5月の信州旅行記(前回の記事)。
長野の細かい話題は後日アップするかもしれませんが、とりあえず帰路へ。
長野市から秋田市への移動は、やはり新幹線は極力使いたくないし、行きと同一ルートでも芸がない。
検討の結果、観光列車を楽しみつつ、長岡へ抜けて、上越新幹線~特急「いなほ」で秋田へ戻ることにした。長岡から先は行きと同じになってしまうけど仕方ない。
最初に長野から観光列車に乗る。長野と新潟県の十日町の間86.1キロを走る、飯山線の臨時快速「おいこっと」。全席指定で冬期以外は土日などに1日1往復運行。(冬期は運転区間を短縮して2往復)
路線としての飯山線は、豊野から十日町を経て越後川口までの96.7キロ。
長野-豊野10.8キロは、かつての信越本線である第3セクター・しなの鉄道北しなの線に乗り入れる。
飯山線は、千曲川・信濃川(県で呼び名が異なる同じ川)に沿って豪雪地帯を行く路線。これまであまり意識したことはなかったが、知れば良さそうな路線であり、良さそうな列車だ。
列車名の「おいこっと」は方言かと思ってしまうが、「TOKYO」を逆にした「OYKOT」。東京と対極にある、ふるさと(田舎)を走る列車という意味。北陸新幹線金沢開業の2015年春に運行を開始。
上記の通り、おいこっとは、しなの鉄道とJRを通して運行する。
指定席券は「えきねっと」で、2社またがった区間でも問題なく購入できる。しなの鉄道部分の追加料金はなく、520円。
乗車券は、長野→秋田としたいところ(値段は変わらないけど、手間として楽だから)だが、連絡運輸の設定上、またがっては発券できなかった。豊野→秋田7560円のJR部分のみ事前に買って、長野→豊野250円は長野駅の券売機で当日購入。
長野駅の近距離券売機は、「JR優先」と「しなの鉄道優先」で2~3台ずつ分けられていた。初期画面がJRになっているか、しなの鉄道になっているかの違いらしく、切り替えボタンを押せば、どちらのきっぷも買えるようだ。しなの鉄道区間のみの乗車券でも、オレンジカードが使えた。
ちなみに、行きの直江津・上越妙高経由での秋田→長野の乗車券は7800円。しらゆき・はくたかの特急券がかからない分、飯山線経由のほうが安い。
下りおいこっとは、長野9時15分発。十日町着は11時48分。所要時間としては各駅停車と同じくらいだけど、各駅停車の直通列車はなく、途中の戸狩野沢温泉で乗り換えが必要なことが多い。
松本・南小谷行き「リゾートビューふるさと」は9時04分発なので、いずれも朝に東京から新幹線で来て乗り継ぐことができる。
長野駅発車標に2つの観光快速が並ぶ(英語表示ではどちらも「Rapid」のみ)
この日は「土日きっぷ」が使える日だったので、それらしき旅行客が多かった。
おいこっとの車両は、飯山線の定期列車のほか花輪線などでもおなじみのキハ110系(※)気動車を改造した2両編成。※2両とも、両側に運転台がある「キハ110形」。飯山線の定期普通列車に入る場合もある。
車体はクリーム色(アイボリー)とエンジ色の専用塗装で、1両ごとに正面~ドアにかけての色が反転している。側窓部分は同じ。
色使いとしては国鉄時代の特急列車や、長野電鉄の路線バスを連想させられる。
この2両、実は製造当初は秋田に配置されていた。
秋田新幹線開業に先立って、1996年3月から1年間、田沢湖線を運休して工事していた間、代替として北上線回りで「秋田リレー号」という特急が運行されていた。
JR東日本としては民営化後初で唯一の気動車特急かつ期間限定。そこで、普通列車用のキハ110系を特急仕様で投入し、運行終了後、普通列車用に転用する前提で、新車が製造された。
予定通り、普通列車用に転用(座席交換・塗装変更)され、その転属先が飯山線だった。おいこっとになる前は、塗装は標準だが、車内は窓向きに座席がある「眺望車ふるさと」として、若干観光目的の車両だったそうだ。
【26日追記】秋田リレー号用は20両製造(キハ111、112形を含む)され、改造後に新津に配置されたものもあったが、ほとんどが長野へ配置された。
おいこっと
先頭がエンジ色ベースの2号車・キハ110-236(秋田リレー号時代は-314)、1号車が白ベースのキハ110-235(同-313)。
車内外には“雪ん子”のイラストに「いいかわ、いいそら、いいやません。」と書かれたおいこっとのロゴ(アイコン)のほか、沿線の中野市出身の高野辰之作詞の唱歌「故郷(ふるさと)」に歌いこまれた「兎」「小鮒」なども影絵風のマークにして随所にデザインされている。
車内へ。
床が板張りだったり、座席がかすり風(?)の和風柄だったり温かい雰囲気で、「おおっ!」とか「わーっ!」と声を上げたくなる第一印象。「古民家風」のデザインだそう。
ロングシートと4人掛けボックスシートの布地。2人掛け側は紺色
ただし、よく見ると、ボックスシートは4人掛けと2人掛けで吊り手(つり革)がぶら下がり、端はロングシート&優先席、ワンマン運転用機器、バス用部品を転用したスピーカーや冷房吹き出し口など、キハ110系らしさも随所に残っている。
定期普通列車としても運用されるから、こうなったのだろう。【27日追記】客席の窓も原型のままだが、元々大きめなので眺望は悪くない。
天井の運賃表示器には、おいこっとロゴ入りカバー
上の写真手前の和風柄の紺色の布がかかっているのは、整理券発行器。
花輪線などでは、ビニール製っぽいグレーのカバーがかかっている(運賃表示器のと同じようなもの)。この布カバーは、ジャストサイズで、ボディの凹凸にも一致している。メーカーへの特注品なのか、器用なJR関係者の手作り品なのか。
運賃箱は仕切り兼用でむき出しのJR東日本標準配置だった。
運賃箱は秋田支社でもかつて使われていた、レシップ製のバス兼用の銀色のもの
全席指定のおいこっとでは、ロングシート部分も指定席として発売される(1両につき12席)ので、荷棚のパイプに席番のシールが貼ってあった。
国鉄時代製造のキハ40系では、ロングシート部分にも律儀に席番が振られていた(後のリニューアル時に撤去された車もある)ものだが、最近の車両でロングシートに番号あって、かつ実際に指定席として発売する例はそうそうないのではないだろうか。
車窓を楽しむ列車である以上、席料を払った客を窓を背にして座るロングシートに座らせるってのは、いかがなものだろうか。
なお、ロングシートは、原型よりは座り心地がいいソファ風のものに交換されてはいる。また、優先席は普通列車運用時の適用で、全席指定の「おいこっと」運用時は関係ない。
戸袋のため窓が半分ふさがれていて、いい席ではない
えきねっとでは、座席表(シートマップ)で位置を指定して予約できる列車が多いけれど、おいこっとは対象外。
イヤな予感がしたけれど、案の定、ロングシートに割り当てられてしまった。(公式ホームページで座席配置は分かる)
おそらく1名で予約するとロングシートに優先して割り振られそう。周りの席にもひとり旅の方々が3人ほど。
ロングシートは、2席ごとにテーブル収納を兼ねたひじかけで区切られ、その2席ごとに同番のA席・B席になっている。みなさん、進行方向後方のA席に割り振られており、ぎちぎちに隣り合わないようには配慮されていそう。
僕は後方の1号車で、長野発車時にはボックス席も含めてそれなりに埋まっていたが、前の2号車のほうが乗車率が良かった。十日町での蕎麦券付きパックツアーなどの客は2号車なのかも。
ボックス席では、2両とも2人掛けのほうが千曲川側。ただし朝は逆光気味。
列車は徐々に乗客が降り、ボックスシート部分もかなり空いたので、僕は途中からそちらに移らせてもだった。
リゾートビューふるさとでは、(形式上は)ワンマン運転区間があったが、おいこっとは全区間車掌が乗務。この日は2人乗務。こちらも、端末で確認するので車内検札はなし。
ほかに、案内や車内販売をする「おいこっと あてんだんと」が、もんぺ姿で乗務。てきぱきときめ細かな仕事ぶりが印象的だった。NRE松本列車営業支店所属なので、普段は「あずさ」も担当しているのだろう。
さらに、スーツ姿の男性が発車前の車内をうろうろしていて、我々ロングシートの客の前を通るたびにやけに恐縮している。腰が低く服装が場違いな鉄道マニアかと思ったら、JR東日本の名札を付けていて、何かの業務で乗りこんだ社員のようだ(社員にしても腰は低い)。彼は、途中の飯山駅で駅員と会話していたのを最後に見なくなった。
発車後、アテンダントからの肉声放送もあるが、車窓や沿線の案内は自動放送で行われる。
自動放送は、俳優・常田富士男氏によるもの。飯山線とは千曲川の対岸に位置する木島平村(鉄道は通っていない)出身。僕は常田を「つねだ」と読むのだと思っていたけれど、「ときた」さんだそう。
常田さんは、僕たちの世代には、「まんが日本昔ばなし」で市原悦子さんと2人で全登場人物の声を当てていたのが、強烈な印象。当然、若い人は知るよしもなく、おいこっと乗車を伝えるブログで「おじいさんが放送している」と表現されていた方がいた。
どんな列車でも、車内放送の音量は大事。特に気動車では加速時はエンジン音にかき消されてしまうこともある。
今回は、自動放送が始まった瞬間、明らかに音量が小さく、流れているのは分かるけれど、内容は聞き取れない状態。これでは残念だな、車掌が気づいて上げてほしいなと思った瞬間、前の車両にいたアテンダントさんとスーツの社員さんが、後部へダッシュ! 間もなく、充分な音量になった。このおふたりが、音量を上げて(もしくは車掌に上げさせて)くれたのだろう。感謝。
っていうか、本来は車掌が音量を確認して調整すべきでしょう。車掌は何をやってるの?
しなののタイミング悪い車内検札、リゾートビューふるさとの無意味に思える乗務など、長野の車掌さんにはもうひとがんばりお願いしたい。
ただ、指定券を持たずに乗ってきた客が実際に複数いて車内で対応していたし、行き違いがないのに乗降を扱わない運転停車(五能線北金ヶ沢駅のような、停まってすぐに発車するもの。車掌は信号を確認し、運転士にブザーで合図しなければならない)する駅がいくつかあった。車窓に合わせてタイミングを見て自動放送を流すのも車掌の業務だろうから、それなりにやることはあるのは分かりますが。
発車してしばらくすると、アテンダントが巡回。全員にこんなものを配ってくれる。途中駅からの乗客には、都度配布。
車内販売のメニュー、おしぼり、そして「野沢菜漬」
ウエルカムドリンクならぬ、ウエルカム漬け物。刻んだしょうゆ漬け30グラムで、木島平村の「岡本商店」製。要冷蔵扱いなので、持ち帰って後で食べる時は自己責任で。
指定券だけで漬け物がもらえる列車なんて、おいこっとだけではないだろうか。車内の乗客が揃ってポリポリ漬け物を食べるのは、ほほえましい光景。
リゾートビューふるさととは異なり、車内販売もちゃんとワゴン(小さめ?)で客席へ来てくれた。Suica決済可。ホットコーヒーは下りのみの扱いだそうだが、そば茶、サイダー、地酒など地元の飲み物あり。アイスクリームは、スジャータのバニラのほか、山梨の「桔梗信玄餅アイス」も。
飯山線に入るとすぐ、千曲川が見えてくる。
さすがに雄大
長野から40分ほどで、2つ目の停車駅、飯山。北陸新幹線の停車駅でもあり、新幹線なら長野からたった10分。
飯山駅の路線名のみならず、ディスプレイの「iiyama」の飯山である。(長野県には飯田市、飯田線もあって、ちょっとまぎらわしい。場所はぜんぜん別)
16分の停車。
改札の外で、地酒の振る舞いと、地元産品の販売「おいこっとまるしぇ」が行われるとのことで、行ってみた。例によって改札口はフリーパス状態。
新幹線開業時に旧駅から300メートル移転した飯山駅は、ややコンパクトな橋上駅舎。
自由通路には長い木のベンチ
急いで駅舎の外観も拝見。メインの「斑尾口」側。
階段の下に砂利があって、子どもが遊んでいる?
秋田や津軽で親しまれている洋菓子「バナナボート」は、飯山市でも複数の菓子店が作っているそう。出店や駅で売っていないかちょっと期待したけれど、見当たらなかった。おやきや、日持ちするお菓子類はあり。【2021年6月17日追記・2021年時点では、バナナボートも売っているとの情報あり。】
ホームには、駅員たちが多数出て歓迎。
小型おいこっと。本物のほうは窓周りはなかなか派手なデザイン
車両側面の行き先表示はLEDになっているが、赤文字で「快速」のみの表示。列車名、行き先、全席指定など、表示すべきでしょう。
2号車【28日訂正】1号車は白ベース
飯山で降りた(一時下車でなく、乗車を終えたという意味)人はあまりおらず、新たに乗りこんできた人がちらほら。新幹線からの乗り継ぎか。
指定券を持たずにホームに来て、車掌から購入していた人が複数いた。
普通列車はこの1時間後までないため、やむなく乗った人もいたかもしれないが、近くの席に座った家族連れ(娘さんが20代くらい)には、内装も、野沢菜漬けも好評で、偶然おいこっとに乗車できたことをとても喜んでいた。
次の停車駅は、すぐ隣の北飯山。まだ飯山市街地で「高橋まゆみ人形館」の最寄り駅だそう。おいこっとを喜んでいたご一家は、ここで降りてしまった。
たった3分の乗車に520円も払っているわけだけど、乗車券(もしくは土日パス)は買ってしまっていて、飯山駅からバスやタクシーに乗るよりは…ということかな。おいこっとを楽しまれていたのは何より。
長くなってしまったので、今回はここまで。
大したものはないのに、なぜか楽しいおいこっとの旅は続きます。
【25日追記】キハ110系は加速と乗り心地が良く、個人的に好きな車両。そのこともおいこっとの好感度に貢献していそう。
長野の細かい話題は後日アップするかもしれませんが、とりあえず帰路へ。
長野市から秋田市への移動は、やはり新幹線は極力使いたくないし、行きと同一ルートでも芸がない。
検討の結果、観光列車を楽しみつつ、長岡へ抜けて、上越新幹線~特急「いなほ」で秋田へ戻ることにした。長岡から先は行きと同じになってしまうけど仕方ない。
最初に長野から観光列車に乗る。長野と新潟県の十日町の間86.1キロを走る、飯山線の臨時快速「おいこっと」。全席指定で冬期以外は土日などに1日1往復運行。(冬期は運転区間を短縮して2往復)
路線としての飯山線は、豊野から十日町を経て越後川口までの96.7キロ。
長野-豊野10.8キロは、かつての信越本線である第3セクター・しなの鉄道北しなの線に乗り入れる。
飯山線は、千曲川・信濃川(県で呼び名が異なる同じ川)に沿って豪雪地帯を行く路線。これまであまり意識したことはなかったが、知れば良さそうな路線であり、良さそうな列車だ。
列車名の「おいこっと」は方言かと思ってしまうが、「TOKYO」を逆にした「OYKOT」。東京と対極にある、ふるさと(田舎)を走る列車という意味。北陸新幹線金沢開業の2015年春に運行を開始。
上記の通り、おいこっとは、しなの鉄道とJRを通して運行する。
指定席券は「えきねっと」で、2社またがった区間でも問題なく購入できる。しなの鉄道部分の追加料金はなく、520円。
乗車券は、長野→秋田としたいところ(値段は変わらないけど、手間として楽だから)だが、連絡運輸の設定上、またがっては発券できなかった。豊野→秋田7560円のJR部分のみ事前に買って、長野→豊野250円は長野駅の券売機で当日購入。
長野駅の近距離券売機は、「JR優先」と「しなの鉄道優先」で2~3台ずつ分けられていた。初期画面がJRになっているか、しなの鉄道になっているかの違いらしく、切り替えボタンを押せば、どちらのきっぷも買えるようだ。しなの鉄道区間のみの乗車券でも、オレンジカードが使えた。
ちなみに、行きの直江津・上越妙高経由での秋田→長野の乗車券は7800円。しらゆき・はくたかの特急券がかからない分、飯山線経由のほうが安い。
下りおいこっとは、長野9時15分発。十日町着は11時48分。所要時間としては各駅停車と同じくらいだけど、各駅停車の直通列車はなく、途中の戸狩野沢温泉で乗り換えが必要なことが多い。
松本・南小谷行き「リゾートビューふるさと」は9時04分発なので、いずれも朝に東京から新幹線で来て乗り継ぐことができる。
長野駅発車標に2つの観光快速が並ぶ(英語表示ではどちらも「Rapid」のみ)
この日は「土日きっぷ」が使える日だったので、それらしき旅行客が多かった。
おいこっとの車両は、飯山線の定期列車のほか花輪線などでもおなじみのキハ110系(※)気動車を改造した2両編成。※2両とも、両側に運転台がある「キハ110形」。飯山線の定期普通列車に入る場合もある。
車体はクリーム色(アイボリー)とエンジ色の専用塗装で、1両ごとに正面~ドアにかけての色が反転している。側窓部分は同じ。
色使いとしては国鉄時代の特急列車や、長野電鉄の路線バスを連想させられる。
この2両、実は製造当初は秋田に配置されていた。
秋田新幹線開業に先立って、1996年3月から1年間、田沢湖線を運休して工事していた間、代替として北上線回りで「秋田リレー号」という特急が運行されていた。
JR東日本としては民営化後初で唯一の気動車特急かつ期間限定。そこで、普通列車用のキハ110系を特急仕様で投入し、運行終了後、普通列車用に転用する前提で、新車が製造された。
予定通り、普通列車用に転用(座席交換・塗装変更)され、その転属先が飯山線だった。おいこっとになる前は、塗装は標準だが、車内は窓向きに座席がある「眺望車ふるさと」として、若干観光目的の車両だったそうだ。
【26日追記】秋田リレー号用は20両製造(キハ111、112形を含む)され、改造後に新津に配置されたものもあったが、ほとんどが長野へ配置された。
おいこっと
先頭がエンジ色ベースの2号車・キハ110-236(秋田リレー号時代は-314)、1号車が白ベースのキハ110-235(同-313)。
車内外には“雪ん子”のイラストに「いいかわ、いいそら、いいやません。」と書かれたおいこっとのロゴ(アイコン)のほか、沿線の中野市出身の高野辰之作詞の唱歌「故郷(ふるさと)」に歌いこまれた「兎」「小鮒」なども影絵風のマークにして随所にデザインされている。
車内へ。
床が板張りだったり、座席がかすり風(?)の和風柄だったり温かい雰囲気で、「おおっ!」とか「わーっ!」と声を上げたくなる第一印象。「古民家風」のデザインだそう。
ロングシートと4人掛けボックスシートの布地。2人掛け側は紺色
ただし、よく見ると、ボックスシートは4人掛けと2人掛けで吊り手(つり革)がぶら下がり、端はロングシート&優先席、ワンマン運転用機器、バス用部品を転用したスピーカーや冷房吹き出し口など、キハ110系らしさも随所に残っている。
定期普通列車としても運用されるから、こうなったのだろう。【27日追記】客席の窓も原型のままだが、元々大きめなので眺望は悪くない。
天井の運賃表示器には、おいこっとロゴ入りカバー
上の写真手前の和風柄の紺色の布がかかっているのは、整理券発行器。
花輪線などでは、ビニール製っぽいグレーのカバーがかかっている(運賃表示器のと同じようなもの)。この布カバーは、ジャストサイズで、ボディの凹凸にも一致している。メーカーへの特注品なのか、器用なJR関係者の手作り品なのか。
運賃箱は仕切り兼用でむき出しのJR東日本標準配置だった。
運賃箱は秋田支社でもかつて使われていた、レシップ製のバス兼用の銀色のもの
全席指定のおいこっとでは、ロングシート部分も指定席として発売される(1両につき12席)ので、荷棚のパイプに席番のシールが貼ってあった。
国鉄時代製造のキハ40系では、ロングシート部分にも律儀に席番が振られていた(後のリニューアル時に撤去された車もある)ものだが、最近の車両でロングシートに番号あって、かつ実際に指定席として発売する例はそうそうないのではないだろうか。
車窓を楽しむ列車である以上、席料を払った客を窓を背にして座るロングシートに座らせるってのは、いかがなものだろうか。
なお、ロングシートは、原型よりは座り心地がいいソファ風のものに交換されてはいる。また、優先席は普通列車運用時の適用で、全席指定の「おいこっと」運用時は関係ない。
戸袋のため窓が半分ふさがれていて、いい席ではない
えきねっとでは、座席表(シートマップ)で位置を指定して予約できる列車が多いけれど、おいこっとは対象外。
イヤな予感がしたけれど、案の定、ロングシートに割り当てられてしまった。(公式ホームページで座席配置は分かる)
おそらく1名で予約するとロングシートに優先して割り振られそう。周りの席にもひとり旅の方々が3人ほど。
ロングシートは、2席ごとにテーブル収納を兼ねたひじかけで区切られ、その2席ごとに同番のA席・B席になっている。みなさん、進行方向後方のA席に割り振られており、ぎちぎちに隣り合わないようには配慮されていそう。
僕は後方の1号車で、長野発車時にはボックス席も含めてそれなりに埋まっていたが、前の2号車のほうが乗車率が良かった。十日町での蕎麦券付きパックツアーなどの客は2号車なのかも。
ボックス席では、2両とも2人掛けのほうが千曲川側。ただし朝は逆光気味。
列車は徐々に乗客が降り、ボックスシート部分もかなり空いたので、僕は途中からそちらに移らせてもだった。
リゾートビューふるさとでは、(形式上は)ワンマン運転区間があったが、おいこっとは全区間車掌が乗務。この日は2人乗務。こちらも、端末で確認するので車内検札はなし。
ほかに、案内や車内販売をする「おいこっと あてんだんと」が、もんぺ姿で乗務。てきぱきときめ細かな仕事ぶりが印象的だった。NRE松本列車営業支店所属なので、普段は「あずさ」も担当しているのだろう。
さらに、スーツ姿の男性が発車前の車内をうろうろしていて、我々ロングシートの客の前を通るたびにやけに恐縮している。腰が低く服装が場違いな鉄道マニアかと思ったら、JR東日本の名札を付けていて、何かの業務で乗りこんだ社員のようだ(社員にしても腰は低い)。彼は、途中の飯山駅で駅員と会話していたのを最後に見なくなった。
発車後、アテンダントからの肉声放送もあるが、車窓や沿線の案内は自動放送で行われる。
自動放送は、俳優・常田富士男氏によるもの。飯山線とは千曲川の対岸に位置する木島平村(鉄道は通っていない)出身。僕は常田を「つねだ」と読むのだと思っていたけれど、「ときた」さんだそう。
常田さんは、僕たちの世代には、「まんが日本昔ばなし」で市原悦子さんと2人で全登場人物の声を当てていたのが、強烈な印象。当然、若い人は知るよしもなく、おいこっと乗車を伝えるブログで「おじいさんが放送している」と表現されていた方がいた。
どんな列車でも、車内放送の音量は大事。特に気動車では加速時はエンジン音にかき消されてしまうこともある。
今回は、自動放送が始まった瞬間、明らかに音量が小さく、流れているのは分かるけれど、内容は聞き取れない状態。これでは残念だな、車掌が気づいて上げてほしいなと思った瞬間、前の車両にいたアテンダントさんとスーツの社員さんが、後部へダッシュ! 間もなく、充分な音量になった。このおふたりが、音量を上げて(もしくは車掌に上げさせて)くれたのだろう。感謝。
っていうか、本来は車掌が音量を確認して調整すべきでしょう。車掌は何をやってるの?
しなののタイミング悪い車内検札、リゾートビューふるさとの無意味に思える乗務など、長野の車掌さんにはもうひとがんばりお願いしたい。
ただ、指定券を持たずに乗ってきた客が実際に複数いて車内で対応していたし、行き違いがないのに乗降を扱わない運転停車(五能線北金ヶ沢駅のような、停まってすぐに発車するもの。車掌は信号を確認し、運転士にブザーで合図しなければならない)する駅がいくつかあった。車窓に合わせてタイミングを見て自動放送を流すのも車掌の業務だろうから、それなりにやることはあるのは分かりますが。
発車してしばらくすると、アテンダントが巡回。全員にこんなものを配ってくれる。途中駅からの乗客には、都度配布。
車内販売のメニュー、おしぼり、そして「野沢菜漬」
ウエルカムドリンクならぬ、ウエルカム漬け物。刻んだしょうゆ漬け30グラムで、木島平村の「岡本商店」製。要冷蔵扱いなので、持ち帰って後で食べる時は自己責任で。
指定券だけで漬け物がもらえる列車なんて、おいこっとだけではないだろうか。車内の乗客が揃ってポリポリ漬け物を食べるのは、ほほえましい光景。
リゾートビューふるさととは異なり、車内販売もちゃんとワゴン(小さめ?)で客席へ来てくれた。Suica決済可。ホットコーヒーは下りのみの扱いだそうだが、そば茶、サイダー、地酒など地元の飲み物あり。アイスクリームは、スジャータのバニラのほか、山梨の「桔梗信玄餅アイス」も。
飯山線に入るとすぐ、千曲川が見えてくる。
さすがに雄大
長野から40分ほどで、2つ目の停車駅、飯山。北陸新幹線の停車駅でもあり、新幹線なら長野からたった10分。
飯山駅の路線名のみならず、ディスプレイの「iiyama」の飯山である。(長野県には飯田市、飯田線もあって、ちょっとまぎらわしい。場所はぜんぜん別)
16分の停車。
改札の外で、地酒の振る舞いと、地元産品の販売「おいこっとまるしぇ」が行われるとのことで、行ってみた。例によって改札口はフリーパス状態。
新幹線開業時に旧駅から300メートル移転した飯山駅は、ややコンパクトな橋上駅舎。
自由通路には長い木のベンチ
急いで駅舎の外観も拝見。メインの「斑尾口」側。
階段の下に砂利があって、子どもが遊んでいる?
秋田や津軽で親しまれている洋菓子「バナナボート」は、飯山市でも複数の菓子店が作っているそう。出店や駅で売っていないかちょっと期待したけれど、見当たらなかった。おやきや、日持ちするお菓子類はあり。【2021年6月17日追記・2021年時点では、バナナボートも売っているとの情報あり。】
ホームには、駅員たちが多数出て歓迎。
小型おいこっと。本物のほうは窓周りはなかなか派手なデザイン
車両側面の行き先表示はLEDになっているが、赤文字で「快速」のみの表示。列車名、行き先、全席指定など、表示すべきでしょう。
飯山で降りた(一時下車でなく、乗車を終えたという意味)人はあまりおらず、新たに乗りこんできた人がちらほら。新幹線からの乗り継ぎか。
指定券を持たずにホームに来て、車掌から購入していた人が複数いた。
普通列車はこの1時間後までないため、やむなく乗った人もいたかもしれないが、近くの席に座った家族連れ(娘さんが20代くらい)には、内装も、野沢菜漬けも好評で、偶然おいこっとに乗車できたことをとても喜んでいた。
次の停車駅は、すぐ隣の北飯山。まだ飯山市街地で「高橋まゆみ人形館」の最寄り駅だそう。おいこっとを喜んでいたご一家は、ここで降りてしまった。
たった3分の乗車に520円も払っているわけだけど、乗車券(もしくは土日パス)は買ってしまっていて、飯山駅からバスやタクシーに乗るよりは…ということかな。おいこっとを楽しまれていたのは何より。
長くなってしまったので、今回はここまで。
大したものはないのに、なぜか楽しいおいこっとの旅は続きます。
【25日追記】キハ110系は加速と乗り心地が良く、個人的に好きな車両。そのこともおいこっとの好感度に貢献していそう。