ハンクは軍を訪ね、息子の行方を捜そうとする、そんなところからストーリーは始まります。
ハンクは模範的な軍人であり、父親であったのでしょうね。
息子が彼を尊敬し、憧れ、正義感に燃えて入隊したであろうことが、伺われます。
さて、息子の行方の手がかりを探すため、
彼の残したケータイの映像記録を調べたり、
彼の同僚に話を聞いたり、
また、彼の立ち寄ったと思われる場所に出向いたり、手を尽くすハンク。
しかし、そんなところに届いた知らせは、マイクの死体が見つかった、とのこと。
殺害され、ばらばらにされ、焼かれる、というむごい姿で発見されたのでした。
ハンクの目的は次には犯人探しに変わります。
地元警察の女性捜査官エミリーの助けを得ながら、少しずつ真相が現れてくるのですが・・・。
ハンクにとっては大変むごい真相が現れることになります。
ここで問題となるのはPTSD。
心的外傷ストレス障害、という昨今よく耳にする言葉です。
今、イラクの地で何が起こっているのか・・・、
事実は私など想像もつきませんが、
この作品では、マイクはイラクで人格も崩壊しかねない、ひどい体験をした。
確かに、体は傷を負うことなく、無事帰国したのですが、
心は、もう死んだも同然になっていたのでしょう。
それは彼だけではありません。
同時にイラクへ行き、帰還した彼の同僚たちもまた・・・。
感情をあらわにせず、静かに事件を追い、いつも途方にくれたようなトミー・リー・ジョーンズの表情に、より深い絶望を感じ取ることができます。
それは彼自身が一生を奉げた国家というものへの絶望なのかも知れません。
しかし作品中、彼は、石油のことも政治や戦争の是非のことも一言も口にしません。
ただ、最後に、彼は星条旗を逆さに掲げるのです。
逆向きの国旗には、「救難信号」の意味がある。
実は、このことは映画の最初の方に伏線で説明があったのですね。
この逆向きの国旗に彼の主張がすべてこめられている。
優れた作品だと思います。
実のところ、このように重い作品はパスしたかったのですが、
この日一番合理的な時間配分を検討したところ、
この映画が一番都合がよかった、と、そういうことではありますが、
やはり、これは見ておくべき作品でした。
一人ひとりの権利や未来をいとも簡単に剥ぎ取ってしまう戦争というもの・・・。
それを引き起こす国家というもの。
時には目をそらさずに、考えなくては・・・。
2007年/アメリカ/121分
監督:ポール・ハギス
出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、ジョシュ・ブローリン
「告発のとき」公式サイト