たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

葉室麟著 「山桜記」

2025年01月14日 21時49分57秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「山桜記(やまざくらき)」(文藝春秋)を読み終えた。本書には、戦国時代、江戸時代の女性、夫婦の旧来の像に、著者独自の新鮮な解釈を投げかけた、「汐の恋文」「氷雨降る」「花の陰」「ぎんぎんじょ」「くのないように」「牡丹咲くころ」「天草の賦」の、「オール読物」に掲載された、7篇の短編時代小説が収録されている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。



「汐の恋文」
▢主な登場人物
 瀬川采女・菊子、
 豊臣秀吉・広子(広沢局)、山中山城守長俊、
 梅北国謙・爽子、
▢あらすじ等
 豊臣秀吉による朝鮮征伐の前半・文禄の頃、一通の文箱が博多の津に打ち上げられ、
 秀吉の許に届けられたが、中の手紙は朝鮮半島に渡った夫瀬川采女を思う妻菊子のものだった。
 興味を持った秀吉は、菊子を名護屋城に呼び出し、采女を帰国させ、あわや
・・・・、


「氷雨降る」
▢主な登場人物
 有馬晴信・ジュスタ、
 岡本喜八、徳川家康、
▢あらすじ等
 京の公家中山親綱の娘(キリシタンで洗礼名ジュスタ)娘が、島原半島に四万石を領する
 有馬晴信(キリシタンで洗礼名ドン・ジョアン)のもとに腰入れするが、関ケ原の合戦後、
 領地問題に巻き込まれ、有馬家存続のために右往左往する晴信とジュスタの間には、
 大きな溝が生じ・・・、

  「大御所様はわたしのことを愚か者だと笑われたそうであるが、まことにそうだな」
  「まことに愚かでありましたのは、殿のお心を慮ることなく、デウス様の御名ばかり口に
   していたわたくしかもしれません」

  「上意である」
  有馬晴信は遺書を書き終え、行水して身を清め、処刑の場に臨んだ。
 ジュスタは、髪を剪り、二人の娘とともに実家の中山家に戻り、幕府がキリシタン迫害を
 強める中、宣教師達に潜む場所を与える等尽力した。


「花の陰」
▢主な登場人物
 細川忠隆(休無)・千世(ちよ)、
 細川忠興・玉子(ガラシャ)、
 前田利長、芳春院(まつ)、村井又兵衛・長次、
▢あらすじ等
 関ヶ原の戦の前、大坂方の人質になるのを拒み、辞世の和歌「ちりぬべき 時知りてこそ 
 世の中は 花も花なれ人も人なれ」を残し、火を放って果てた細川忠興の妻玉子(ガラシャ)、
 その嫁である嫡男忠隆の妻千世は、ガラシャと死を共にせず生き残る。
 細川忠興は、忠隆に、千世との離縁を迫ったが、忠隆はそれに背き、廃嫡されてしまう。
 その忠隆と、千世の
生き様を描いている。
 千世は、加賀前田利家の七女、母は芳春院(まつ)。


「ぎんぎんじょ」
▢主な登場人物
 鍋島信昌(鍋島直茂)・彦鶴(ひこつる、石井大輔常延の娘)・千鶴、
 鍋島清房・慶誾尼(けいぎんに、竜禅寺隆信の生母)、竜禅寺隆信、大友宗麟、
▢あらすじ等
 肥前の大名鍋島直茂の継母、慶誾尼が死去し、末期を看取った直茂の正室、彦鶴に、
 黒漆塗りの文箱が遺された。中には一通の書状が入っており、
 「誾慶誾如也(ぎんぎんじょなり)」と書かれており・・。
 「慶誾尼様、わたしはできの悪い嫁でございましたなあ」

 九州で、島津家、大友家、竜禅寺家が覇権を争っていた時代、
 名護屋城の豊臣秀吉から呼び出された彦鶴は・・・、
 竜禅寺家と鍋島家の存亡が絡み合い・・・、


「くのないように」
▢主な登場人物
 加藤清正・かな(清浄院)・八十姫(やそひめ)、
 徳川頼宣(徳川家康の十男)、安藤直次、
 松平伊豆守信綱、由比正雪、丸橋忠弥、

▢あらすじ等
 加藤清正とかなの娘、八十姫は、駿府城主徳川頼宣に嫁ぐが、輿入れ道具の中に、
 父親清正が愛用した、片鎌槍が入っており?、

  「母上、これは・・・」
 八と十の間の九がないということで「八十(やそ)」、「苦のない生涯がおくれるように」と
 いう願いが込められていた「八十姫」だったが・・・。

  「わたしは、どうすればいいのだろう」
 頼宜は、紀伊和歌山に55万5千石となり、大国の大名夫婦となったが・・・、
 由比正雪、丸橋忠弥に関わり、謀反の嫌疑がかかり窮地に陥る。
 幕閣の詮議を撥ねつけた頼信、八十姫の間には子宝が恵まれかったが、
 八十姫は、側室が生んだ光貞の継母として養育、その光貞の四男が、
 のちに八代将軍徳川吉宗となる。


「牡丹咲くころ」
▢主な登場人物
 立花鑑虎(あきとら)、立花宗茂・立花忠茂、
 立花忠茂(好雪)・鍋姫(貞照院
 伊達政宗・伊達忠宗、伊達綱宗、伊達兵部宗勝、
 原田甲斐(宗輔
 酒井忠清(老中
▢あらすじ等
 仙台藩62万石伊達政宗の孫娘、鍋姫が、家格の低い柳川藩11万石藩主立花忠茂に嫁ぐ画策を
 した男がいた。その深い理由は?、

 後に「伊達騒動」が起き、義を貫いた、原田甲斐、立花忠之、
  「花の美しさを守ろうとする人の心を、花は知らずともよいのではないか」
  穏やかな笑みを浮かべて、忠茂はやさしく声をかけた。貞照は静かに目を閉じた。


「天草の賦」
▢主な登場人物
 黒田忠之・浦姫、
 黒田直之、夏野、万
 黒田美作、
 倉十太夫、
 益田四郎時貞(天草四郎)、益田甚兵衛、
 松平伊豆守信綱、
▢あらすじ等
 寛永14年(1637年)、肥前島原と肥後天草で、過酷な年貢取り立てに苦しむ農民、
 禁教令により弾圧されるキリシタン、取り潰し等で主家を失った浪人等、
 およそ2万8千人が蜂起した。
島原の乱である。
 黒田藩主黒田忠之は、一揆鎮圧は、5年前の「黒田騒動」の汚名返上のチャンスとばかり、
 在勤中の江戸から、現地に馳せ参じるが・・・・。
 そこに、「陣借り」と称して、倉十太夫と、天草四郎の命を救おうとする若い女、万が
 現れ・・、
果たして・・・、






葉室麟著 「暁天の星」

2025年01月09日 20時20分52秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「暁天の星(ぎょうてんのほし)」(PHP)を読み終えた。
本書には、故・葉室麟氏が、最期に「これだけは書いておきたい」と願い、病と闘いながら書き続けたとされる長編の「暁天の星」と、特別収録として、短編の「乙女がゆく」が、収録されている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。



▢目次
  「暁天の星」 (一)~(十八)
  特別収録 「乙女がゆく」
  解説 細谷正充
  刊行によせて 葉室涼子


「暁天の星」

▢主な登場人物
 陸奥宗光(むつむねみつ、伊達小次郎)・亮子(りょうこ)・清子、
 伊藤博文・梅子、勝海舟、木戸孝允(桂小五郎)、大久保利通、西郷隆盛、
 岩倉具視、大隈重信、
伊藤馨・武子、大山巌・捨松、板垣退助、福沢諭吉、
 伊藤祐享、
戸田極子(きわこ)、
 馬場辰猪(ばばたつい)、川上操六、
 坂本龍馬、中岡慎太郎
▢あらすじ等
 本書の主人公は、陸奥宗光。幕末に、徳川御三家の紀州藩の藩士伊達宗広の第6子として
 生まれたが脱藩、
 坂本龍馬に愛され、海援隊で頭角を現し、明治新政府では県知事などを務めたが、政府転覆を
 企てたとして投獄されてしまい、不遇の時代を経て、明治新政府で外交官として、その才能を
 花開かせた人物。
 第二次伊藤博文内閣では、外務大臣として欧米列強と対峙し、不平等条約の改正に尽力した。
 日本の尊厳を賭けて強国に挑んだ陸奥の気概が描かれている。
 不平等条約改正、鹿鳴館、外交、赤煉瓦造り、銀座、自由民権運動、駐米公使、独立戦争、
 日英通商航海条約、日清戦争、
   「目指す頂はひとつでも、登る道はいくつも有るぜよ」
   「おまん、ちいとやりすぎちょる」、
   龍馬なら、痛快だと思ってくれるだろうか。叱るだろうか。

   博文が言う。
   「わしらはこれから国民の大きな欲望を抱えて奔ることになるぞ」
   もし、そうだとすると、そうならないために、
   自分は暁に輝く明けの明星として、国家の行く末を照らさねばならない。
   陸奥はそう思った。
   明治28年3月下旬、下関で講和会議が始まった。陸奥は講和交渉に臨んだ。
   新たな闘いの始まりだった。
で終わっており、「未完」となっている。
本書は、歴史的事実記載多く、他の葉室麟著の時代小説とは、やや作風が異なっているが、
著者が、最後に本当に伝えたかったこと、「日本の近代化とは何か」を、溢れる想いで描いている作品だ。

著者のご令嬢葉室亮子氏は「刊行によせて」の中で、
  陸奥宗光の半生を描こうとした「暁天の星」は、明治維新を問う、父にとって欠かすことの
  出来ない小説でした。条約改定に取り組む陸奥と、その心に寄り添い支え続けた妻亮子を
  通して、
幕末から明治時代にかけて日本の歴史がどのように動いたのかが描かれています。
  読むだけで心が暗くなってしまうような戦争の悲惨な事実に目を背けず、日本の歴史と
  正面から向き合い、その意味を考えること、それが父の望んだことなのかもしれません。

と、記述されている。


「乙女がゆく」

▢主な登場人物
 坂本竜馬・お龍(おりょう)、
 乙女・岡上樹庵、
 お登勢(寺田屋女将)、
 平井かほ、千葉さな子、
 木戸孝允(木戸貫治、桂小五郎)、西郷隆盛(吉之助)、
▢あらすじ等
 薩長同盟工作中の坂本竜馬が投宿していた京の寺田屋に、突然、竜馬の姉乙女が、土佐から
 訪ねてきて、お龍、お登勢と対面、乙女の一面を描いている短編作品。

   「ほなら、寺田屋はその門出どすな」
   お登勢はうなずいた。なぜか目に涙がたまっていた。
   乙女も涙ぐみそうになったが、ひとに泣き顔を見られるのは嫌だった。
   立ち上がると笠を手に土間を降りた。


 


藤原緋沙子著 「さくら道」

2025年01月05日 16時38分43秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「さくら道」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第13弾の作品で、「第一話 さくら道」「第二話 まもり亀」「第三話 若萩」「第四話 怨み舟」の、連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 さくら道」
▢主な登場人物
 お結(おゆい)・おさん、
 京紅屋清兵衛(佐吉)
 嵯峨屋啓太郎(利左衛門)・太兵衛、
 儀助(為三)、兼一、玉田久太郎、
▢あらすじ等
 第十代将軍の愛妾「お万の方」だった万寿院の依頼で、大奥時代、右筆として仕えていた
 楓(かえで)・おさんの消息探索に京に向かった十四郎、そのおさんの娘、お結を連れて
 江戸に帰ってきた。

 おさんは、嫁いだ嵯峨屋啓太郎に離縁され、娘お結を連れ子に京紅屋清兵衛の後妻になったが、
 その清兵衛が押し込み強盗に殺害され、お結は口が利けなくなり、さらに命を狙われている。

 何故だ?、十四郎、藤七が、真相探索。次第に判明した衝撃の過去とは。
  「あの・・・・・あの男、おとっつぁんを、こ、こ、殺した男です」
  「お結、・・・よくぞお前は」
  十四郎は、お結の肩を強くつかんで、その顔をみた。
  (中略)
  「このお結は京紅屋清兵衛の娘です。嵯峨屋の娘ではありません」
  「私の胸の中にいるおとつぁんは、清兵衛です」
  もう一度言ったお結の目から、涙がこぼれ落ちた。
 
「第二話 まもり亀」
▢主な登場人物
 お七・友七
 若狭屋与一郎・おれん・嘉助、
 太吉、政五郎(鬼政)、小倉佐一郎、おしの、
 お豊、
 近藤金吾・千草・慶太郎・浪江、
▢あらすじ等
 慶光寺で、近藤金五・千草の第1子慶太郎の誕生祝いの最中、門前に捨て子が・・・。
 女中のお民が、その赤子と母親に見覚えが有ると言い出し、十四郎、藤七が探索開始、
 母親は、若狭屋与一郎の女房お七、赤子は友七、母子共、若狭屋に追われている?、何故?
 太吉と佐一郎が、若狭屋に下手な脅迫状を出し・・・、
  「どちらと一緒になってもらわなくても、お七は幸せになる。三人に限って恋のさや当てなど
  したあげく仲間割れなど考えられんからな」、十四郎は自信ありげに言った。するとお登勢も

  「そうですとも、ずっと仲間だと、亀に誓ったと聞いています。仲間割れしたらあの亀が
  怒ります。あの亀は三人の守り神なんですから・・・・、そうでしょう、近藤様」

  金五は曖昧に頷きながら、十四郎とお登勢をちらりと交互に見て苦笑いした。

「第三話 若萩」
▢主な登場人物
 おひろ、おとめ、
 加賀屋壮吉、
 治三郎(堀川治左衛門)・おさよ・お梅・弥蔵、
 兼三、
 新六、壮吉、
▢あらすじ等
 髪結のおとめから、絵草紙屋の治三郎の女房おひろの離縁希望の相談を持ち掛けられたお登勢、
 十四郎、藤七が、治三郎の身辺調査内情探索開始、あぶな絵?、美人局?、おひろが行方不明、

 かっておひろが言い交わした加賀屋壮吉が、脅かされ、二百両を要求されている?、
 「いつだ、いつその金を渡すことになっているのだ」
 おひろは、どこに・・・、

  「駄目でございます。今日買い求めるのは、十四郎様のお着物ですから」
  「俺の、・・・、いいよ」
  「いいえ、着た切り雀では、わたくしが笑われます」
  「よわったなあ」
  十四郎が苦笑して外に出ると、お民が走ってきて、
  「とかなんとか言って・・・」
  ふふふと笑うと、引き返して行った。
  「お民・・・」
  怒ってみせたものの面映ゆい。
  十四郎は、お登勢の形の良い腰が揺れるのをちらと見ると「待て、待て、急ぐな」
  急いでお登勢に走り寄った。

「第四話 怨み舟」
▢主な登場人物
 万寿院、楽翁(元筆頭老中松平定信)、小野田平蔵・お沢、
 粂三・お房・吉蔵、
 浪泉(ろうせん)の旦那(惣助)、左近、
 難波屋玄二郎、天野屋利兵衛、
▢あらすじ等
 お登勢、万吉が宗匠頭巾の男に襲われ、万寿院愛用の小鼓が奪われ、2つに割られて返ってきた。
 慶光寺、橘屋へ恨み、復讐か?。真相解明に乗り出した十四郎、藤七。
 狙いは、楽翁?、20年前の老中松平定信が下した事件に関わる逆恨み、復讐だったとは・・・。

  「この男は魚を捌くのもうまいが、ひょっとこ踊りもうまいぞ」
  平蔵を指して、楽翁がにこにこしている。
  「楽翁様、あれは昔の話ですから」
  「なんのここで披露しろ」
  「ひょっとこ、ひょっとこ・・・・・、ひょっとこ、ひょっとこ、釣れるかな、釣れるかな・・・、
  あっちだ、ひょっとこ、こっちだ、ひょっとこ・・・」

  平蔵は腰を振って踊る。
  「わーっはっはっはっ、ぎゃはははは、くくくく」
  お民が腹を抱えて笑い出したのである。
  「お民ちゃん」。お登勢は楽翁の手前、窘めるが・・、


 


葉室麟著 「約束」

2024年12月29日 19時26分56秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「約束」(文春文庫)を読み終えた。
本書は、現代(平成時代)の4人の高校生が、たまたま一緒に、銀座の交差点で雷に打たれ、過去(明治維新直後時代)に転生して、西郷隆盛、大久保利通、勝海舟、江藤新平等を援け、奔走し、明治維新に立ち会う、近代史の立役者たちの側で、激しい歴史のうねりに巻き込まれるという、奇抜な発想、エキサイティングな長篇小説だったが、著者没後に、ご遺族が発見した、著者の幻のデビュー作?なのだという。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 (一)~(十三)
 加納浩太から加納謙司への手紙
 解説 内藤麻里子

▢主な登場人物
 益満市蔵(ますみついちぞう)=加納浩太(かのうこうた)
 芳賀慎伍(はがしんご)=志野舜(しのしゅん)
 小曽根はる(こそねはる)=神代冬実(かみしろふゆみ)
 得能ぎん(とくのうぎん)=柳井美樹(やないみき))
 桐野利秋(きりのとしあき、中村半次郎、島田一郎)=飛鳥磯雄(あすかいそお)
 大久保利通(大久保としあき)=加納謙司(かのうけんじ)・早崎ます・おゆう、
 川路利良、
 益満休之助、
 宮崎八郎、
 西郷隆盛、西郷従道、西郷小兵衛、
 勝海舟・たみ・ゆめ・孝子・逸子、
 江藤新平、板垣退助、後藤象次郎、福島種臣、乃木希典、
 岩倉具視、木戸孝允、
 島津久光、村田新八、
 クララ、パトリック・ヘンリー、

▢あらすじ等
 都立高校3年の加納浩太、私立草城高校3年の志野舜、都立高校2年の神代冬実、
 私立草城高校中退の柳井美樹の4人は、学校からの帰途、交差点で落雷に撃たれ、
 そのショックで意識が時を飛び、目覚めると、
 120年以上前、明治維新直後の明治六年(1873年)にタイムスリップ、
 明治維新時代に生きる青年達の身体に転生していて、明治人と現代人の二つの意識を持って、
 西郷隆盛、大久保利通、勝海舟など明治維新の立役者達の身辺に仕えながら、
 否応なく歴史のうねりに飲み込まれていき、やがては西南戦争で敵味方に分かれ・・・・、

 「皆で力を合わせて、あっちの時代(現代)に戻る約束」した4人だったが・・・。
 若者の成長物語である一方、「征韓論論争」から「西南戦争」に至る歴史認識が、
 葉室麟特有の筆力で、きめ細かく描かれていて、
 「へー!、そうだったのか」、目から鱗・・・・、である。

   浩太は、謙司に駆け寄った。
   「西郷さア、西郷さアと子供のころに約束しもうしたなあ、国のために命を捨てると、
   おいは約束を守りもしたぞ」

   大久保の声だった。
   (中略)
   浩太は胸の中でつぶやいた。人力車に乗った女が見えた。おゆう、だ。
   「すみません、俺は、大久保をあなたのもとに返すことが出来なかった」
   浩太は詫びた。
   やがて、闇が浩太を包んだ。どこかで、こうた、こうた、浩太と呼ぶ声を聞いた。
  


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藤原緋沙子著 「鹿鳴の声」

2024年12月16日 20時54分45秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「鹿鳴(はぎ)の声」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第12弾の作品で、「第一話 ぬくもり」「第二話 菊形見」「第三話 月の萩」の連作短編3篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 ぬくもり」
▢主な登場人物
 卯之助(八百屋千成屋主)・おてい(元卯之助の女房
 狐火の甚五郎、蟹蔵、
 おまさ(煮売り屋、元山科屋の一人娘おまき)・升之助、
 宗助(紙屋相模屋番頭
 与兵衛(小間物屋里美屋主)・おはつ(与兵衛の女房)・お綱(与兵衛の母親)、

 万寿院、春月尼、
▢あらすじ等
 橘屋に駆け込んできた里美屋与兵衛の女房おはつ、離縁訴えの事情が曖昧、
   お登勢は、大きく溜め息をつくと、
   「駆け込みによる離縁は、他に道のひとつもない人のために有るのですから・・・
    よろしいですね」

   厳しい口調で言った。
 十四郎、藤七が、与兵衛の身辺や里美屋の内情を探索していくが・・・・、
 おはつが恩ある女将というおまさ(実は、おまき)とは・・、
 次第に、これまで一度も登場していなかった、お登勢の忠僕藤七の過去と繋がっていき、
 藤七が、世帯を持たずにいた理由も明らかになる。
 「へー!、そういうことだったのか」となる。
   藤七は、頷くと、もう一度おまきの口に流し込んだ。
   「おいしい・・・、藤七さん、おいしい・・・」
   「おまき・・・、すまなかった」
   藤七は、震える声でおまきに語りかけた。涙声だった。
   お登勢も貰い泣きして袖で目頭を押さえると、その目を十四郎に向けた。
   「・・・・・」
   十四郎は、いたわるような目で、お登勢を見返した。

「第二話 菊形見」
▢主な登場人物
 久米総一郎・知世(ちせ、総一郎の妻女)・舞(総一郎・知世の娘)
 梶平(元総一郎の下男)
 早瀬玄之丞、おくめ、
 巳之助・おかよ、百助、
 伊左衛門(紅問屋丸紅屋主)・伝吉(丸紅屋手代)・助七(丸紅屋手代)
 万吉、長次・風太郎、ごん太、北斗、

▢あらすじ等
 元久米総一郎の屋敷で下男だった梶平が、総一郎の妻女知世の窮地を救って欲しいと、
 橘屋にやってきたが・・・。
   「橘屋のお登勢は、血も涙もない女だったと、言われてしまいそうですね」
   お登勢は、梶平が帰って行くと、ぽつりと言った。
 何やら深い事情が有りそう?、十四郎、藤七が探索開始、
 早瀬玄之丞の正体は?、
 久米総一郎、助七、惨殺事件に絡んだ真相が明らかになり・・・、
   知世は、迎えにきた梶平に付き添われて、見送りに出た十四郎とお登勢に頭を下げた。
   (中略)
   「知世さま,お墓参りにこれを・・・」
   お登勢は手ずから切った庭の白菊数本を、知世の手に握らせた。
   「今度こそお幸せに・・・」

「第三話 月の萩」
▢主な登場人物
 市兵衛(唐物骨董屋伯耆屋主)・おみわ(市兵衛の後妻)・お梅(伯耆屋の女中
 おしな(市兵衛の先妻)
 与次郎(伯耆屋番頭)、仁平(伯耆屋下男)、山科太夫、忠次郎、倉蔵、
 徳蔵(鋳掛屋)、朝吉(摺師)、

 おらく(呉服太物屋山城屋女将)、
 弥助(植木職人)、
 松波孫一郎(北町奉行所与力)・文代(孫一郎の妻女)・吉之助、
▢あらすじ等
 姉御肌で自ら請「お楽講」を組む山城屋女将おらくが、
 伯耆屋の内儀おみわの救いの求める短い文を、橘屋に持ち込んできた。
 押し込み強盗に襲われ、「お楽講」が被害に遭った直後のこと、
 事件との関わりが有るのか無いのか?、十四郎、藤七が、探索開始、
 次第に、真相が明らかになり・・・、
 おしなが殺害され、さらに、仁平が殺害され、お梅もあわや・・、
   十四郎は夕闇せまる道を橘屋に急いだ。
   「お登勢殿は、どこにいるのだ」、
   (中略)
   「十四郎さま・・・・」
   体をねじった拍子に、足元が揺れた。
   お登勢は、十四郎に肩を抱かれたまま、目顔で月の光に照らされた白萩を差した。


藤原緋沙子著 「雪見船」

2024年12月14日 06時48分23秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「雪見船」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第11弾の作品で、「第一話 冬の鶏」「第二話 塩の花」「第三話 侘助」「第四話 雪見船」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 冬の鶏」
▢主な登場人物
 栗塚三九郎・佳那、佳世、
 楽翁、
 由良美濃守高愛(旗本)、時蔵・おさつ、
 松波孫一郎(北町奉行所吟味方与力
▢あらすじ等
 妻子を顧みることなくなったと橘屋に駆け込んできた絵師三九郎の後妻佳世、
 十四郎、藤七等が、三九郎の素性と、真相を探索していくと、
 愚直な三九郎、先妻佳那、旗本由良高愛、あぶな絵、・・・が繋がり出し・・、
 刀を捨てたはずの元武士三九郎が、襷鉢巻で、大太刀を抜き・・、
 最後に武士の矜持を見せる。
  「佳那・・・・」
  後ろで三九郎の叫ぶような声がしたが、十四郎は振り向かなかった。

「第二話 塩の花」
▢主な登場人物
 富田屋角蔵(塩問屋)・おひな(亡妻)・おいし(家付き娘)・蓑助(入り婿
 おかん、
 千成屋竹次郎、おみさ、
▢あらすじ等
 女房おいしを醜女と蔑み、離縁したいと橘屋に駆け込んできた富田屋の
 若旦那蓑助に、お登勢は大激憤、
 十四郎、藤七等が、富田屋の内情等を散策していくと、意外な事情、事実が浮上、
 悪辣な蓑助と、角蔵に積年の恨みを持つ竹次郎の策謀が絡んでおり、
 おみさは殺され、蓑助は、命拾い・・、
  「とんでもねえ、おいし、お前は輝いて見えていたぞ・・・そうだ、塩の花のように・・、
   清潔で、真っ白くて・・・」

  「蓑助さん・・・」
  (中略)
  アレきかさんせ、アレきかさんせ、アレきかさんせ ♫
  おいしは、小さな声で歌った。

「第三話 侘助」
▢主な登場人物
 新五郎(檜物屋)・新助、
 常吉(竜蔵)・おふき・友七、山城屋市左衛門、
 赤松屋治兵衛(献残屋)・おひさ・おます、
 羽黒屋増右衛門(米問屋
 万寿院・春月尼、
▢あらすじ等
 妻おふき、息子友七を事故で失い、恨みを晴らし、江戸を離れていた常吉、
 娘おひさのためなら命を捨てる覚悟で江戸に戻り、
 墓前に、一輪の白い椿の花を・・・・・、

  「おとつぁん!」
  おひさが常吉の胸に突っ伏して号泣した。
  「馬鹿な奴だせ、おめえ、何も二度死ぬことはねえのによ」
  新五郎も泣いた。
 
「第四話 雪見船」
▢主な登場人物
 美乃(おみの、よしの)・桑名屋三郎兵衛、
 平井豊之進・くみ、
 秋山権太夫・市之丞、
 猿屋銀兵衛、淀屋利右衛門・利助、
▢あらすじ等
 地震で倒壊した建物の下敷きになり、危うく助けられたものの、過去の記憶を失ってしまった
 美乃(おみの、よしの)は、命の恩人桑名屋三郎兵衛の妻女となり3年が経過していたが、
 一人苦悩する日々、誰かに狙わていると、橘屋に駆け込んできた。
 何故?、お登勢、十四郎、藤七が、その真相を探索していくと、意外な事実が・・、

 赤子の泣き声から、愛しい我が子市之丞の記憶が蘇り、次第に過去の記憶も取り戻す美乃、
 しかし、・・・・、運命のいたずらが・・、
   お登勢は、一人屋根船の中から、寂々とした雪の景色を眺めていた。
   見渡す限り雪の野で、ひとっこ一人いない。
   (中略)
   「わたくし、いつか・・・」
   いつか、あなたのお子を・・・、お登勢は言いかけて、言葉を呑んだ。切なくて涙が潤んでくる。
   「うむ、いつかな・・・」
   十四郎は言った。
   (中略)
   突然岸辺の雑木林から二羽の白い鳥が飛び立った。

 


葉室麟著 「辛夷の花」

2024年12月06日 14時59分15秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「辛夷の花(こぶしのはな)」 (徳間書店)を、読み終えた。本書は、小藩の藩政を巡る熾烈な闘いに巻き込まれ、凛として家族と共に闘う女性達と、大切な人のために命を掛ける、かたくなまでに清廉な男達を描いた長編時代小説だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(二十九)

▢主な登場人物
澤井庄兵衛・志桜里・里江・よし・つる、新太郎、
すみ、新井源蔵、佐野弥七、
小暮半五郎、
船曳栄之進・鈴代、
小竹讃岐守頼近、樋口寅太夫、
稲葉治左衛門・幸四郎・琴、
安納源左衛門・新右衛門、
伊関武太夫・弥一郎
柴垣四郎衛門・小太郎、
堀川三右衛門、

▢あらすじ
九州豊前の小藩、小竹藩(こたけはん)の勘定奉行澤井庄兵衛の長女志桜里(しおり)は、近習の船曳栄之進に嫁いで三年、子供が出来ず、実家に戻されていたが、ある日、隣家に「抜かずの半五郎」と呼ばれる藩士小暮半五郎が引っ越してきた。澤井家の中庭の辛夷(こぶし)の花をめぐり、半五郎と志桜里の心が通い出すが・・・・・。
   時しあれば こぶしの花もひらきけり
     君がにぎれる 手のかかれかし
折しも、小竹藩では、旗本水谷家から養子として迎えられた現藩主小竹頼近と、江戸家老安納源左衛門、筆頭家老伊関武太夫、次席家老柴垣四郎衛門、家老三家の間で主導権争いが激化、藩主に信頼厚い勘定奉行澤井庄兵衛も葬り去られようとする事態となり・・・。
大切な人を守るため、「抜かずの半五郎」が太刀を抜く時が来た。
  「今一度、抜かずの半五郎に戻れと云われますか」、目を瞠って半五郎は訊いた。
  (中略)
  「小暮様が抜こうとされても、わたくしが抜かせはいたしません」
  半五郎と志桜里は顔を見合わせて笑った。
  辛夷の花が朝日に輝いている。
で終わっている
小藩の藩政を巡る激しい攻防と、互いに頑固な、志桜里、半五郎の思いを絡み合わせて描かれているが、終盤の息詰まる戦闘場面と、結末が印象深い。


葉室麟著 「風花帖」

2024年11月30日 10時49分01秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「風花帖(かざはなじょう)」 (朝日新聞社)を、読み終えた。本書は、江戸時代後期に、小倉藩で実際に起きた藩内抗争「白黒騒動」を下敷きにした長編時代小説だが、史実をもとにしながら、互いに思いを交わした男女が、別々の道しか選べなかった悲哀をいかんなく描いた物語になっている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(二十五)

▢主な登場人物
印南新六(いんなみしんろく、印南弥助の子)、
菅源太郎(すがげんたろう、書院番頭、江戸屋敷側用人菅三左衛門の嫡男)・吉乃(きちの、書院番頭杉坂監物の三女)・千代太、
犬甘兵庫知寛(いぬかいひょうごともひろ
小笠原忠苗(おがさわらたたみつ)、小笠原忠固(おがさわらただかた
小笠原出雲(おがさわらいずも)、伊勢勘十郎、
小宮四郎左衛門、二木勘右衛門、小笠原蔵人、伊藤六郎兵衛、
上原与市、直方円斎、早水順太、

▢あらすじ等
九州小倉藩(小笠原藩)勘定方の印南新六には、生涯をかけて守ると誓った吉乃がいたが、ある日の事件がきっかけで、新六は一時的に江戸詰めになり、その間に、吉乃は菅家の嫡男源太郎に嫁いだ。
折しも、藩内は、犬甘兵庫派、小笠原出雲派の派閥争いがエスカレート、新六も、源太郎も、その騒動に巻き込まれていく。もともとは、出雲派だった新六だが、想いを寄せる吉乃とその家族、菅源太郎、千代太を守るために、両派閥の刺客にもなる。
藩の存亡に関わる、ドロドロした派閥抗争の中にあっても、一途に、一人の女性のために命を懸けた男の姿を、鮮烈に描いた作品だった。
  吉乃は国許に残り、千代太を育てる日々を過ごしたが、
  月命日には新六の墓参りを欠かさなかった。
  祥月命日の墓参りのおりには、なぜか風花が舞った。
  (中略)
  「新六殿」
  吉乃は胸の中で新六の名を呼びながら佇んで、いつまでも風花を見つめていた。

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内館牧子著 「老害の人」

2024年11月28日 09時53分11秒 | 読書記

1年以上も前に図書館に予約していた、内館牧子著 「老害の人」(講談社)が、ようやく順番が回ってきて、先日借り、読み終えた。
つい数年前まで、まるで読書の習慣等無かった爺さん、
当然のこと、内館牧子の著作も全く読んだことが無かったが、
昨年の6月のこと、初めて、内館牧子著の「高齢者小説」等とも呼ばれているベストセラー「今度生まれたら」を知って読み、それがきっかけで、第2弾、第3弾の、「終わった人」「すぐ死ぬんだから」を読んだ。著者独特の、これでもかこれでもかという、痛快な文体に惹かれてしまい、その第4弾とも言える「老害の人」も読んでみたくなり、予約していたのだった。

▢目次
 第一章 ~ 第九章、
 あとがき

▢主な登場人物
 戸山福太郎(85歳)・(八重)、
 戸山純市(60歳)・明代(54歳)、戸山俊(18歳)、
 戸山梨子・寿太郎、藤田聡、
 松木達夫(75歳)・美代子、克二(30歳)、林透(27歳)、佐多道彦(42歳)、
 竹下勇三(76歳)・ヨシエ・剛(22歳)、
 吉田武(90歳)・桃子(87歳)・篤・悟、
 村井サキ(79歳)、
 春子・里枝・杏奈(4歳)・翔、、

▢内容紹介・・・「講談社Book倶楽部」より拝借、引用
 迷惑なの!、と言われても。
 昔話に、説教、趣味の講釈、病気自慢に、孫自慢。
 そうかと思えば、無気力、そしてクレーマー。
 双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、
 娘婿戸山純市に社長を譲ってからも現役に固執して出勤し、
 誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。
 彼の仲間も「老害」の人ばかり。
 素人俳句に、下手な絵をそえた句集を配る吉田武・桃子夫妻、、
 「死にたい死にたい」と言い続ける春子
 病気自慢の竹下勇三
 老害カルテット(四重奏)は絶好調。
 さらに、ぽっちランチの女、クレーマーの村井サキが加わり
 老害クインテット(五重奏)。
 「もうやめてよッ」、福太郎の娘・純市の妻、戸山明代は、
 ある日、たまりかねて腹の中をぶちまける。

 「終わった人」、「すぐ死ぬんだから」、「今度生まれたら」に続く、
 著者「高齢者小説」の第4弾!
 定年、終活、人生のあとしまつ……。
 自分のこと、親のこと、いずれは誰もが直面する「老後」。
 「最近の若い人は……」というぼやきが、今や「これだから『老害』は」と
 なってしまった時代。

 内館節でさらなる深部に切り込む!

「あとがき」で、著者は、
「老害をまき散らす老人たちと、それをうんざりして「頼むから消えてくれ」とさえ思う若年層。両者の活劇のような物語を書けないものかと、かなり前から考えていた」
・・・と記述しておられる。
さらに、「そんな老人たちであっても、命がある以上、どう生きたらいいのか。少なくとも、若年層に押し付けられた趣味や挑戦等の「自分磨き」ばかりでは無い。そう思います」
とある。
あくまでも物語で有り、登場人物のそれぞれは、やや極端なキャラクター?に描かれているが、その言動には、思い当たる節、多々有り、同感、共感。
「老害」・・・・・、我が身に照らして、肝に命じて、暮らしたいものだと思うところだ。

振り返り記事   「今度生まれたら」   ⇨ こちら
         「終わった人」     ⇨ こちら
         「すぐ死ぬんだから」  ⇨ こちら


葉室麟著 「橘花抄」

2024年11月20日 09時49分35秒 | 読書記

なんやかんや有って休止していた図書館通い、
先日、ようやく再開したい気分になり、約2ヶ月振りに図書館に出向き借りてきた1冊、
葉室麟著、「橘花抄(きっかしょう)」(新潮社)を、やっと読み終えた。
本書は、江戸時代中期、筑前黒田藩のお家騒動を背景に、両親を亡くした孤独な女性卯乃と、自らの信じる道を歩む立花重根、立花峯均等を中心とした男達の姿を描いた長編時代小説だったが、やはり、葉室麟著作ならではの、史実とフィクションが織り混ざった傑作だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 第一章 卯花(うのはな)
 第二章 姫百合
 第三章 山桜
 第四章 乱菊
 第五章 花橘(はなたちばな)

▢主な登場人物
 卯乃(うの)、
 立花五郎左衛門重根(宗有)(しげもと)、立花(花房)峯均(寧拙)(みねひら)、

 奈津、りく、さえ、桐山作兵衛、村上庄兵衛、藤森清十郎、
 黒田光之(大殿)、黒田泰雲(綱之)、黒田綱政(殿)、黒田吉之、
 大涼院、呂久子、杉江、

 隅田清左衛門、真鍋権十郎、津田天馬
 佐野道伯

▢あらすじ等
 両親を亡くした14歳の卯乃が、筑前黒田藩で権勢を振るっていた立花重根に引き取られる
 ところから物語が始まっている。その卯乃は、父親村上庄兵衛切腹に、重根が関与したと
 聞かされ、懊悩のあまり失明、
 さらに、実の父親が、黒田藩廃嫡の黒田泰雲(綱之)であったことを知ることになり、
 前藩主黒田光之、現藩主黒田綱政、お世子黒田吉之を巡る、藩内抗争に巻き込まれる。

 前藩主の没後には、立花一族の粛清が始まり、減封、閉門、配流、追及は苛烈を極め、
 重根と峯均には、隻腕の剣士・刺客、津田天馬の凶刃が迫る。
 己の信ずる道を貫く重根、峯均等の男達、そして、主人公的な卯乃や、りく、奈津、さえ等
 一途に生きる女性達が、それぞれ魅力的に描かれ、
 さらに、最終章では、小呂島(おろのしま)での峯均と天馬の行き詰まる迫力満点の
 死闘シーンが、まるで劇画映像の如く描かれ、巌流島の宮本武蔵佐々木小次郎の対決を
 想わせている。
  五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
 葉室麟著作には、よく和歌が登場するが、本書にも、随所に和歌が織り交ぜられており、
 さらには、終始、「香」にこだわっている等、格調の高さが感じられる。


(参照・参考)
e-hon 
「橘花抄」
葉室麟インタビュー
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