広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

不ぞろいの看板フォント

2022-07-18 20:04:46 | 文字・書体
お店の看板のフォント(書体)の話。
※2021年8月にアップしようと思って、アップしそびれていた記事です。現状は違っている可能性もあります。
秋田市の泉と八橋の間の新国道(県道56号)を通ると、気になってしまう看板がある。

昔は、ケンタッキーフライドチキン八橋店とピザハットが入っていた建物。2018年8月2日からやきとりのチェーン店になっている。
店の軒先の横書き文字は、「炭火焼き」「やきとりの扇屋」。
そのフォント
「扇屋」は、フォントワークス「くろかね EB」。明朝体やゴシック体という既存のくくりに入らないフォント。最近、テレビのバラエティ番組のテロップでわりと見かけるフォントで、「て」が「T」に見えるなど、かなりクセがある。でも、この使いかたでは、角ゴシック体とあまり違いが分からない。

「炭火焼き」「やきとりの」は、一見、全部同じ、“モダンスタイル”の角ゴシック体フォントに見えるが、2書体使われている。「炭火焼き」と「やきとりの」で違う。だって「き」の形が違うもの。3画目と4画目が、炭火焼きのほうはつながり、やきとりのほうは離れている。
やきとりのほうは、この点(+1、2画目が右側で少し上がる)が特徴的で、よく見かけるモリサワ「新ゴ」。

炭火焼きのほうは、字游工房「ヒラギノ角ゴシック体(ヒラギノ角ゴ)」か。高速道路の標識のW5よりも太いウエイト(W8かW9)で、あまり見たことがないはずだけど、これもヒラギノ角ゴなのか。そして新ゴとけっこう似ているのが意外。同じフォントでも太さで印象が違うもんだ。
もし「き」あるいは「さ」の文字がなければ、2フォントを混在していることに気付かなかったかもしれない。
なお、建物とは別の2つの看板にも「やきとり」の文字があり、それは新ゴ。


色は反転しているが、大きさは同じ「炭火焼き」と「やきとり」。同じくくりの、異なるフォントを並べて使うのって…素人には、そうした意味が分からない。
一般的に「1つの場面で、書体をいくつも使いすぎない」のが基本だと思うし、どちらかといえば「同じ場面で使うフォントは、シリーズ(メーカー)をそろえる」ものだと思っていた。
こういう看板って、特にチェーン店では、専門家がデザインをするのだと思う。何らかの意図があって、こうしたのか。



秋田市内には、同じ県道56号沿いの茨島にもこの店がある。
2012年時点ではとんかつ屋が入っていて、2015年には今のやきとり屋に代わったが、看板のデザインは現行と別。2017年~2019年の間に、今の看板に替わった。

大小5つの「やきとり」は新ゴ、1つだけの「炭火焼き」はヒラギノ。
ということは、理由はともかく、このチェーン店ではそのようにフォントを使い分けているのかと思った。ところが、公式サイトを見ると、
公式ホームページより
「やきとり」の「き」がつながっていて、「炭火焼き」と同じ。新ゴを使っていない。

Googleマップストリートビューで、秋田県外の店舗を見ると、
ストリートビューより宇都宮宮内店
秋田とは色使いは異なるものの、ほぼ同じ看板。地上の縦書きの「やきとり」だけはヒラギノ。その他の「き」は、炭火焼きもやきとりも、3・4画目が離れているが新ゴとはまた別の「き」。1つの縦書き看板の中で、違う組み合わせで2ゴシック体が混在している。
この新たなフォントは、モリサワ「UD新ゴNT」のようだ。新ゴのユニバーサルデザイン版の1つで、かなを「ネオツデイ(のUD版)」と組み合わせたフォント。
※NHKの全国ニュースなどの字幕のフォントが、今春から変更されている。それもモリサワの新ゴのUD新ゴ版だが、NTが付かない、かなも含めて本家新ゴをベースにした「UD新ゴ」という別製品。

UD書体だから、宇都宮のほうが新しい看板かと思いきや、2015年時点で設置されていた。その後できた秋田の店では、UDから非UDフォントに変えたことになる。

ストリートビューより郡山八山田店。2017~2018年設置
右の炭火焼きだけUD新ゴNT、その他3つはヒラギノ。郡山市内の他2店舗も同じような感じ。


以上、どの店でも、それぞれ2つのゴシック体フォントが使われていた。だが、その使い分けの法則は見いだせなかった。
ただ、3つは混在していないし、この3つ以外のゴシック体は使われていなそうで、ある程度の指定はされているのだろうか。
もしかしたら、
・企業内部で何らかの暗号的な使い分けがある。
・フランチャイズ契約した企業、あるいは看板業者が違うなどにより、厳密な統一が図れなかった(ある程度の地域を単位にまちまちになった)。
のか。
地域や制作時期で違ってしまうのは許容できるとしても、1つの看板に2つのゴシック体を混在させるのは、美しくはないと思う。小学生だって「き」の違いは気付く。
運営企業が無頓着だったとしても、店舗や看板を作ったデザインのプロが、これを許してしまったのだろうか。
今、デザイン業界で使われているパソコンには、大手メーカーのフォントが使い放題の契約がされていることが多いようだ。だから、プロでも、気安く、必要以上にフォントを使ってしまうようなことがあるのだろうか。

予定通りならば、あと2年もすれば写研の書体も、モリサワによってデジタル化されて、それに加わることになるだろう。
写研のモダンゴシックと言えば「ゴナ」。モリサワの新ゴとは、ゴタゴタがあったそうで、デジタル化でゴナと新ゴが同じ契約内で使用できるのは、隔世の感。ただ、今となっては新ゴが事実上の主流で、ヒラギノなどその他同系統フォントも定着した中に、ゴナが食いこむ余地があるのか。素人ながら興味がある。
だけど、こういう無頓着な看板ならば、ゴナの「炭火焼き やきとり」が現れるかもしれない。

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4 コメント

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ゴナの入る隙 (FMEN)
2022-07-18 22:46:36
こうまでUDが進むと採用してもらえなくなる予感もします。
今はテレビだけでなく配信の時代だから0にはならないと思いますが、どうなるか。
視認性自体は写研はさほど悪くないと思いますけど。
返信する
一度見たら忘れられない (あんなか)
2022-07-19 04:34:55
昔、Firefoxというブラウザがアップデート事にフォントが変わってしまい違和感でかなり困った事があります。
一番フォントが綺麗なのはsafariでしたがWindows版を止めてしまったのが残念です。
前にもコメント欄で書いた気がするのですが
CNAで放送しているフランスの国際テレビTV5 MONDE(テーヴェサンク モンド)の日本語字幕のフォントが独特で一度見たら忘れられないです。
小さい文字ながら視認性が良くて見やすい不思議なフォントです。
この局はフランスの地方を紹介したりとなかなか面白いです。

ところで昨日気が付いたのですが秋田市内でFMの周波数88.8MHzで小川のせせらぎとウグイスの声をひたすら流す局を見つけました。
個人が勝手にやっているミニFMの類いでは無くてCFMの試験電波の様な気がします。
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Unknown (Unknown)
2022-07-19 17:00:33
びっくりドンキーとかシャトレーゼのように、店によって内外装などが違うというのがありますが、看板にもそういった類があるのかもしれません。

それはそれで面白いと思います。
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コメントありがとうございます (taic02)
2022-07-20 19:06:22
>FMENさん
あるいは「UDゴナ」を新開発するかもしれないですが、そうだとしても、フォントが飽和状態の現状では、よほどのこだわりがない限りは…
際立った個性があり、まさに見やすいナールはまた違いそうですがでも、スーラからシェアをどれほど奪還できるでしょう。

>あんなかさん
パソコンはユーザー個々の好みも、それぞれの環境や設定も違うので、追求すると奥が深いものです。
もともとは紙の印刷物用だった活字が、看板、テレビ、パソコンと用途が広がって今があると思えば、感慨深いです。

謎の88.8MHZですか。流れる音は心地良くても、正体が分からないと何か気味悪くもありますね。

>Unknownさん
中古物件に入居することもあり、看板の規格統一が難しい面はありそうです。
まるっきり違う種類の書体にすれば明確ですが、微妙に違うだけのフォントを複数混ぜるというのが、少々不思議です。
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