図書館から借りていた 磯田道史著 「武士の家計簿」(「加賀藩御算用者」の幕末維新) (新潮新書)を 読み終えた。
著者の歴史学者 磯田道史氏は 現在 テレビ番組等にも多数出演されておられ その卓越した歴史解釈に耳を傾けることもしばしばあるが 著作を読むのは 初めてである。
本書は 著者が 神田神保町の古書店の販売目録の中から見つけた 「金沢藩士猪山家文書」という武家文書、類を見ない完全な姿で遺されていた「猪山家の家計簿」を 解明、分析、研究され、幕末から、明治、大正時代へ、武士から士族への激動期、教科書では読み取れない近代日本の実態像を 分り易い文章で復元している。
「武士の家計簿」(「加賀藩御算用者」の幕末維新)
本書は いわゆる 「時代小説」ではない。
歴史学者 磯田道史氏が見出した 国史研究史上初の発見とも言われる 「金沢藩士猪山家文書」、その中には 他に類を見ない微に入り細を穿った武家の家計簿が完全な姿で遺っていた。
本書は 著者が その家計簿を 丹念に解明、分析、研究され 幕末から明治、大正時代に至る激動期、武士から士族になった猪山家の暮らしや、時代の変化等を 復元させている作品である。
「事実は 小説より奇なり」
著者の文章力もあるが 猪山家を中心とした人物や暮らしの情景まで思い浮かび 歴史小説を読んでいる感さえしてくる。
「あとがき」で 著者は 学生時代に 「歴史とは過去と現在のキャッチボールである」という言葉に静かな感動を覚えた記憶があると 述べている。現在の全てが 過去から繋がっていることを思うと 歴史を紐解く面白さが 膨らんでくる。
「時代小説」を好んで読んでいる類だが、どの作品を読んでも 夫々の作者が 気の遠くなる程の歴史考察を重ねていることが分り、しかも、A作品、B作品、C作品・・・・、読む毎、縦横、芋蔓式に歴史が繋がっていることの面白さを感じている。