映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「変な絵」雨穴

2025年02月17日 | 本(ミステリ)

ミリオンセラーですか・・・

 

 

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シリーズ累計120万部突破のミリオンセラー小説『変な絵』が待望の文庫化!
49ページに及ぶ物語の前日譚『続・変な絵』と『ナゾ解きゲーム』も特別収録!

オカルトサークルに所属する佐々木は、後輩の栗原からとあるブログの存在を教えられる。
そこには、『あなたが犯した罪』という不穏なメッセージとともに、
投稿者の妻”ユキ”が描いた「絵」が掲載されていた――。

9枚の奇妙な絵に秘められた衝撃の真実とは!? 
その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる!
今、最も注目を集めるミステリー作家、雨穴が描く、戦慄の国民的スケッチ・ミステリー!

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ミリオンセラー小説「変な絵」の文庫版。

雨穴さんの「変な家」は、映画は見たけれど本は読んでおらず、
正直YouTubeをぼちぼち見たことがあるだけですが、
まあ、気になって一度読んでみようかな、と。

 

私は勝手に本作は短編集なのかと思いながら読んでいたのですが・・・
なんと全体で一つのストーリーで、3世代にわたる因縁の・・・という感じです。

でも言ってはなんだけど、普段あまり本を読まない人たちが多分この本を買ったのでしょうね。
文章は下手ではないけれど、文学ではないな・・・。
陰湿過ぎる内容も、私の好みではなかったです・・・。

まあ、あくまでも好みの問題ですけれど。
あまり書くべきことがありません・・・。

「変な絵」雨穴 双葉文庫

満足度★★☆☆☆


「砂男」 有栖川有栖

2025年02月03日 | 本(ミステリ)

単行本未収録

 

 

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都市伝説“砂男”を調べていた学者が刺殺された。
死体にはなぜか砂が撒かれていて……。

奇怪な殺人事件に火村とアリスが挑む表題作など、
これまで雑誌掲載のみとなっていた
幻の〈火村シリーズ〉2作をはじめ、
〈江神シリーズ〉やノンシリーズの
貴重な作品6編が一冊に!

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有栖川有栖さんの、単行本未収録短編集ということで、これは見逃せません。
火村シリーズと江神シリーズが一冊の本に入っているなんて、贅沢すぎです。
といっても最近はほとんど火村シリーズが多いので、
江神シリーズのおなじみ登場人物、望月・織田コンビはなんとも懐かしい!!

 

著者の「前口上」にあるのですが、
本作中には法律の改正や社会情勢の変化によって、
内容が古びてしまったことで、単行本や文庫収録から漏れてしまったものもあるそうです。
確かに、めまぐるしく変わる世の中で人々の心の動きやトリックにも変化が現れますね。
例えば、スマホがある時期と無かった時期とでは、
推理の仕方にもかなりの違いがあるのは容易に想像がつきます。

まあつまり、有栖川有栖さんのシリーズものも、
それくらい長きにわたって描き続けられているということでもあります。

 

表題作「砂男」は、都市伝説“砂男”を調べていた学者が刺殺されたというもの。
しかも、その死体には砂がふりかけられていた・・・。

元々は西洋で語られている話、砂男。
夜寝付けずにいると、砂男が来て、パラパラと砂を振りかけるというのです。
もしその砂を振りかけられたら、深い眠りに落ちてしまう。

ところが作中で語られる日本の都市伝説は、
砂をかけられたら2度と目が覚めない、すなわち死んでしまうのだと・・・。

「口さけ女」を代表とするこのような話が、どこから生じてどのように広まっていくのか、
確かに研究すると面白そうですね。
ただ、それこそ現在であれば、SNSであっという間に拡散する都市伝説。
なんだか夢がないなあ・・・。

 

「砂男」 有栖川有栖 文春文庫

満足度★★★.5


「ペッパーズ・ゴースト」伊坂幸太郎

2025年01月13日 | 本(ミステリ)

未来を予見する教師は、世界を救えるか?

 

 

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中学教師の檀は、猫を愛する妙な二人組の小説原稿を生徒から渡される。
さらに他人の未来を観る力を持つことから謎の集団とも関わり始め……。
苦い過去を乗り越えて檀先生は、世界を、自分を救えるのか!? 
毎ページすべてが楽しく愛おしい、一大エンターテイメント!

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まずは本作の主人公、檀先生の秘密をお教えしましょう。
檀先生(高校教師)は、人の「翌日」を見ることができるのです。
それは直接会って話をするなど、その人の「飛沫」をあびなくてはならないなど
いろいろな制約があって、しかも自分自身の明日は見ることができません。

この力で、恐ろしい事故や災害を予見することはできるのですが、
だからといってそう簡単に人々は救えない。
あなたは明日事故に遭いますよ、と言って信じる人はどれだけいるでしょう。

檀先生は、せっかくの力もなんの役にも立たないことを悔しく思っているのです。
そんなある日、彼の教え子のお父さんが、
とある場所に監禁されることを知ってしまい・・・。

 

さてこれが本作のメインストーリーの始まりですが、
もう一つ、別のストーリーが挿入されていきます。
それは、檀先生の教え子の1人である布藤鞠子が描く小説。
鞠子は書き上がった原稿を檀先生に読ませるために持ってくるのですが、
その内容がそのままストーリーに少しずつ挿入されているのです。
それは猫を虐待する者に復讐することを仕事としている2人組、
ロシアンブルとアメショー。

この2人が
「自分たちは実は、誰かの小説の中の登場人物に過ぎないのではないか?」
などという会話を交わします。

そしてなんと、檀先生の現実の中に、この2人がそのまま登場。
なんともやられますね。
洒落た会話と伏線。
これぞ小説の妙。
だから伊坂幸太郎さんの本はやめられない。

 

「ペッパーズ・ゴースト」伊坂幸太郎 朝日文庫

満足度★★★★★


「方舟」夕木春央

2024年12月23日 | 本(ミステリ)

頼むから、地上で寝て

 

 

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極限状況での謎解きを楽しんだ読者に驚きの〈真相〉が襲いかかる。

友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、
偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめた。
いずれ「方舟」は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。
タイムリミットまでおよそ1週間。
生贄には、その犯人がなるべきだ。
――犯人以外の全員が、そう思った。

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私には初めての作家さん。
衝撃の結末・・・というのにつられて読み始めました。

 

要点だけ言えば、とある地下施設に、地震のため閉じ込められてしまった10人。
外部とは一切連絡がつかない。
そこへ水がわずかずつ流入しはじめ、いずれこの場所が水没することが予想される。
そんな矢先に1人が殺害される。
そしてまた、誰か1人が犠牲になれば、その他の者がここを脱出できることが分る。
生け贄には、殺人を犯した者がなるべきだ・・・。
暗黙のうちにそのような認識が広まって、犯人捜しが始まる。

 

う~ん、私、この問題提起の部分からもう、
この本をチョイスしたことを後悔しました。

でもまあ、最後まで読んで、そのどんでん返しも見事だとは思いましたが、
やっぱり私が読むべき本ではなかったと感じてしまいました。

もっと若い頃なら単純に楽しめたのかも知れません。
なんというか、今さらですが私はどこか人間性というかヒューマニズムを
信じたいところがあって、本作のテーマそのものがもう受け入れがたい・・・。

実際問題、こうした選択を迫られることがないとは限らないけれど・・・、
こんな風にゲームみたいに語ること自体がもうイヤ・・・。

そもそも、こんな薄気味わるい地下施設で夜を過ごそうなんて、私は思わないな。
(多少閉所恐怖症のケがあるのかも)。
寝袋まであるわけだから、地上で寝るべきです!!

 

「方舟」夕木春央 講談社文庫

満足度★★☆☆☆


「死はすぐそばに」アンソニー・ホロヴィッツ

2024年12月04日 | 本(ミステリ)

ホーソーンがかかわった過去の事件 

 

 

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テムズ川沿いの高級住宅地リヴァービュー・クロースで、
金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。
昔の英国の村を思わせる敷地で住人たちが穏やかに暮らす
――この理想的な環境を乱す新参者の被害者に、
住人全員が我慢を重ねてきていた。
誰もが動機を持っているといえる難事件を前にして、
警察は探偵ホーソーンを招聘するが……。
あらゆる期待を超えつづける〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊!

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アンソニー・ホロヴィッツの〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊!
著者の本は心地よくポンポンと続きが出ますね。


もうすっかりおなじみのホーソーンとホロヴィッツのコンビです。
もと刑事のホーソーンが警察の捜査協力という形で、事件解決に乗り出しますが、
著者と同名のアンソニー・ホロヴィッツがその助手役となり捜査に同行。
そしてその記録を小説として発表するのです。

ホロヴィッツは、こういう場合の探偵役と助手役は
気心の知れたコンビであるべきと思うのですが、
いまだにホーソーンはよそよそしく、親しく自分のことを語ろうとしない。
それでついイラついてしまうホロヴィッツですが、
それでもこれまでのシリーズ4作の中で、
徐々にホーソーンの人となりが解き明かされては来ています。


さて、本作。
これまでは事件と同時進行で物語が語られてきたのですが、
本作はホーソーンの過去の事件。
ホロヴィッツは当時の資料やらメモをどっさり渡されただけで、
結局犯人は誰だったのか教えてもらえないまま、原稿を書き始めます。

そして、その当時(すでにホーソーンは警察を辞めていた)、
ホーソーンがダドリーという男とコンビを組んでいたと知って、
ホロヴィッツはショックを受けます。
そんな話は今まで聞いたこともないし、
ホーソーンみたいな男とコンビを組めるのは自分くらいしかいない・・・
という思いがあったのでしょうね。

 

ともあれ、その過去の事件というのは、
テムズ川沿いの高級住宅地リヴァービュー・クロースで、
金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された、というもの。
容疑者は同じ敷地に住む住人たち。
彼らにはそれぞれ殺人の動機がある・・・。

ということで、ここのパーツはこのシリーズ初の三人称形式。
これまではすべてホロヴィッツ自身が語り手でしたが、
この過去の事件では、ホロヴィッツは現場に立ち会ってはいないわけで、
そういうことになります。

 

そして、現在進行中の出来事、
ホロヴィッツが資料をもらって原稿を書き始め、
真相を語ろうとしないホーソーンにイラつく・・・というようなパーツは、
いつものホロヴィッツ視点の一人称となって、
交互に本作の内容が語られて行きます。

終盤、煮詰まったホロヴィッツが現在のリヴァービュー・クロースを訪れるというシーンがあって、
そこで初めて彼は、当時のそこに住んでいた人々の生活を身近なものとして感じるのですが、
それは読み手の私も同様。
なんだかとても感慨深いシーンでした。

思いがけない結末もまた、ナイスです。

 

「死はすぐそばに」アンソニー・ホロヴィッツ 山田蘭訳 創元推理文庫

満足度★★★★★


「大鞠家殺人事件」芦辺拓

2024年11月06日 | 本(ミステリ)

正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説

 

 

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大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――
戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた
大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。
だが夫は軍医として出征することになり、
一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。
戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。
危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を?
正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!

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芦辺拓さん作品、私は久しぶりかもです。

著者は本作をこう説明しています。
「正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説」
そう、いかにもなそういうミステリをたまに読みたくなってしまう、
もと本格ミステリファンなのでありました。

 

本作の舞台は昭和18年、大阪の船場という商人文化の中心地にある大店に
中久世美禰子が嫁いで来るあたりから。

でも冒頭に、不可思議な1人の青年の消失事件が語られています。
実はこのことが後々の事件の大きなもととなっているのですが・・・。

 

一家の主の不可解な縊死事件。

そして長女の流血事件。

主の妻の奇怪な溺死事件。

そして、自称名探偵の哀れな殺人事件・・・。

そうなんですよ、本作に、「名探偵」が登場するのですが、
まったく頼りにならないあげくに、殺されてしまうという。

 

しかも昭和20年の大阪大空襲で、屋敷も何もかもすっかり焼けてしまい、
証拠もあとかたなく失われてしまうのです。

しかし本当の「名探偵」役は最後の最後に登場します。
残された関係者の語るピースをきっちりとハメ合わせていく、名探偵が。

 

本格ミステリをたっぷりと楽しませてもらいました。

 

「大鞠家殺人事件」芦辺拓 東京創元社

満足度★★★★☆


「日本扇の謎」有栖川有栖

2024年10月28日 | 本(ミステリ)

記憶喪失の青年の帰るところは

 

 

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舞鶴の海辺の町で発見された、記憶喪失の青年。
名前も、出身地も何もかも思い出せない彼の身元を辿る手がかりは、
唯一持っていた一本の「扇」だった……。
そして舞台は京都市内へうつり、謎の青年の周囲で不可解な密室殺人が発生する。
事件とともに忽然と姿を消した彼に疑念が向けられるが……。
動機も犯行方法も不明の難事件

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有栖川有栖さんのおなじみ、火村英生&有栖川有栖のシリーズ最新刊にして、
「ロシア紅茶の謎」から始まる国名シリーズ30年目の作品。
私、有栖川有栖さんについては、デビュー作からしっかりと読み続けているので、
なんにしても感慨深いのであります・・・。
その実、内容はあまり覚えていないのですが・・・。

本作は、国名シリーズでも使っていなかった「日本」を用いた記念的作品。
しかもこの「日本扇の謎」という題名は、エラリー・クイーンの幻の著作名。
実際、エラリー・クイーンにはこのような題名の著作はないそうなのですが・・・。

 

それで、本作の冒頭は、作家・有栖が編集者に依頼されて
「扇」を用いたミステリを書くことになった・・・というところから始まります。

しかしなかなか構想がまとまらず苦戦しているところへ、
火村から誘いがあって、とある屋敷の殺人事件の調査に同行することに。
奇しくもその実際の事件の中に、「扇」が登場するという仕組みです。
なかなか凝っています。

そしてまた、ここに登場するのが、記憶喪失の青年。
彼は自分の名前も出身地も何も覚えていなかったのですが、
持っていた扇が手がかりになり、実家が判明します。

記憶をなくしたまま、その実家に帰った青年。
ところが、青年の居室で不可解な密室殺人事件が起こります。
青年はそれと同時に姿をくらませてしまう。

となれば、青年が犯人なのか?それとも・・・。

 

なんというか最後まで読んでその青年の運命を思うとき、
切なくてしんみりしてしまいます。
作中、実際には彼は行方不明のままで
直接的に姿を現すところは冒頭付近しかありません。
後は登場人物から見た青年のことが語られるのみ。
それでも、なんだか私たちは彼に感情移入して、好きになってしまうようです。
だからこそ、なんとも悲しい幕切れ。

 

いつになく感情を揺さぶられたストーリーでした。

 

「日本扇の謎」有栖川有栖 講談社ノベルス

満足度★★★★☆


「琥珀の夏」辻村深月

2024年09月30日 | 本(ミステリ)

カルト教団の中にいた子どもたちの未来

 

 

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かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、
少女の白骨遺体が見つかった。
ニュースを知った弁護士の法子は、胸騒ぎを覚える。
埋められていたのは、ミカちゃんではないかーー。

小学生時代に参加した<ミライの学校>の夏合宿で出会ったふたり。
法子が最後に参加した夏、ミカは合宿に姿を見せなかった。

30年前の記憶の扉が開くとき、幼い日の友情と罪があふれ出す。

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弁護士の法子は、かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、
少女の白骨遺体が見つかったというニュースを知り、30年前のことを思い出します。

 

法子は小学生時代に、その<ミライの学校>の合宿のようなものに、
3年間一週間ずつ参加したことがあったのです。
当時は、それが特別な宗教団体だという認識はなく、
何か林間学校のようなものと思い、級友に誘われるままに参加したのでした。

そしてそこでは特別な宗教的な教えはなかったのですが、
子供の自主性を育てるというような、ある種の理念に基づいて教師たちは行動していて、
法子はいつもの学校とは違うやり方に、戸惑いもしたけれど、好感も抱いたのでした。

法子は彼女の学校の中では、あまり周囲の子となじめず、
けれど一人きりにはなりたくなかったので、回りの様子をうかがい、調子を合わせて、
でもそのことに苦しさを感じていました。
このミライの学校でなら違うのではないかと期待していたのですが、
結局はどこも同じ・・・。
理想を掲げて作られた場所であれ、いつもの日常の場所であれ、
子どもたちが作り出す世界は、そう変わらない。

けれどそんな中でも法子には信頼できる人物がいて、
それは、法子たちのように夏休みの短期間ここにやってくる子どもたちではなく、
親元を離れて、ずっとここで暮らしている中学生のシゲルと、同い年のミカ。

でも、法子が中学に入ってからはここには来なくなり、
少しの間手紙のやりとりはしていましたが、
その後音信も途絶え、すっかり忘れていたのです。

そんなところへ、ミライの学校敷地後から見つかったという少女の白骨遺体。
まさか、それはミカなのでは・・・?
法子に胸騒ぎが沸き起こります・・・。

 

ある種の宗教団体にハマる大人たちの物語はよくあるのですが、
その子どもたちに焦点を当てたものは少ないかも知れません。

自分で選んだ訳ではないのに、その世界で生きざるを得なかった子どもたちには、
どのような未来が待っているのか。
その教義によって、子どもたちと共に暮らすのではなく教団に預けっぱなしにする親の気持ち、
引き離された子どもたちの気持ち。
そうしたものをくみ取って物語は進んでいきます。

やがて、法子はこの遺体の人物を殺したと主張する女性の弁護を引き受けることになるのです。

 

物語は、ほとんどが法子の視点で語られていて、
終盤、依頼された弁護を引き受けるべきかどうか逡巡するのですが、
最後にあるきっかけで、引き受けることを決意。

そしてそのすぐ後に最終章としてようやく、ミカの視点での描写になります。
ここで登場する法子は、少し前まで迷いに迷っていた彼女とは別人(!)のようで、
毅然として頼りになる。
そうした切り替えが読んでいてワクワクしました。

読み応えたっぷりの物語です。

 

「琥珀の夏」辻村深月 文春文庫

満足度★★★★☆


「クロコダイル・ティアーズ」雫井脩介

2024年09月09日 | 本(ミステリ)

嫁はとんでもない悪女なのか?

 

 

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ベストセラー作家、雫井脩介による「究極のサスペンス」

この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。

息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての恋人。
被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。
犯人の一言で、残された家族の間に、疑念が広がってしまう。

未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。
家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐で濃密なサスペンスが誕生!

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とある家族の疑心暗鬼の物語

鎌倉近くの陶磁器店「土岐屋吉平」を経営する久野貞彦。
今は妻と2人暮らし。
ひとり息子・康平は結婚し、妻・想代子(そよこ)とまだ幼い息子が1人。
近所で暮らしていて、店の後を継ぐべく、𠮷平の経営を手伝っています。

そんなある日、康平が殺害されてしまいます。
犯人はすぐ捕まりましたが、その男は
以前康平の妻・想代子につきまとっていたストーカーだった・・・。

 

想代子にとっては全く迷惑な話。
しかし本作、主に父・貞彦とその妻・暁美の視点から描かれているのです。

暁美は思う。
息子の死に際して嫁はどうも本当に悲しんでいるように見えない。
わざとらしく目にハンカチを当てているけれど、まるで嘘泣きのようだ・・・。
と、本作の題名「クロコダイル・ティアーズ」が「嘘泣き」の意味であることが提示されます。
嫁と姑の関係であることから、元々あまりしっくりいった感じがしていなかった暁美。
そして息子がときおり想代子に暴力を振るっていたことを薄々感じてもいたのです。
そしてまた孫は引っ込み思案で大人しく、活発だった息子に似ていない・・・。

極めつきは、裁判の時に、被告となった男が
「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張。
なんの証拠があるわけでもないのに、それを聞いて暁美の疑惑はどんどん深まっていきます。
あげくには、孫は康平の子供ではないのではないか?とまで思う。

果たして想代子は、とんでもない悪女なのか。
それとも・・・。

 

ついつい引き込まれてしまいますね。
一方的な思い込みは慎まなければ・・・。
個人的には、DV夫がさっさと死んでくれて良かった・・・などと思ったりします。

 

<図書館蔵書にて>

「クロコダイル・ティアーズ」雫井脩介 文藝春秋

満足度★★★★☆


「正体」染井為人

2024年08月02日 | 本(ミステリ)

無実を晴らそうとしながら逃亡生活

 

 

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埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、
死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した!
東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、
新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。
様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、
必死に逃亡を続ける彼の目的は?
その逃避行の日々とは?
映像化で話題沸騰の注目作!

* * * * * * * * * * * *

私、本作は映画かドラマで、割と最近見たヤツではないかな?
・・・と思いつつ手に取りまして、読んですぐ思い出しました。
WOWOWのドラマで見たものでした。
主演は亀梨和也さん。

 

その、亀梨くん演ずるところの鏑木慶一は、
一家3人の殺人事件の犯人として死刑判決を受けて
拘留中だったのですが、脱獄し、逃亡中。
その彼が、様々なところで潜伏生活を送る様子が描かれます。

 

東京オリンピック施設の工事現場、
スキー場の旅館の住み込みバイト、
新興宗教の説明会、
人手不足のグループホーム。
彼はなるべく人と関わりを持たないように過ごすのですが、
でも仕事というのは人との関わりの中でするものです。
そこで様々な人と過ごす内に、いろいろなできごとがあって、
そしてなぜかお人好しにも人助けをしてしまう彼。
・・・ドラマではわかりにくいのですが、
小説だとそれぞれの章が鏑木とかかわった人物の視点で描かれているのが興味深いところです。

ふらりと同じ職場にやって来た一見目立たない青年が、
次第に真面目で頭が良く、気持ちの温かい人物であることが感じられるようになっていく。

 

そうなんですよ、残虐な殺人を犯した死刑囚のはずなのですが、実は無実。
鏑木は潜伏生活を送りながら、なんとか自分の無実を晴らそうと奮闘しているのです。

無実であるのに死刑などと、こんなに理不尽なことがあるでしょうか。
自らの運命に抗い新たな運命を切り開こうという、
鏑木慶一の応援団にならないではいられません。

 

が、しかし・・・。
言葉をなくすような結末が待ってはいるのですが。

読み応えたっぷり。

 

ところで本作、映画化されこの11月に公開予定となっていますが、
主演、つまり鏑木慶一役が誰なのかが発表されていません。
亀梨くんではなさそうですが、では一体誰???

お楽しみ。

 

「正体」染井為人 光文社文庫

満足度★★★★☆


「時の娘」ジョセフィン・テイ 

2024年05月13日 | 本(ミステリ)

リチャード三世は本当に悪逆非道だったのか?

 

 

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薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして
悪名高いリチャード三世。
彼は本当に悪逆非道を尽くした悪人だったのか? 
退屈な入院生活を送るグラント警部は、
ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。
警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、
純粋に文献のみからリチャード三世の素顔を推理する。
安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場! 
探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリの名作。

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先に英国のリチャード三世に関連する映画「ロスト・キング」を見たのですが、
それに関連して、同じくリチャード三世を扱っている本作を読んでみました。

本作は1951年に発表されたものですが、
いまだに愛され、読み継がれている作品です。

 

「ロスト・キング」の中でも言われていますが、
リチャード三世というのは1400年代、まだ子どもの甥2人を殺害して王位に就いた、
悪逆非道な王、というのがイギリス人の多くの人の常識とされています。

骨折で入院中のグラント警部が、ふとしたきっかけからリチャード三世の肖像画を目にして、
この人物が本当に悪逆非道・残忍な人物であったのか?
と疑問を覚え、リチャード三世を調べ始めるのです。

入院中でしかも600年も前のこと、
協力者を得て様々な文献をあたるというのが最大できること。

・・・ということで、著者は「小説」という枠組みの中で、
実際の文献をあたり、歴史に刻まれた悪評高いリチャード三世の実像に迫っていくのです。

 

例えば日本だったら、「明智光秀はなぜ織田信長を裏切って本能寺の変が起きたのか」
という永遠の命題を解き明かす、
みたいな話を小説仕立てにする・・・という感じですね。

 

リチャード三世が亡くなってから人からの伝言などを記録したものは、参考にしない。
あくまでもリチャード三世存命の折、リアルタイムで記録したと思われる文献のみを参考にする。
そのようなコンセプトで調べてみれば、
そもそも幼い王子たちが行方不明になったり殺害されたという記録がない。

リチャード三世の醜聞はどうも後の王、ヘンリー7世側のねつ造らしい・・・というのです。
歴史好きにはたまらなく魅力的。

映画「ロスト・キング」の主人公の女性などは、
リチャード三世に肩入れするあまり、彼の墓所を探し始め、
ついに突き止めるという偉業を成し遂げました。
もしかすると本作も、そんな彼女の動機づけの一つだったのかも知れません。

 

ところで本作、私は初め図書館から文庫を借りたのです。
ところが、古い文庫本のなんと活字の小さいこと!!
む、ムリ・・・。
無理矢理読めないこともないけれど、ストレスばかりが大きくなりそう。
ということで、結局文庫を購入して読みました・・・。
グスン。
古典的作品でも新しい版であればちゃんと活字は大きくなっているので、
ありがたいことでございます。

 

「時の娘」ジョセフィン・テイ 小泉喜美子訳 早川書房

満足度★★★★☆


「コールド・リバー 上・下」サラ・パレツキー 

2024年03月22日 | 本(ミステリ)

コロナ渦中、地元を巡る陰謀に立ち向かう

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

ヴィクが救出した火傷を負った少女は病院から姿を消した。
少女から渡されたものをよこせと、警察は執拗にヴィクに迫るが……。

サラ・パレツキー、「V・I・ウォーショースキー」シリーズの最新作。
シリーズ長編21作目。

* * * * * * * * * * * *

ヴィクの元気な姿を見ると、ホッとします。

とはいえ、このシカゴも現実世界と地続きのようで、
ちょうどコロナ禍にさらされていて、ようやく人々が少し動き出したような頃。
ヴィクもしっかりマスクをつけて活動しています。

 

ヴィクは海岸で1人の瀕死の少女を救い出すのですが、
その少女は翌日には病院から姿を消してしまう・・・。
どうやら、少女が持っていた「何か」を狙う者たちがいる様子。

ヴィクは、そしてまた別の所で、今度は川に落ちた少年を救出。
これまた少年が持っていた「何か」を狙い、
追い回している連中がいるらしい。

少年少女を守るのは自らの使命とばかりに、
ヴィクが体を張ってこの地を巡る陰謀に立ち向かっていきます。
警察官すらも敵という、なかなか厳しい状況です。

 

ヴィクと恋人のピーター・サンセンの仲は順調のようで何より。
というか、本巻の事件中、ピーターは考古学の発掘のためにずっと離れたところにいて、
ときおり電話で話をするのみ。
まあ、それが無難です。
目の前でヴィクが危険な体験をするのを見たら、
やはり怖じ気づいてしまうかも知れないので・・・。

とりあえず、ミスタ・コントレイラスとミッチとペピーが
いつまでも元気でいてくれることを願うのみ。

 

さて、しばらく見なかった検屍官シリーズの最新刊が出ていたのですね! 
気づいていなかった・・・!
でも、読者レビューがなかなかによろしくない・・・。

あえて読まなくても良いかなあ・・・などと思っているところでもあります。
高いし・・・。

 

「コールド・リバー 上・下」サラ・パレツキー 山本やよい訳 ハヤカワ文庫

満足度★★★★☆

 


「ローズマリーのあまき香り」島田荘司

2024年03月08日 | 本(ミステリ)

幽霊が踊った?

 

 

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講談社世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。
1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された
「スカボロゥの祭り」で主役を務めたクレスパン。
警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、
専用の控室で撲殺されたという。
しかし3幕以降も舞台は続行された。
さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた、と言っていてーー?

名探偵・御手洗潔も活躍、島田荘司待望の長編新作!

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島田荘司さんの新作・・・って、昨年の4月に出ていたのか!!
気づいていなかったとは!

 

さてさて、いつものごとく「なぜこんなことに?」という
不可思議な事件からストーリーは始まります。
600ページを超すボリューム。
この読み始めのワクワク感がたまりません。

 

1977年ニューヨークのバレエシアターで、
主演を演じたバレリーナ、クレスパンが専用の控え室で撲殺されます。
しかしそこは密室。
中から鍵がかけられており、もちろん死体発見時に部屋の中に他の人物は誰もいなかった。
ビルの50階、窓はすべてはめ殺し。
おまけに部屋の外の通路には見張りの人物がずっといて、
クレスパン以外にこの部屋に出入りしたものは誰もいないという。

そしてさらに、検屍によりクレスパンの死は2幕と3幕の間の休憩時間であるとされたのに、
彼女はその後の3幕と4幕に出演し、見事にすべて踊り終えたという・・・。

そんなバカな! 
彼女はなんとしても舞台をやり終えたいという強い意志で、
幽霊となって踊りを続けていたのか・・・?

 

私、てっきりこれは御手洗潔のシリーズではないと思って読んでいたのですが、
中盤くらいになってやっぱり御手洗氏が登場してびっくり。
でも、そりゃそうですよね。
こんな変な事件を解けるのはミタライだけ。

正確には、この20年後にミタライはこの事件に興味を持って、
滞在中のスウェーデンからニューヨークを訪れ、もつれた糸を解きほぐします。

 

クレスパンはユダヤ人収容所の中で生まれたということから、
ユダヤの民の歴史が語られているのがなかなか興味深かった。
国を追われたユダヤ人の一部が東へ東へと移動していって、
やがて日本にたどり着いて権力を持つようになるというところも面白いなあ・・・。
真偽のほどはわからないまでも、そういう想像の翼を広げるのは楽しい。

また、ウクライナの戦争や新型コロナウイルスのことなど
予言的な話をしているのも面白い。
ま、これは後出しじゃんけんですけれど。

 

そしてまた、ミタライが訪れる少し前のニューヨークで起きた、
これまた変な事件が、20年前の事件ともほんの少し関係している
というあたりもお見事。

さすがに、島田荘司さん!!
堪能しました。

 

<図書館蔵書にて>

「ローズマリーのあまき香り」島田荘司 講談社

満足度★★★★.5

 


「可燃物」米澤穂信

2024年02月24日 | 本(ミステリ)

警部補の名捜査

 

 

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2023年ミステリーランキング3冠達成!
(「このミステリーがすごい!」第1位、「ミステリが読みたい!」第1位、
「週刊文春ミステリーベスト10」第1位)

余計なことは喋らない。
上司から疎まれる。
部下にもよい上司とは思われていない。
しかし、捜査能力は卓越している。
葛警部だけに見えている世界がある。

群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。

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毎年のミステリーランキング常勝の米澤穂信さん。
私も年初に氏の受賞本を読むのが恒例になっているような気がします。

本巻「可燃物」は、ミステリ短編集。
群馬県警捜査第一課、葛警部補が推理を巡らす物語です。

 

冒頭「崖の下」は、スキー場で起きた殺人事件。
問題は凶器が見つからないこと。
状況から見て、凶器を処分することは不可能。
一体、どうやって・・・?

これが、その答えには唖然とさせられます。
そんなことがあっていいのか・・・?
でもいかにも米澤穂信さんだなあ・・・と感じるところでもあります。

 

表題作「可燃物」は、連続放火事件とおぼしき犯人の動機が問題。
これもまた、そんなことがあっていいのか・・・?
と思う解答。
いやはや、人の心は予測不能ですね・・・。

 

葛警部補は、ごく綿密な捜査を展開します。
彼は警部補なので部下をフルに活用。
時には、こんな捜査に意味があるのかと部下は思わないこともないのですが・・・。
けれど仕事熱心な彼らはきっちりと捜査し、綿密に報告を上げます。

そのような膨大なデータの中から、警部が「真実」を拾い上げる。
・・・と、おおよそそのような組み立てになっています。

名探偵のやり方とはちょっと違うけれど、これもなかなか良い感じです。
もっと続いていきそうですね。
楽しみです。

 

「可燃物」米澤穂信 文藝春秋

満足度★★★★☆


「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン

2023年10月14日 | 本(ミステリ)

顔面蒼白

 

 

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大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。
無言電話に匿名のメール。
首を切られたハトが敷地内で見つかり、
私道にはチョークで首のない棒人間を書かれた。
調べた結果、6年前の連続殺人事件との類似点に気づく。
犯人は服役中だが無実を訴えていた。
ピップのストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと
似ているのはなぜなのか。
ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない殺人』三部作の完結編!

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「自由研究には向かない殺人」から始まる、ピップの物語。
3部作の完結編ということで、かなりのボリュームですが、
途中からは一気読みでした。

何しろ、「うそっ!!」という衝撃の展開。
あまりのことに顔面蒼白。
お願いだから、これはピップの夢だと言って・・・
と願いつつ読んでいったのですが・・・。

 

何しろ本巻は始めから波乱含み。

第一巻目は元気な女子高生の奮闘の物語だったのですが、
2巻目では事件は解決したものの、ピップの心には暗い影がよぎります。
そして本巻ではその気持ちを引きずったまま、
夜は眠ることができず、もはや医師の処方箋も得られなくなっているので、
怪しげな所から闇で薬を入手。
大学進学も決定し、周囲には元気なように見せかけているのですが・・・。

そんな中、彼女に不審な無言電話があったり、
周囲で首を切られたハトが見つかったり、不気味な落書きが見られたり・・・、
ストーカーめいた人物の影が。
そしてまた、これらの行為が6年前の連続殺人事件と類似していることにも気づいてしまう。

 

もともとこれらの物語は著者の「刑事司法制度やその周辺の実態」への
失望と怒りが源流であるといいます。
事実は当事者にとっては明らかなのに、
「証拠不十分」ということだけで無罪となってしまうような実態。
そしてまた、一度下された判決は簡単には覆らないという実態。

ピップはそのためにこそ、本ストーリーで痛ましい決断を下し実行してしまう・・・。

 

いや、まさかまさかの衝撃的な展開でした。

本当にこれでいいのか・・・、読後感も複雑です。

 

「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン 服部京子訳 創元推理文庫

満足度★★★☆☆