今春、田村正和さんが亡くなった。
田村さんと言えば「古畑任三郎」。古畑ばかりが田村さんではないのだが、僕も大好きである。
昨2020年には、古畑任三郎をリメイクするという噂があり、新しい俳優の名前まで上がっていたが、作者・三谷幸喜氏の「古畑さんは田村さんだけ」という考えがあるとかで、実現しなかった。
古畑任三郎は、アメリカの「刑事コロンボ」の影響を受けている。パクりという人もいるだろうが、オマージュであろう。
犯人が最初から分かる「倒叙」という作りもそうだけど、舞台や状況の設定、さらに細かなエピソード的なものまで、コロンボと古畑で同じもしくは似たものが多い。
明らかにコロンボからの借用だと分かりやすいものもあれば、なんとなく似ているな程度のものもある。見落としている点も多いに違いないし、単なる偶然のものもあるかもしれない。
僕はコロンボもひと通り見たものの細かくは見ていないので、見落としも多いはずだが、思いつくままに挙げてみる。各2行目は該当するコロンボ(日本版)/古畑の話数とサブタイトル。
・閉じこめる
19別れのワイン、41死者のメッセージ/1死者からの伝言
・全寮制の学校が舞台
28祝砲の挽歌/13笑わない女
・組織の後継者の方針に対する反発が動機
28祝砲の挽歌/7殺人リハーサル
・共同作業者を殺害
3構想の死角/13笑うカンガルー、42ラスト・ダンス
閉じこめる話は全体も細部も共通点が多いが、そのほかは、舞台設定は似ているが動機や証拠はかなり違ったり、その逆だったりする。
細かいけれども、重要な証拠となる部分的な共通点。
・殺人後に手が震えて、普段は自分で行う行為を、他人にやらせる
19別れのワイン/11さよなら、DJ
・本来と違う用途で使われていた物の呼び名
39黄金のバックル/14しゃべりすぎた男
・時間的/場所的に知り得なかったことを、録音/放送でしゃべってしまう
34仮面の男/11さよなら、DJ
コロンボの愛犬Dogと、古畑の愛する部下・今泉慎太郎が体調不良になった時には、
・殺しそこねた被害者の意識が戻るのをおそれている犯人に、別件で加療中の飼い犬/部下の容体回復を伝えて勘違いさせる
16断たれた音/10矛盾だらけの死体
三谷幸喜氏が、いかにコロンボを熱心に見て研究したかが分かる。
古畑任三郎では、「間違われた男(間違えられた男)」みたいなコロンボにはない性格の話もあるし、時代や国の違いもあろうが、古畑のほうが全体の作りがしっかりしている(コロンボではストーリーが破綻したようなのもたまにある)傾向があって、コロンボの模倣が古畑のすべてではないのだが。
あと余談だけど、コロンボ24話「白鳥の歌」。1974年3月放送(アメリカ)。
カントリー歌手が、自ら操縦する自家用飛行機からパラシュートで飛び降りて助かり、飛行機を墜落させて同乗者を殺害する。なんとも大胆な命知らずのやりかただと思っていた。
ところが、最近、おそらくそれのモチーフになったであろう事件が実在したことを知った。
1971年11月にアメリカで起きた「D.B.クーパー事件」。
旅客機をハイジャックした男が、身代金とともにパラシュートで飛び降りたもの。犯人の身元もその後の安否も不明で、唯一の未解決ハイジャック事件。
ここから本題。
NHK BSプレミアムで、毎週水曜に何度目かの再放送されていた刑事コロンボも、終盤。21日は68話「奪われた旋律」。【その後、また最初から放送が始まり、2023年1月14日に放送】
作曲家が、ゴーストライターをさせていた弟子を、撮影所の特殊なエレベーターを使い、屋上からの転落に見せかけて殺す話。
上記、構想の死角、笑うカンガルー、ラスト・ダンスは、2人はゴーストではない関係性だったので、そこは違う。
特殊なエレベーターで被害者を運ぶ、そんな話も古畑にあった。
2話「動く死体」。エレベーターは正確には舞台の「すっぽん」。
歌舞伎役者(堺正章)が、自分が起こした交通事故を暴露しようする劇場の警備員(きたろう)と言い合いになって殺してしまい、すっぽんで運んで、舞台天井からの転落に偽装する。
芸能の大御所、芸能の場の特殊な昇降装置、転落に偽装、と共通点がある。
一方、エレベーター/すっぽんについては、正反対の位置付けになっているように思う。
コロンボでは、昔、一発屋に終わった新人監督が設置させたが、その後使われず知る人が少なくなっていた。作曲家は撮影所歴が長く、知っていた。
古畑では、歌舞伎役者自身が使うために導入させて、使っている。誰もが知る存在。
その操作。
歌舞伎役者は、その操作方法を熟知しておらず、元の位置に下げることができず、それで古畑に気付かれることになる。
作曲家は、かつては自ら使うことはなかったと考えられるが、犯行時は難なく使いこなしている。
コロンボのほうで、個人的に見落として謎だった点が、今回解決。
撮影所のエレベーターは、屋上で突き落とした後、元の位置へ下りて戻っていて、コロンボたちもすぐには気付かない。これまで、無人のエレベーターがどうして戻るのか分からなかった。
作曲家が屋上に向けて動かすために(カゴ内でなく地下のカゴ外にある)「UP」ボタンを押した直後、「DOWN」ボタンを押していた。ということは、無人運転できるように、屋上到達後に留まるか戻るかを指定する機能が備わっているということなのだろう。
作曲家は、突き落とす前に2度、自分が乗った状態でエレベーターを操作しているが、そういう戻る機能があることはどこで知ったのか、ちょっと疑問。表示があったり、アメリカもしくは映画関係者では常識なのかもしれないけど。
といった感じなので、コロンボの「奪われた旋律」に影響されて、古畑の「動く死体」が作られた? それは絶対にない。
古畑「動く死体」のほうが先だから。
「動く死体」は初期の2話、1994年4月20日放送。なお、初期の古畑の放送順は、時系列ではなく入れ違っていて、これがいちばん最初の話。
「奪われた旋律」は、2000年5月12日。この次の2003年の69話で、コロンボシリーズは幕を閉じる。
古畑のほうが6年先行。
たまたま似てしまったのかもしれない。
だけど、これまでと逆に、古畑の存在を知ったコロンボ制作陣の、返礼というか、オマージュ、リスペクトだったりはしないだろうか。ネット上にはそんな指摘はないけれど。
田村さんと言えば「古畑任三郎」。古畑ばかりが田村さんではないのだが、僕も大好きである。
昨2020年には、古畑任三郎をリメイクするという噂があり、新しい俳優の名前まで上がっていたが、作者・三谷幸喜氏の「古畑さんは田村さんだけ」という考えがあるとかで、実現しなかった。
古畑任三郎は、アメリカの「刑事コロンボ」の影響を受けている。パクりという人もいるだろうが、オマージュであろう。
犯人が最初から分かる「倒叙」という作りもそうだけど、舞台や状況の設定、さらに細かなエピソード的なものまで、コロンボと古畑で同じもしくは似たものが多い。
明らかにコロンボからの借用だと分かりやすいものもあれば、なんとなく似ているな程度のものもある。見落としている点も多いに違いないし、単なる偶然のものもあるかもしれない。
僕はコロンボもひと通り見たものの細かくは見ていないので、見落としも多いはずだが、思いつくままに挙げてみる。各2行目は該当するコロンボ(日本版)/古畑の話数とサブタイトル。
・閉じこめる
19別れのワイン、41死者のメッセージ/1死者からの伝言
・全寮制の学校が舞台
28祝砲の挽歌/13笑わない女
・組織の後継者の方針に対する反発が動機
28祝砲の挽歌/7殺人リハーサル
・共同作業者を殺害
3構想の死角/13笑うカンガルー、42ラスト・ダンス
閉じこめる話は全体も細部も共通点が多いが、そのほかは、舞台設定は似ているが動機や証拠はかなり違ったり、その逆だったりする。
細かいけれども、重要な証拠となる部分的な共通点。
・殺人後に手が震えて、普段は自分で行う行為を、他人にやらせる
19別れのワイン/11さよなら、DJ
・本来と違う用途で使われていた物の呼び名
39黄金のバックル/14しゃべりすぎた男
・時間的/場所的に知り得なかったことを、録音/放送でしゃべってしまう
34仮面の男/11さよなら、DJ
コロンボの愛犬Dogと、古畑の愛する部下・今泉慎太郎が体調不良になった時には、
・殺しそこねた被害者の意識が戻るのをおそれている犯人に、別件で加療中の飼い犬/部下の容体回復を伝えて勘違いさせる
16断たれた音/10矛盾だらけの死体
三谷幸喜氏が、いかにコロンボを熱心に見て研究したかが分かる。
古畑任三郎では、「間違われた男(間違えられた男)」みたいなコロンボにはない性格の話もあるし、時代や国の違いもあろうが、古畑のほうが全体の作りがしっかりしている(コロンボではストーリーが破綻したようなのもたまにある)傾向があって、コロンボの模倣が古畑のすべてではないのだが。
あと余談だけど、コロンボ24話「白鳥の歌」。1974年3月放送(アメリカ)。
カントリー歌手が、自ら操縦する自家用飛行機からパラシュートで飛び降りて助かり、飛行機を墜落させて同乗者を殺害する。なんとも大胆な命知らずのやりかただと思っていた。
ところが、最近、おそらくそれのモチーフになったであろう事件が実在したことを知った。
1971年11月にアメリカで起きた「D.B.クーパー事件」。
旅客機をハイジャックした男が、身代金とともにパラシュートで飛び降りたもの。犯人の身元もその後の安否も不明で、唯一の未解決ハイジャック事件。
ここから本題。
NHK BSプレミアムで、毎週水曜に何度目かの再放送されていた刑事コロンボも、終盤。21日は68話「奪われた旋律」。【その後、また最初から放送が始まり、2023年1月14日に放送】
作曲家が、ゴーストライターをさせていた弟子を、撮影所の特殊なエレベーターを使い、屋上からの転落に見せかけて殺す話。
上記、構想の死角、笑うカンガルー、ラスト・ダンスは、2人はゴーストではない関係性だったので、そこは違う。
特殊なエレベーターで被害者を運ぶ、そんな話も古畑にあった。
2話「動く死体」。エレベーターは正確には舞台の「すっぽん」。
歌舞伎役者(堺正章)が、自分が起こした交通事故を暴露しようする劇場の警備員(きたろう)と言い合いになって殺してしまい、すっぽんで運んで、舞台天井からの転落に偽装する。
芸能の大御所、芸能の場の特殊な昇降装置、転落に偽装、と共通点がある。
一方、エレベーター/すっぽんについては、正反対の位置付けになっているように思う。
コロンボでは、昔、一発屋に終わった新人監督が設置させたが、その後使われず知る人が少なくなっていた。作曲家は撮影所歴が長く、知っていた。
古畑では、歌舞伎役者自身が使うために導入させて、使っている。誰もが知る存在。
その操作。
歌舞伎役者は、その操作方法を熟知しておらず、元の位置に下げることができず、それで古畑に気付かれることになる。
作曲家は、かつては自ら使うことはなかったと考えられるが、犯行時は難なく使いこなしている。
コロンボのほうで、個人的に見落として謎だった点が、今回解決。
撮影所のエレベーターは、屋上で突き落とした後、元の位置へ下りて戻っていて、コロンボたちもすぐには気付かない。これまで、無人のエレベーターがどうして戻るのか分からなかった。
作曲家が屋上に向けて動かすために(カゴ内でなく地下のカゴ外にある)「UP」ボタンを押した直後、「DOWN」ボタンを押していた。ということは、無人運転できるように、屋上到達後に留まるか戻るかを指定する機能が備わっているということなのだろう。
作曲家は、突き落とす前に2度、自分が乗った状態でエレベーターを操作しているが、そういう戻る機能があることはどこで知ったのか、ちょっと疑問。表示があったり、アメリカもしくは映画関係者では常識なのかもしれないけど。
といった感じなので、コロンボの「奪われた旋律」に影響されて、古畑の「動く死体」が作られた? それは絶対にない。
古畑「動く死体」のほうが先だから。
「動く死体」は初期の2話、1994年4月20日放送。なお、初期の古畑の放送順は、時系列ではなく入れ違っていて、これがいちばん最初の話。
「奪われた旋律」は、2000年5月12日。この次の2003年の69話で、コロンボシリーズは幕を閉じる。
古畑のほうが6年先行。
たまたま似てしまったのかもしれない。
だけど、これまでと逆に、古畑の存在を知ったコロンボ制作陣の、返礼というか、オマージュ、リスペクトだったりはしないだろうか。ネット上にはそんな指摘はないけれど。