ごくたまに通る、秋田市土崎の裏道。
先日、その沿道にある神社の敷地、町内会館的建物と道路の間のわずかなスペースに、大きな木があるのに気付いた。
今までも漠然と目に入っていたが、神社正面にある桜とまとめて認識してしまい、何の木か気にも留めないでいた。
逆光です
路上を覆うように伸びた枝に付いた葉を見ると、
桜などじゃない!
若葉ということもあるが、柔らかそうな羽のような葉。「羽状複葉」という構造。枝にはトゲもある。
ということは、秋田では珍しくもない、通称「アカシア」ことニセアカシア/ハリエンジュかと思いかけた。
だけど、幹は大木の風情があるどっしりとしたものだし、そもそもこういう場所にニセアカシアが生えているのって見たことがない。さらに、
枝
「羽状複葉」は、軸の先端に1枚葉(頂小葉)が付く「奇数羽状複葉」と、それがない「偶数羽状複葉」に分けられる。※実際の枚数が偶数奇数かではなく、あくまでも頂小葉の有無で判断。
この木は偶数羽状複葉だが、ニセアカシアは奇数羽状複葉だったはず。
それ以前に、幹に目をやると、
トゲトゲ
栗のイガのようなトゲが密集している。いや、トゲの途中から向きが違うトゲが生えているから、栗などより手強い。
これはもしや、話には聞いていた「サイカチ」?
いつか実物、特に花を見てみたいと思っていたが、こんな所にあったとは。つぼみがあるから、もう少しすれば花が見られる?
房状のつぼみ
この時、クマバチが飛び交っていたので、よく探してみると、
低い位置に花が咲いていた!
これがサイカチの花か!
花弁は目立たず緑色に近い黄色、おしべめしべがブラシのように目立ち、葉より短い(10センチ強)房。強い香りはなかったと思う。
想像していたサイカチの花と、けっこう違う。
ニセアカシア、フジ、キングサリなど、初夏に咲く、比較的近縁の植物たちの先入観があって、もっと色鮮やかな花弁で、もっと長い房だと思いこんでいた。
なお、黄色い鮮やかなキングサリのような花が咲く「ナンバンサイカチ」というのもあるが、サイカチとは別属なので直接の関係はないはず。
この写真は6月中旬撮影。先週末再訪したところ、もう花はなくなっていた。
ネットによればサイカチは、1つの株で雄花、雌花、おしべめしべ両方ある両性花の3種類が咲き、年によって雌雄のバランスが偏るのだそう。
ちなみにケヤキも3種の花が咲くが、これは位置(枝先とは上下とか)で決まるらしい。
花後は、マメ科らしく豆ができる。赤い色(ツタンカーメンのエンドウっぽい色)で、らせん状にカールした、長いさやだそうで、花より目立ちそう。
このさやには、サポニンが含まれて泡立つため、昔は石鹸代わりに使われ、庭などに植えられることもあったそうだ。
なお、条件や個体差なのか、トゲも赤くなるサイカチもあるようだ。
さらに調べると、サイカチはいろいろとおもしろい木。
まず、クヌギ、コナラ同様に樹液がしみ出しやすく、カブトムシやクワガタムシが集まるそうだ。
久保田藩(秋田藩)では、一里塚に植える樹木としてエノキ(秋田市八橋はエノキ)よりも、サイカチを多く植えたとのこと。今も大仙市神岡町・道の駅かみおか付近の「三本杉一里塚」、さらに大仙市豊岡で残っており、豊岡のは「(大きさが?)日本一」とする書籍もあるそうだ。【←29日地名をいろいろ間違っていたので、修正】
横手市増田の内蔵の町並み近くには、江戸時代に菅江真澄も描いた「舟つなぎのサイカチ」も現存。潟上市天王の東湖八坂神社には20本ほど群生する。
「秋田市木かげマップ」によれば、下新城岩城の庚申塚と下北手宝川の県道沿いにある。
土崎の裏道も、明治時代頃は町と田んぼの境の道だったようだから、もしかしたら、下新城や下北手のような、沿道のランドマークのような意味で植えられたのかもしれない。
また、土崎神明社隣、D51のある「土崎街区公園」にも、昔はサイカチがあったとのこと。
それにしても、一里塚とか舟つなぎとか不特定多数が利用する場所に、こんなトゲの多い木を植えたら、今の感覚では危なっかしくてしょうがない。うっかりもたれかかったりして、痛い思いをした人はいなかったのだろうか。
ところで、2017年末の記事で、サイカチのことに触れていた。
レレレのおじさんの初代などを務めた声優・槐 柳二さんが亡くなったこと。
昔、「槐」が気になって調べて、「さいかち」であることを知り、それはこのサイカチであると思いこんで(花は上記の通りさらに勘違い)いた。トゲトゲの姿を見れば「木偏に鬼」が正しそうだが、違うのだった。
読みは「さいかち」だけど、意味としては「エンジュ」を指すそうだ。ややこしい。
ニセアカシア=ハリエンジュとは別に、エンジュという種もあるのだが、これまたややこしい。
「槐」で調べると、秋田市に「雄和妙法字槐下」という地名があった。「さいかちした」。
雄物川沿いで、秋田市街地から空港へ向かう県道でも通過する。雄和市民サービスセンターを過ぎて秋田国際ダリア園の手前、田んぼに民家が点在する辺り。じゃあ、エンジュの木が生えていたということ?
【10月23日】能代市にはズバリ「槐」という大字が存在した。奥羽本線鶴形駅の米代川対岸から山側にかけての一帯。両隣の轟地区と常盤地区は見聞きする地名だが、槐は知らなかった。
Googleストリートビューで、土崎のサイカチを見ると、2015年夏にはばっさりと剪定され(トゲ対応で割り増し料金取られそう?)、2019年秋には現在並みの枝ぶりになっていた。
今もしっかりと管理され、木も元気ということになろう。また観察させてもらいます。続きはこちら。
先日、その沿道にある神社の敷地、町内会館的建物と道路の間のわずかなスペースに、大きな木があるのに気付いた。
今までも漠然と目に入っていたが、神社正面にある桜とまとめて認識してしまい、何の木か気にも留めないでいた。
逆光です
路上を覆うように伸びた枝に付いた葉を見ると、
桜などじゃない!
若葉ということもあるが、柔らかそうな羽のような葉。「羽状複葉」という構造。枝にはトゲもある。
ということは、秋田では珍しくもない、通称「アカシア」ことニセアカシア/ハリエンジュかと思いかけた。
だけど、幹は大木の風情があるどっしりとしたものだし、そもそもこういう場所にニセアカシアが生えているのって見たことがない。さらに、
枝
「羽状複葉」は、軸の先端に1枚葉(頂小葉)が付く「奇数羽状複葉」と、それがない「偶数羽状複葉」に分けられる。※実際の枚数が偶数奇数かではなく、あくまでも頂小葉の有無で判断。
この木は偶数羽状複葉だが、ニセアカシアは奇数羽状複葉だったはず。
それ以前に、幹に目をやると、
トゲトゲ
栗のイガのようなトゲが密集している。いや、トゲの途中から向きが違うトゲが生えているから、栗などより手強い。
これはもしや、話には聞いていた「サイカチ」?
いつか実物、特に花を見てみたいと思っていたが、こんな所にあったとは。つぼみがあるから、もう少しすれば花が見られる?
房状のつぼみ
この時、クマバチが飛び交っていたので、よく探してみると、
低い位置に花が咲いていた!
これがサイカチの花か!
花弁は目立たず緑色に近い黄色、おしべめしべがブラシのように目立ち、葉より短い(10センチ強)房。強い香りはなかったと思う。
想像していたサイカチの花と、けっこう違う。
ニセアカシア、フジ、キングサリなど、初夏に咲く、比較的近縁の植物たちの先入観があって、もっと色鮮やかな花弁で、もっと長い房だと思いこんでいた。
なお、黄色い鮮やかなキングサリのような花が咲く「ナンバンサイカチ」というのもあるが、サイカチとは別属なので直接の関係はないはず。
この写真は6月中旬撮影。先週末再訪したところ、もう花はなくなっていた。
ネットによればサイカチは、1つの株で雄花、雌花、おしべめしべ両方ある両性花の3種類が咲き、年によって雌雄のバランスが偏るのだそう。
ちなみにケヤキも3種の花が咲くが、これは位置(枝先とは上下とか)で決まるらしい。
花後は、マメ科らしく豆ができる。赤い色(ツタンカーメンのエンドウっぽい色)で、らせん状にカールした、長いさやだそうで、花より目立ちそう。
このさやには、サポニンが含まれて泡立つため、昔は石鹸代わりに使われ、庭などに植えられることもあったそうだ。
なお、条件や個体差なのか、トゲも赤くなるサイカチもあるようだ。
さらに調べると、サイカチはいろいろとおもしろい木。
まず、クヌギ、コナラ同様に樹液がしみ出しやすく、カブトムシやクワガタムシが集まるそうだ。
久保田藩(秋田藩)では、一里塚に植える樹木としてエノキ(秋田市八橋はエノキ)よりも、サイカチを多く植えたとのこと。今も大仙市神岡町・道の駅かみおか付近の「三本杉一里塚」、さらに大仙市豊岡で残っており、豊岡のは「(大きさが?)日本一」とする書籍もあるそうだ。【←29日地名をいろいろ間違っていたので、修正】
横手市増田の内蔵の町並み近くには、江戸時代に菅江真澄も描いた「舟つなぎのサイカチ」も現存。潟上市天王の東湖八坂神社には20本ほど群生する。
「秋田市木かげマップ」によれば、下新城岩城の庚申塚と下北手宝川の県道沿いにある。
土崎の裏道も、明治時代頃は町と田んぼの境の道だったようだから、もしかしたら、下新城や下北手のような、沿道のランドマークのような意味で植えられたのかもしれない。
また、土崎神明社隣、D51のある「土崎街区公園」にも、昔はサイカチがあったとのこと。
それにしても、一里塚とか舟つなぎとか不特定多数が利用する場所に、こんなトゲの多い木を植えたら、今の感覚では危なっかしくてしょうがない。うっかりもたれかかったりして、痛い思いをした人はいなかったのだろうか。
ところで、2017年末の記事で、サイカチのことに触れていた。
レレレのおじさんの初代などを務めた声優・槐 柳二さんが亡くなったこと。
昔、「槐」が気になって調べて、「さいかち」であることを知り、それはこのサイカチであると思いこんで(花は上記の通りさらに勘違い)いた。トゲトゲの姿を見れば「木偏に鬼」が正しそうだが、違うのだった。
読みは「さいかち」だけど、意味としては「エンジュ」を指すそうだ。ややこしい。
ニセアカシア=ハリエンジュとは別に、エンジュという種もあるのだが、これまたややこしい。
「槐」で調べると、秋田市に「雄和妙法字槐下」という地名があった。「さいかちした」。
雄物川沿いで、秋田市街地から空港へ向かう県道でも通過する。雄和市民サービスセンターを過ぎて秋田国際ダリア園の手前、田んぼに民家が点在する辺り。じゃあ、エンジュの木が生えていたということ?
【10月23日】能代市にはズバリ「槐」という大字が存在した。奥羽本線鶴形駅の米代川対岸から山側にかけての一帯。両隣の轟地区と常盤地区は見聞きする地名だが、槐は知らなかった。
Googleストリートビューで、土崎のサイカチを見ると、2015年夏にはばっさりと剪定され(トゲ対応で割り増し料金取られそう?)、2019年秋には現在並みの枝ぶりになっていた。
今もしっかりと管理され、木も元気ということになろう。また観察させてもらいます。続きはこちら。
表街道とならび裏道は南側に旧国道に繋がり、こちらが旧羽州街道と仰る方もおります。
古刹や奈良時代からの神社も並びます。
多少のお店(跡?)があったり、ポスト(小型ですが)も設置されていて、昔は主要な道だったのかもと考えていました。旧旧国道だったのでしょうか。
大きなエノキがある寺小山も、この道筋ですね。
付近の踏切を渡ると旧飯田街道で上新城に向かいますね。
線路ができる以前は、ルートが少し違い、本線の築堤もなかったでしょうから、視界が開けていたのでしょう。