映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

告発のとき

2008年06月30日 | 映画(か行)
退役軍人であるハンクのところに、イラク戦争最前線から帰還したばかりの息子マイクが、軍を脱走したとの知らせが入ります。
ハンクは軍を訪ね、息子の行方を捜そうとする、そんなところからストーリーは始まります。

ハンクは模範的な軍人であり、父親であったのでしょうね。
息子が彼を尊敬し、憧れ、正義感に燃えて入隊したであろうことが、伺われます。

さて、息子の行方の手がかりを探すため、
彼の残したケータイの映像記録を調べたり、
彼の同僚に話を聞いたり、
また、彼の立ち寄ったと思われる場所に出向いたり、手を尽くすハンク。
しかし、そんなところに届いた知らせは、マイクの死体が見つかった、とのこと。
殺害され、ばらばらにされ、焼かれる、というむごい姿で発見されたのでした。
ハンクの目的は次には犯人探しに変わります。
地元警察の女性捜査官エミリーの助けを得ながら、少しずつ真相が現れてくるのですが・・・。

ハンクにとっては大変むごい真相が現れることになります。
ここで問題となるのはPTSD。
心的外傷ストレス障害、という昨今よく耳にする言葉です。
今、イラクの地で何が起こっているのか・・・、
事実は私など想像もつきませんが、
この作品では、マイクはイラクで人格も崩壊しかねない、ひどい体験をした。
確かに、体は傷を負うことなく、無事帰国したのですが、
心は、もう死んだも同然になっていたのでしょう。
それは彼だけではありません。
同時にイラクへ行き、帰還した彼の同僚たちもまた・・・。

感情をあらわにせず、静かに事件を追い、いつも途方にくれたようなトミー・リー・ジョーンズの表情に、より深い絶望を感じ取ることができます。
それは彼自身が一生を奉げた国家というものへの絶望なのかも知れません。
しかし作品中、彼は、石油のことも政治や戦争の是非のことも一言も口にしません。
ただ、最後に、彼は星条旗を逆さに掲げるのです。
逆向きの国旗には、「救難信号」の意味がある。
実は、このことは映画の最初の方に伏線で説明があったのですね。
この逆向きの国旗に彼の主張がすべてこめられている。
優れた作品だと思います。

実のところ、このように重い作品はパスしたかったのですが、
この日一番合理的な時間配分を検討したところ、
この映画が一番都合がよかった、と、そういうことではありますが、
やはり、これは見ておくべき作品でした。
一人ひとりの権利や未来をいとも簡単に剥ぎ取ってしまう戦争というもの・・・。
それを引き起こす国家というもの。
時には目をそらさずに、考えなくては・・・。

2007年/アメリカ/121分
監督:ポール・ハギス
出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、ジョシュ・ブローリン

「告発のとき」公式サイト

「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」 黒井勇人 

2008年06月29日 | 本(その他)

「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」 黒井勇人 新潮社

これは珍しく、娘が買ってきて、面白いから読めという。
なになに、
「まさに21世紀の「蟹工船」
史上最強のワーキング・プア(笑)が放つ、スレッド文学の進化型・・・・
」???
スレッド文学?・・・つまりあの「電車男」形式か。
書き手の「マ男」(コンピュータプログラマ男を略してこうなった。)に対して、
いろいろな人の書き込みが加わりながらストーリーが展開していく。
すごくシビアな内容ではあるのですが、ユーモアたっぷりに話は進みます。

この、マ男くんは、ある怪しげな中小会社(これを称してブラック会社)に新入社員として入社するのですが、
そこにいる上司、先輩、とんでもない奴ばかり。
いきなり仕事を渡されても、わけがわからず、
聞こうと思っても誰もまともに教えてくれない。
仕事はきつくて毎日深夜までの仕事が続く。
実は彼は、いじめが元で中学もほとんど不登校。
そのまま引きこもりでほぼ10年。
しかし、母親が病死し、彼女が死の間際まで心配していたのが彼の行く末で、
なんとか社会に出てほしいと・・・。
彼はその思いを受け止め、必死に勉強をして、資格をとる。
しかし何しろ中卒なので、就職も難しかったけれど、
ここの社長さんがそういう人柄だけは(?)良い人で、受け入れてくれた。
・・・そういうなかなか泣かせる背景があるわけです。

ところが、そこにいるのは、わけのわからないダメな人ばかり。
ただ、一人、まるで掃き溜めのツルのように、
仕事もできて人格も秀でた信頼できる先輩がいて、
その人がいたから彼は仕事を続ける気になった。

そうこうするうちに、また彼の後輩の新人が入ってきたりして、
会社内のてんやわんやが続いていく・・・、と。

コンピュータ用語なんてそもそも、意味不明ですが、まあ、差し障りなく読めました。
もちろんすべての会社がこうではないと思いますが、
多くの人がこんな風に身もココロも磨り減らして、
ボロボロになって働いているというのが、リアルに実感できてしまいます。
しかし、この話は一体どう結末を迎えるのか、予想もつかなかったのですが、
なんとなんと、意外にも感動のラストが待ち受けていました。
ちょっと、うるっと来てしまいました。
それと、いつの間にか、こんなしょうもない人々の集まりが、チームワーク良くなっていたりするんですね・・・。
結局大切なのは、人間関係なんだなあ・・・と思うしだい。
まあ、この話に比べればウチの職場なんて天国。
・・・と、思うことにしよう。

満足度★★★★


「さまよう刃」 東野圭吾 

2008年06月28日 | 本(ミステリ)

「さまよう刃」 東野圭吾 角川文庫

社会派サスペンスとありますね。
本格推理好きの私ですので、東野圭吾作品でも、やや、好みの方向とは異なるんですが・・・。
なかなか設定がしんどいです。
主人公となる長峰の一人娘が、未成年の少年グループに蹂躙された上、薬物の過剰摂取により死去。そのまま、死体遺棄された。
ある密告電話により、その犯人を知った長峰は、真実を求めてその少年の家に侵入し、ちょうど帰宅したその少年を殺害。
もう一人の犯人にも復習を果たすべく、逃亡したその少年の行方を追う。

ここで、素直に密告の内容を警察に告げなかったのは、
たとえ犯人が捕まったとしても、未成年ということで、相応の刑罰を受けることにはなりえないと思ったからです。
娘への一途な愛。
長峰は大変しっかりした人物なのですが、このことに関してだけは、復讐のむなしさも自覚しながら、犯人を許すことができない。
彼自身も殺人犯として指名手配を受け、逃亡を続けながら、真犯人を追う。
この二重構造は結構スリルがあります。

でも、あまりにも事件がリアルに重い感じがして、つらいです。
こんな、どうしようもない無自覚の若者が実際いそうなのもいやな感じ・・・。
作品中では、マスコミも一般の人も、かなり長峰に同情的で、彼を追う警察官でさえ、彼を逮捕することにためらいがある・・・。
まあ、そうですよね、
もちろん読者としても、うまく切り抜けてなんとか復讐を果たして欲しいと願ってしまいますね。
ラストの、登場人物ほぼ全員が終結する上野駅のシーンはなかなかの見所でした。

それにしても、最近は、小説より現実の方が信じがたいですね。
突然一人の男がにぎわう歩行者天国に車を突っ込み、ナイフを振りかざす・・・。
こんな小説は誰にもかけないでしょう。
もし書いたとしたら、リアリティに欠けるなんていわれそう・・・。

やはり私はいっそ現実離れした、ありえないストーリーを楽しく読むほうが性にあっているようです。

満足度★★★


偶然の恋人

2008年06月27日 | 映画(か行)

(DVD)
これは、ベン・アフレック頼みの単なるラブストーリーかと思ったのですが、意外としっかりとしたドラマでした。
ベン・アフレック演じるバディは、空港で偶然知り合った脚本家のグレッグに飛行機のチケットを譲ります。
悪天候のため大幅に欠航便が出て、急ぐ彼に席を譲ったのです。
ところが、その便が墜落事故。
グレッグは妻と2人の息子を残し、帰らぬ人となってしまいました。
善意でしたこととはいえ、
自分の身代わりに死んでしまったも同様のグレッグに対して、バディはひどい罪悪感を覚えるのです。
あるとき彼は、グレッグの残された家族の様子を見に行きました。
仕事に出て、けなげにがんばっている妻アビーに、つい手助けをしてしまいます。
そんなうちに、次第に接近していく二人の心。
片や未亡人。
バディも独身なので何の問題もないことながら、
そもそも、バディはグレッグに航空券を譲ったことをどうしても打ち明けられないのです。
初めは彼を敵視していた2人の子供たちも
次第に彼の訪問を心待ちにするようになり、とても良い雰囲気に・・・。
とうとう、彼は事実を打ち明けようと決心しますが・・・。

グレッグが彼の身代わりで死んでしまったのみならず、
彼のいるべき温かな家庭の中心に自分がいる、そういうことに、ひどく罪悪感を感じるのでしょう。
その思いがひしひしと伝わってきます。
だから、彼は初め思わず手助けをしてしまったのですが、
あくまでも距離を置こうとする。
でも、その時に、アビーのほうが彼に好意を感じ、接近してきてしまうのですね。
この皮肉。
こういう微妙な気持ちのすれ違いが、結構スリリングで、でも、良くわかる気がしてしまうのです。
初めの方に出てきたバディは、わりと自己チュウの感じであまり好印象がないのです。
でも、事故を経て、罪悪感に駆られ、アル中になり、
そしてアビーたちとふれ合ううちに、彼自身も変わってくる。
子供との付き合いもうまい、いい感じの男性になっていくのですね。
見ているほうもだんだん彼のことが好きになってくる。
・・・意外に拾い物の作品だったと思います。

このバディの仕事の助手役のキャラがすごくステキでした。
結構おせっかいな彼は、
取り次がないでくれと頼まれたアビーの電話をわざわざ取り次いでしまったりする。ちょい役ながら、キーパーソンだったりする、ユニークな人物。
もっと、この人の登場シーンが見たいと思ってしまいました。

2000年/アメリカ/106分
監督:ドン・ルース
出演:ベン・アフレック、グウィネス・バルトロウ、ジョー・モートン、ナターシャ・ヘンストリッジ


「笑う招き猫」 山本幸久

2008年06月26日 | 本(その他)

「笑う招き猫」 山本幸久 集英社文庫

先日「はなうた日和」という短編集を読んで、すっかりこの、山本幸久氏が気に入ってしまいました。
本当は、この「笑う招き猫」の方が、小説すばる新人賞を受賞したデビュー作です。
駆け出しの漫才コンビ、『アカコとヒトミ』の物語。
実際、こちらを先に読むべきです。
「はなうた日和」のなかにも、このアカコとヒトミが登場しまして、こちらの話の後日談となっておりますので・・・。

漫才コンビというただでさえ先行きの不安な道、
好きではじめたこととはいえ、ずーっと続けていけるのか・・・、
がんばりながらも、時にはこのような不安とも向かい合う。
夢と笑いとパワーにあふれる青春ストーリーであります。

ヒトミはのっぽでちょっとおっとり。
アカコは、チビでちょっと太めの直情型。
実にいい味のコンビです。
実際にいたらぜひ見たい。
最後の方で、この2人の気持ちが行き違いになってしまいます。
もう、コンビ解消か、と思われるそんな時・・・。
実に泣かせる方法で和解があります。
・・・この本で、こんなに泣けるとは思わなかった。
やられちゃいました。

登場人物一人ひとりが個性的で、ステキです。
たっぷり楽しんで、時々ホロリ。
今後も、長くお付き合いしたい作家です。

満足度★★★★★


フィールド・オブ・ドリームス

2008年06月24日 | 映画(は行)

(DVD)
不思議な物語です。
主人公、レイ・キンセラがトウモロコシ畑の中で仕事をしていると、どこかからささやき声が聞こえてくる。
「それを建てれば、彼が来る。」
周りには誰もいない。それって何? 彼って、誰?
思い当たることも何もないけれど、そんなことが続く。
ある日とうとう、その声と共に、彼の目に浮かび上がったのは畑の中の野球場。
そして、かなり昔、八百長試合の疑惑で球界を追放されたシューレス・ジョー。
この畑の中に野球場を作れというのか・・・?
でも、次第にレイは試してみたくなってきて、妻アニーにその相談をするのですが、
なんとできた奥様でしょう。
どうしてもやりたいのならやってみるべき、と彼の後押しをする。
この奥様は只者じゃないですね。
普通、こんな愚にもつかない話は反対します。

レイはいうのです。誰にでもこんな瞬間があるのではないか。
何かを決断するべき時。
こうすべきだ、こうしたい、というささやきがあるのに、それを無視してしまって、チャンスを逃してしまうということが・・・。

さて、できました。とうもろこし畑の中に、ナイター設備まである立派な芝生の球場が。
しかし、町の人からはバカにされ、収穫も減ったために、たちまち、生活が苦しくなってきます。
そんな時に、球場にやってきたのは、シューレス・ジョーを筆頭に昔懐かしいシカゴ・ホワイトソックスのメンバーたち。
・・・実はもう彼らはこの世の人ではありません。
とにかく野球が好きで、でも、球界を追われて野球ができなくなってしまった人たちの妄執、とでも言いますか、
不意にその特別な球場に現れては練習をして去っていく。
話も一緒にプレイもできますが、彼らはその球場から一歩も出ることはできない。
ユーレイといえばそうなんだけれど、ちっとも怖い存在ではない。ただ、ひたすら野球がしたいだけなのです。

ところが、今度はまた次のささやきが聞こえてきて、レイに新たな使命が・・・。
もう、その土地を手ばなさなければならないくらいに追い詰められているというのに、ささやきに従おうとするレイ。
結局これは、別に野球がテーマでなくても良い。
そのように夢を抱いて、ひたむきに生きる、そういうことの大切さを寓話的に描いているのですね。
子供のように夢を持った人だけが、その球場のプレイを見ることができる。

アメリカ人の野球に対する愛着もひしひしと感じられました。
日本で言うなら、さしずめ王・長嶋の活躍する絶対に強い巨人。
子供たちの憧れ。
そういうときの「野球」ですね。

1989年/アメリカ/106分
監督:フィル・アルテン・ロビンソン
出演:ケヴィン・コスナー、エイミー・マディガン、ギャビー・ホフマン、レイ・リオッタ


イングリッシュ・ペイシェント

2008年06月23日 | 映画(あ行)

(DVD)
これは、戦争が舞台ではありますが、情熱的な恋愛を描いたものです。
ただ、やはりその戦争に翻弄され、狂ってしまった恋愛の物語。
162分という大作ですが、この物語を語るには、このボリュームがやはり必要なのだと思います。

1944年。イタリア。
ある部隊に全身火傷を負い、記憶の大半を失った重症のイギリス人と思われる患者が運び込まれる。
彼の担当看護婦となったのは、ハナ。
彼女は、恋人と親友をこの戦争で亡くし、失意の中にいましたが、
懸命に役目を務めています。
この患者をこれ以上移動させることはよくないと判断し、
修道院の廃墟に2人だけで残り、看病することになる。
切れ切れに、患者がとりもどしていく記憶。
そこには、思いもかけない情熱の物語があったのです。

彼の名は、アルマシー。
ドイツ系の名前なんですね。
サハラ砂漠の地図を作る仕事をしています。
その関係で知り合った、ジェフリーとその妻キャサリン。
アルマシーは彼女の美しさと聡明さに魅せられます。
しかし相手は人妻。どうにもならない思いではありました。
しかしあるとき夫は別の用事で旅立ち、
キャサリンだけが居残ったことから、急速に接近していく2人の心。
とうとう2人は結ばれますが、お互いの罪悪感は深まっていく。
ついには夫にもその関係を知られてしまうことに・・・。

この作品で印象的なのは、砂漠の岩山の中にある洞窟。
これは実在する、ジルフ・ケビールの「泳ぐ人の洞窟」。
古代人が描いたと思われる、泳ぐ人の絵が無数にある。
砂漠の中に、泳ぐ人の絵。
なんとロマンを感じるではありませんか。

ある日、そこのキャンプの撤収のため、
アルマシーはジェフリーの飛行機の到着を待っていました。
しかし、その飛行機は無謀にもアルマシーめがけて突っ込んできた。
嫉妬に悩んだジェフリーの自殺行為です。
ジェフリーはそれで命を落としましたが、同乗していたキャサリンは重症。
やむなく、アルマシーはキャサリンを洞窟に残し、救助を求めて歩き出します。
3日砂漠を歩き続けて、やっと町にたどり着いたのですが、
そこで名前を名乗ると、ドイツのスパイ容疑で拘束されてしまう。
救助の願いもむなしいまま・・・。

しかし、ここからがまたいっそうドラマチックな展開なのですね。
彼は辛くも脱走を成し遂げ、彼の作ったサハラの地図をドイツ軍に売りつけて、飛行機を手に入れた。
そうして、ようやくあの洞窟に戻ることができたのです。
この愛。この執念。
愛のためなら、ためらいなく自国の利益も敵に売り渡す。
これを誰が責めることができるでしょう。
ただ、彼が戻ったときには、すでに彼女は・・・。
そのあと、彼の乗った飛行機が事故で炎上。
重症の彼に付けられた呼び名は皮肉にも、『イギリス人患者』。
戦争が、人の運命をこんなにも簡単に捻じ曲げてしまう、ということなのだと思います。

なにやらセクシーでもある、砂漠の砂の陰影。
その上を行く複葉機。
とても印象的でした。

1996年/アメリカ/162分
監督:アンソニー・ミンゲラ
出演:レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、コリン・ファース、クリスティン・スコット=トーマス


写真集「ターシャの庭」

2008年06月22日 | 本(その他)

写真集「ターシャの庭」

私の敬愛するターシャ・テューダーさんの訃報がありました。
バーモント州マールボロの自宅で、92歳とのことです。
彼女は1915年アメリカ、ボストンで生まれました。
絵本作家として活躍していましたが、
すごいのはその先で、57歳になってからバーモント州マールボロの現在の自宅に移り住み、
広大な敷地を花で埋め、自身は19世紀の生活様式で、暮らしていました。
花を育て、ヤギの乳を搾り、薪のかまどでパイを焼く。
ほとんど自給自足。
花々や、動物たちの絵を描き、編み物をし・・・。
スローライフなどと、いまどきの人は言いますが、
そんな言葉のかけらもない頃から、そんな生活を守り通していたのです。

日本でも、絵本作家として、
ガーデニング好きの人にはあこがれの人として、
そして、今風のエコロジー生活の見本として、
いろいろな方面から注目されている方で、
私にとっても、どの方面から見ても尊敬に値する方だと思っていました。

このような写真集も、たくさん出版されていまして、私も、何冊か持っています。
よく映画などで見る1800年代イギリスの片田舎、
そうそう、あのジェイン・オースティン作品の映画に出てくる雰囲気。
陳腐なたとえですが、懐かしいといっても、日本でそんな光景に出会うこともなし、
映画で想像するばかりですが・・・。

そのような生活に憧れはするものの、なかなか実際にできるものではありません。
仮に、それだけの土地が手に入ったとしても、結局私にはできないだろうなあ・・・。今のこの、文明社会を振り捨てる勇気は私にはない。
だからこそ、それを貫きとおせちゃう彼女にあこがれてしまうのかも知れません。

それから、彼女に親しみを感じるのは、彼女の愛犬がコーギー犬ということもあるんですね。
我が家の愛犬と同じなので・・・。
彼女の写真集に、コーギー犬を探すのも、楽しみの一つです。
彼女の絵本にはコーギー犬の村のお話もあります。
・・・そんなところで生活する犬は幸せですね。

とにかく、私が初めて彼女を知った時にも、もうかなりのご高齢でしたから、
いつかこんな時が来るとは思っていましたが、
今、こんな時代だからこそ、彼女の死は残念です。
ご冥福をお祈りします。


綿毛のたんぽぽ

2008年06月21日 | インターバル

いつも私が愛犬と散歩に行く場所は、山すその自然の中に作られた、ワイルドかつ広大な公園です。
このあいだまではたんぽぽが咲き競っていた・・・。
道外の方が、北海道のたんぽぽの野原にあこがれる、
なんていうことを耳にしたことがありますが、
はて、しばらくそんな光景を見ていないような気がする・・・。
自分でもなぜ?と思ったのです。

タネを明かせば、つまり、いつも散歩は早朝なんですね。
たんぽぽの花って、夜は閉じているんです。
だから、たんぽぽはいっぱいあるんですが、
早朝ではまだ、しっかりと開いていない。
それで、たんぽぽいっぱいの野原をあまり見ていないということなんですね。

ところが、その時期から少しあとに、あれ、ここにこんなにたんぽぽがあったっけ?と思うのです。
白い綿毛のたんぽぽがいっぱい!
こちらは夜だろうが早朝だろうが、しっかり開いております。

この、ふわふわたんぽぽを見るにつけ、思うのです・・・。
近頃、私自身のイメージは、あの派手に咲きまくっているたんぽぽではなくて、
あとでもう一度開く、この、ふわふわ綿毛のたんぽぽだなあ・・・と、つくづく。

2回目にまた花開いて、派手ではないけれど、なんだかふわふわしていていやし系。
そして、何よりも、風に乗って、空へ旅立つ。
まあ、一通りの子育ても終えて、今、なんだかすごく「自由」な気がしている、私の状況に、ぴったりだなあと思うのです。

年とるということは、そう悪くはないですよ。
なんだか、自分が自分であることに、満足できる。
何が何でも、何かをしなくちゃならない・・・、そういう思いから自由なような気がします。
・・・だから仏様のように、ささいなことで心が波立ったりしない、なんてことは言いません!
やっぱり、毎日落ち込んだり舞い上がったり、それは相変わらずなんですけどね。

平凡、かつ平和が一番、そしてほんのちょっぴり好きなことができれば幸せ。
こんな心境と、綿毛のたんぽぽが妙にマッチする気がしています。


「東京するめクラブ/地球のはぐれ方」 村上春樹、吉本由美、都築響一 

2008年06月20日 | 本(その他)

「東京するめクラブ/地球のはぐれ方」 村上春樹、吉本由美、都築響一 文春文庫

「地球のはぐれ方」とは、もちろんあの本を意識した題名でして、
つまり旅行案内なんでね。
ところが、これは、観光名所の案内ではない。
観光地としては忘れられた廃墟のようなところ・・・、
あまりにもベタで、おしゃれでないところ・・・、
とにかく、ちょっと変な、いまどきの人はあまり行きたがらないようなところばかりです。
しかも、一泊やそこらではなくて、おいしいところだけでもなくて、
かなりじっくりと、ディープなその地を探ります。
そのラインナップは、名古屋、熱海、ハワイ、江の島、サハリン、清里。

このトップに「名古屋」と来ているのがすごいですね。
「魔都、名古屋に挑む」と題してあるのですが・・・。

『名古屋というのは、メスの入っていない手つかずの状態で外界からは忘れられたまま孤立進化してきた。
特に食べ物で顕著で、名古屋でしか食べられないものはいろいろあるのだけれど、
非名古屋人にとってはどれも、「なんか変」で「なんかずれてる」』
・・・なーんてことが書いてある。
道路が碁盤の目のようで、やたら広い、
というあたりは、あれ?札幌と似ている、と思ったのですが、
彼らの言うには「札幌も似ているけれど、札幌は、異国情緒を感じる。」
「名古屋は道路が広すぎて、ホテルから出て、どっかへ行こうという気にもならない」
・・・と、くそみそです。
名古屋の方は読まないほうがよさそうですよ・・・。


私は、これらのうちどこも行ったことがありませんが、
やはり、この本をよんで、ぜひ行きたいという気にはなりませんねえ・・・。
そういうための本ではないのです。
でも、すごく面白い。
北海道などにいると、熱海とか清里の変化など、そもそもわからないのですが、
かつての賑わいから、ほとんど廃墟のようになっているというような話には
なんだかうなずけるところがあります。
世の中の状況が変わってきていて、人々のニーズも絶えず変化しているということなのでしょうね。

かのダーウィンが言ったとか・・・。
「生き残ることができるのは、強いものではなく、変化できるものだ」と。
しかし、もともと大きな資本をつぎ込んで出来上がったものを
そう簡単に変えることもできなかった、
ましてやバブル崩壊のあとは・・・
ということなのでしょう。

するどい状況分析と、ちょっと無責任な解決策も書いてありまして、
結構楽しめます。
それにしても、返す返すも、
名古屋がこれらの筆頭って、アリ?

満足度★★★


恋におちて

2008年06月19日 | 映画(か行)

(DVD)

マンハッタンの建築技師フランク、そしてイラストレーターのモリーはそれぞれ結婚しています。
この2人の初めての出会いは、クリスマスでにぎわう書店。
プレゼントの荷物をたくさん抱えた2人は
お互いの買ったプレゼントの本の包みを取り違えて持って帰ってしまうのです。
次に会ったのは列車の中。
ちょっとした会話をするうちに、次第に相手を好ましく感じ始めます。
結婚しているといっても、心に鍵をかけるわけには行きません。
いつしか、毎日見る顔にはときめきは感じず、
新たな出会いに心弾むなんてことは、大変ありえることですよね・・・。
ただ、分かれ道はその先なんです。
もう形骸化している結婚なんて振り捨ててしまえるのか。
でも、一度は神の前で誓った結婚なのだから、他の人に心変わりなんて、とんでもないと思うのか。

この2人の男女は、もう、「若い」といえるような年齢ではありません。
だから、たちまち燃え上がりはしないし、互いに惹かれれば惹かれるほど、罪悪感も強くなってくる。
一度は、結婚も振り切ろうと思ったのだけれど、やはり最後の一線を越えられない、分別ある2人。
とうとう、なにもないまま、フランクは仕事でヒューストンへ旅立つ。

このような切なさが、見所なのであります。
20年以上前の作品ですね。
メリル・ストリープ出演作品は、先日もみたので、その若さに特別驚きはしませんでしたが、
ロバート・デ・ニーロ!・・・いやはや、若いです。
銀幕の中で、いつまでも、一番ステキな時期が封印されている。
スターの特権ですね。
さて、この話のラストは、一年後、
またクリスマスに同じ本屋で出会う2人。
実は2人とも、それぞれの結婚を解消しているのですが、それを言い出すことができません。
ぎこちなく会話し、別れる二人。
ウソー。
それで終りじゃないでしょ。
ほら、ちゃんと言うべきことをいいなさいよ~、
と実にやきもきさせられるのですね。
この辺が映画作りのうまいところ。
そして、これって、結構リアリティがあるかも。
そうですよ、言えそうでなかなか言えませんよね。
相手はもう終わったことだと思っているに違いない・・・。
いまさら、独り身だといっても、無駄・・・。
そんな思いが強くある。
勇気が出ない。

観客はそこで思い切り、2人の背中を押し出すわけです。
大変納得できる大人の恋愛ストーリー。

1984年/アメリカ/106分
監督:ウール・グロスバード
出演:ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ、ハーベイ・カイテル、ダイアン・ウィースト


「はなうた日和」 やまもと幸久

2008年06月17日 | 本(その他)

「はなうた日和」 やまもと幸久 集英社文庫

なにやらほのぼのした短編集なのですが、
それぞれ、東急世田谷線沿線が舞台となっています。
解説によれば、二両編成で、三軒茶屋~下高井戸を17分で走るというローカル電車。
・・・おや、この話つい最近どこかでで読んだなあ、とおもったら、
そうそう、川本三郎著「旅先でビール」という本です。
住宅街を走っていて、個人の庭先を走っているような感じがある。
・・・とのことで、かすかに、そんな情景をTVでも見たことがあるような・・・。
「家政婦は見た!」のロケがこの沿線で行われているとのことで、それかもしれません。
人家の軒先をのどかに走る電車。
ちょっと乗ってみたい気がします。
さて、本題に戻りましょう。


冒頭の一篇は、「閣下のお出まし」。
小学5年生の一番くんは、
離婚して、ずっと別に暮らしているお父さんの家を訪ねます。
そこにいたのは、今お父さんが一緒に暮らしている相手の息子のハジメ。
一番と同じ年。
やけに一番を歓迎してくれて、そして、なぜか一番のことをとても良く知っている。
すごく気があってしまったのですが、最後に感情が爆発。
「塾にピアノにサッカーに、こんなにがんばっているのに、
何でいつもお父さんと一緒なのは君なのか」、
という一番に対して、
ハジメは、「自分がどんなにがんばっても、いつも一番と比べられる、
何をやってもかなわない」、と反論、
泣きながら本音を語り合ってなお通じ合う2人、いい感じです。

この、世田谷線沿線に住む人たちのいろいろなストーリー。
全部ばらばらかと思えば、先に登場した人物が、あとでまた、ちらりと出てきたりもして、楽しいのです。
私がもう一人気に入ったのは、犬の散歩代行をしている千倉さん。
彼は、どじで、すぐ連れている犬に逃げられてしまう。
別の短篇にまた登場したかと思えば、
このときは、なんと、お年寄りの散歩の付き添いの代行。
それがあろうことか、またそのおばあさんに逃げられてしまったりして。
思わず、笑っちゃいます。

どこにでもいる、ちょっと冴えない人たちのストーリーながら、なんだかほのぼのして小さな幸せを感じる。愛すべき短篇集です。

満足度★★★★


JUNO/ジュノ

2008年06月16日 | 映画(さ行)

一番初めに16歳の女の子の妊娠。・・・と聞いて私はちょっといやな気がしたのです。
日本でもそんなテレビドラマがよくありますね。
本人は、命は大切だから・・・とかいって、生もうとする。
両親はとんでもないと反対。
しかし、本人の決意は固く、やむなく応援することに。
そして、苦しい出産シーンがあって、無事生まれてめでたしめでたし。
・・・でも、実際大変なのは、そこからなんですけどね。
現実には、子供の世話はおばあちゃんに押し付けて、自分は遊んで歩く、
なんてことになるのではないか・・・。
そんな一時の感傷で、やたらに生むものじゃない・・・。
そもそも高校生で妊娠とは、ナニゴト!
・・・と次第に、オバサンの繰言になってしまうわけではありますが、
そんなわけで、どうもこの手のストーリーは好きになれないでいたわけです。
でも、この映画のあらすじを読むと、ちょっと違うようですし、
なにしろ、本家アメリカではものすごい興行成績を上げている。
悪い話であるわけがない。


・・・というわけで、とにかく見てみましょう、という気に。

しかし、いきなり、オープニングでもうやられましたね。
主人公ジュノが町を歩くシーン、
背景が単純化された線のアニメーションになっている。
なんだか、とってもワクワクさせられます。

ジュノは、確かに今風の軽いノリの女の子ですが、すごく個性的。
きちんと自分の考えを持っている。
そして自分の行動に責任をもつだけの自立心がある。
妊娠がわかったとき、まずは堕胎をしようと考えます。
まあ、それが普通の判断ですよね。
けれど、病院へいくと、その前で、クラスメイトが「堕胎反対」のプラカードを持って立っていて、
彼女が言うには「もう、赤ちゃんには爪も生えているのよ・・・」。
そこで、彼女は急に、気持ちが萎えてしまう。
では、どうするのか。
・・・では、仕方ない、生んで育てよう、とはならないんですね。
子供が欲しい人に養子に出そう、ということにするのです。
ああ、そういう手があるのか。
日本ではそのような制度は一般的ではありませんね。
でも、これって確かに合理的。
自分が生んだ子供に愛情はないのか、と日本なら言われるかもしれません。
でも、ジュノはきっぱりといいます。
今の私には育てられない、と。
私はこの割り切り方に拍手を送りたいと思います。
そうなんですよ。現時点ではそれがベスト。

なんていうか、そこが日本とアメリカの違いだと思うのですが、
親子関係が結構シビア。
小学生までは絶対に子供だけで一人で家に置かない、そのような見守り方をする一方、
ある程度の年齢からは、一人の大人として扱う。
だから、娘が生んだ子を日本なら祖父母が面倒を見るのはお約束、みたいなところがあるけれども、
あちらでは、そもそもそういう考えがない。
実際上の世話、そして経済的なこと、まずは親である自分がなんとかしなければならない、という規範がしっかりあるんですね。

先日見た「ラスベガスをぶっつぶせ」の映画にも、こんなシーンがありました。
進学のための学費がない主人公に、
母親がコツコツとためていたお金を「貸して上げましょうか?」とおずおずと差し出す。
日本ではこんなことあまりないですよね。
学費は親が払うのが当たり前だと思っている。
文化の違いを感じるのでありました・・・。

さて、というわけで、これらをすべて決心してから、初めてジュノは両親に妊娠のことを告げます。
両親も、娘がきめたとことなら・・・と、協力体制。
無論、父親の動揺は隠せませんが・・・。
妊娠中に、もう子供の養子縁組手続きが行われます。
ジュノが探し出したその里親は、望んでいるのに子供ができない裕福な夫婦。
ところが、そちらも完璧な親とは言いがたい。
夫のマークは妙にジュノと気が合ってしまうのですが、
結局、「親」になる覚悟ができない、自分自身がまだ子供の人でした・・・。
う~ん、でもそれはあまり責められないかな。
実際子供が生まれて、その子を胸に抱いて、初めて実感する親の責任、そういうものもありますよね。

さて、肝心のその赤ちゃんの父親なんですが、
これがつい好奇心で結ばれてしまったジュノのボーイフレンド、ポーリー。
彼は見るからにボーっとしていて頼りなく思えるのですが、
実はこれは思わぬ拾い物かも・・・ですね。
あとは知らないフリを決め込むほどの無責任でもない。
ちょっとおっとりで、愛情深く、まじめ。
なぜ、ジュノが彼を好きなのか、だんだん納得できてきます。
本当に、将来は、2人のための子供ができるといいですねえ・・・。

出産シーンでは、オバサンは思わず泣けてしまいました・・・!
なにやら、日米の文化の違いまで思い起こされて、いろいろ考えてしまう映画なのでした・・・。
そうそう、この映画の音楽がまたどれもステキです。
サントラ盤を買いたくなっちゃうなあ・・・。

2007年/アメリカ/96分
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン

「JUNO/ジュノ」公式サイト


「常野物語/蒲公英草紙」 恩田 陸 

2008年06月15日 | 本(SF・ファンタジー)

「常野物語/蒲公英草紙」 恩田 陸  集英社文庫

これは以前に読んだ「光の帝国」という本の続編なのですが、
何しろ、ずいぶん前のことなのでほとんど覚えていません。
ただ、ちょっと不思議な能力を持つ「常野(とこの)」の一族のお話・・・としか。
でもまあ、この本を読むためには、その程度のことで十分でした。
読んでいなくても、ぜんぜん問題ありません。

この本の語り手は、ご高齢と思われる女性、峰子。
彼女のうんと若い頃の故郷の村、人々を思い出して語っています。
それは、東北の農村。
村人から敬われ、慕われていた植村というお屋敷の末娘、聡子。
峰子は、体が弱くほとんど外に出歩けない聡子の話し相手として、お屋敷に通うことになります。
その聡子は、そのひ弱な体とは裏腹に、まぶしいほどのオーラを持つ人で、
誰もが彼女を慕い、力になりたいと思う。
また、そばにいるだけで癒されるような気がする。
そして、ほんのちょっぴり、不思議に先のことがわかる、そんな力があるようだ。

たんぽぽの咲く明るい野原にいるような、そんなほのぼのとして、平和なひととき。
けれどもそれは実に、つかの間のことだったのです。

ある日、村は突然の豪雨に襲われて・・・。

涙、涙でした。
まさか、このような結末とは・・・。


気がつけば、終戦のその日。
すっかりおばあさんになって、昔の物思いにふけっている峰子がいます。
この国は、「常野」の一族が守っていく価値のある国だろうか・・・そんな問いかけで終わるこのストーリー。
自分の子供の頃を思い浮かべるような、そんな懐かしさのある、物語です。

私のお気に入りは、聡子の兄、廣隆。
いつも、峰子にちょっかいを出していじめるこの少年。
峰子のことを彼だけ、「ねこ」と呼ぶのです。
しかし、この物語のわずかな期間にも成長して大人びていきます。
彼のいじめはもちろん、興味の裏返し。
このような、なんだかほほえましくもあるいじめっ子、
というのもちょっと懐かしい気がしました。
いま、はびこる集団の「いじめ」とは、異質のものです。
こんな少年を、近頃あまり見かけないなあ・・・。

満足度★★★★


ラスベガスをぶっつぶせ

2008年06月14日 | 映画(ら行)

マサチューセッツ工科大学に在学しているベンは、数学の天才。
私は数学のできる人は文句なく尊敬することにしています。
私は、全くダメなもので・・・。
ベンは、ブラックジャックの必勝法、カード・カウンティングを身につけ、チームの仲間と共にラスベガスに乗り込む。
・・・とはいえ、正直のところ、私はこのカード・カウンティングというものの理屈が
そもそも理解できません。
とにかく、記憶力が勝負なのだろうということはわかりますが・・・。
皆さんは理解してみていたのでしょうか・・・?
でも、これは実話に基づくストーリーだそうで、やっぱりいるんですねえ・・・、
とてつもなく数字に強い方が・・・。

ベンは、ハーバード大学の医学部進学のための学費を稼ぐため、
として、チームに加わります。
はじめはすべてが順調。どんどん大金が転がり込みます。
ところが、必要な資金、30万ドルを越えてもさらに欲が出てしまう。
そこから、急転直下で、みじめなことに・・・。
まあ、ここら辺は、あまりにも定番どおりの展開なんですが。
最後にちょっとした意趣返しがあり、
まあ、その辺でなんとか体裁はついた、というところでしょうか。

ベンが貧乏学生の頃は、同じ貧乏仲間の友人2人とロボットコンクールに挑戦していました。
ところが次第に、ボストンとラスベガスの二重生活。
その多忙さの中で、彼らとの付き合いが次第にわずらわしくなり、
また、つまらなく思えてきて、仲間から外れてしまいます。
ところが、彼がラスベガスで大失敗。
絶望のどん底にあるときに、友人2人は、コンクールで優勝。
まさに、皮肉。
ここの展開が私は一番気に入ったのですけれど。
この友人2人は、いかにもオタク風で、サエないのですが、
地道にがんばることの大切さを教えてくれる。
・・・いいですねえ。これ。

それから、一見学生思いで、話のわかる風のミッキー教授。
実はこれが自己チュウのぜんぜん食えない奴。
そういうあたりを、さすが大御所、ケヴィン・スペイシーががっちりと固めています。

とりあえず、ラスベガスでの勝ち方はよく分からないものの、
それでも十分に楽しめる作品。

2008年/アメリカ/122分
監督:ロバート・ルケティック
出演:ジム・スタージェス、ケヴィン・スペイシー、ケイト・ボスワーズ、ローレンス・フィッシュバーン

「ラスベガスをぶっつぶせ」公式サイト