頼むから、地上で寝て
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極限状況での謎解きを楽しんだ読者に驚きの〈真相〉が襲いかかる。
友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、
偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめた。
いずれ「方舟」は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。
タイムリミットまでおよそ1週間。
生贄には、その犯人がなるべきだ。
――犯人以外の全員が、そう思った。
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私には初めての作家さん。
衝撃の結末・・・というのにつられて読み始めました。
要点だけ言えば、とある地下施設に、地震のため閉じ込められてしまった10人。
外部とは一切連絡がつかない。
そこへ水がわずかずつ流入しはじめ、いずれこの場所が水没することが予想される。
そんな矢先に1人が殺害される。
そしてまた、誰か1人が犠牲になれば、その他の者がここを脱出できることが分る。
生け贄には、殺人を犯した者がなるべきだ・・・。
暗黙のうちにそのような認識が広まって、犯人捜しが始まる。
う~ん、私、この問題提起の部分からもう、
この本をチョイスしたことを後悔しました。
でもまあ、最後まで読んで、そのどんでん返しも見事だとは思いましたが、
やっぱり私が読むべき本ではなかったと感じてしまいました。
もっと若い頃なら単純に楽しめたのかも知れません。
なんというか、今さらですが私はどこか人間性というかヒューマニズムを
信じたいところがあって、本作のテーマそのものがもう受け入れがたい・・・。
実際問題、こうした選択を迫られることがないとは限らないけれど・・・、
こんな風にゲームみたいに語ること自体がもうイヤ・・・。
そもそも、こんな薄気味わるい地下施設で夜を過ごそうなんて、私は思わないな。
(多少閉所恐怖症のケがあるのかも)。
寝袋まであるわけだから、地上で寝るべきです!!
「方舟」夕木春央 講談社文庫
満足度★★☆☆☆