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「清少納言のちょっぴり平安博物誌」・まんがゼミナール「枕草子」 その28

2021年11月17日 10時47分31秒 | 読書記

足腰大丈夫な内に出来る限り、不要雑物処分・身辺片付け整理をしよう等と思い込んでからすでに久しいが、正直なかなか進んでいない。それでもここ2~3年には、押し入れや天袋、物置、書棚等に詰まっていた古い書籍類等をかなり大胆に処分してきた。ただ、中には「これ、面白そう・・」等と目が止まり、残してしまった書籍もまだまだ結構有る。その中に、漫画家赤塚不二夫著、元東京学芸大学附属高等学校教諭石井秀夫指導の古典入門まんがゼミナール「枕草子」(学研)が有る。多分、長男か次男かが、受験勉強中に使っていた「枕草子」の解説本・参考書の一つのようだが、錆びついた老脳でもなんとか読めそうな、まんがで描いたくだけた内容、その内いつか目を通してみよう等と仕舞い込んでいたものだ。ながびく新型コロナ禍、不要不急の外出自粛中、ふっと思い出して、やおら引っ張りだしてみた。当然のこと、本格的な「枕草子」解説本、参考書とは異なり、限られたサワリの部分に絞ったものであるが、学生時代に多かれ少なかれ齧っていたはずの日本の代表的な古典、清少納言の「枕草子」も、ほとんど覚えていないし、「古典」に疎く、苦手な人間でも、十分楽しめそうで、御の字の書である。


「清少納言のちょっぴり平安博物雑誌」・まんがゼミナール「枕草子」 その28

第43段 「虫は」
「枕草子」には、「・・ものは」で始まる類聚段に対して、「・・は」で始まる、もう一つの類聚段が有るが、その一つの「虫は」だ。鈴虫はじめ、十種近い虫を取り上げているが、そのほとんどは、当時、和歌に詠まれた虫で、その他にも、名前のおかしさ等で取り上げた虫も有る。清少納言の端切れのよい観察眼がうかがえる段。

(リーン、リーン、リーン!)、虫は、鈴虫。
(その日ぐらーし、その日ぐらーし)、セミは、ひぐらし。
蝶、松虫、きりぎりす、かげろう、蛍、なんてところが、よろしいわね・・・。
ねかずき虫、米つき虫、ともいうこの虫は、なかなか、心掛けのええ虫でおます。
ちっぽけな虫やのに、仏の道の修業でもする心掛けでも、おますのやろか・・・。
(ホトホト)思いもかけない暗い部屋の隅等で、ホトホトぬかずいて回っているのを目にするのは、面白いわ。
夏虫は、たいそうきれいで愛らしい。ともしび近くで物語など読んでおますと、本の上など、飛び回るのが、エレガントやわ。
(ブーン!)、蝿こそは、蚊やノミなどと同じように、憎たらしいものにした方がええ。こんな小さなもの、一人前として取り上げるのも何やけど、いろいろな汚いものにも止まり、湿って脚で顔等に止まるのやから、まこと不潔や。「古事記」など、人の名前に「蝿」と付けられた方は、人生暗いどすえ。
蟻かて、ひどくいやらしものやけど、えらい身軽で水の上をすいすい歩き回ってね。おもろい。
(蟻)えらい独断と偏見の観察や!、今溺れとるとこや、ワイは。


原文だよーん

虫は、鈴虫、ひぐらし、蝶(てふ)、松虫、きりぎりす、はたおり、われから、ひを虫、蛍。みの虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似て、これも恐ろしき心あらむとて、親のあやしき衣(きぬ)ひき着せて、「いま、秋風吹かむ折(おり)ぞ来むとする。待てよ」と言ひ置きて、逃げて往(い)にけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月(はづき)ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり


(注釈)

虫は、鈴虫、ひぐらし、蝶、松虫、きりぎりす、こうろぎ、われから、かげろう、蛍が面白い。みの虫は、じつにしみじみと身にしみる。鬼が産んだので、親の鬼に似て、これも恐ろしい気持ちを持っているだろうというので、もう一方の親が、粗末な着物を着せて、「もうすぐ、秋風が吹く時になったら迎えに来ようと思う。待ってろよ」と言い置いて、実は、逃げて行ってしまったのも知らないで、秋風の音を聞き知って、八月頃になると、「ちちよ、ちちよ」と、いかにも頼りなさそうに鳴くのが、ひどく身にしみてかわいそうだ。
「みの虫」については、それが、鬼の子で、親に捨てらるという俗説に基づいて取り上げ、同情の念が働いている。

 


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