映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「大鞠家殺人事件」芦辺拓

2024年11月06日 | 本(ミステリ)

正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説

 

 

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大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――
戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた
大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。
だが夫は軍医として出征することになり、
一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。
戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。
危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を?
正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!

* * * * * * * * * * * *


芦辺拓さん作品、私は久しぶりかもです。

著者は本作をこう説明しています。
「正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説」
そう、いかにもなそういうミステリをたまに読みたくなってしまう、
もと本格ミステリファンなのでありました。

 

本作の舞台は昭和18年、大阪の船場という商人文化の中心地にある大店に
中久世美禰子が嫁いで来るあたりから。

でも冒頭に、不可思議な1人の青年の消失事件が語られています。
実はこのことが後々の事件の大きなもととなっているのですが・・・。

 

一家の主の不可解な縊死事件。

そして長女の流血事件。

主の妻の奇怪な溺死事件。

そして、自称名探偵の哀れな殺人事件・・・。

そうなんですよ、本作に、「名探偵」が登場するのですが、
まったく頼りにならないあげくに、殺されてしまうという。

 

しかも昭和20年の大阪大空襲で、屋敷も何もかもすっかり焼けてしまい、
証拠もあとかたなく失われてしまうのです。

しかし本当の「名探偵」役は最後の最後に登場します。
残された関係者の語るピースをきっちりとハメ合わせていく、名探偵が。

 

本格ミステリをたっぷりと楽しませてもらいました。

 

「大鞠家殺人事件」芦辺拓 東京創元社

満足度★★★★☆


「日本扇の謎」有栖川有栖

2024年10月28日 | 本(ミステリ)

記憶喪失の青年の帰るところは

 

 

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舞鶴の海辺の町で発見された、記憶喪失の青年。
名前も、出身地も何もかも思い出せない彼の身元を辿る手がかりは、
唯一持っていた一本の「扇」だった……。
そして舞台は京都市内へうつり、謎の青年の周囲で不可解な密室殺人が発生する。
事件とともに忽然と姿を消した彼に疑念が向けられるが……。
動機も犯行方法も不明の難事件

* * * * * * * * * * * ** * * * * * * * * * * *


有栖川有栖さんのおなじみ、火村英生&有栖川有栖のシリーズ最新刊にして、
「ロシア紅茶の謎」から始まる国名シリーズ30年目の作品。
私、有栖川有栖さんについては、デビュー作からしっかりと読み続けているので、
なんにしても感慨深いのであります・・・。
その実、内容はあまり覚えていないのですが・・・。

本作は、国名シリーズでも使っていなかった「日本」を用いた記念的作品。
しかもこの「日本扇の謎」という題名は、エラリー・クイーンの幻の著作名。
実際、エラリー・クイーンにはこのような題名の著作はないそうなのですが・・・。

 

それで、本作の冒頭は、作家・有栖が編集者に依頼されて
「扇」を用いたミステリを書くことになった・・・というところから始まります。

しかしなかなか構想がまとまらず苦戦しているところへ、
火村から誘いがあって、とある屋敷の殺人事件の調査に同行することに。
奇しくもその実際の事件の中に、「扇」が登場するという仕組みです。
なかなか凝っています。

そしてまた、ここに登場するのが、記憶喪失の青年。
彼は自分の名前も出身地も何も覚えていなかったのですが、
持っていた扇が手がかりになり、実家が判明します。

記憶をなくしたまま、その実家に帰った青年。
ところが、青年の居室で不可解な密室殺人事件が起こります。
青年はそれと同時に姿をくらませてしまう。

となれば、青年が犯人なのか?それとも・・・。

 

なんというか最後まで読んでその青年の運命を思うとき、
切なくてしんみりしてしまいます。
作中、実際には彼は行方不明のままで
直接的に姿を現すところは冒頭付近しかありません。
後は登場人物から見た青年のことが語られるのみ。
それでも、なんだか私たちは彼に感情移入して、好きになってしまうようです。
だからこそ、なんとも悲しい幕切れ。

 

いつになく感情を揺さぶられたストーリーでした。

 

「日本扇の謎」有栖川有栖 講談社ノベルス

満足度★★★★☆


「琥珀の夏」辻村深月

2024年09月30日 | 本(ミステリ)

カルト教団の中にいた子どもたちの未来

 

 

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かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、
少女の白骨遺体が見つかった。
ニュースを知った弁護士の法子は、胸騒ぎを覚える。
埋められていたのは、ミカちゃんではないかーー。

小学生時代に参加した<ミライの学校>の夏合宿で出会ったふたり。
法子が最後に参加した夏、ミカは合宿に姿を見せなかった。

30年前の記憶の扉が開くとき、幼い日の友情と罪があふれ出す。

* * * * * * * * * * * *


弁護士の法子は、かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、
少女の白骨遺体が見つかったというニュースを知り、30年前のことを思い出します。

 

法子は小学生時代に、その<ミライの学校>の合宿のようなものに、
3年間一週間ずつ参加したことがあったのです。
当時は、それが特別な宗教団体だという認識はなく、
何か林間学校のようなものと思い、級友に誘われるままに参加したのでした。

そしてそこでは特別な宗教的な教えはなかったのですが、
子供の自主性を育てるというような、ある種の理念に基づいて教師たちは行動していて、
法子はいつもの学校とは違うやり方に、戸惑いもしたけれど、好感も抱いたのでした。

法子は彼女の学校の中では、あまり周囲の子となじめず、
けれど一人きりにはなりたくなかったので、回りの様子をうかがい、調子を合わせて、
でもそのことに苦しさを感じていました。
このミライの学校でなら違うのではないかと期待していたのですが、
結局はどこも同じ・・・。
理想を掲げて作られた場所であれ、いつもの日常の場所であれ、
子どもたちが作り出す世界は、そう変わらない。

けれどそんな中でも法子には信頼できる人物がいて、
それは、法子たちのように夏休みの短期間ここにやってくる子どもたちではなく、
親元を離れて、ずっとここで暮らしている中学生のシゲルと、同い年のミカ。

でも、法子が中学に入ってからはここには来なくなり、
少しの間手紙のやりとりはしていましたが、
その後音信も途絶え、すっかり忘れていたのです。

そんなところへ、ミライの学校敷地後から見つかったという少女の白骨遺体。
まさか、それはミカなのでは・・・?
法子に胸騒ぎが沸き起こります・・・。

 

ある種の宗教団体にハマる大人たちの物語はよくあるのですが、
その子どもたちに焦点を当てたものは少ないかも知れません。

自分で選んだ訳ではないのに、その世界で生きざるを得なかった子どもたちには、
どのような未来が待っているのか。
その教義によって、子どもたちと共に暮らすのではなく教団に預けっぱなしにする親の気持ち、
引き離された子どもたちの気持ち。
そうしたものをくみ取って物語は進んでいきます。

やがて、法子はこの遺体の人物を殺したと主張する女性の弁護を引き受けることになるのです。

 

物語は、ほとんどが法子の視点で語られていて、
終盤、依頼された弁護を引き受けるべきかどうか逡巡するのですが、
最後にあるきっかけで、引き受けることを決意。

そしてそのすぐ後に最終章としてようやく、ミカの視点での描写になります。
ここで登場する法子は、少し前まで迷いに迷っていた彼女とは別人(!)のようで、
毅然として頼りになる。
そうした切り替えが読んでいてワクワクしました。

読み応えたっぷりの物語です。

 

「琥珀の夏」辻村深月 文春文庫

満足度★★★★☆


「クロコダイル・ティアーズ」雫井脩介

2024年09月09日 | 本(ミステリ)

嫁はとんでもない悪女なのか?

 

 

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ベストセラー作家、雫井脩介による「究極のサスペンス」

この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。

息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての恋人。
被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。
犯人の一言で、残された家族の間に、疑念が広がってしまう。

未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。
家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐で濃密なサスペンスが誕生!

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とある家族の疑心暗鬼の物語

鎌倉近くの陶磁器店「土岐屋吉平」を経営する久野貞彦。
今は妻と2人暮らし。
ひとり息子・康平は結婚し、妻・想代子(そよこ)とまだ幼い息子が1人。
近所で暮らしていて、店の後を継ぐべく、𠮷平の経営を手伝っています。

そんなある日、康平が殺害されてしまいます。
犯人はすぐ捕まりましたが、その男は
以前康平の妻・想代子につきまとっていたストーカーだった・・・。

 

想代子にとっては全く迷惑な話。
しかし本作、主に父・貞彦とその妻・暁美の視点から描かれているのです。

暁美は思う。
息子の死に際して嫁はどうも本当に悲しんでいるように見えない。
わざとらしく目にハンカチを当てているけれど、まるで嘘泣きのようだ・・・。
と、本作の題名「クロコダイル・ティアーズ」が「嘘泣き」の意味であることが提示されます。
嫁と姑の関係であることから、元々あまりしっくりいった感じがしていなかった暁美。
そして息子がときおり想代子に暴力を振るっていたことを薄々感じてもいたのです。
そしてまた孫は引っ込み思案で大人しく、活発だった息子に似ていない・・・。

極めつきは、裁判の時に、被告となった男が
「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張。
なんの証拠があるわけでもないのに、それを聞いて暁美の疑惑はどんどん深まっていきます。
あげくには、孫は康平の子供ではないのではないか?とまで思う。

果たして想代子は、とんでもない悪女なのか。
それとも・・・。

 

ついつい引き込まれてしまいますね。
一方的な思い込みは慎まなければ・・・。
個人的には、DV夫がさっさと死んでくれて良かった・・・などと思ったりします。

 

<図書館蔵書にて>

「クロコダイル・ティアーズ」雫井脩介 文藝春秋

満足度★★★★☆


「正体」染井為人

2024年08月02日 | 本(ミステリ)

無実を晴らそうとしながら逃亡生活

 

 

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埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、
死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した!
東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、
新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。
様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、
必死に逃亡を続ける彼の目的は?
その逃避行の日々とは?
映像化で話題沸騰の注目作!

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私、本作は映画かドラマで、割と最近見たヤツではないかな?
・・・と思いつつ手に取りまして、読んですぐ思い出しました。
WOWOWのドラマで見たものでした。
主演は亀梨和也さん。

 

その、亀梨くん演ずるところの鏑木慶一は、
一家3人の殺人事件の犯人として死刑判決を受けて
拘留中だったのですが、脱獄し、逃亡中。
その彼が、様々なところで潜伏生活を送る様子が描かれます。

 

東京オリンピック施設の工事現場、
スキー場の旅館の住み込みバイト、
新興宗教の説明会、
人手不足のグループホーム。
彼はなるべく人と関わりを持たないように過ごすのですが、
でも仕事というのは人との関わりの中でするものです。
そこで様々な人と過ごす内に、いろいろなできごとがあって、
そしてなぜかお人好しにも人助けをしてしまう彼。
・・・ドラマではわかりにくいのですが、
小説だとそれぞれの章が鏑木とかかわった人物の視点で描かれているのが興味深いところです。

ふらりと同じ職場にやって来た一見目立たない青年が、
次第に真面目で頭が良く、気持ちの温かい人物であることが感じられるようになっていく。

 

そうなんですよ、残虐な殺人を犯した死刑囚のはずなのですが、実は無実。
鏑木は潜伏生活を送りながら、なんとか自分の無実を晴らそうと奮闘しているのです。

無実であるのに死刑などと、こんなに理不尽なことがあるでしょうか。
自らの運命に抗い新たな運命を切り開こうという、
鏑木慶一の応援団にならないではいられません。

 

が、しかし・・・。
言葉をなくすような結末が待ってはいるのですが。

読み応えたっぷり。

 

ところで本作、映画化されこの11月に公開予定となっていますが、
主演、つまり鏑木慶一役が誰なのかが発表されていません。
亀梨くんではなさそうですが、では一体誰???

お楽しみ。

 

「正体」染井為人 光文社文庫

満足度★★★★☆


「時の娘」ジョセフィン・テイ 

2024年05月13日 | 本(ミステリ)

リチャード三世は本当に悪逆非道だったのか?

 

 

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薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして
悪名高いリチャード三世。
彼は本当に悪逆非道を尽くした悪人だったのか? 
退屈な入院生活を送るグラント警部は、
ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。
警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、
純粋に文献のみからリチャード三世の素顔を推理する。
安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場! 
探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリの名作。

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先に英国のリチャード三世に関連する映画「ロスト・キング」を見たのですが、
それに関連して、同じくリチャード三世を扱っている本作を読んでみました。

本作は1951年に発表されたものですが、
いまだに愛され、読み継がれている作品です。

 

「ロスト・キング」の中でも言われていますが、
リチャード三世というのは1400年代、まだ子どもの甥2人を殺害して王位に就いた、
悪逆非道な王、というのがイギリス人の多くの人の常識とされています。

骨折で入院中のグラント警部が、ふとしたきっかけからリチャード三世の肖像画を目にして、
この人物が本当に悪逆非道・残忍な人物であったのか?
と疑問を覚え、リチャード三世を調べ始めるのです。

入院中でしかも600年も前のこと、
協力者を得て様々な文献をあたるというのが最大できること。

・・・ということで、著者は「小説」という枠組みの中で、
実際の文献をあたり、歴史に刻まれた悪評高いリチャード三世の実像に迫っていくのです。

 

例えば日本だったら、「明智光秀はなぜ織田信長を裏切って本能寺の変が起きたのか」
という永遠の命題を解き明かす、
みたいな話を小説仕立てにする・・・という感じですね。

 

リチャード三世が亡くなってから人からの伝言などを記録したものは、参考にしない。
あくまでもリチャード三世存命の折、リアルタイムで記録したと思われる文献のみを参考にする。
そのようなコンセプトで調べてみれば、
そもそも幼い王子たちが行方不明になったり殺害されたという記録がない。

リチャード三世の醜聞はどうも後の王、ヘンリー7世側のねつ造らしい・・・というのです。
歴史好きにはたまらなく魅力的。

映画「ロスト・キング」の主人公の女性などは、
リチャード三世に肩入れするあまり、彼の墓所を探し始め、
ついに突き止めるという偉業を成し遂げました。
もしかすると本作も、そんな彼女の動機づけの一つだったのかも知れません。

 

ところで本作、私は初め図書館から文庫を借りたのです。
ところが、古い文庫本のなんと活字の小さいこと!!
む、ムリ・・・。
無理矢理読めないこともないけれど、ストレスばかりが大きくなりそう。
ということで、結局文庫を購入して読みました・・・。
グスン。
古典的作品でも新しい版であればちゃんと活字は大きくなっているので、
ありがたいことでございます。

 

「時の娘」ジョセフィン・テイ 小泉喜美子訳 早川書房

満足度★★★★☆


「コールド・リバー 上・下」サラ・パレツキー 

2024年03月22日 | 本(ミステリ)

コロナ渦中、地元を巡る陰謀に立ち向かう

 

 

 

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ヴィクが救出した火傷を負った少女は病院から姿を消した。
少女から渡されたものをよこせと、警察は執拗にヴィクに迫るが……。

サラ・パレツキー、「V・I・ウォーショースキー」シリーズの最新作。
シリーズ長編21作目。

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ヴィクの元気な姿を見ると、ホッとします。

とはいえ、このシカゴも現実世界と地続きのようで、
ちょうどコロナ禍にさらされていて、ようやく人々が少し動き出したような頃。
ヴィクもしっかりマスクをつけて活動しています。

 

ヴィクは海岸で1人の瀕死の少女を救い出すのですが、
その少女は翌日には病院から姿を消してしまう・・・。
どうやら、少女が持っていた「何か」を狙う者たちがいる様子。

ヴィクは、そしてまた別の所で、今度は川に落ちた少年を救出。
これまた少年が持っていた「何か」を狙い、
追い回している連中がいるらしい。

少年少女を守るのは自らの使命とばかりに、
ヴィクが体を張ってこの地を巡る陰謀に立ち向かっていきます。
警察官すらも敵という、なかなか厳しい状況です。

 

ヴィクと恋人のピーター・サンセンの仲は順調のようで何より。
というか、本巻の事件中、ピーターは考古学の発掘のためにずっと離れたところにいて、
ときおり電話で話をするのみ。
まあ、それが無難です。
目の前でヴィクが危険な体験をするのを見たら、
やはり怖じ気づいてしまうかも知れないので・・・。

とりあえず、ミスタ・コントレイラスとミッチとペピーが
いつまでも元気でいてくれることを願うのみ。

 

さて、しばらく見なかった検屍官シリーズの最新刊が出ていたのですね! 
気づいていなかった・・・!
でも、読者レビューがなかなかによろしくない・・・。

あえて読まなくても良いかなあ・・・などと思っているところでもあります。
高いし・・・。

 

「コールド・リバー 上・下」サラ・パレツキー 山本やよい訳 ハヤカワ文庫

満足度★★★★☆

 


「ローズマリーのあまき香り」島田荘司

2024年03月08日 | 本(ミステリ)

幽霊が踊った?

 

 

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講談社世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。
1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された
「スカボロゥの祭り」で主役を務めたクレスパン。
警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、
専用の控室で撲殺されたという。
しかし3幕以降も舞台は続行された。
さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた、と言っていてーー?

名探偵・御手洗潔も活躍、島田荘司待望の長編新作!

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島田荘司さんの新作・・・って、昨年の4月に出ていたのか!!
気づいていなかったとは!

 

さてさて、いつものごとく「なぜこんなことに?」という
不可思議な事件からストーリーは始まります。
600ページを超すボリューム。
この読み始めのワクワク感がたまりません。

 

1977年ニューヨークのバレエシアターで、
主演を演じたバレリーナ、クレスパンが専用の控え室で撲殺されます。
しかしそこは密室。
中から鍵がかけられており、もちろん死体発見時に部屋の中に他の人物は誰もいなかった。
ビルの50階、窓はすべてはめ殺し。
おまけに部屋の外の通路には見張りの人物がずっといて、
クレスパン以外にこの部屋に出入りしたものは誰もいないという。

そしてさらに、検屍によりクレスパンの死は2幕と3幕の間の休憩時間であるとされたのに、
彼女はその後の3幕と4幕に出演し、見事にすべて踊り終えたという・・・。

そんなバカな! 
彼女はなんとしても舞台をやり終えたいという強い意志で、
幽霊となって踊りを続けていたのか・・・?

 

私、てっきりこれは御手洗潔のシリーズではないと思って読んでいたのですが、
中盤くらいになってやっぱり御手洗氏が登場してびっくり。
でも、そりゃそうですよね。
こんな変な事件を解けるのはミタライだけ。

正確には、この20年後にミタライはこの事件に興味を持って、
滞在中のスウェーデンからニューヨークを訪れ、もつれた糸を解きほぐします。

 

クレスパンはユダヤ人収容所の中で生まれたということから、
ユダヤの民の歴史が語られているのがなかなか興味深かった。
国を追われたユダヤ人の一部が東へ東へと移動していって、
やがて日本にたどり着いて権力を持つようになるというところも面白いなあ・・・。
真偽のほどはわからないまでも、そういう想像の翼を広げるのは楽しい。

また、ウクライナの戦争や新型コロナウイルスのことなど
予言的な話をしているのも面白い。
ま、これは後出しじゃんけんですけれど。

 

そしてまた、ミタライが訪れる少し前のニューヨークで起きた、
これまた変な事件が、20年前の事件ともほんの少し関係している
というあたりもお見事。

さすがに、島田荘司さん!!
堪能しました。

 

<図書館蔵書にて>

「ローズマリーのあまき香り」島田荘司 講談社

満足度★★★★.5

 


「可燃物」米澤穂信

2024年02月24日 | 本(ミステリ)

警部補の名捜査

 

 

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2023年ミステリーランキング3冠達成!
(「このミステリーがすごい!」第1位、「ミステリが読みたい!」第1位、
「週刊文春ミステリーベスト10」第1位)

余計なことは喋らない。
上司から疎まれる。
部下にもよい上司とは思われていない。
しかし、捜査能力は卓越している。
葛警部だけに見えている世界がある。

群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。

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毎年のミステリーランキング常勝の米澤穂信さん。
私も年初に氏の受賞本を読むのが恒例になっているような気がします。

本巻「可燃物」は、ミステリ短編集。
群馬県警捜査第一課、葛警部補が推理を巡らす物語です。

 

冒頭「崖の下」は、スキー場で起きた殺人事件。
問題は凶器が見つからないこと。
状況から見て、凶器を処分することは不可能。
一体、どうやって・・・?

これが、その答えには唖然とさせられます。
そんなことがあっていいのか・・・?
でもいかにも米澤穂信さんだなあ・・・と感じるところでもあります。

 

表題作「可燃物」は、連続放火事件とおぼしき犯人の動機が問題。
これもまた、そんなことがあっていいのか・・・?
と思う解答。
いやはや、人の心は予測不能ですね・・・。

 

葛警部補は、ごく綿密な捜査を展開します。
彼は警部補なので部下をフルに活用。
時には、こんな捜査に意味があるのかと部下は思わないこともないのですが・・・。
けれど仕事熱心な彼らはきっちりと捜査し、綿密に報告を上げます。

そのような膨大なデータの中から、警部が「真実」を拾い上げる。
・・・と、おおよそそのような組み立てになっています。

名探偵のやり方とはちょっと違うけれど、これもなかなか良い感じです。
もっと続いていきそうですね。
楽しみです。

 

「可燃物」米澤穂信 文藝春秋

満足度★★★★☆


「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン

2023年10月14日 | 本(ミステリ)

顔面蒼白

 

 

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大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。
無言電話に匿名のメール。
首を切られたハトが敷地内で見つかり、
私道にはチョークで首のない棒人間を書かれた。
調べた結果、6年前の連続殺人事件との類似点に気づく。
犯人は服役中だが無実を訴えていた。
ピップのストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと
似ているのはなぜなのか。
ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない殺人』三部作の完結編!

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「自由研究には向かない殺人」から始まる、ピップの物語。
3部作の完結編ということで、かなりのボリュームですが、
途中からは一気読みでした。

何しろ、「うそっ!!」という衝撃の展開。
あまりのことに顔面蒼白。
お願いだから、これはピップの夢だと言って・・・
と願いつつ読んでいったのですが・・・。

 

何しろ本巻は始めから波乱含み。

第一巻目は元気な女子高生の奮闘の物語だったのですが、
2巻目では事件は解決したものの、ピップの心には暗い影がよぎります。
そして本巻ではその気持ちを引きずったまま、
夜は眠ることができず、もはや医師の処方箋も得られなくなっているので、
怪しげな所から闇で薬を入手。
大学進学も決定し、周囲には元気なように見せかけているのですが・・・。

そんな中、彼女に不審な無言電話があったり、
周囲で首を切られたハトが見つかったり、不気味な落書きが見られたり・・・、
ストーカーめいた人物の影が。
そしてまた、これらの行為が6年前の連続殺人事件と類似していることにも気づいてしまう。

 

もともとこれらの物語は著者の「刑事司法制度やその周辺の実態」への
失望と怒りが源流であるといいます。
事実は当事者にとっては明らかなのに、
「証拠不十分」ということだけで無罪となってしまうような実態。
そしてまた、一度下された判決は簡単には覆らないという実態。

ピップはそのためにこそ、本ストーリーで痛ましい決断を下し実行してしまう・・・。

 

いや、まさかまさかの衝撃的な展開でした。

本当にこれでいいのか・・・、読後感も複雑です。

 

「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン 服部京子訳 創元推理文庫

満足度★★★☆☆

 


ナイフをひねれば

2023年10月02日 | 本(ミステリ)

著者自身が殺人犯???

 

 

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「われわれの契約は、これで終わりだ」
探偵ホーソーンに、彼が主人公のミステリを書くのに耐えかねて、
わたし、作家のホロヴィッツはこう告げた。
その翌週、ロンドンで脚本を手がけた戯曲の公演が始まる。
いきなり酷評する劇評を目にして意気消沈するわたし。
ところがその劇評家が殺害されてしまう。
凶器はあろうことかわたしの短剣。
逮捕されたわたしには分かっていた。
自分を救えるのは、あの男だけだと。
〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズの新たな傑作登場!

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アンソニー・ホロヴィッツによる、〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊。
着々と新刊が出るのが嬉しいですね。

 

本巻では驚きの出来事が!

ホーソーンの事件簿的な本を書くのは3冊まで、
という当初の約束だったはずなので、
3冊目までのめどが付いた(実際にはすでに3冊出ています)ので、
もうこれ以上は書かない!!と、ホーソーンに宣言したホロヴィッツ。

そんな矢先、ホロヴィッツが脚本を手がけた戯曲の公演がロンドンで始まります。
しかし初日を終え、関係者一同はいきなりの酷評を目にしてしまいます。
すっかり意気消沈してしまったホロヴィッツ。

ところが、その酷評をした評論家が殺害され、
あろうことか、ホロヴィッツに殺人犯の疑いがかけられてしまうのです。

 

凶器はホロヴィッツの短剣。
アリバイを証明できる者もいない・・・。

逮捕される寸前にホロヴィッツは逃走、ホーソーンを頼りにすることに。
実のところ、ホーソーンが本当に力になってくれるかどうかも
心配ではあったのですが・・・。

 

・・・ということで、今回二人はタイムリミットありの、
かなり切実な調査をすることになります。

相変わらず親しみを見せず、つっけんどんな態度のホーソーンではありますが、
でもきっと頼りになる、ということはこれまでのことで分かっております。

そんな中でもほんの少しずつ、ホーソーンの秘められた人生の一端を垣間見る・・・。

 

著者自身が殺人犯の疑いをかけられて窮地に立たされる。
さぞかし、著者も楽しんでこれを書いているのでしょうね。

ホーソンとホロヴィッツ、この腐れ縁は、まだまだ断たれませんね。

 

「ナイフをひねれば」アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫

満足度★★★★☆

 

 


「死神の棋譜」奥泉光

2023年08月26日 | 本(ミステリ)

狂おしいほどの勝負への傾倒

 

 

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第69期名人戦の最中、詰将棋の矢文が見つかった。
その「不詰めの図式」を将棋会館に持ち込んだ元奨励会員の夏尾は消息を絶つ。
同業者の天谷から22年前の失踪事件との奇妙な符合を告げられた
将棋ライターの〈私〉は、かつての天谷のように謎を追い始めるが――。
幻の「棋道会」、北海道の廃坑、地下神殿での因縁の対局。
将棋に魅入られた者の渇望と、息もつかせぬ展開が交錯する傑作ミステリ!

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奥泉光さんの将棋をテーマとしたミステリ。
いえ、ただのミステリではなく、幻想ミステリとでも言うべきでしょうか。

 

語り手となる北沢は、かつて将棋界のトップを夢見ていたものの、あえなく挫折。
今は将棋関係のライターをしています。

とある名人戦の最中、かつての北沢のライバル夏尾が
謎の詰将棋の図面を将棋会館に持ち込むが、その後失踪。
北沢は同業者の天谷から、22年前にも同様の失踪事件があったと聞き、
かつての天谷のように、その謎を追い始める・・・。

ということで北沢が向かったのは、北海道のとある廃坑。
そこで北沢は戦慄の体験をして・・・。

 

将棋盤の奥中に、魔の基盤が潜んでいて、
そこではまさに命がけの勝負が繰り広げられる・・・と言った、
不気味でおぞましく、そして力強くもあるというこの雰囲気こそが本作の真骨頂。
結局この魔界は、北沢の脳内で繰り広げられるだけではありますが、
あながち狂いかけた個人の妄想と一蹴しきれないような、
妙なほの暗いリアリティがあります。
真の将棋の勝負の世界は、こうしたものなのかも知れないと思わせるような。
世に名を残す名棋士は皆この魔の将棋を知っている、
というようなことにも不思議に納得が行くような。

正直、私は将棋音痴ではありますが、
本作の面白みは十分に伝わりました。

このイマジネーションを創り上げた著者には感服します。
よほど将棋がお好きなのでしょうね。

 

「死神の棋譜」奥泉光 新潮文庫

満足度★★★★☆


「捜査線上の夕映え」有栖川有栖

2023年08月16日 | 本(ミステリ)

コロナ禍中の火村とアリス

 

 

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「臨床犯罪学者 火村英生シリーズ」誕生から30年!
最新長編は、圧倒的にエモーショナルな本格ミステリ。

大阪の場末のマンションの一室で、男が鈍器で殴り殺された。
金銭の貸し借りや異性関係のトラブルで、容疑者が浮上するも……。

「俺が名探偵の役目を果たせるかどうか、今回は怪しい」

火村を追い詰めた、不気味なジョーカーの存在とは――。
コロナ禍を生きる火村と推理作家アリスが、
ある場所で直面した夕景は、佳き日の終わりか、明日への希望か――。

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有栖川有栖さんの火村英生シリーズ最新作。
といってもこれは刊行してからもう1年半も経っているのを
今回やっと読むことができました・・・。

それにしても、このシリーズが始まってからもう30年も経っているというのには驚きです。
普通に読み続けて、30年・・・。
私も歳をとるはずですねえ・・・。
アリスも火村氏も同じままで若くてうらやましい・・・。

 

さて本作。

コロナ禍の時代が背景。
人々の会話時にソーシャルディスタンスを意識したり、マスクを意識したり。
最もディープなコロナ禍時のことをちょっとばかり懐かしく思い出します。
とりあえずそんな日々が過去の物になったことに安堵・・・。
まだまだマスクを無しにはできませんが。

まあ、そんなことの影響もあるのかどうか。
今回の事件は割に地味。

とあるマンションの一室で、スーツケースに詰められ、クローゼットに押し込められた
男の死体が発見されます。
なんとも決め手に欠く事件。
事態はなかなか進展しないのですが・・・。

途中からガラリと様相が変わって、火村とアリスがとある旅に出ます。
瀬戸内海に浮かぶ離島を訪れる旅。
果たして二人はそこで何をつかむのか・・・?

 

これまで普通にレギュラー出演者として出てきた、とある人物の過去が
ちょっとばかりあかされ、それがこの事件に影を落としているのです。

 

火村とアリスの長い歴史の中、コロナ禍中の数年を記念する作品となるでしょう。
それにしても、ススキノのホテルで首ナシ死体が発見されるとか、
現実の方が小説を超越している昨今ですねえ・・・。

 

<図書館蔵書にて>

「捜査線上の夕映え」有栖川有栖 文藝春秋

満足度★★★.5

 

 


「よろずを引くもの お蔦さんの神楽坂日記」西條奈加

2023年05月20日 | 本(ミステリ)

小粋な祖母と孫の物語

 

 

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多発する万引きに町内会全体で警戒していた矢先、
犯人らしき人物をつかまえようとした菓子舗の主人が
逃げる犯人に突き飛ばされて怪我をしてしまった!
正義感に駆られる望と洋平は、犯人の似顔絵を描こうと思い立つが……
商店街を巻き込んだ出来事を描いた「よろずを引くもの」を始め、
秋の神楽坂を騒がす事件の数々を収録。
粋と人情、そして美味しい手料理が味わえる大好評シリーズ、
待望の最新作!

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西條奈加さんの神楽坂日記シリーズ4巻目。
本巻は連作短編となっています。

若かりし頃、芸者をしていたお蔦さんは、料理男子の孫・望と同居しています。
この家族とご近所商店街で起こる謎や事件をひも解いていく物語。

 

表題作「よろずを引くもの」は、その言葉通り、「万引き」の話。
ご近所でも、万引きの被害が大きいとウワサしていた矢先に、
とある菓子舗の主人が逃げる犯人に突き飛ばされて怪我をしてしまった!
望とその親友洋平は、その犯人の似顔絵を描いて、
犯人を突き止めようとします。

万引きをする側の心理・事情にも触れていく作品。
それにしても、あまりにも万引き被害が大きくて
閉店までせざるを得なくなるということもあるという・・・。
困った世の中です。

いつものごとく、少年達の純粋な正義感と行動力、
そして経験を積んで小粋な老婦人のコンビネーションが楽しい。

この先も楽しみですね。

 

「よろずを引くもの お蔦さんの神楽坂日記」西條奈加 東京創元社

満足度★★★★☆


「森江春策の災難 日本一地味な探偵の華麗な事件簿」芦辺拓

2023年02月11日 | 本(ミステリ)

探偵は地味だけど

 

 

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日本推理作家協会賞・本格ミステリ大賞ダブル受賞記念 緊急出版決定!

《森江法律事務所》にかかってきた敏腕女性検事・菊園綾子からの電話は、
花村カオルという札付きのワルが身辺をかぎ回っているようだから
気をつけろと警告するものだった。
その数分後、コート姿の怪しい人物が《森江法律事務所》に入ってゆき、
直後に死体で発見される。
果たして、森江春策の事務所でいったい何が起きたのか?
一風変わった犯人当てである表題作をはじめ、
森江春策がヘンリー・メリヴェール卿と共演する「密室法廷」や
神津恭介、星影龍三とともに密室について語り合う「架空座談会」、
鉄人28号の物語世界へと読者をいざなう「寝台特急あさかぜ鉄人事件」、
舞台劇の脚本として書き下ろされた「探偵が来なけりゃ始まらない――森江春策、嵐の孤島へ行く」
など、日本一地味な探偵・森江春策が活躍する十三編の異色な事件簿!
「年譜・森江春策事件簿〔第二版〕」も特別収録!

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芦辺拓さんの森江春策シリーズは、私も長く愛読しております。
「日本一地味な探偵」、まさに、華々しく語られることはないけれど、
息が長い地道な探偵さんであります。

作中でも、見た目がイカす風貌ではないように語られていましたが、
本作の表紙を見て納得。
・・・これ、濱田岳さん? 
が、モデルかどうかは定かではありませんが、
なるほど、こういうイメージかもしれません。

 

本作は舞台も時代も、自由自在。
こういうのも地味な探偵だからこそ、どこにいてもすっと溶け込めてしまうわけで。

が、実のところ今回私は自分の脳みその硬化を感じてしまいました。
なんだか読み進むのが苦痛で、あまり楽しめない。
本巻は特に変化球が多すぎるような・・・。
この独特の世界感にハマることのできない、
自分の年齢の限界?みたいなものを感じてしまい・・・。

確かに、近頃は派手なCG多発のSFアクション的な作品は滅多に見なくなりましたし、
年齢による変化は如何ともしがたいのかな?

と、若干淋しい思いも感じながら・・・。

 

<図書館蔵書にて>

「森江春策の災難 日本一地味な探偵の華麗な事件簿」芦辺拓 行舟文化

満足度★★★☆☆