図書館から借りていた 平岩弓枝著、「はやぶさ新八御用帳(五)御守殿おたき」(講談社)を読み終えた。本書は、南町奉行所、内与力隼新八郎が活躍する長編時代小説「はやぶさ新八捕物帳シリーズ」の第5弾目の作品で、表題の「御守殿おたき」の他、「赤い廻り燈籠」「雪日和」「多度津から来た娘」「男と女の雪違い」「三下り半の謎」「女密偵・お鯉」「女嫌いの医者」の連作短編8篇が収録されている。一話完結の短編のせいもあり、読みやすく、一気に読破出来た。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に 書き留め置くことにしている。
▢主な登場人物
隼新八郎(新八、内与力、根岸肥前守の懐刀)、郁江(新八郎の妻女)
根岸肥前守鎮衛(やすもり)(南町奉行、新八郎の上司)、
宮下覚右衛門(南町奉行所用心)、高木良右衛門(南町奉行所用人)、
お鯉(南町奉行所奥仕え女中、新八郎の心の恋人)
神谷鹿之助(勘定方、郁江の兄、新八郎の義兄、幼馴染)、神谷伊十郎(大番組組頭、新八郎の義父)、
大久保源太(定廻り同心)、大竹金吾(同心)、勘兵衛(元岡っ引き、鬼勘)、
お初(勘兵衛の娘、小かん)、お久美(勘兵衛の孫)
藤助(岡っ引き)、熊吉(下っ引き)、
▢あらすじ
「赤い廻り燈籠」
内与力新八郎は、根本肥前守から、旗本進藤織部正(おりべのかみ)の妾宅で愛妾お三津が殺された事件を内密に調査するよう下知される。定廻り同心大久保源太等と共に探索開始。「私、人を信じて居りません」と言う織部正の正妻吉江、奥女中おもとは、「奥方が下手人?」と言い、女中お千代は?。怨恨?、金目当て?、下手人の目星つかないまま、事件から10日が過ぎ、赤い紙で出来た廻り燈籠から、ピンときた小かん(お初)がもたらした情報から・・・、秋山助三郎が捕らえられ・・・、1件落着。
小かん(お初)が茄子漬けを御番所に届けに来た直後から、お鯉が大車輪で茄子漬けを作り始め、「殿様、どちらがお口に合いますでしょうか」・・・、対抗意識丸出し?、女は変なところで強くなるものだというのが、新八郎の気持ちだった。
「御守殿おたき」
有徳人とされている永田屋光兵衛が18年前に拾って育てた娘お栄を、松平上総守斉政の御落胤であるとして、突然現れた堂々たる美人奥女中滝の井。見事な芝居で、礼金、衣装代、800両を騙し取られた光兵衛、倅政太郎の正体は?、お栄を引き取ったのは、小石川の大百姓善兵衛夫婦?、お栄の煙草屋の前に 町家の女房髷、小粋な女が一人・・・。
小走りに去って行く女の背に、新八郎は、「忘れてた。あんたの名前は・・・」、「お滝です。仲間内では、御守殿おたき」、まるで御殿女中のように、きりっとした美しいお辞儀を残して、夕暮れの中に消えた。
なんとも小気味良く、深く、味わいの有る作品である。
「雪日和」
石州浜田藩松平周防守の若君鶴之助(14歳)は、侍女お喜久が生んだ子だったが、正室芳江が病死、側室藤世の子も病死したため、側室藤世の子として育てられた。その事実を知ってから反抗的となり粗暴な振る舞いをするようになった鶴之助、白金の大地主作兵衛に大怪我をさせてしまい、その後、御家人古沢藩兵衛の娘を馬で跳ね飛ばし死亡させるが、実は、その裏で画策が有ったのだった。重役佐野三郎兵衛、兵馬父子と奥女中沢の井、藤世の父親重役岡野源太左衛門、
襷掛けの侍4~5人、暗殺者?、「何の真似だ、兵馬・・・」、「母上・・・・手前の不心得・・・・お許しを・・・・」
国許へ出立する周防守と藤世を見送る馬上の侍は、松平鶴之助であった。まだどこか幼な顔の残っている若い殿様の両の頬に涙が光って流れ落ちるのを、橋の袂から、新八郎は感慨をもってみつめていた。
「多度津から来た娘」
新八郎の妻女郁江の母親左尾は、大番組頭能勢市兵衛の妹で、その能勢市兵衛の娘は大奥に奉公、将軍家斉の目に止まりお志賀の方と呼ばれていることから羽振りよく、毎年正月には、盛大な茶事初釜を行っていて、新八郎も招かれたが、そこで見掛けた新顔の娘お千賀に注目。多度津から出てきた京極家御用人塩津宗兵衛の娘だというが・・・?、なにかちぐはぐ・・・。多度津から寒中串鮑を運んで来た名主中村彦三が行方不明に・・・、事件?、事故?、大竹金省吾等と探索、お勝?、おたま?。御番所の居間で、根岸肥前守は、新八郎に、「新八の勘が当たったの」、「何故、女天一坊と気がついた」、「よくわかりません」・・・・。多度津から出て来た娘は、束の間、江戸の華やかな夢を垣間見て、短い生涯を終わった。新八郎は、この男らしくない深い吐息をついた。
「男と女の雪違い」
2月、雪が降り続く中、根岸肥前守の私用で向島村へ出掛けた新八郎、帰途、小かん(お初)と出会う。小かんの清元、踊りの弟子辰巳屋のお加代が、雪の中、行方不明になっているという。探索途中、流されてきた船にしがみついて子供2人を助けた時、新八郎が右肩脱臼、さらにお加代を襲う中間5~6人と斬り合い、お加代を救出したが、勘兵衛の家に泊まる。小かん(お初)が甲斐甲斐しく世話をし・・・。すると、翌日、勘兵衛の家へ、郁江が駕籠2挺で迎えにやってきて、気まずい空気、嫉妬?、人形のような郁江の女の情念?、春の嵐?
小かん(お初)は、小かんで、郁江を連れてきた熊吉に腹を立て、煙草盆を放り投げる等、大荒れ。お鯉は、お鯉で、夜更けまで湯を沸かし、飯の支度をし、長屋の様子を見続け、新八郎の帰りを待ち続け・・・、美女三人に、三様のヤキモチを焼かれる新八郎、それに気が付かないで御番所へ通うのんき者の新八郎だった。
「三下り半の謎」
3年前、本多内蔵助の上屋敷に盗賊が入り、2代将軍秀忠から拝領した天目茶碗が盗まれた責任を取らされ解雇された江口兵吾が、本多家の隣の土屋家の屋敷に入った盗賊の中にいたという事件で、新八郎は、表沙汰にならないよう探索するよう、根岸肥前守から下知される。江口兵吾には、女房おふゆと娘お千代(7歳)がいるが・・・。散茶女郎お松とは?。2日後、江口兵吾が殺され、財布に残っていたのは、三通の三下り半(離縁状)?。「みや殿」「おしろ殿」「ゆふ殿」、???、謎。荒次郎、万吉、百太郎、岩之助、鬼神組一味は召し捕られたが、盗賊一味から持ち出した500両の行方が不明?、「どうじゃ、お鯉、金の隠し場所に心当たりはないか」、肥前守がお鯉に聞く。江口兵吾、おふゆには、5歳で病死したお孝という娘がいて、その墓は?、「ここは、宮城村だな」
「女密偵・お鯉」
男子禁制の紀州家上屋敷の奥で、金無垢の薬師如来像が紛失した事件の探索のため、お鯉が密偵として働くことになった。女達の確執が原因であろうと睨む新八郎は、「知らぬぞ、また泣いても・・」。御簾中(正室、種姫)、側室 おむら、御年寄 千とせ、藤尾、民野、女中 おきみ、おとよ、台所人 清助、
小かん(お初)も連絡係として参加するが手がかり無し。「どうも、女のごたごたは厄介だ」と新八郎。
9日経過、魚市場で小かん(お初)が、紀州家の裏門で見掛けた若い男を見つけ・・・。お鯉が直感、千とせと側室おむらの妹女小姓弥生が。。。、御簾中(正室、種姫)の寝所に走り込み・・・、全て明らかに・・・。
お鯉が、御番所に戻り、上機嫌の根岸肥前守がお鯉と楽しげに飲食、お鯉が心配で夜も眠れず、紀州家のを周りをうろついていた新八郎は、やや憮然。
「女嫌いの医者」
「男と女の雪違い」で、狼藉者に襲われた危難から救出したお加代(小かんの弟子)の父親料理屋辰巳屋平治郎から、新八郎は、三河岡崎藩(藩主本多中務大輔忠顕)には、内紛が有るらしいとの情報を得る。そこに、平治郎の亡き先妻の姪で仕出し屋吉松に嫁いでいるお加津が、若い医師吉山宗典を連れてきた。帰りがけ、小かん(お初)、勘兵衛、藤助に同行して、新装開店の熊吉の一膳飯屋で飲食し、店を出たが、誰かを追って凄い勢いで走ってきた様子の本多家の侍達と出くわす。翌日、宗典の家に深傷を負った一人の侍が・・・。うわ言に、「さかいさま・・・」。???。藩主忠顕の奥方が、酒井左衛門中尉忠徳の姪?、藩主忠顕の愛妾、お袖の方?、服部玄太郎?、岡崎藩藩士2名の葬式?、吉松の内儀お加津が本多家の中屋敷へ手伝いに行くことを知っていた宗典。その宗典に惚れ込んでしまったお加津。お加津に口説かれるが、際どいところで逃げ出してしまった宗典とは、いったい何者?。
御番所根岸肥前守の居間、「その内儀は、美人か」・・・、「新八なら如何致した」、殿様とお鯉と、同時に睨まれ、新八郎は狼狽した。「いや、手前は、やはり、その・・・・」
(つづく)
新八郎の活躍、庶民的で楽しかったですわ。
コメントいただき有難うございます。