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畠山健二著 「本所おけら長屋(十九)」

2023年07月13日 16時10分03秒 | 読書記

今年2月に図書館に予約(リクエスト)していた、畠山健二著「本所おけら長屋(十九)」(PHP文芸文庫)が、やっと順番が回ってきて先日借り、一気に読み終えた。人気の「本所おけら長屋シリーズ」の第19弾目の作品である。本書には、「その壱 ほろにが」「その弐 ぜんあく」「その参 せんべい」「その四 はりかえ」の連作短編4篇が収録されている。


「本所おけら長屋シリーズ」は、江戸本所亀沢町の貧乏長屋「おけら長屋」の店子、万造、松吉の「万松コンビ」を筆頭に、左官の八五郎、お里夫婦、粋な後家女お染、浪人の島田鉄斎、等々、貧しいくせにお節介焼きで人情に厚い、個性豊かな面々が、次々巻き起こる問題、事件、騒動を笑いと涙で体当たりし、まーるく収めていくという時代小説だが、とにかく面白い。
演芸の台本執筆や演出等の経歴を持たれる著者畠山健二特有の小気味よい文体、まるで江戸落語、漫才を聞いているようなテンポ良さに引き込まれてしまい、随所で、笑いを堪らえ切れなくなったり、思わず泣かされてしまったりする。
「本所おけら長屋シリーズ」のテーマについて、著者は、「品行が悪くても品性が良い」ことだと述べておられるようだが、「いつも馬鹿やっていながら、決して人を裏切ったり騙したりしない」全ての登場人物達に、読者も気持ちよくなり、人の優しさがジーンと心に沁みてくる時代小説になっている。

畠山健二著「本所おけら長屋(十九)」

▢主な登場人物
万造(米屋の奉公人)、松吉(酒屋吉高屋の奉公人)、お染(乙な後家)、
八五郎(左官)、お里(八五郎の女房)、お糸(八五郎・お里の娘)、
島田鉄斎(元津軽黒石藩藩士、浪人)、お律(松吉の義姉)、
徳兵衛(おけら長屋の大家、良識人)、与兵衛(乾物商相馬屋隠居)、
久蔵(呉服商近江屋手代)、お梅(久蔵の女房)、亀吉(久蔵・お梅の子)、
喜四郎(畳職人)、お奈津(喜四郎の女房)、佐平(たが屋)、お咲(佐平の女房)、
金太(八百屋、棒手売り)、辰次(魚屋)、
お栄、晋助、
聖庵、お満

▢その壱 ほろにが
絹問屋志摩屋久太郎お浦夫婦には、お静という天下無双の世間知らずの箱入り娘がおり、17歳、嫁入りの話がある。相手は、木綿問屋富来屋(とぎや)半次郎?だという。お静が、本人を確認しようと訪ねた先は、なんと、赤松長屋の研ぎ屋(とぎや)、「早呑込みの半次」、「分かったの半公」、「岡惚れの半の字」の家。早とちり、勘違い、行違い、春画・・・・、大爆笑の渦・・・、万造、松吉、半次・・・、三祐のお栄「・・・馬鹿が三人いるようにしか見えないけど・・・」、半次が口にしたその酒は、いつもよりほろ苦い味がした。

▢その弐 ぜんあく
帯問屋鶴屋伊太蔵お嘉代の家に、上方から江戸見物に出てきたという中村屋又右衛門お申子(おきね)お福、親子が逗留しているが、どうも様子がおかしい。実は・・・。島田鉄斎が、たまたまその真相を知り・・・、どうすれば丸く収まるか・・、人情とお節介焼きのおけら長屋の面々が乗り出し、芝居を打つ。
万造「金貸しのお染姐さんが言うんだから間違えねいや」、松吉「ああ、あの下卑た化粧は,やりすぎだったけどな」、お染、鉄斎に、「そんなことないですよね、ねえ、旦那・・」、・・・、お栄「そうだよ。これがおけら長屋なんだよ」

▢その参 せんべい、
絹問屋成戸屋の奉公人八五郎の女房お里が、丸髷長屋の浪人大友平太郎の子供倫太郎に、煎餅を1枚上げたことから始まる、武士と江戸っ子の意地の張り合いが、予想外の結末になっていく物語である。八五郎は嘘をつくことが下手・・・、聖庵堂の医者お満が号泣・・・、笑いと涙、が、混然。
「黒石藩江戸家老工藤惣二郎でござる」、こんなことになるとは夢にも思わなかった八五郎、おろおろするばかり。「で・、ですから、あっしは・・・」。「この勝負、あっしの勝ちですぜ、大友さん・・・」

▢その四 はりかえ、
おけら長屋の住人のたまり場である酒場三祐のお栄とおけら長屋の松吉が、やっと世帯を持つことになるが、お栄には、提灯屋花房屋直次郎の後妻になり、会うことが無くなっている母親お登美と異父弟庄吉がおり、しかも、お登美には、花房屋の姑お申(おしん)との間に難儀があることが分かり、これを、お栄、松吉の祝言までに、まるく収めるために打つ芝居とは?、人情とお節介焼きの本領発揮するおけら長屋の面々、聖庵堂の医者お満まで加わって。そして、祝言当日の大騒動?、
苦しい!、やめてくれー!、笑いと涙が、止まらなくなる。
「心の提灯が涙で濡れて剥がれてたら、貼り替えればいい・・」


参照
👇
PHP研究所(PHP文庫)「本所おけら長屋シリーズ」


すでに発刊されている、次作「本所おけら長屋(二十)」を、予約(リクエスト)してきたが、人気の高い新刊本であり、順番が回ってくるのはいつのことやらだ。多分、また、半年くらいは、「本所おけら長屋シリーズ」と、お別れになりそうだ。


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