図書館から借りていた 平岩弓枝著 御宿かわせみシリーズ第11弾の作品、「二十六夜待の殺人」(文春文庫)を 読み終えた。
本書には 表題の「二十六夜待の殺人」はじめ 「神霊師・於とね」「女同士」「牡丹屋敷の人々」「源三郎子守唄」「犬の話」「虫の音」「錦秋中仙道」の 連作短編8篇が収録されている。
平岩弓枝著 御宿かわせみ11 「二十六夜待の殺人」
「神霊師・於とね」
遠州の静好堂当主重五郎は 毎年「かわせみ」を定宿にしている。尾張町の茶問屋静好堂千之助は重吾郎の次男がやっている店。その女房お久が死んだ。竹川町の神霊師於とねが関わる事件か?、神林東吾、同心畝源三郎が探っていく。東吾、「どうも女は おっかねえな」
「二十六夜待の殺人」
雑司ヶ谷音羽町(古くは関口村)の目白不動の崖の下、江戸川に死体が浮かんでいた。俳諧の同好の士と二十六日の夜愛染明王のお堂にやってきていた表具師の今井有斎。事故?、殺人?、「月待つと その約束の かねの音 六夜の月 高くなるまで 待たせておいて」
東吾、源三郎、長助等が 解明していく。花札?、掛け軸?、
「女同士」
青山御手大工町の京菓子屋三升屋六右衛門の初孫一太郎がかどわかされた。若夫婦春之助、お美也に うらみを買う心当たりが有るのかどうか?、東吾と源三郎が 原宿村に近い青山百人町の大橋子市郎の屋敷を訪ねると 女房お梅が・・・。
「牡丹屋敷の人々」
「かわせみ」の女主人るいが目を病んで 市ヶ谷御門の前の市ヶ谷八幡の境内に有る茶の木稲荷に願掛けに行き 牡丹屋敷に住む若い小雪と出会う。大川で水死人事件発生、事故?、殺人?、真相は?
「源三郎子守唄」
源三郎の女房になっているお千絵の父親、蔵前の札差江原屋佐兵衛は 1年前に非業に死んでいる。その法要が行われ 東吾も列席、法要中に 長助から呼び出され 素裸の男の死体発見現場へ急行する。密書の行方?、水戸の過激派の影?、その結末は?
「犬の話」
東吾は 狸穴の道場方月館から飯倉、芝口、汐留橋、木挽町、弾正橋へ。八丁堀組屋敷へは向かわず 大川端の「かわせみ」に 辿り着いたのは夜が少々更けていた。
かわせみで迷い犬を飼うことになった。その頃 日本橋本石町の老舗木綿問屋伊豆蔵屋の隠居が数十匹の犬を飼っていて苦情が出ていた。江戸では頻繁に夜盗発生、伊豆蔵屋にも押し入った。盗賊の隠れ家は?、同心源三郎と協力する東吾らが突き止めていく。
「御用だ、神妙にしろ」、捕り物は瞬時であった。
「虫の音」
御殿山から狸穴の道場方月館に帰る途中東吾が出会った若い娘お鈴は道場の弟子内藤長太郎の姉だったが・・・・、るいの勘違いとやきもちがくすぐったい。
「錦秋中仙道」
「かわせみ」に宿泊した木曽の檜細工店の若主人木曽屋新助と深川の老舗漆器問屋宮越屋の娘おしま、おきぬの祝言騒動の真相と顛末は?
写真家の藤森秀郎氏による 巻末の「解説」の中の文節を引用させていただくと、
「どだい時代小説というフィクションの世界を文明溢れる現代の中で捉えようというのだからやっかいな話である・・・」、
御宿かわせみシリーズの各篇の随所に記述されている江戸の町名や地名、そして移動距離感、移動時間感等についても 著者が 軽いスニーカーを履いて万歩計を手に 六本木、隅田川沿いや周辺の下町界隈を精力的に取材活動しながら歩き、あるべき所に、あるべき舞台が存在していると述べている。
江戸大川端(隅田川)、八丁堀、麻布、狸穴、御殿山、深川、品川宿、白金村、牛込、千住・・・・、
次々登場する町名、地名、橋名、川名、・・・、
毎度 簡易江戸古地図をコピーしたものを手元に置いて眺めながら読み進めるようにしているが、老若男女、歩くか駕籠しか 移動手段が無かった江戸時代の距離感覚、時間感覚が 次第に分かってくる。今では ビルが林立していたり、住宅が密集する地帯も 田畑が広がる寂しい農村風景だったりする。そんな江戸の風景を思い描きながら読むのが時代小説の楽しいところだ。