たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

藤原緋沙子著 「鹿鳴の声」

2024年12月16日 20時54分45秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「鹿鳴(はぎ)の声」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第12弾の作品で、「第一話 ぬくもり」「第二話 菊形見」「第三話 月の萩」の連作短編3篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 ぬくもり」
▢主な登場人物
 卯之助(八百屋千成屋主)・おてい(元卯之助の女房
 狐火の甚五郎、蟹蔵、
 おまさ(煮売り屋、元山科屋の一人娘おまき)・升之助、
 宗助(紙屋相模屋番頭
 与兵衛(小間物屋里美屋主)・おはつ(与兵衛の女房)・お綱(与兵衛の母親)、

 万寿院、春月尼、
▢あらすじ等
 橘屋に駆け込んできた里美屋与兵衛の女房おはつ、離縁訴えの事情が曖昧、
   お登勢は、大きく溜め息をつくと、
   「駆け込みによる離縁は、他に道のひとつもない人のために有るのですから・・・
    よろしいですね」

   厳しい口調で言った。
 十四郎、藤七が、与兵衛の身辺や里美屋の内情を探索していくが・・・・、
 おはつが恩ある女将というおまさ(実は、おまき)とは・・、
 次第に、これまで一度も登場していなかった、お登勢の忠僕藤七の過去と繋がっていき、
 藤七が、世帯を持たずにいた理由も明らかになる。
 「へー!、そういうことだったのか」となる。
   藤七は、頷くと、もう一度おまきの口に流し込んだ。
   「おいしい・・・、藤七さん、おいしい・・・」
   「おまき・・・、すまなかった」
   藤七は、震える声でおまきに語りかけた。涙声だった。
   お登勢も貰い泣きして袖で目頭を押さえると、その目を十四郎に向けた。
   「・・・・・」
   十四郎は、いたわるような目で、お登勢を見返した。

「第二話 菊形見」
▢主な登場人物
 久米総一郎・知世(ちせ、総一郎の妻女)・舞(総一郎・知世の娘)
 梶平(元総一郎の下男)
 早瀬玄之丞、おくめ、
 巳之助・おかよ、百助、
 伊左衛門(紅問屋丸紅屋主)・伝吉(丸紅屋手代)・助七(丸紅屋手代)
 万吉、長次・風太郎、ごん太、北斗、

▢あらすじ等
 元久米総一郎の屋敷で下男だった梶平が、総一郎の妻女知世の窮地を救って欲しいと、
 橘屋にやってきたが・・・。
   「橘屋のお登勢は、血も涙もない女だったと、言われてしまいそうですね」
   お登勢は、梶平が帰って行くと、ぽつりと言った。
 何やら深い事情が有りそう?、十四郎、藤七が探索開始、
 早瀬玄之丞の正体は?、
 久米総一郎、助七、惨殺事件に絡んだ真相が明らかになり・・・、
   知世は、迎えにきた梶平に付き添われて、見送りに出た十四郎とお登勢に頭を下げた。
   (中略)
   「知世さま,お墓参りにこれを・・・」
   お登勢は手ずから切った庭の白菊数本を、知世の手に握らせた。
   「今度こそお幸せに・・・」

「第三話 月の萩」
▢主な登場人物
 市兵衛(唐物骨董屋伯耆屋主)・おみわ(市兵衛の後妻)・お梅(伯耆屋の女中
 おしな(市兵衛の先妻)
 与次郎(伯耆屋番頭)、仁平(伯耆屋下男)、山科太夫、忠次郎、倉蔵、
 徳蔵(鋳掛屋)、朝吉(摺師)、

 おらく(呉服太物屋山城屋女将)、
 弥助(植木職人)、
 松波孫一郎(北町奉行所与力)・文代(孫一郎の妻女)・吉之助、
▢あらすじ等
 姉御肌で自ら請「お楽講」を組む山城屋女将おらくが、
 伯耆屋の内儀おみわの救いの求める短い文を、橘屋に持ち込んできた。
 押し込み強盗に襲われ、「お楽講」が被害に遭った直後のこと、
 事件との関わりが有るのか無いのか?、十四郎、藤七が、探索開始、
 次第に、真相が明らかになり・・・、
 おしなが殺害され、さらに、仁平が殺害され、お梅もあわや・・、
   十四郎は夕闇せまる道を橘屋に急いだ。
   「お登勢殿は、どこにいるのだ」、
   (中略)
   「十四郎さま・・・・」
   体をねじった拍子に、足元が揺れた。
   お登勢は、十四郎に肩を抱かれたまま、目顔で月の光に照らされた白萩を差した。


藤原緋沙子著 「雪見船」

2024年12月14日 06時48分23秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「雪見船」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第11弾の作品で、「第一話 冬の鶏」「第二話 塩の花」「第三話 侘助」「第四話 雪見船」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 冬の鶏」
▢主な登場人物
 栗塚三九郎・佳那、佳世、
 楽翁、
 由良美濃守高愛(旗本)、時蔵・おさつ、
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力
▢あらすじ等
 妻子を顧みることなくなったと橘屋に駆け込んできた絵師三九郎の後妻佳世、
 十四郎、藤七等が、三九郎の素性と、真相を探索していくと、
 愚直な三九郎、先妻佳那、旗本由良高愛、あぶな絵、・・・が繋がり出し・・、
 刀を捨てたはずの元武士三九郎が、襷鉢巻で、大太刀を抜き・・、
 最後に武士の矜持を見せる。
  「佳那・・・・」
  後ろで三九郎の叫ぶような声がしたが、十四郎は振り向かなかった。

「第二話 塩の花」
▢主な登場人物
 富田屋角蔵(塩問屋)・おひな(亡妻)・おいし(家付き娘)・蓑助(入り婿
 おかん、
 千成屋竹次郎、おみさ、
▢あらすじ等
 女房おいしを醜女と蔑み、離縁したいと橘屋に駆け込んできた富田屋の
 若旦那蓑助に、お登勢は大激憤、
 十四郎、藤七等が、富田屋の内情等を散策していくと、意外な事情、事実が浮上、
 悪辣な蓑助と、角蔵に積年の恨みを持つ竹次郎の策謀が絡んでおり、
 おみさは殺され、蓑助は、命拾い・・、
  「とんでもねえ、おいし、お前は輝いて見えていたぞ・・・そうだ、塩の花のように・・、
   清潔で、真っ白くて・・・」

  「蓑助さん・・・」
  (中略)
  アレきかさんせ、アレきかさんせ、アレきかさんせ ♫
  おいしは、小さな声で歌った。

「第三話 侘助」
▢主な登場人物
 新五郎(檜物屋)・新助、
 常吉(竜蔵)・おふき・友七、山城屋市左衛門、
 赤松屋治兵衛(献残屋)・おひさ・おます、
 羽黒屋増右衛門(米問屋
 万寿院・春月尼、
▢あらすじ等
 妻おふき、息子友七を事故で失い、恨みを晴らし、江戸を離れていた常吉、
 娘おひさのためなら命を捨てる覚悟で江戸に戻り、
 墓前に、一輪の白い椿の花を・・・・・、

  「おとつぁん!」
  おひさが常吉の胸に突っ伏して号泣した。
  「馬鹿な奴だせ、おめえ、何も二度死ぬことはねえのによ」
  新五郎も泣いた。
 
「第四話 雪見船」
▢主な登場人物
 美乃(おみの、よしの)・桑名屋三郎兵衛、
 平井豊之進・くみ、
 秋山権太夫・市之丞、
 猿屋銀兵衛、淀屋利右衛門・利助、
▢あらすじ等
 地震で倒壊した建物の下敷きになり、危うく助けられたものの、過去の記憶を失ってしまった
 美乃(おみの、よしの)は、命の恩人桑名屋三郎兵衛の妻女となり3年が経過していたが、
 一人苦悩する日々、誰かに狙わていると、橘屋に駆け込んできた。
 何故?、お登勢、十四郎、藤七が、その真相を探索していくと、意外な事実が・・、

 赤子の泣き声から、愛しい我が子市之丞の記憶が蘇り、次第に過去の記憶も取り戻す美乃、
 しかし、・・・・、運命のいたずらが・・、
   お登勢は、一人屋根船の中から、寂々とした雪の景色を眺めていた。
   見渡す限り雪の野で、ひとっこ一人いない。
   (中略)
   「わたくし、いつか・・・」
   いつか、あなたのお子を・・・、お登勢は言いかけて、言葉を呑んだ。切なくて涙が潤んでくる。
   「うむ、いつかな・・・」
   十四郎は言った。
   (中略)
   突然岸辺の雑木林から二羽の白い鳥が飛び立った。

 


葉室麟著 「辛夷の花」

2024年12月06日 14時59分15秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「辛夷の花(こぶしのはな)」 (徳間書店)を、読み終えた。本書は、小藩の藩政を巡る熾烈な闘いに巻き込まれ、凛として家族と共に闘う女性達と、大切な人のために命を掛ける、かたくなまでに清廉な男達を描いた長編時代小説だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(二十九)

▢主な登場人物
澤井庄兵衛・志桜里・里江・よし・つる、新太郎、
すみ、新井源蔵、佐野弥七、
小暮半五郎、
船曳栄之進・鈴代、
小竹讃岐守頼近、樋口寅太夫、
稲葉治左衛門・幸四郎・琴、
安納源左衛門・新右衛門、
伊関武太夫・弥一郎
柴垣四郎衛門・小太郎、
堀川三右衛門、

▢あらすじ
九州豊前の小藩、小竹藩(こたけはん)の勘定奉行澤井庄兵衛の長女志桜里(しおり)は、近習の船曳栄之進に嫁いで三年、子供が出来ず、実家に戻されていたが、ある日、隣家に「抜かずの半五郎」と呼ばれる藩士小暮半五郎が引っ越してきた。澤井家の中庭の辛夷(こぶし)の花をめぐり、半五郎と志桜里の心が通い出すが・・・・・。
   時しあれば こぶしの花もひらきけり
     君がにぎれる 手のかかれかし
折しも、小竹藩では、旗本水谷家から養子として迎えられた現藩主小竹頼近と、江戸家老安納源左衛門、筆頭家老伊関武太夫、次席家老柴垣四郎衛門、家老三家の間で主導権争いが激化、藩主に信頼厚い勘定奉行澤井庄兵衛も葬り去られようとする事態となり・・・。
大切な人を守るため、「抜かずの半五郎」が太刀を抜く時が来た。
  「今一度、抜かずの半五郎に戻れと云われますか」、目を瞠って半五郎は訊いた。
  (中略)
  「小暮様が抜こうとされても、わたくしが抜かせはいたしません」
  半五郎と志桜里は顔を見合わせて笑った。
  辛夷の花が朝日に輝いている。
で終わっている
小藩の藩政を巡る激しい攻防と、互いに頑固な、志桜里、半五郎の思いを絡み合わせて描かれているが、終盤の息詰まる戦闘場面と、結末が印象深い。


葉室麟著 「風花帖」

2024年11月30日 10時49分01秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「風花帖(かざはなじょう)」 (朝日新聞社)を、読み終えた。本書は、江戸時代後期に、小倉藩で実際に起きた藩内抗争「白黒騒動」を下敷きにした長編時代小説だが、史実をもとにしながら、互いに思いを交わした男女が、別々の道しか選べなかった悲哀をいかんなく描いた物語になっている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(二十五)

▢主な登場人物
印南新六(いんなみしんろく、印南弥助の子)、
菅源太郎(すがげんたろう、書院番頭、江戸屋敷側用人菅三左衛門の嫡男)・吉乃(きちの、書院番頭杉坂監物の三女)・千代太、
犬甘兵庫知寛(いぬかいひょうごともひろ
小笠原忠苗(おがさわらたたみつ)、小笠原忠固(おがさわらただかた
小笠原出雲(おがさわらいずも)、伊勢勘十郎、
小宮四郎左衛門、二木勘右衛門、小笠原蔵人、伊藤六郎兵衛、
上原与市、直方円斎、早水順太、

▢あらすじ等
九州小倉藩(小笠原藩)勘定方の印南新六には、生涯をかけて守ると誓った吉乃がいたが、ある日の事件がきっかけで、新六は一時的に江戸詰めになり、その間に、吉乃は菅家の嫡男源太郎に嫁いだ。
折しも、藩内は、犬甘兵庫派、小笠原出雲派の派閥争いがエスカレート、新六も、源太郎も、その騒動に巻き込まれていく。もともとは、出雲派だった新六だが、想いを寄せる吉乃とその家族、菅源太郎、千代太を守るために、両派閥の刺客にもなる。
藩の存亡に関わる、ドロドロした派閥抗争の中にあっても、一途に、一人の女性のために命を懸けた男の姿を、鮮烈に描いた作品だった。
  吉乃は国許に残り、千代太を育てる日々を過ごしたが、
  月命日には新六の墓参りを欠かさなかった。
  祥月命日の墓参りのおりには、なぜか風花が舞った。
  (中略)
  「新六殿」
  吉乃は胸の中で新六の名を呼びながら佇んで、いつまでも風花を見つめていた。

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内館牧子著 「老害の人」

2024年11月28日 09時53分11秒 | 読書記

1年以上も前に図書館に予約していた、内館牧子著 「老害の人」(講談社)が、ようやく順番が回ってきて、先日借り、読み終えた。
つい数年前まで、まるで読書の習慣等無かった爺さん、
当然のこと、内館牧子の著作も全く読んだことが無かったが、
昨年の6月のこと、初めて、内館牧子著の「高齢者小説」等とも呼ばれているベストセラー「今度生まれたら」を知って読み、それがきっかけで、第2弾、第3弾の、「終わった人」「すぐ死ぬんだから」を読んだ。著者独特の、これでもかこれでもかという、痛快な文体に惹かれてしまい、その第4弾とも言える「老害の人」も読んでみたくなり、予約していたのだった。

▢目次
 第一章 ~ 第九章、
 あとがき

▢主な登場人物
 戸山福太郎(85歳)・(八重)、
 戸山純市(60歳)・明代(54歳)、戸山俊(18歳)、
 戸山梨子・寿太郎、藤田聡、
 松木達夫(75歳)・美代子、克二(30歳)、林透(27歳)、佐多道彦(42歳)、
 竹下勇三(76歳)・ヨシエ・剛(22歳)、
 吉田武(90歳)・桃子(87歳)・篤・悟、
 村井サキ(79歳)、
 春子・里枝・杏奈(4歳)・翔、、

▢内容紹介・・・「講談社Book倶楽部」より拝借、引用
 迷惑なの!、と言われても。
 昔話に、説教、趣味の講釈、病気自慢に、孫自慢。
 そうかと思えば、無気力、そしてクレーマー。
 双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、
 娘婿戸山純市に社長を譲ってからも現役に固執して出勤し、
 誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。
 彼の仲間も「老害」の人ばかり。
 素人俳句に、下手な絵をそえた句集を配る吉田武・桃子夫妻、、
 「死にたい死にたい」と言い続ける春子
 病気自慢の竹下勇三
 老害カルテット(四重奏)は絶好調。
 さらに、ぽっちランチの女、クレーマーの村井サキが加わり
 老害クインテット(五重奏)。
 「もうやめてよッ」、福太郎の娘・純市の妻、戸山明代は、
 ある日、たまりかねて腹の中をぶちまける。

 「終わった人」、「すぐ死ぬんだから」、「今度生まれたら」に続く、
 著者「高齢者小説」の第4弾!
 定年、終活、人生のあとしまつ……。
 自分のこと、親のこと、いずれは誰もが直面する「老後」。
 「最近の若い人は……」というぼやきが、今や「これだから『老害』は」と
 なってしまった時代。

 内館節でさらなる深部に切り込む!

「あとがき」で、著者は、
「老害をまき散らす老人たちと、それをうんざりして「頼むから消えてくれ」とさえ思う若年層。両者の活劇のような物語を書けないものかと、かなり前から考えていた」
・・・と記述しておられる。
さらに、「そんな老人たちであっても、命がある以上、どう生きたらいいのか。少なくとも、若年層に押し付けられた趣味や挑戦等の「自分磨き」ばかりでは無い。そう思います」
とある。
あくまでも物語で有り、登場人物のそれぞれは、やや極端なキャラクター?に描かれているが、その言動には、思い当たる節、多々有り、同感、共感。
「老害」・・・・・、我が身に照らして、肝に命じて、暮らしたいものだと思うところだ。

振り返り記事   「今度生まれたら」   ⇨ こちら
         「終わった人」     ⇨ こちら
         「すぐ死ぬんだから」  ⇨ こちら


葉室麟著 「橘花抄」

2024年11月20日 09時49分35秒 | 読書記

なんやかんや有って休止していた図書館通い、
先日、ようやく再開したい気分になり、約2ヶ月振りに図書館に出向き借りてきた1冊、
葉室麟著、「橘花抄(きっかしょう)」(新潮社)を、やっと読み終えた。
本書は、江戸時代中期、筑前黒田藩のお家騒動を背景に、両親を亡くした孤独な女性卯乃と、自らの信じる道を歩む立花重根、立花峯均等を中心とした男達の姿を描いた長編時代小説だったが、やはり、葉室麟著作ならではの、史実とフィクションが織り混ざった傑作だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 第一章 卯花(うのはな)
 第二章 姫百合
 第三章 山桜
 第四章 乱菊
 第五章 花橘(はなたちばな)

▢主な登場人物
 卯乃(うの)、
 立花五郎左衛門重根(宗有)(しげもと)、立花(花房)峯均(寧拙)(みねひら)、

 奈津、りく、さえ、桐山作兵衛、村上庄兵衛、藤森清十郎、
 黒田光之(大殿)、黒田泰雲(綱之)、黒田綱政(殿)、黒田吉之、
 大涼院、呂久子、杉江、

 隅田清左衛門、真鍋権十郎、津田天馬
 佐野道伯

▢あらすじ等
 両親を亡くした14歳の卯乃が、筑前黒田藩で権勢を振るっていた立花重根に引き取られる
 ところから物語が始まっている。その卯乃は、父親村上庄兵衛切腹に、重根が関与したと
 聞かされ、懊悩のあまり失明、
 さらに、実の父親が、黒田藩廃嫡の黒田泰雲(綱之)であったことを知ることになり、
 前藩主黒田光之、現藩主黒田綱政、お世子黒田吉之を巡る、藩内抗争に巻き込まれる。

 前藩主の没後には、立花一族の粛清が始まり、減封、閉門、配流、追及は苛烈を極め、
 重根と峯均には、隻腕の剣士・刺客、津田天馬の凶刃が迫る。
 己の信ずる道を貫く重根、峯均等の男達、そして、主人公的な卯乃や、りく、奈津、さえ等
 一途に生きる女性達が、それぞれ魅力的に描かれ、
 さらに、最終章では、小呂島(おろのしま)での峯均と天馬の行き詰まる迫力満点の
 死闘シーンが、まるで劇画映像の如く描かれ、巌流島の宮本武蔵佐々木小次郎の対決を
 想わせている。
  五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
 葉室麟著作には、よく和歌が登場するが、本書にも、随所に和歌が織り交ぜられており、
 さらには、終始、「香」にこだわっている等、格調の高さが感じられる。


(参照・参考)
e-hon 
「橘花抄」
葉室麟インタビュー
👇️
こちら


 


何時読むの?読む気有るの?積読本

2024年10月11日 20時14分42秒 | 読書記

数年前に、書棚や押入れや天袋に何十年も眠っていた、世界文学全集、百科事典、古い本類や辞書類等々を、かなり大胆に整理処分したことが有ったが、「もったいない」、「改めて読んでみたい」等という気が働いてしまい、処分し切れずにいる小説類も、まだ結構有る。
戦後、間もない頃、貧しい家で育ち、書籍等をおいそれと買ってもらえず、「本は大切な物」という観念が出来上がっている古い人間、思い切った断捨離を心掛けている一方で、いざ処分するとなると決断が鈍ってしまい、迷ってしまうのである。
自分で、書店等で買い求めた記憶がまるで無く、もしかしたら、本好きだった亡き義母から妻が譲り受けた本なのか、長男、次男が学生の頃に買い揃え、置いていった本なのかは、不明だが、夏目漱石の一連の著作品文庫本14冊も、それで、その内読んでみたい等として残してある。
ブログで検索してみると、4年前にも、その気になり、その中から、「三四郎」「それから」「門」は、読んでいたことが分かったが、その後は、また放ったらかし状態、
  何時読むの?読む気有るの?積読本
  その内いつか、って、何時なのよ
時々、自問自答している。
9月の中旬から約2週間、利用している図書館が、システムの更新、機器の入替等のため休館になり、その後もあれやこれや有って、図書館通いを、一時休止することにしていたが、その間に、手持ち無沙汰となり、やっとその気になり、その中の1冊、「道草」に手を伸ばしてみた。
つい数年前までは、読書の習慣等、まるで無かった爺さん、ブログをやるようになってからのこと、相互フォロワー登録している方から、薦められ、肩の凝らない、読みやすい、時代小説を中心に、ずっと読むようになっているが、夏目漱石の作品は、若い頃には、一度は読んでみたいと思っていたことは確かなことで、八十路過ぎてから、やっと手を伸ばす気になった、ということだ。


夏目漱石著 「道草」(角川文庫)を、やっと、やっと、読み終えた。
ネットで調べてみると、「道草」は、1915年(大正4年)6月3日から9月14日まで、朝日新聞に連載された長編小説だった。
「道草」は、「吾輩は猫である」を執筆中の生活を元にした漱石自身の自伝的作品とされているようだ。
例えば、主人公の「健三」は、漱石自身であり、金をせびりに来る「島田」は、漱石の実際の養父塩原昌之助なのだという。

▢目次
 (一)~(一〇二)
 解説 荒 正人

▢主な登場人物
 健三(主人公、東京駒込在住、36歳、教員)
 お住(健三の妻)
 島田平吉(健三の養父)
 お常(島田の妻、健三の養母、島田と離婚後、波多野(警部)と再婚したが波多野死去)
 長太郎(健三の兄、市ヶ谷薬王寺在住)
 お夏(健三の腹違いの姉、四ツ谷津ノ守坂在住、比田寅八の妻、51歳)  
 比田寅八(お夏の夫、)
 お藤(島田の後妻、前夫遠山は死去)
 お縫(遠山とお藤の娘)

▢あらすじ等
 ヨーロッパから帰国し東京駒込に居を構えて数年、健三は、大学教師として多忙な日々を
 送っているが、妻のお住は、そんな夫を世間渡りの下手な偏屈者と見ている。
 そんな折に、健三が幼少の頃の養父で、絶縁したはずの島田平助が現れ、執拗に金を無心する
 ようになる。
 さらに腹違いの姉お夏や妻の父までが現れ、金銭等を要求され、収入が少ない苦しい暮らしを
 している健三とお住を悩ませる。
 健三は、その都度、なんとか金銭を工面しては、区切りをつけるのだが・・・、

 健三の収入源を当てにして、容赦無く金づるに群がってくる周りの人達、
 当時(明治時代から大正時代)の庶民の世相は、そんなものだったのだろうか。
 健三の生い立ちや性格が、そうさせていたのだろうか。
 どろどろとした人間模様に圧倒されてしまう。

 3人目を出産した妻お住とは、心相入れることなく平行線のまま・・・・、
 健康不安、人間的苦悩を抱えながら、稼がないとならない健三。

 最後には、
 「世の中に片付くなんてものは、ほとんどありゃしない。一ぺん起こったことは
 いつまでも続くのさ。ただいろいろな形に変わるからひとにも自分にもわからなくなるだけの
 ことさ」と、健三は、苦々しく吐き出すのだった。


振り返り記事

「三四郎」  👉️ こちら

「それから」 👉️ こちら

「門」    👉️ こちら


 


藤原緋沙子著 「風蘭」

2024年09月20日 17時56分56秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「風蘭(ふうらん)」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第10弾の作品で、「第一話 羽根の実」「第二話 龍の涙」「第三話 紅紐」「第四話 雨の萩」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 羽根の実」
▢主な登場人物
 おまき・新蔵、
 伊佐次(岡っ引き、伊佐の旦那
 直蔵(出会茶屋小松屋奉公人)、お久(出会茶屋小松屋女中
 政之助(庭木職人)・おみつ、源八、
 野瀬修理(無役旗本)、清松(渡り中間
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力

▢あらすじ等
 駆け込み寺慶光寺で修行中のおまきが外出したまま帰らず、元の亭主新蔵殺しの疑いで
 捕縛された。

 外出禁止規則を破って外出させた寺役人近藤金五の責任は重大、免職の危機に立たされるが、
 十四郎、藤七等が懸命に、事件の真相、謎を解いて行き、ついに・・・。
   「おのれ」、修理が顔をひきつらせた時、
   「金五、そこまでだ。鶴の羽が見つかったぞ」
   清松は 雑木林を抜けると、門に走った。
   「待て」、修理も刀をぶらさげたまま、表に飛び出し、立ちすくんだ。
   火事羽織、野袴、陣笠を被った松波孫一郎が配下の同心、小者を従えて待ち受けて
   いたのだった。


「第二話 龍の涙」
▢主な登場人物
 お楽・辰造(石工)・おひろ、おきの、
 山城屋宗兵衛(太物商)、嘉助、
 お稲、弥兵衛(鬼火小僧)、お朝、
 松島大膳(旗本)、櫻痴(おうち、松島大膳の隠居)、
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力)、

▢あらすじ等
 3年前に、前妻と娘を亡くしていた石工の辰造と世帯を持ったお楽だったが、
 夫婦の愛情等最初から無かったと、慶光寺に駆け込んできた。
 二人の馴れ初めを語るお楽、十四郎は笑うに笑えず、お楽の顔を見た。
 辰蔵の身の振り方に不審?、十四郎、藤七等が探索していくと、そこに見えてきたものは・・・。

 盗賊鬼火小僧の陰?、病的異常な数寄屋老人の陰が・・・・。
   「旦那、・・・よくわかりました。あっしが馬鹿でございやした」
   辰蔵は頭を下げた。


「第三話 紅紐」
▢主な登場人物
 おとよ、勝三、おあい、お吟、平助、
 留吉、与助、伊助、
 佐々木恭之助、政蔵、染次、
 庄兵衛、柳庵、
▢あらすじ等
 元結城屋の女房おとよは、不実な夫勝三と離縁、慶光寺を出た後、組紐師として懸命に
 暮らしていたが・・・・。結城屋は潰れ・・・。
 結城屋を潰したのはおとよのせいと決めつけていた義母お吟に対して・・・。
 一方で、佐々木恭之助に騙されて落ちるとことろまで落ちた勝三は、命を狙われ、
 おとよは人質に・・・・。最早これまでか。
   目を醒まして、男としてけじめをつけておくれ・・・」
   厳しい口調で、お吟は、勝三に迫った。
   十四郎は、静かに声をかけた。
   「お前は、お吟の子ではないか。お吟が育てた息子なら、もう駄目だなどという言葉は
   ない筈だと俺は思うぞ」

 
「第四話 雨の萩」
▢主な登場人物
 お妙・七之助・おたつ、お光、
 美樹・勇也・初音・
 芦沢伊三郎、猫目の玄蔵、為五郎、
 佐吉(呉服屋加賀屋手代
▢あらすじ等
 元仏具屋勝田屋の七之助と離縁し、慶光寺を出て普通の暮らしに戻っていたはずのお妙が、
 生きていく希望を失い、まさかの火付けの罪で捕縛され・・・。
 火付けは、重罪。お妙を救えなかったことに失意、消沈するお登勢、
 一方で、十四郎と清楚で儚げな未亡人美樹との関係は?、
 千々に乱れるお登勢の心・・・。
 十四郎との間に隙間風が吹き荒れ、孤独感に苛まれるお登勢、
 二人に最大の危機が?。

  「おっ、萩が咲いたか」
  「この萩は、俺が植えたのだ」
  お登勢はびっくりした目をしてみせたが、「うそ、うそ、、知りません」、
  すぐに咎めるような声を上げるとそこにしゃがみこんだ。
  だがその声音にも白い襟足にも、隠し切れない喜びが溢れていた。


「隅田川御用帳」ゆかりの地図

本書で初めて、「隅田川御用帳」ゆかりの地図が、巻頭で紹介されており、
地図で位置や方角を確認しながら、物語の展開を、楽しめるようになった。






葉室麟著 「草雲雀」

2024年09月13日 10時31分10秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著の長編時代小説、「草雲雀(くさひばり)」(実業之日本社)を、読み終えた。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(三十)

▢主な登場人物
栗屋清吾(媛野藩馬廻り役栗屋十郎左衛門の三男(部屋住み)、28歳、片山流秘技磯之波遣い手)、みつ、
栗屋十郎左衛門、栗屋嘉一郎(栗屋家当主、栗屋清吾の長兄)、
国東武左衛門(元媛野藩筆頭家老)、国東彦右衛門(国東武左衛門の嫡男)、
国東伊八郎(国東武左衛門の五男、妾腹の子、山倉家養子山倉伊八郎、栗屋清吾の幼馴染)、
樋口半右衛門(国東家親戚)、佳江(国東家親戚)、
菅野新右衛門(書院番、菅野刑部の妾腹の子)、しほ(菅野新右衛門の妹、湖蓮尼)、菅野刑部、
山倉兵蔵(伊八郎の養父)、山倉弥兵衛(山倉兵蔵の嫡男)、
大久保眞秀(おおくぼまさひで、媛野藩藩主
三岡政右衛門(三岡派派閥領袖、側用人)、山辺監物(国東派派閥領袖)、花田昇平(一刀流遣い手)、
菖庵(茶道頭)、梶尾(奥女中取締、黒錘組(くろおもりぐみ)頭領)、小萩(黒錘組(くろおもりぐみ)小頭)、
白木屋四郎兵衛(酒造業、金貸し業

▢あらすじ等
主人公の栗屋清吾は、剣の腕前には自信を持っているものの、正直者、小心者で、うだつが上がらない、部屋住みの身分、将来への夢もなく、少禄の栗屋家にとっては厄介者だった。百姓出の女中みつを妻帯したが、子を生すことさえも夢。
一方で、同じ部屋住み身分の幼馴染、山倉伊八郎は、実は、元藩の筆頭家老国東武左衛門の隠し子だったことがわかり、家老職につく道筋が開け、その幸運を生かそうとする伊八郎に、無理やり用心棒にさせられ、戸惑い、おびえながらも、伊八郎に尻を叩かれ、次第に藩内に渦巻く派閥闘争に巻き込まれ、暗闘で剣を振るうことになる。清吾が願っていたのは、みつとの小さな幸福な家庭、それだけだったが、そのためには、伊八郎を取り巻く敵を、命懸けで倒さねばならず・・・・、
あたかも、草雲雀が懸命に鳴くように・・・。
伊八郎が、国東家に呼び戻された本当の理由は、したたかな国東武左衛門の企てだった。
20年前の菅野刑部殺害事件の根深い恨みとの対決?
城内で試問を受け、無事くぐり抜けた伊八郎、清吾に、襲いかかる刺客・・、
首取り廊下で、決着・・、
  伊八郎は、清吾を睨んだ。
  「わかったら、さっさと行ってみつ殿を取り戻してこい」
  「まったく手のかかる男だ」
  梶尾が銚子を持って伊八郎に酒を注いだ。

  草雲雀は、美しい相手を思って一晩中、りり、りり、と鳴くのだという。
  「わたしもみつも草雲雀だ」
  清吾は、みつを背負う腕に力を込めると、草雲雀の鳴き声に合わせて
  しっかりと夜道を歩いていった。(完)


表題の「草雲雀」とは、何?・・・・、
無知な爺さん、これまで聞いたことも無い言葉だったが、
作品中で、昆虫であることが分かり、
さらにネットで調べてみると・・・。

「草雲雀(クサヒバリ)」とは、
「フィリリリリリ・・・・」と、
雲雀のような美しく澄んだ声で鳴く、
コオロギ科の昆虫のことだった。
別名「朝鈴(アサスズ)」
俳句では、「秋」の季語。

(ネットから拝借、草雲雀の画像)


へー!、知らなかった・・・、
目から鱗・・・である。


 


藤原緋沙子著 「紅椿」

2024年09月08日 20時37分05秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「紅椿」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第9弾の作品で、「第一話 雪の朝」「第二話 弦の声」「第三話 東風よ吹け」「第四話 残る雁」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 雪の朝」
▢主な登場人物
 万寿院(松代)、春月尼、
 楽翁(八代将軍徳川吉宗の孫、元老中筆頭、元白河藩藩主、松平定信)、
 坂巻武太夫・坂巻武一郎・坂巻勇之進(英慧)、
 永井主水(旗本、無役)、増之助、
 佐兵衛・お仲
 栗田徳之進(寺社奉行所徒目付)、千草、

▢あらすじ等
 縁切り寺慶光寺主万寿院は、遠い日に交わした約束を果たしに、お忍びで玉王寺を訪れ、
 英慧と対面するが・・。英慧とは何者?、
 誰もその謎が解けない内に、万寿院の命を狙う事件発生。下手人は?、
 十四郎、藤七等が真相究明に乗り出すが、意外な事実が・・・、
 万寿院がかって旗本坂巻武太夫の養女だった頃の出来事に繋がり、
 増之助が白状、楽翁への逆恨みも明るみになる。
   十四郎は、英慧の最期を思い出していた。万寿院に手をとられて、血の涙をながした英慧の
   姿を・・・。

   あの時、十四郎は、自分の姿を見ているような気がしていたのである

「第二話 弦の声」
▢主な登場人物
 おまつ、
 長吉・お常、伊之助、
 蟹蔵(岡っ引き)、松波孫一郎
▢あらすじ等
 祝言を挙げる寸前に行方不明になった男を探しに江戸に出てきたおまつが爪弾く哀切と
 激しさが迫る津軽三味線の音色に、十四郎の足が止まった。ならず者に囲まれたおまつを
 救った十四郎はおまつを橘屋に連れてきたが、お登勢がテキパキと対応してくれ・・・、

 一方で、橘屋に駆け込んできたお常、不審だらけで、
 十四郎、藤七が真相究明中に、殺害され・・、

 伊之助とは?、長吉とは?
 お登勢、北町奉行所吟味方与力松波孫一郎の計らいで・・・、
   おまつの目も長吉をとらえていた。長吉をとらえたまま、おまつは三味線を引く。
   弦は切れても心の糸は切れぬと言ったおまつの言葉が、十四郎の脳裏を過ぎった。

「第三話 東風よ吹け」
▢主な登場人物
 お春・茂作、作造・お才・忠吉、お妙・辰平
 上総屋儀兵衛、利助、おりつ、
 弥蔵、佐吉、
 マムシの以三(岡っ引き)、木村乙一郎(南町奉行所見習い同心)
▢あらすじ等
 10才で養子に出した我が子利助の幸せをひらすら願う老母お春が、殺人の疑いで
 捕縛されるが、不審だらけの事件・・・、
 お登勢が、十四郎が、藤七が、賢明に真相究明し、
   夕暮れが迫っていたが、冬には珍しく暖かい風が吹いていた。
   「おっかさん」、「利助、・・・利助、お前、こんなところにきちゃ駄目だ、早くお帰り」
   じわりと十四郎は、いわれぬ感慨を覚えていた。


「第四話 残る雁」
▢主な登場人物
 お光、半之助、お浜、
 惣二(惣次郎)、徳兵衛、
 柳庵、
▢あらすじ等
 凶暴な亭主半之助との離縁話で、橘屋に駆け込んできたお光だったが、
 突然お登勢に反感、恨み?、
何故?、十四郎、藤七がその真相を究明していくと、
 そこには、兄惣二のお登勢に対する隠された想いが有った。 

  「私たち二人は残る雁だって・・・」、哀しい言葉が蘇った。
  「そんな筈があるものか、お前の人生はこれからだ」

 お登勢の胸に深く刻まれた亡夫徳兵衛への愛の深さを垣間見た十四郎は、落ち込んでしまうが、
 お登勢は、大切な亡夫の遺品「撥(ばち)」を、富岡八幡宮に納める決意をし、
 十四郎の胸には、新たな灯が灯るのだった。