そして、振り出しへ戻る・・・
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さて、期待の007シリーズ最新作ですね。

この、ポスターがカッコイイんだよねえ。

シリーズでは23作目、そして007第一作から50周年という記念作であります。

いやはや、私らもずっとシリーズを追って来ましたが、
でもやっぱり特にこのダニエル・クレイブ版のジェームズ・ボンドは、
これまでとは一味違って、ひきつけられるよね。

大人の味・・・といえば元々ショーン・コネリー版はそうであったはずなんだけれど、
次第にマンネリ化し、おちゃらけて、あまり緊張感のないものになってきていた。
まあ、それぞれわくわく・ドキドキはあるけどね。

特に今再見すると、ちょっと耐えられないものもあったのは事実・・・。
そこで私らの出した結論は、ボンドシリーズは懐かしがって古いのを見てはいけない。
常にその時の最新作を楽しむべき、ってことだったよね。

そのとおり。

だからこそ、今作、楽しもう・・・!と、待ちに待っていたわけ。

まずはあの、ロンドンオリンピックの開会式。
あれがすごく良かったんだよね。
エリザベス女王を、開会式会場にエスコートするジェームズ・ボンド。

ボンドはともかく、エリザベス女王がヘリコプターからパラシュート降下というのは、
やり過ぎだとは思ったけど・・・しかし、この映画のものすごい宣伝にはなったよね。

まさに女王陛下の007でした!

さて、前置きが長くなりすぎ・・・。

各国のテロ組織に潜入している工作員を記録しているハードディスクが何者かに奪われます。
犯人を追い詰めるボンドは、MI6長官Mの命令で放たれた銃弾に撃たれ、
橋から谷底へ落ちてしまう・・・。
そこで一旦は死亡とみなされたボンドでしたが・・・。

まあ、ここのところで死んでしまってはストーリーが続かないので、
それでも生きているんだろうなあ・・・と想像は着きます。

案の定、ロンドンのMI6オフィスがテロリストに爆破されるに及んで、
再び姿を表したボンド。

ここからが今回の本当のストーリーというわけですね!

そう、何しろ冒頭からものすごいチェイスシーン、
ひゃー、こんなすごいシーンを惜しげもなくオープニングに使っちゃうんだ・・・と、
その気前の良さにも驚きました・・・。

それで今回の対戦相手というのは、
世界征服を狙うマッドサイエンティストでもなく、
どこぞの国の西側政府転覆を狙うテロリストでもない。
ただひたすらにMI6と、そのトップMを狙う、シルヴァの私怨によるものなのです。
シルヴァというのはもとMI6の諜報員。

Mの冷酷な決断により、見捨てられ、
筆舌に尽くしがたい辛い体験をして、身も心もズタズタに・・・。

これがまた、さすが名優ハビエル・バルデム。
個性たっぷり存在感バツグン。

強烈でありながらも、どこか悲しみをもたたえ・・・。
ここはね、厳しい母を持つ兄弟、というようなシチュエーションなわけだ。

ああ、母から見放された兄。未だに愛されている弟・・・。

マザーコンプレックスと兄弟間の相克。
こういう普遍的テーマが隠れているから、ちょっと引き締まる。

でもねえ私は思うんだけど、このシルヴァ、そのどん底から這い上がって、
こんな組織を立ち上げられる財力を一人で築いたんだよね。
それってすごくない?
そこまで行ったんだから、あとは南の島でも買って、
のんびり余生を過ごせばよかったのに。

いやいや、復讐を誓ったからこそ、血の滲む努力をして、
ここまでになったというべきなんだろうね。

南の島どころか、廃墟の島を手に入れたんだもんね。
あの島の外景を見た時に、あれ、軍艦島みたい・・・と思ったのだけど。

あれは本当に軍艦島だったんだね。
島内の建物のシーンは違うけどね。

さて、この題名の「スカイフォール」って、何かというと・・・。

おっと、それは見てのお楽しみ、ということで。

そうだね。作品中でもボンドが言葉の連想による心理試験を受けた時、
「スカイフォール」という言葉の時だけ、反応できなかったんだ。
その秘密。・・なかなか気をもたせるのが上手い。

まあ、ヒントとしては“スコットランド”です。
同じ日、「砂漠でサーモンフィ・フィッシング」という映画を見たんだけど、
そちらのスコットランドは、豊かな自然、川を泳ぐ鮭、
そして、ロマンチックで優雅なお城が登場。

でも、こっちのスコットランドは、冷たい灰色一色。
今にも崩れ落ちそうな屋敷が出てくるね・・・。

対比として、実に面白かったね。

それから、今作に出てくるQが良かった。
Qといえば、いつもボンドのための新兵器を用意してくれる、あのオジサンなんだけど、
ここでは代替わりをして、うんと若い青年。
見るからにオタクっぽい彼は、いかにも地味~なアイテムをボンドに渡すね。

でも、ちゃんとそれが役に立つというのはもう、お約束。
まあ、それよりもコンピュータを駆使し、ボンドに周りの状況を知らせるという、そういう重要な役を果たすんだね。
これぞ現代の一番の武器だよ。

そうして最期まで見ていると・・・意外にも振り出しに戻るというか、
不思議なループになってるね。
Mのオフィス、Mの秘書。
あそこではやっぱり、帽子を帽子掛けに投げてほしかったと思ったりする。

とにかく、大満足できたね。

はい。これは是非見ていただきたい、納得の大作でした!
「007 スカイフォール」
2012年/アメリカ/143分
監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ、ジュディ・デンチ、ハビエル・バルデム、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ベン・ウィショー