生商品の1つ、「金農ババヘラボート」が、9月から再発売されることになった。たけや製パンの取扱店(スーパーや一部コンビニを含む)で販売される。

【9月28日追記】9月25日から、ついに秋田県以外の東北各県でもパンケーキが発売。県外発売分は山崎製パン仙台工場で製造するため、パッケージや栄養成分表示が一部異なるとのこと。

●全力校歌の中身
今回の大会で金農が注目され評価されたことの1つが、校歌の歌い方。
胸、というか体を大きく反らせて声を張り上げて歌うのが、「全力校歌」「反りすぎ校歌」として、ネットで話題になった。部員たちが自発的に始めた歌い方だそう。

TBSの野球解説者(元巨人)槙原寛己氏は、自身の投手としての経験も踏まえて、あんなに反らせては「腰に悪い。サンシャイン池崎じゃないんだから」とコメントしていた。
個人的には、歌い方よりも歌の中身に注目してほしい。

高校野球を楽しむ人の中には、各校の校歌の中身に注目する人もいる。作詞作曲者が著名人だったり、英語の歌詞だったり、ポップな歌だったり。
ちなみに、球場で流れる演奏・歌は、春のセンバツでは各校の持ちこみ音源、夏は朝日放送(ABC)が一括してプロに演奏・歌唱してもらって録音したものを使うそうだ。
【2019年3月31日】2019年春のセンバツでは、大分県の明豊高等学校(学校法人別府大学運営)が初勝利。その校歌「明日への旅」は南こうせつ作曲で、センバツなので持ちこみであろう、南こうせつが歌っているものが流れた。

僕は金農出身ではないけれど、金農の校歌のことは昔から知っていた。
高校の国語の授業で宮澤賢治を扱った時、先生が花巻農学校の「精神歌」という歌の歌詞を、黒板に書き出した。(1番だけだが、何も見ずに書いたような記憶がある。先生ご自身も思い入れがあったのだろう)
花巻農学校の教師をしていた宮澤賢治が作詞(作曲は知人の川村悟郎)した歌で、自然とともに生きる、農業の本質が歌いこまれたような歌詞に、心を動かされた。
なお、精神歌は校歌ではないが、現在も岩手県立花巻農業高校で歌い継がれている。

その時、先生が「金農の校歌は、精神歌と通ずるものがある。何年か前に金農が甲子園で勝ち進んだ時、校歌を聞いて関心を持った人たちからの反応が金農側にあった」ということも話してくれた。「何年か前」というのは、1984年のことだろう。今回ほどではないにしても、以前にも注目された校歌だったのだ。
当時の僕も興味を持ったものの、今のように学校のホームページや動画投稿サイトがあるわけでもなく、金農に友達が通っているほど交友関係も広くなかったから知るすべがなく、どんな校歌なのか頭の片隅でずっと気になっていた。

その後、高校野球とかネット上で、金農の校歌を知ることができた。
学校のホームページでは歌い出しの「可美(うま)しき郷 我が金足」というのがタイトルかのように受け取れる紹介がされているが、そうなのかは不明。

作詞は国文学者の近藤忠義。ほかの歌はあまり作っていないようだ。
作曲は、文部省唱歌をいくつも手がけた岡野貞一。秋田北高校や能代高校の校歌も作曲。校歌にしては長く、また古い時代の校歌にしては柔らかく軽やかな感じもする(ABC収録版を聞いた限りでは)。
精神歌が1922年、金農校歌は1932年に作られているが、それぞれの内容はだいぶ違って、インスピレーションを受けたとかいうことでもないと思う。ただ、農への思いがこめられているという点で、通じるものはあると思う。

Youtubeで検索すると、「全力校歌」が多く引っかかってしまい、本来の校歌を探し出しづらいけれど、歌自体が、もっと注目されてもいい校歌。


興味がないといいながら、周辺の話題がいろいろあるので、続けます
コメント (3)
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