広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

火曜日のサザエさん

2022-11-17 19:43:10 | 昔のこと
25年前・1997年11月18日(火曜日)が最終回だったテレビ番組がある。

いわゆる「火曜日のサザエさん」である。
といっても、25年も経てば、忘れた人、そもそも知らない人も多いでしょう。
フジテレビ系列局がない地域で、火曜日に遅れて放送されていたということではなく、フジテレビ系列各局で全国一斉(末期は例外あり)に、火曜日の19時00分から30分間放送されていたもの。日曜18時半のほかに火曜日も、週に2回サザエさんが放送されていた時代があったのだ。
火曜日のサザエさんの実態は、日曜の再放送。直近の日曜ではなく、何年も前に放送された作品。

日曜版そのまんまの単純な再放送ではなく、オープニングとエンディングの歌やアニメーションは独自のものに差し替え、正式には「まんが名作劇場 サザエさん」という番組名であった。新聞のテレビ欄に「再」マークがあったかどうかは忘れたが、ネット上には「あった」との情報も。視聴者の多くには、「サザエさんの再放送」「火曜日のサザエさん」のほうが通りが良かったはず。
※昭和末辺りまで、一般人はアニメーションのことを「アニメ」ではなく、「漫画」と称することが多かった。「まんが日本昔ばなし」というアニメ番組もあった(過去の記事)。

再放送のために専用の歌と映像を作ること、それにゴールデンタイムに再放送のレギュラー番組があるとは、今では信じられない(当時としても珍しい)ことだろう。
なお、火曜版の存在を知らない世代には、その歌は「サザエさんの幻の歌」として都市伝説的に扱われることもあるらしい(歌については後述)。


※以下、Wikipedia「サザエさん(テレビアニメ)」「フジテレビ系列火曜夜7時台枠のアニメ」の項を参考にしています。敬称略。
日曜の本放送は1969年10月開始。ギネス世界記録認定の長寿アニメ番組。
火曜版は1975年4月開始だから、22年半以上続いたわけで、充分長寿番組だ。
火曜版の初期はカルビーなどがスポンサーだった(なんとなく覚えているような…)が、1985年10月から放送局ごとにスポンサーが異なるようになって、ローカルCMが流れた局も。
また、当時は地上波でプロ野球中継を放送するのが当然だったので、オンシーズンは放送されない週も少なくなかった。

どのくらい前の作品が再放送されたかについて、Wikipediaには「本放送で放送された季節に合わせ、5,6年前の再放送となっていた。」とある。一方で、ネット上の他の情報では「7年遅れ」とも。
1985(昭和60)年辺りかと思うが、「今年は昭和5?年、(干支は)?年」と言及する正月の作品(現在はないが、当時のサザエさんでは恒例だったと思う)が再放送されたのを覚えている。
火曜版では、次回予告はなかったので、内容に応じて放送順を組み替えたり、再放送を見合わせたりすることは難しくなかった(フイルムだとそうとは限らない?)かと思う。それなのに、作中の年と干支で、再放送であることが分かってしまう話をそのまま流してしまうのは、それでも構わないという意向だったのか。

1985年頃時点の日曜版では、今と同じく、サザエ(たまに他のキャラクター)が毎話のサブタイトルを読み上げていた。しかし、その頃の火曜版では、読み上げずに文字だけが表示されていた。
その他、マスオ役の声優が交代(1978年。再放送でも記憶にない)しているし、ノリスケ一家が一時名古屋へ転勤したり、お隣一家や三河屋の御用聞きが替わったり(いずれも1985年。本放送で記憶あり。後述)もした。その他、脚本の内容や絵の作風の変化もあったかもしれない。
永年変わらないと思えるサザエさんの世界でも、5年前の再放送となれば、日曜日とは違いもあった。


オープニング(OP)・エンディング(ED)について。
日曜版の「サザエさん」「サザエさん一家」は、前者は長さなど微調整が何度かされたらしいが、曲は一貫して不変。
火曜版は、WikipediaによればOP、EDとも、おそらく同タイミングでの切り替えで、5世代(5曲ずつ)使われている。ただし、初代と5代目は同じ歌なので、曲数としては4曲×2。
Wikipediaに各曲の放送期間は記載されていないが、シングルレコードの発売が、2代目が1977年、3代目が1979年、4代目が1980年。なお、3代目は、原作サイドから「『サザエさん』のイメージに合わない」といったクレームがあって、短期間で終わったらしい。

僕が知っているのは、4代目と5代目=初代の2つだけ。昭和末辺りで替わったような記憶がある(根拠後述)。4代目は5年以上使われたことになり、初期と比べて、変更のサイクルが長くなっていたことになる。
OP・EDとも、4代目は松尾 香、初代=5代目はアニメ主題歌の女王・堀江美都子の歌唱。4曲とも、今でも時々頭に浮かぶ歌だが、雰囲気がどこか似ていて、どれがどの歌かごっちゃになってしまう。
歌い出しは、4代目OP「ハッピーディ・サザエさん」が「スズメのコーラス楽しむように」、ED「ひまわりみたいなサザエさん」が「サザエさん サザエさん みんなが声かける」。5代目OP「サザエさんのうた」が「窓を開けましょう ルルル」、ED「あかるいサザエさん」が「明るい笑いをふりまいて」。
どれも、サザエさんの明るさを讃える内容。「ハッピーディ~」では「サザエさん」の3連呼(日曜EDの「~一家」も同じだけど)、「~のうた」では「わたしもサザエさん あなたもサザエさん」と、サザエさんに洗脳されそう。特に「あなたもサザエさん」で男声コーラスが加わるのが、なんか怖かった。
OPは、「サザエでございまーす」でいきなり始まる日曜版【12月18日補足・シングルバージョンでは前奏あり】に対し、4代目・5代目とも、印象的な前奏(イントロ)が付いていたが、両者を入れ替えても通用しそうで、それがまぎらわしさの一因。特に4代目「ハッピーディ~」が好き。
4代目ED「ひまわり~」の歌詞、「(周りがいつでも)温かい」の部分は「あったったーかい」と歌われる。僕は小さい頃、そこを「わっぱっぱーがい」と聞いてしまって、理解できなかった【18日補足・“わっぱっぱ貝”ってのがあるかと想像したり】。

OP・EDのアニメ映像。
日曜版は、OPは全国巡礼、EDは原作4コマ漫画で、3か月周期で替わる。
火曜版では、少なくとも歌が4代目から5代目に変わるタイミングで、アニメーションも変更された。それ以外のタイミングでも、(曲はそのままでアニメだけ)何度か変更されているようだが、日曜版ほど頻繁ではないかと思われる。
5代目OPの冒頭では、屋根がない状態の磯野家を真上から見下ろすシーンがあって、間取りが見て取れた。また、フジテレビは目玉マークのロゴで表示され、EDでは、山手線205系電車っぽいステンレスボディの電車が描かれているため、5代目への切り替えは1986年以降になるし、映像は初代の使い回しではないことになる。


それらに合わせて表示される、キャスト・スタッフの表示。コンピューター作成の現在は、デジタルフォントを使って、レギュラーでない役と声優名は、毎回それに応じて変わっている(日曜版について)。
昔は技術的にそんな細かいことはできなかったはずで、毎回固定だったと思う。日曜版では、原作者名や姉妹社の名は手書きのゴシック体、それ以外は活字のゴシック体(写研の石井太ゴシック?)だった。
火曜版4・5代目では、すべて、道路標識でおなじみ、写研の丸ゴシック体「ナール」だった。日曜同様、歌詞は出ない。
なお、それ以前は、手書きや活字の角ゴシック体だったり、3代目当時は、歌詞が石井(細?)丸ゴシックで表示されたりしていたようだ。※ナールは1972年リリースなので、再放送開始時点で使用できたはず。
また、声の出演で、日曜版では出ない「タマ」役が、「……?」や「?」としてクレジットされるのも特徴的だった。実際には、効果音扱い(サウンドトラックCDにも収録)なのだが。



僕は火曜日のサザエさんが好きだった。中身は日曜日と同じはずなのに。
まず、小学生にとって5年以上前の再放送となれば、それは初見と同じこと。
1985年からしばらくは、お隣が、日曜日は伊佐坂先生、火曜日は浜画伯といった違いもあり、パラレルワールドを行き来するような楽しみもあった。

そして、内容とは関係ないが「火曜日の夜」という放送枠。
サザエさんに続いて、19時30分から21時前までは「火曜ワイドスペシャル」。週替りのバラエティー番組で、中でも月に1度は、ザ・ドリフターズによるコント「ドリフ大爆笑」があり、それが楽しみだった。サザエさんが“ドリフの前座”的存在だった。
その後、21時からのクイズ番組「なるほど! ザ・ワールド」もちょっと楽しみだった。なるほど~は1981年から1996年まで14年半の放送だから、サザエさん火曜版より短い放送期間なのか。

さらに、僕だけかもしれないが、翌日が水曜日なのも楽しみだった。
時代や地域によって差があるようだが、平日5日の中で、水曜日は学業や業務が“軽い”ことがある。職場ならノー残業デーとか。
僕が通った幼稚園では、水曜日も半ドン。小学校から高校でも、午後の授業がなかったり(給食後すぐ下校)、短かったりした。ここでは関係ないが、大学も水曜午後には授業がほとんど設定されていなかった。週の半ばでひと息という意味のほか、職員会議・教授会などの時間を確保する意図だと思う。
学校が嫌いではないが、大好きでもなかった僕にとって、そんな水曜日はうれしかった。
火曜日のサザエさんを見て、「明日は早く帰れる」、それに「明日が終われば、今週が半分終わる」と思ったものだった。

最近あまり言われない気がするが、いわゆる「サザエさん症候群」。
日曜日の夜にサザエさんを見ると、明日・月曜日から学校や仕事が始まることを意識させられ、憂鬱な気持ちになるというもの。
僕にとっては、火曜日のサザエさんで“逆サザエさん症候群”になっていた。

Wikipediaのパロディーサイト「アンサイクロペディア」など、ネット上にも、「日曜と火曜はパラレルワールドである」とか「憂鬱を引き起こす日曜版とのバランスを取るために、火曜日のサザエさんを復活させるべきだ」とする、冗談めかした記述が見られる。
「火曜日のサザエさんのほうがおもしろかった」という声もあるが、上記のような心理的要因かもしれない。


「まんが名作劇場 サザエさん」の最終回は、告知もなしに、ひっそりと幕を下ろしたようだ。
僕自身は、フジ系がなく火曜版がネットされていない青森県にいたので、見ようにも見られなかった。
※当時も今も、TBS系青森テレビで、日曜版を土曜日夕方に放送している。それ以前、1980年代には、火曜版もネットしていて、日曜の夕方や朝に放送していたらしい。
【2024年9月28日追記・というわけで、日曜にサザエさんが放送されない青森県津軽地方の大部分では、サザエさん症候群は起こり得ないことになる。なお、津軽の一部や、津軽以外の青森県内では、隣接エリアのフジ系が越境受信できる。】

翌週・1997年11月25日からは、ほかのアニメ番組の再放送枠となった。「ドラゴンボール」と「ゲゲゲの鬼太郎(1985年の戸田恵子版)」が再放送されるが、それも1998年6月で終了。
その後は、怪奇ドラマ「怪奇倶楽部」の再放送を経て、バラエティー番組の枠になった。
なお、さかのぼれば、サザエさん以前は新作アニメ枠で、あの「昆虫物語 みなしごハッチ」などが放送されていた。

裏番組では、テレビ朝日系が1995年10月に「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!!」を開始。視聴率を奪われたのが、サザエさんの終了とアニメ再放送枠の終了の原因だったようだ。
【17日追記・2000年前後に「裏ワザ」紹介で人気番組となる、日本テレビ系「伊東家の食卓」もこの枠で、1997年10月28日開始。しかし、裏ワザが本格的に紹介されるのは1998年春から。伊東家による磯野家への影響はなかったと言える。】
まったくの憶測だが、サザエさん原作者の長谷川町子が1992年に亡くなり、翌年には著作権を持っていた姉妹社が解散したことも、ひょっとしたら再放送終了の理由につながるかもしれない。

そもそも、サザエさんは、映像ソフト化や再放送はしないのが大原則のイメージがある。火曜日のサザエさんは例外中の例外。ほかには、放送50周年記念として2018年末から、過去の一部放送回が、有料配信されている。
一方で、アニメ制作会社「エイケン」でチーフアニメーター、プロデューサー、社長を務めた毛内節夫は、2010年、東奥日報のインタビューに「数年後に再放送した時にも違和感ないように、なるべく流行の物を入れないようにしている。」と話している(関連記事)。ということは、アニメを作る側は、再放送も構わないというスタンスのようだ。

1996年3月6日放送のドラマ「古畑任三郎(第2シリーズ)」の「間違えられた男(風間杜夫が犯人役)」では、古畑が「これだけは見たい」などと言ってテレビを点けて火曜日のサザエさんのオープニングを見て、その場の時計がずれていることを確認する場面がある。
古畑は青森でも放送されたが、視聴者の多くは意味が分からなかったかもしれない。
後年、この場面が権利上の制約となって、この回がCSでの放送やネット配信ができない(過去の記事)。フジテレビでの再放送や、映像ソフト化は可能なようで、複雑。
サザエさん再放送のシーンがあるばっかりに、その古畑が再放送(配信)できないとは皮肉なものだが、初回放送時はよくぞ問題なく放送できたのだと、ある意味感心する。

「サザエさん」の再放送について、それぞれの立場で、さまざまな思惑があったのだろうが、視聴者のことを考えて、もう少し歩みほってほしかったように思える。今からでも、火曜日のサザエさん復活があってもいいのではないでしょうか。



ちなみに、僕が弘前にいた4年の間で、終わってしまったフジテレビの番組がほかにもあった。
上記「なるほど! ザ・ワールド」、「FNNスーパータイム(1997年3月)」、「キテレツ大百科(1996年6月)」など。
なるほど~の実質後継番組(水曜に移ったが、旭化成単独提供)である「メトロポリタンジャーニー」というのを、帰省していた時に数回見て、おもしろいと思ったが、1年で終わってしまった。
唯一、キテレツは青森でも見られた。青森テレビで土曜早朝に、だいぶ遅れて放送されていた。その後、アニマックスで見た回もあるが、最終回は見ていない。というか、見たくない。



最後に、アニメ再放送終了25周年よりも、大切かもしれない記念日もまもなく来る。2022年11月22日。
原作の設定において、サザエさんは1922(大正11)年11月22日だそうなので、生誕100年。100歳の誕生日!(原作内では永遠の23歳)
アニメ版では、永遠の24歳であり、未年生まれなので、一致していない(1922年は戌年)。
同い年なのはJR左沢線と水木しげる、三浦綾子、瀬戸内寂聴、丹波哲郎など。長谷川町子は1920年生まれ。
【23日追記】100歳の誕生日である2022年11月22日。ツイッターでは、そのことに触れた人が多少いたものの、トレンドワードになるようなことも、報道されることもなく、静かな誕生日だった。


【2024年11月26日追記】2024年11月26日(火曜日)の19時から2時間、フジテレビ系で「国民的アニメの祭典サザエさん55周年SP◆全放送回から厳選!意外な真実41連発」が放送。
その冒頭30分は、「27年ぶりに復活!火曜の『サザエさん』」として、1985年11月26日に放送された(再放送された)番組を、ほぼそのまま放送。浜さん一家(ミツコさんは出なかった)や三河屋の三平さんが登場。本放送(初回放送)がいつだったかは、明らかにされなかった。
オープニング・エンディングは、堀江さん歌唱の曲(3・5代目)と映像だった。記憶では、1985年は4代目だったような気がするのだが… なお、エンディングの映像は、季節に応じた内容になっていたのを思い出した(日曜日のように毎年作り変えるのではなく、毎年使いまわしていたのかも)。
火曜日に見るサザエさんは、やっぱり格別だった。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする