映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ブレードランナー2049

2017年10月31日 | 映画(は行)
レプリカントとは・・・、つまりは人間とは。



* * * * * * * * * *

1982年公開の「ブレードランナー」から35年を経た続編。
リドリー・スコット監督は製作総指揮に当たっている・・・と。
先日この「ブレードランナー」を予習視聴したので、
張り切って「2049」へGO!


前作の舞台は2019年で、
それから30年が過ぎた2049年が今回の舞台となっています。



レプリカント(人造人間)を生産していたタイレル社はなくなり、
実業家ウォレスがその事業を継承しています。
レプリカントは新型となり、寿命が伸びて反抗心は奪われている。
しかし今なお、旧型レプリカントは残っていて、
その旧型撲滅のためにブレードランナーは健在。
本作の主人公“K”(ライアン・ゴズリング)は
ブレードランナーとして仕事をしているのですが、
なんと彼自身が新型レプリカント。

まあ確かに、身体能力の高いレプリカントと対決するならやはりレプリカント、
ということか。
彼自身がレプリカントというのは映画解説などでは伏せてあるようなのですが、
冒頭まもなくそのことは知らされるので、
ここではネタばらししてしまいましたが、ごめんなさい。



さて、30年前に出産して死んだと思われるレプリカントの死体が発見されるのです。
レプリカントが出産?? 
通常ありえないことではあります。
また、ではその子供はどうなったのか・・・?
ここで、前作を見たかいがあったといいますか、
前作のつながりから考えて、
これはあのデッカード(ハリソン・フォード)とレイチェルの子供なのではないか
・・・と想像されるわけです。
Kは、その子供の行方を探すことになります。



前作の世界観、退廃した未来がみごとに継承されています。
そもそもレプリカントって、どういうふうに作られるのだろう
という疑問にちょっとだけ答えてくれるシーンもありました。
レプリカントの“誕生”シーン。
いきなり大人の姿で生まれてくるわけですね。


前作のデッカードのレイチェルに対する思いと、
本作のKのバーチャルな恋人への思いが対比されているように思いました。
人は人以外のものでも愛情を抱くことができる、
というべきなのか、
それとも、もうホンモノの人を愛することができなくなってしまっているということなのか。
現代人は得体の知れない「他人」よりも、
人が作り出した決して逆らわない「人形」のほうが安心できるとか・・・。
まあ、それは穿ち過ぎであるとしても、
人とレプリカント、さらには人工知能の違いは一体何なのか。
そうした技術が進めが進むほど混沌としてきます。
それは人が人としてあることの意義の模索でもあります。
そもそも感情や魂って一体何なのでしょう。
この先、人造人間はありそうにないですが、
人工知能はなんだか身近な問題となってきそうですね。


実際の年月をかけたからこそのデッカード=ハリソン・フォードの変化というのが、
実に決まっています。
ライアン・ゴズリングの極力感情を表に出さないレプリカントらしさもいいですねえ。
3D映像で出てくる等身大のバーチャルな恋人・・・。
こんなのはまもなく開発されそうな気もします。
が、実現したら本当に、ホンモノの人と話ができなくなる人が出てくるだろうなあ・・・。
とまあ、色々と考えてしまうことは多いけれど・・・、
実のところ少し長くて、私には少々退屈でした・・・。
私がよく参考にしている渡まちこ子さんはなんと95点もつけてる。
そうなのか・・・。
マニアとかクロウト受けする作品なんだろうな。

<ディノスシネマズにて>

「ブレードランナー2049」
2017年/アメリカ/163分
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルビア・ホークス、ロビン・ライト
「ブレードランナー」との地続き度★★★★★
満足度★★★☆☆

追記
本作のオフィシャルサイトを見ると、前作2019年から本作2049年までに起こったできごとが
3本の短編になっているのを見ることができることに気づきました。
「ブレードランナー 2022:ブラック・アウト」
「ブレードランナー 2036:ネクサス・ドーン」
「ブレードランナー 2048:ノーウェア・トゥ・ラン」
の3本。
しかも一本目はアニメ。
それと、町山智浩氏によるとっても詳しい解説も見ることができます。
これらを見ると、なるほど~!!と、納得することしきり。
なんだかもやもやしていたところが、クリアになってきました。
深い、ブレードランナーの世界・・・。

今更なんですが、満足度★★★★.5
くらいのところまで行ったかも。


















ブレードランナー ディレクターズカット版

2017年10月29日 | 映画(は行)
「ブレードランナー2049」の予習



* * * * * * * * * *

エイリアンについで、なぜ旧作を引っ張り出してきたかというと、
「ブレードランナー2049」という作品が公開されていまして、
それがこの「ブレードランナー」の続編ということなので、そのための予習です。
私は「ブレードランナー」という名前だけは知っていたものの、
見たことはなかったのです。
それでこの度見たのは、1982年版の「ブレードランナー」を
1993年にリドリー・スコット監督が再編集した作品。
あらら、ところが実は更に再編集したファイナルカット版(2007年)というのがあったのですね・・・。
そちらを見るべきだったのか、と思いつつ・・・。
このディレクターズ・カット版は、
当初あった主人公デッカードのナレーション、
バイオレンス描写、ハッピーエンディングが削除されているということなので、
かなり大掛かりな改変があったようです。
3作見比べるのも良さそうですが、
実のところぜひまた見たい、という気のする作品でもなかった・・・というのが正直なところ。



さて、物語は・・・
2019年ロザンゼルス。
遺伝子工学の新技術によりレプリカントという人造人間が作り出されていて
宇宙探索や植民地惑星の危険な労働に従事、
と言うよりは使役されていました。
レプリカントは人間そっくりで、見ただけでは区別がつきません。
感情はないのですが、長く生きると次第に感情が芽生えてくる。
それで、はじめから寿命が短く設定されている・・・。
ところがこのレプリカントたちが自らの境遇に不満を持ち反乱を起こすようになります。
そんな反乱分子のレプリカントを撲滅するための捜査官が、ブレードランナーという存在。
さてある時、4名のレプリカントが地球に侵入。
ブレードランナーであるデッカード(ハリソン・フォード)が
任務を受けて、彼らの捜索に乗り出します。
そんななかで、デッカードはレプリカントの製造元であるタイレル社で
レイチェルというレプリカントに会い、心を通わせていきますが・・・。



2019年。
レプリカントはもとより、飛行自動車もまだできていません。
未来への速度は予想よりもかなり遅れているなあ・・・。
でもそれほどの未来でも、ロスの下町、チャイナタウンは雑多で猥雑、ゴミだらけ。
そうした「退廃的未来」の表現がナイスです。
でもここに出てくるチャイナタウンはずいぶん日本に近いですね・・・。
80年代アメリカでは日本も中国も一緒くたか・・・。



さて、レプリカントという存在が問題。
人と同じ思考能力があり身体能力は人以上。
それでいて扱いが人並み以下であれば不満が出るのは必至です。
しかも通常は感情がなく、ある程度生きて感情が芽生え始めたところで寿命を迎える、
というのはあまりにも酷ではあるまいか・・・。
ここに登場するレイチェルは自分自身でもレプリカントだということを知らなかったのです。

自分の過去の記憶と思っていたものも、植え込まれたものだった・・・。
となれば、全世界の自分は人間だと思っている人々も
実はレプリカントなのではあるまいか・・・?
レプリカントと人の差異は一体何なのか?
このあたりが大きなテーマですね。
多分、この度の新作も、そのあたりをついてくるのではないかと思います。
本作の30年後2049年を舞台とする新作。
ハリソン・フォードがそのままの役で年令を重ねて登場するというのも洒落ています。
ぜひ見たいと思う。



本作、全体的に暗い色調で空虚感が漂う。
多分公開時は、クールで尖った感じのかなりのSFマニア向け作品だったのでは?
というところが実は私は少し苦手だったりする・・・。

本稿の掲載写真は2007年ファイナルカット版より

<J-COMオンデマンドにて>
「ブレードランナー ディレクターズカット版」
※初公開1982年
1993年/アメリカ・香港/117分
監督:リドリー・スコット
出演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、エドワード・ジェームズ・オルモス、ダリル・ハンナ

SFハードボイルド度★★★★☆
満足度★★★☆☆

「ノックス・マシン」法月綸太郎

2017年10月28日 | 本(ミステリ)
歯が立たない・・・

ノックス・マシン
遠藤 拓人
角川書店(角川グループパブリッシング)


* * * * * * * * * *

2058年4月、上海大学で20世紀の探偵小説を研究していたユアン・チンルウは、
国家科学技術局から呼び出される。
博士論文のテーマ「ノックスの十戒」第5項が、
史上初の双方向タイムトラベル成功に重要な役割を担う可能性があるというのだ。
その理由を探るべく、実験に参加させられた彼が見たものとは―。
表題作「ノックス・マシン」、
名探偵の相棒たちが暗躍する「引き立て役倶楽部の陰謀」
などを含む中篇集。

* * * * * * * * * *

本作、2014年の「このミステリがすごい!2014年版」第一位。
法月綸太郎さんはもともと好きな作家ですが、
なんとなく今まで読みそびれていて、この度ようやく読みました。


だがしかし・・・。
う~ん、そもそも私はクイーンもクリスティもほとんど読まず、
いきなり日本の「新本格」から入った口。
そういう者にとってはちょっととっつきにくい。
しかも、SF仕立てで、出て来る言葉が難しい・・・。
いえ、多分そう深い意味はないのですよね。
知的遊びと呼ぶべきもの。
しかし、私はこういうのに弱い・・・。
一行一行が苦行のようだ・・・。
それでも一応最後まで読んだ自分を褒めたいくらいです。


細部はともかく筋立ては面白いとは思いましたが・・・。
完敗です。
こういう本が「すご~く面白かった!」と言える人に、私はなりたい。
つまり、このミスの選者はかなり頭が良くて、
本当に古今のミステリを読み込んでいるのだろうなあ・・・

「ノックス・マシン」法月綸太郎 角川書店
満足度★★☆☆☆


エイリアン

2017年10月27日 | 映画(あ行)
原点をさぐる



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最近「プロメテウス」と「エイリアン:コヴェナント」を見て、
そういえば「エイリアン」の初めの方は、確かに見て、未だに印象も深いですが、
随分前のことだし、ブログ記事にもしていないと気付いて、
この際初めから見てみることにしました。
で、第一作、1979年作品です。
考えてみたら本作、「プロメテウス」、「エイリアン:コヴェナント」とは
そのまま時系列でつながっているわけで、
これは案外タイミングの良い思いつきではないか!と、自己満足。


さて、ストーリーです。
宇宙船ノストロモ号はある星からの不思議な通信を受け、
調査のために立ち寄ることになります。
と言うか、この船は貨物船で乗組員は地球帰還のためコールドスリープに入っていたのですが、
この通信を受けたために臨時で予定外に目覚めさせられた、ということなのです。
なんでも、生物のいる可能性のある惑星のそばを通りがかったときには
調査をすること、という事前の取り決めがあったらしい。
なるほど・・・このあたりがいかにもコヴェナントの続きとしては納得がいきます。
予め、何者かの意図でこの星にたどり着いたということなんですね。
そう、この星こそが前2作の舞台となった、あの忌まわしい星。


探索船で降り立ったメンバーの一人の顔面に
不気味な生物が張り付いて意識を失ってしまいます。
検疫のために、彼は船内に入れてはいけないと
リプリー(シガニー・ウィーバー)は初めから警告していたにも関わらず、
他のメンバーが強引に船内に入れてしまいます。
やがて不気味な生物は自然に剥がれ落ち、当人は意識を取り戻す。
そして彼は猛烈な食欲を示しますがその最中、突如腹痛を訴えもがき苦しみ、
その腹中を食い破ってヘビのような生物が飛び出し、船内に隠れてしまう。
ここのシーンは、本当にゾッとさせられて、忘れられませんでした・・・。
このヘビ様の生物は更に脱皮をして、
私たちにおなじみのエイリアンの姿に成長します。
そして、一人また一人と犠牲者が出て、
最後はリプリー一人で対決をすることになる。



私はこの作品の後、様々な映画作品などでの女性の立ち位置が変わってきた、
と思っていました。
それまで、女性の登場人物はただ悲鳴を上げて男性の助けを待つだけの存在だったのですが、
本作の後から、自分で助かろうと自ら動くようになったのです。
そんな思いがあるところで、内田樹さんの「エイリアン・フェミニズム」という考えに出会いました。
以下、内田樹氏の受け売りです。


体内に卵が入り込み、成長し、最後に腹を食い破って出てきて、宿主を死に至らしめる
---というのは、妊娠と出産のメタファー。
生殖という女性の生物的宿命そのものに対する恐怖と嫌悪を表している。
このころ、ちょうどフェミニズムの興隆期。
まるで女は男が自己複製を作る道具であるかのような、それまでの父権社会の様相が表されていて、
そしてリプリーが一人反旗を翻している。
女性主人公が男性保護者に依存することなく、
ストレートな暴力に、ストレートな暴力で対処して勝利する。
闘い、自立する新しい女性像。
しかし、この闘う新しい女性のあり方は、
女性自身も不安だけれど、男性にとっても不安。
本作はこの双方の不安を投影している。


さて、「ストレートな暴力にストレートな暴力で対処して勝利」、
ということで、それではリプリーは男と変わらないということになってしまうのではないか・・・?
というところで、本作中には彼女の弱みも描かれているのです。
乗員の一人に力で組み伏せられてしまうところと、
終盤、猫を探しに行ってそのスキに脱出シャトルにエイリアンが乗り込んでしまう
というミスを犯すところ。
このあたりが、尚逃れられない女性としての弱み・・・。


このような内田樹氏の考え方に妙に納得してしまう私がいます。
たしかに本作、エイリアンをボコボコにしまくるのが男性だったらこんなにヒットはしなかったでしょう。
而してリプリーはフェミニズムの旗手となる。
このあと、物語の女性は男に頼らなくなるというのも当然のことなのでした。


それから私は思うのですが、本作でもアンドロイドが登場しますね。
「プロメテウス」と「エイリアン:コヴェナント」でも重要な位置を占めます。
アンドロイド、というよりも人工知能か。
この危険性をこの当時から言っているような気がします。
作中では、自己の欲望を満たそうとするある人物の意図を植え込まれたアンドロイド
ということになっていますが・・・。
人類にとってはエイリアン同様、計り知れない不気味な存在。
人工知能は、人のためにあるようでいて実は・・・
という不気味さが、裏テーマなのではないかと・・・。

エイリアン [Blu-ray]
トム・スケリット,シガーニー・ウィーバー,ベロニカ・カートライト,ハリー・ディーン・スタントン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP)


<J-COMオンデマンドにて>
「エイリアン」
1979年/アメリカ/116分
監督:リドリー・スコット
出演:シガニー・ウィーバー、ベロニカ・カートライト、トム・スケリット、イアン・ホルム、ハリー・ディーン・スタントン
フェミニズム度★★★★★
満足度★★★★☆

猿の惑星:聖戦記 グレート・ウォー

2017年10月26日 | 映画(さ行)
支配するものとされるもの



* * * * * * * * * *

名作「猿の惑星」をリブートした「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」、
「猿の惑星:新世紀(ライジング)」に次ぐシリーズ第3弾。
3年に一度のペースで続きが発表されているのですが、
どうも私は内容を忘れてしまうので、この方式は苦手で・・・。
今回も見なくていいかとも思ったのですが、本作が一応最後のようなので、
やはり見ることにしました。
それにしても、邦題の「創世記」、「新世紀」、「聖戦記」と
韻も字数もうまく揃えたものですね。
お見事!



さて、ストーリーは・・・
高度な知能を得た猿と人類が全面戦争に突入してから2年。
猿を率いるシーザーは森の奥深くに身を潜めて暮らしていました。
彼は猿と人は互いに干渉しないという方法で共生していくべきと考えていたのです。

しかし、人の奇襲を受けて妻と長男を殺されてしまったことから、
敵の冷酷なリーダー・大佐への復讐を誓います。
仲間を新しい隠れ場所へ向かわせ、シーザーは3匹の仲間とともに大佐を倒す旅に出ます。
そしてその道中、口をきけない人の少女と、動物園出身のチンパンジーも加わりますが・・・。



あんなに人と猿の共存を願っていたシーザーですが、
本作では一転して「人間憎し」の立場へ向かってしまうのが悲しい・・・。
「創世記」ではアルツハイマーの新薬を猿に投与したために、
猿が高度な知能を持つに至ります。
次の「新世紀」では、猿インフルエンザのために人類が激減。
そして本作で、いよいよあの“猿が支配する”地球となるための橋渡し。
一体どうして・・・? というのはつまり、
もともと人が蒔いた災いの種、ということか。



シーザー等、群れのリーダーを失ったサルたちは
あっさり人の軍隊に捕まり奴隷のように使役されることになります。
こんなところから、本作は「人と猿の物語」を超えて、
「支配するものと、支配されるもの」、「虐げるものと、虐げられる者の物語」
であるような気がします。
人類はそういうことをいつでも繰り返してきた。
それは人種の差であったり、宗教の差であったり、
時には貧富の差、性差であったりもする。
突き詰めればおなじ「人間」なのに。
だからこれは普遍的な、虐げられる者が闘争し、解放される物語。



猿たちがそれぞれ個性たっぷりなのが良かった。
中でもチンパンジーのバッド・エイプがナイスでした。
殺伐な争いの中で、ふと心をなごませてくれます。
どこまでも心優しいオランウータンさんもよかった・・・。
それを言ったらよほど人間の大佐のほうが凶暴だし。
シーザーに助けられた人間の兵士くんは
猿たちのために何かをするのかと思ってみていたら
結局何もせず虚しく死んでいったし・・・
「地獄の黙示録」のようでもあり「大脱走」のようでもある。
細かなシーンが結構興味深くて、退屈しませんでした。



ところで、シーザーの幼い子供がコーネリアス。今回登場した少女がノバ。
・・・ということはこのまませいぜい20年後くらいがあの「猿の惑星」なのでしょうか?
いや、いくらなんでもそれではスパンが短すぎる気がする。
やはりこれは、単に原典へのオマージュということか・・・。


<シネマフロンティアにて>

2017年/アメリカ/140分
監督:マット・リーブス
出演:アンディ・サーキス、ウッディ・ハレルソン、スティーブ・ザーン、カリン・コノバル、アミア・ミラー
「猿の惑星:聖戦記 グレート・ウォー」
謎解明度★★★★☆
満足度★★★.5

「JR上野駅公園口」柳美里

2017年10月25日 | 本(その他)
魂すらも帰る場所をなくして・・・

JR上野駅公園口 (河出文庫)
柳 美里
河出書房新社


* * * * * * * * * *

1933年、私は「天皇」と同じ日に生まれた―
東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのために上野駅に降り立った。
そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を。
高度経済成長期の中、その象徴ともいえる「上野」を舞台に、
福島県相馬郡(現・南相馬市)出身の一人の男の生涯を通じて描かれる死者への祈り、
そして日本の光と闇…。
「帰る場所を失くしてしまったすべての人たち」へ柳美里が贈る傑作小説。

* * * * * * * * * *


そういえば私、柳美里さんははじめてです。
本作は川本三郎さんの「物語の向こうに時代が見える」で紹介されていたので、読んでみました。


1933年、男は「天皇」と同じ日に生まれます。
生家は福島の貧しい農家で、
国民学校を出てすぐ、父母や多くの弟妹のために出稼ぎに出る。
その後ずっと、結婚し子供ができてからさえも、遠隔の地へ出稼ぎに出ている状態で、
家に帰るのはほとんど盆と正月、年2回のみ。
そんな男がはじめて出稼ぎで上野駅に降り立ったのは東京オリンピックの前年。
オリンピック関連施設の工事に携わります。
ドラマ「ひよっこ」を思い出してしまいました。
けれど男は記憶喪失になることも、蒸発することもなく、
地道に稼いでは仕送りを続けます。
長男が生まれたのは奇しくも「皇太子誕生の日」と同じ日。
しかしその長男は若くしてあっけなく命を落としてしまうのです。
男は自分の「不運」を嘆くことしかできません。


物語は、上野公園でホームレスとして彷徨う男のモノローグで語られます。
他のホームレスの生活の様子、
公園を訪れる人の何気ない会話、
そして上野の様々な歴史・・・
そのようなことが語られる合間に男の人生が語られていくのです。
だがしかし、終始地道に出稼ぎを続けていた男が、
なぜ上野に腰を下ろしてホームレスとなったのか。
終盤語られるその事情に胸を突かれます。
日本は高度経済成長を遂げた。
けれども、その流れから取り残されたままの人々もいる・・・ということ。


さらに終盤のあまりにも切ない展開には、絶句するのみ。
男は魂の帰るべき場所まで失ってしまった・・・。
強烈に力のある作品でした。


※「物語の向こうに時代が見える」掲載本
「JR上野駅公園口」柳美里 河出書房新社
図書館蔵書にて(単行本)
満足度★★★★★

ニューヨーク、愛を探して

2017年10月23日 | 映画(な行)
母と娘のドラマ



* * * * * * * * * *

ニューヨークを舞台に、様々な母娘の関係を描く群像劇。
日本未公開。


★女性カメラマン・リグビーは、人気ロックバンドのリーダーにその腕を買われ、
ツアーへの同行を依頼されるのですが、ちょうどそんな時、
不倫関係を解消したばかりの男性の子どもを妊娠していることがわかります・・・。


★下着デザイナーのジョージナは、仕事も順調、恋人ともうまく行っています。
しかしある日届いた1通のメール。
このことで彼女は自らのつらい過去と向き合うことになります。


★母親を亡くしたレベッカ。
しかし実はなくなったのは「祖母」で、
「姉」と呼んでいた人こそが実の母親だったことを聞かされ、愕然とします・・・。


主にこの3人の女性を中心に、交互にストーリーが進展してゆきます。
アメリカ作品では父と息子の関係性がテーマとなることが多いのですが、
母と娘についても色々ありますね。
河合隼雄先生の言によれば、
母性は時には「グレートマザー」として、すべてを飲み込んで死に至らしめる、
というような性格を持つ。
そうしたことの反発で、母と娘がうまくいかなくなることもありがちです。
そして母の「産む」か「産まざるか」という選択の問題もあります。
さらにまた、自分が産んだ子どもを育てられないときの引け目・・・。
女性として生きる上で、娘である立場、母である立場、双方を経験することが多いわけで、
そこには確かに無数のストーリーがありそうです。
そしてそこには正解なんかない。
迷って、悩んで、自分の道を探すしかないのだろうな・・・。

<WOWOW視聴にて>
「ニューヨーク、愛を探して」
2016年/アメリカ/92分
監督:ポール・ダドリッジ
出演:セルマ・ブレア、コートニー・コックス、クリスティーナ・リッチ、スーザン・サランドン、ミラ・ソルビノ

それぞれの人生度★★★★☆
満足度★★★☆☆

「指の骨」高橋弘希

2017年10月22日 | 本(その他)
誰と闘うでもなく、一人また一人と倒れ、くちていく。

指の骨 (新潮文庫)
高橋 弘希
新潮社


* * * * * * * * * *

太平洋戦争中、激戦地となった南洋の島で、
野戦病院に収容された若き兵士は何を見たのか。
圧倒的リアリティで選考委員を驚愕させた第46回新潮新人賞受賞の新世紀戦争文学。


* * * * * * * * * *

34歳、戦争を知らない若い世代が描いた戦争文学。


激戦地の南洋の島、「私」は銃撃を受け、野戦病院に収容されました。
そこにいた期間、わずかに平和な空気が流れます。
がしかし、平和と言っても単に敵が近くにおらず戦闘状態にないというだけ。
同じく重症を負って収容された仲間たちが、
あるものは傷がもとで、
またあるものはマラリアで、得体のしれぬ風土病で、事故で、
あっけなく次々と命を落として行きます。
そして「私」がようやく傷も癒えて包帯の取れたその日、
米軍が攻め込んできて、逃走が始まります。
そこからは飢えとの闘い。
とうに銃も、自決用にと渡された手榴弾も失くしている。

「敵であるはずの米軍機も、頭上を素通りするだけで、
我々は誰と闘うでもなく、一人、また一人と倒れ、くちていく。
これは戦争なのだ、呟きながら歩いた。
これも戦争なのだ。
しかしいくら呟いてみても、その言葉は私に沁みてこなかった。」


描写はリアリティに溢れ、そして目をそむけたくなるようなところもあります。
けれどなんというか、全体に乾いた感じがする。
怨念とか、戦争は悪だとかの心の叫び、慟哭、
・・・何故かそういうどろどろした感じがないのです。
「指の骨」というのは、
亡くなった兵士は焼く手間を惜しんで土葬にするのですが、
遺骨として指を切り落とすのです。
例えばそんな一つの骨を缶か何かに入れて振れば
「カラカラ」と乾いた音を立てることでしょう。
そういう、乾いた感じ。
あまりにも過酷な状況で、悲しみも憎しみも恐怖も、
もう湧いてこないとでも言うような・・・。


内容も去ることながら、
ここまでの過酷な戦地の状況をありありと描き出す著者の力量に唸らせられました。

※「物語の向こうに時代が見える」掲載作品
図書館蔵書(単行本)にて
「指の骨」高橋弘希 新潮社
満足度★★★★☆

サバイバルファミリー

2017年10月21日 | 映画(さ行)
あなたなら、どうする?



* * * * * * * * * *

ある日突然原因不明で電気が消滅。
あらゆる電気製品はもとより、電池さえもその力を失っているので、
交通機関、電話、ガス、水道、時計すらも使えなくなってしまいます。
そんな混乱の中を生き延びようと必死になる、ある家族の物語。


この一家は父・鈴木義之(小日向文世)、母・光恵(深津絵里)、
長男・賢司(泉澤祐希)、長女・結衣(葵わかな)の4人家族。
東京の普通のサラリーマン世帯で、マンション住まい。



早々に問題になるのは、水や食料ですね。
コンビニやスーパーでもまっさきにそれは売り切れる。
第一、レジが使えないのでソロバンで計算しているというのが悲惨。
店頭の品物がキレたらそれっきり。
車が動かないので輸送できず、品物の補充もできないのです。
カードは使えない。
現金のみというのもつらい。
テレビもラジオもない。
情報がない! 
どうしてこんなことになったのか。
いつまで続くのか、それがわからないのが一番つらいですね。
唯一の情報源は人の噂のみ。
一家は大阪方面は電気が通じているとの噂を聞き、
自転車で大阪を目指すことにします。
高速道路を自転車で走るのは気持ちいいけれど、それも最初のみ。
水も食料も尽き疲れ果てていく・・・。



ある時彼らは、このサバイバル生活を楽しんでいる一家と遭遇します。
水の入手方法とか食料の保存方法などを教えてくれます。
以前からキャンプなどでこうした生活の仕方になれているようなのです。
まるでキャンプの延長のように、にこやかで元気な家族。
その一家の父親の、なんと頼もしいこと。





その後、家族は不満が爆発して父親に向かってつい言ってしまうのです。
「偉そうなことばっかり言って、何にもできない!」と。
こんな時のリーダーシップは確かに必要ですよね。
一家を統率する強い父親像。
でも今時こんな父親って、めったにいなさそうですが・・・。

結局大阪も電気は通じておらず、一家は次に鹿児島の妻の実家を目指すことになります。
更に辛く長い旅・・・。
このサバイバルで、家族の絆が強まっていく・・・。



本作はこの家族のサバイバルの物語ですが、
私は、こんな環境に陥った人類の物語を見てみたいなあと思いました。
結局全世界で電気がストップしていたようなのです。
当面は大混乱必死ですが、でも、これはいってみれば江戸時代に戻るようなもの。
電気がなくても、立派に流通は行われ、貨幣経済が成り立って、
それなりの情報網もあった。
人々がどんなふうにして新しい社会を構築していくのか、
そういう壮大なドラマを見てみたいです。
しかし、我が身に置き換えると大変ですよ~。
北海道ではまず暖房がストップして、冬なら凍死者が出るのでは??? 
うちは灯油暖房ですが、電気がなければストーブは使えません。
今やどこでもそういう状況だと思います。
どう考えても都市部は人口が集中しすぎで、水も食料も供給しきれないと思うのです。
餓死者が出るのは必至・・・。
そして人々は地方へ、むしろ過疎地へと拡散していくのでは・・・?
いろいろと考えさせられてしまう物語ですね・・・。
そういう意味で、本作は世界中の危機を甘く見すぎている気もします。


長男は「あ、三男くんだー」と思ってみていましたが、
後で長女が葵わかなさんだったと知りました。
「おてんちゃん」だったんですね。
NHK朝ドラつながり・・・。
この時点で「おてんちゃん」は子役のところだったので、
見ているときには気づきませんでした!

サバイバルファミリー DVD
小日向文世,泉澤祐希,葵わかな,深津絵里
ポニーキャニオン


<J-COMオンデマンドにて>
「サバイバルファミリー」
2017年/日本/117分
監督・脚本:矢口史靖
出演:小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな、時任三郎、藤原紀香

危機感度★★☆☆☆
満足度★★★.5


エルネスト もう一人のゲバラ

2017年10月20日 | 映画(あ行)
知られざる日系人の生き様



* * * * * * * * * *

キューバ革命の英雄チェ・ゲバラと共闘した日系人、フレディ・前村・ウルタードの実話です。



ボリビア出身(彼の両親が日本から移住)で医師を志し、
キューバ国立ハバナ大学へ留学した日系二世のフレディ(オダギリジョー)。
ちょうどそんな時、キューバ危機が起こり、フレディはゲバラと出会います。
危機は米ソ間で、キューバを置き去りにして終結。
キューバにとっては屈辱的な結末でした。
その後、フレディの祖国、ボリビアで軍部によるクーデター勃発。
フレディはゲバラ率いる革命支援隊に志願し、
兵士としてゲリラ戦に身を投じることに・・・。



フレディはゲバラからファーストネームを貰い受け、
「エルネスト・メディコ」という戦士名を名乗ることになります。
人望とリーダーシップがあり志高く、そして医学を学んでいることで、
ゲバラはどこか自分と重なる部分を感じたのでしょう。
フレディにとって、この上ない名誉です。
しかし、どのように志高くても、なかなかその高みに到達するのは難しい・・・、
ゲバラ共々、そういうことなんですね。
でもだからこそ、なんだか私たちにとっては憧れの存在でもある。
こんな日系人の人生があったと知るだけでも意義のある作品だと思います。



冒頭、広島を訪れるゲバラのシーンには驚きました。
ゲバラが平和公園へ行って原爆ドームや原爆資料館を見ている
ということは本作ではじめて知りました。
なぜ日本人はアメリカを憎まないのか・・・と言う彼の言葉。
私も実はどうしてなんだろう・・・?と常々思っているのです。
韓国の方が従軍慰安婦のことに対して執拗とも言えるくらいに、
恨みつらみを忘れずにいるのに・・・。
日本人は「過ちは繰り返しませんから」などと、あたかも自分たちが悪いかのように・・・。
お人好しだなあ・・・。
と、かくいう私も、そのことでアメリカ憎しとは思っていないんですけどね。
ゲバラは、核の脅威にさらされる小国ということで、
日本にシンパシィを感じたのかもしれません。
全編スペイン語のオダギリジョーさんに拍手!!



<ディノスシネマズにて>
「エルネスト もう一人のゲバラ」
2017年/日本・キューバ/124分
監督・脚本:阪本順治
出演:オダギリジョー、永山絢斗、ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、ロベルト・エスピノーサ・セバスコ
歴史発掘度★★★★★
理想と現実のギャップ度★★★★☆
満足度★★★★☆


「スコーレNo.4」宮下奈都

2017年10月19日 | 本(その他)
少女から大人の女性へ

スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下 奈都
光文社


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自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。
そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、
少女から女性へと変わっていく。
そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは…。
ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。


* * * * * * * * * *

少女から女性へと変わっていく、津川麻子の4つの時期を切り取っています。
骨董品店の長女である麻子。
自由奔放で美形の妹にくらべて、自分は特に取り柄もなく、平凡と思っています。


中学時代の初恋のシーンが、笑っちゃうくらいに初々しくてステキです。
野球をしている男子たちに向かって、
麻子の友人が「私が好きなのはあの人」と指をさす。
麻子の目には一人の男の子の姿がまっすぐに飛び込んでくる。
他の子とは全く違ったオーラを放つその男子を、麻子は忘れられない。
でもそれは友人の好きな子・・・。
そんな気持ちを麻子は誰に打ち明けることもできません。
結局儚く終わってしまう初恋、
本人と話をしたのもほんの一言二言だったのですが、
彼を思うときの麻子の幸福な時間。
鮮やかな一編です。


その後、高校、大学と進んでいき、色々な恋もする。
そんな中でも、麻子は自分が何をしたいのかよくわからず、自信もない。
あることからあんなに仲の良かった妹・七葉とも疎遠になっていて・・・。


そして最後の章で、麻子は貿易会社に就職しています。
しかしいきなり輸入靴専門の靴屋に出向。
貿易会社と言っても、もともと興味があったわけではない。
そこで採用されたから入ったという程度のもの。
それにしてもいきなり靴屋はないだろう、と彼女は思う。
靴にさほどの思い入れがあるわけでなし。
ブランド物の靴等にももともと興味はなかった・・・。
興味もなく知識もない。
仕事を親切に教えてくれる人もいない。
そんな中で、麻子は激しく落ち込むのですが・・・。
でも仕事というのはそんなものですよね。
よほどやりたかった仕事につくことができるのはほんの一握り。
多くの人は、今まで興味もなかったところに何の知識もなく放り込まれる。
そこで、仕事をどのように自分にひきつけていくのか、
あるいは自分がどのように歩み寄っていくのか・・・、
そこが大事なのです。


宮下奈都さんは、人の心の襞を手品のようにうまくすくい上げて、
そして美しく表現する方だなあ・・・と思います。
ラスト就職編は、ステキな恋の物語でもある。
初恋に胸をときめかせ、キラキラした瞳を持つ少女が、
仕事を愛する自立した女性に成長しました。
愛すべき物語です。

「スコーレNo.4」宮下奈都 光文社文庫
満足度★★★★☆


ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

2017年10月17日 | 映画(は行)
勇気を持って前へ進め!



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第80回アカデミー賞で短編ドキュメンタリー作品賞を受賞した実話の映画化。
20年以上刑事として働くローレル(ジュリアン・ムーア)は、
ステイシー(エレン・ペイジ)という若い女性と出会い恋に落ちます。
まもなく2人は同性のパートナーとして共に暮らし始めます。
そんなある時、ローレルが病に倒れ、余命わずかということがわかります。
自分の亡き後、ステイシーが遺族年金を受け取れるように、
ローレルは郡に申請を出すのですが、認められません。
けれどあきらめきれず、やがてこの申請は社会的な運動へと拡大していきます。



ローレルは発病するまで職場でも自分が同性愛者であることは秘密にしていました。
長年の仕事の相棒ディーン(マイケル・シャノン)にさえも。
けれど、遺族年金申請のためには秘密にしておくわけにはいきません。
今現在は全米で同性の結婚が認められているそうなのですが、
本作の時点では「パートナー」としての同居までは認められているのですが、
「結婚」とは別とされていたのです。

2人のことを知ったディーンも始めはうろたえ、反発を感じていたのですが、
これまでの刑事としての優秀な仕事ぶりとそのことは何の関係もない、
むしろ友人として彼女を支えるのが当然のことだと考えるようになります。
そして職場内、一般の人々へと思いは広まってゆく。



先日見た「ドリーム」の一幕を思い出しましたよ。
最終的な判断を下すお役所でのこと。

「前例がないからダメだ、ではなくて、
これが記念すべき前例になるのだ、と考えるべきだ。」
という話。

本当にそうですね。
前例がないことを理由にしてはいけませんね。



LGBTの権利というのも、こんなふうな一つ一つの細かな事務的なことを解決しながら
今に至っているのでしょう。
最後に実在のローレルとステイシーの写真が紹介されていましたが、
ホンモノのステイシーはエレン・ペイジよりももっとハンサムボーイ風でした。
ステキ♡です。

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気 [DVD]
ジュリアン・ムーア,エレン・ペイジ,マイケル・シャノン,スティーヴ・カレル
松竹


<WOWOW視聴にて>
「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」
2015年/アメリカ/103分
監督:ピーター・ソレット
出演:ジュリアン・ムーア、エレン・ペイジ、マイケル・シャノン、スティーブ・カレル
勇気度★★★★☆
満足度★★★.5

ナミヤ雑貨店の奇蹟

2017年10月16日 | 映画(な行)
REBORNとともに楽しむ



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2012年、養護施設出身の敦也(山田涼介)、翔太(村上虹郎)、幸平(寛一郎)は、
悪事を働き、一軒の廃屋に逃げ込みます。
そこはかつて人々からの悩み相談を受け付けていた「ナミヤ雑貨店」。
そんなこととは知らない彼らでしたが、深夜、シャッターの郵便受けから何かが投入されます。
それは1980年に書かれたと思われる悩み相談の手紙。
彼らはわけがわからないながら、試しに返事を書いてみますが・・・。
何人かからの相談の手紙と返事のやり取りを続けるうちに、
次第に相談者たちと彼ら3人の育った養護施設「丸光園」とのつながりが見えてくるのです。
この奇蹟の一夜で描かれる時を越えた全体像とは・・・?



私は原作を読んでいたので、映画は後にレンタルでもいいかなあ・・・
と思っていたのですが、山下達郎さんの曲に惹かれて、見てしまいました。
原作についてはこちらを・・・
→「ナミヤ雑貨店の奇蹟」


全体には大筋を捕らえて、うまくまとまっていると思いました。
やはり、テーマ曲「REBORN」がいいですね。
この曲はエンドロールのときだけ出てくるのではなくて、
はじめからしっかりと伏線となって出てくるのです。
はじめの相談者・松岡(林遣都)が作曲した曲として。
作中、何人かがこの曲を口ずさみ、歌います。
でも林遣都さんより、鈴木梨央ちゃんのほうが上手かった気がする・・・。
そしてまた、門脇麦さんの歌。
これが、プロの歌い手さんのような技術はないけれども、でも、さすが女優さん。
しっかりハートが込められていて、結構泣けるのです。
・・・で、本当の最後にいよいよ山下達郎さんの曲。
この曲はラジオなどで何度も聞いていたのですが、
こうしてストーリーと絡めて聞くとまた一段といいものですねえ・・・。
たっぷりとこの作品の世界観の余韻に浸らせていただきました。





ところで、山田涼介さんと村上虹郎さんはおなじみでよく分かるのですが、
もう一人、寛一郎さんというのがわからなかった。
後に調べてみたら、なんと佐藤浩市さんの息子さんなんですね! 
こりゃー、サラブレッドだわ・・・。
そのうちNHKの朝ドラなんかにでてくれば、ぐんと知名度が上がると思います。
きっと、そうなりますよ・・・。

<ディノスシネマズにて>
「ナミヤ雑貨店の奇蹟」
2017年/日本/129分
監督:廣木隆一
原作:東野圭吾
出演:山田涼介、村上虹郎、寛一郎、西田敏行、尾野真千子、成海璃子、門脇麦、林遣都
原作の再現度★★★★☆
音楽との親和度★★★★★
満足度★★★.5

「擬宝珠のある橋 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理

2017年10月15日 | 本(その他)
全編を通じ、高い満足度

髪結い伊三次捕物余話 擬宝珠のある橋
宇江佐 真理
文藝春秋


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宇江佐真理氏がデビュー以来書き続け多くのファンを獲得してきた
「伊三次シリーズ」最終巻。
文庫書下ろしの「月は誰のもの」も収録。

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いよいよ本当に、髪結い伊三次シリーズ最終巻です。
しかも本巻、章立ては3つ。
そして以前文庫描き下ろしとなった「月は誰のもの」が収録されていますが、
そちらはすでに読んでいます。
ということで、ファンにとっては寂しい本となってしまいましたが・・・。


表題「擬宝珠のある橋」では、
蕎麦屋の店を畳んで引退したある老人が、
生きる意欲をなくしすっかり弱ってきてしまった・・・という話を伊三次が耳にします。
人様のことに余計な世話焼きだと思いながらも、
伊三次は老人とその家族の幸せを願わずにいられない。
密かにあるアイデアを関係者に耳打ちしてしまいます。


伊三次ももういい年なんですよね―。
ついそう親しくない人のことでおせっかいを焼いてみたりする。
この巻はもうほとんど「捕物」は関係なくなって、
人情噺に終始しているようです。
けれど実際そういうところがこのシリーズの良さなのです。


最後の「青もみじ」では、
不破龍之進の奥様きいが、ある人のおせっかいを焼こうとする話ですが、
こちらはもう、手のうちようもなく切ないままの終わり方をします。
人生、いつもいつも思い通りには行きません。
それは晩年の宇江佐真理さん自身が痛いほどに感じていたことなのかもしれません・・・。


やはり残念ながら、伊与太と茜のその後については触れられないまま。
でも、こうした何気ない毎日が伊三次たちの上を通り過ぎてゆくのだろうなあ・・・
と思うと、何やらほっとするような気もしますね。


最後に、伊三次とお文さんのいちゃいちゃシーンを。

「お文、だいたい、お前ェも近頃は亭主を亭主とも思っていねェ態度をしている。
もう、おれに惚れていねェんだろ」
「ほ、惚れていねェって・・・」
(お吉)「やめてよ、お父っつぁん、恥ずかしい」
「わかった。おれはお父っつぁんと心から慕ってくれる者をこれから探すわ」
「お前さん。落ち着いて。わっちが悪うござんした。
惚れていないなんて、とんでもない。
わっちはお前さんと会ったときから惚れっぱなしでござんすよ。」
(お吉は「きゃあ!」と言って笑い転げる)



はい、どうもごちそうさまでした。宇江佐真理様。
長く楽しませていただいて、どうもありがとうございました・・・

<図書館蔵書にて>
「擬宝珠のある橋 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理 文藝春秋
満足度・・・全編を通じ、計り知れません。

だれかの木琴

2017年10月14日 | 映画(た行)
主婦の心の虚ろ



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夫・娘とともに新居へ越してきた主婦・小夜子(常盤貴子)。
新しく見つけた美容院で髪を切ります。
その日のうちに、担当の美容師・海斗(池松壮亮)から、
お礼の営業メールが届くのですが、小夜子はそれに返信。
その後も何度もメールを送り、美容院へ頻繁に顔を出し、
ついには海斗の家を突き止めて訪ねてきたりもする。
次第に、ストーカー行為がエスカレートしていく主婦の心の虚ろを描きます。



小夜子は以前見た空き家のことが忘れられません。
誰も居ないはずの家の二階の窓が開いていて、
そこからパラパラとした木琴の音が聞こえてくるのです。
幼女が叩いているような、曲にもならない木琴の音・・・。
それだけでなんだか怖い状況ではありますが・・・・。
小夜子はそれをしているのが自分自身であるような気がしています。
空っぽな部屋で、一人ぼっちで誰かに何かを訴えるように木琴を叩く。
けれどそれは曲にもなっていないので、誰にも届かない・・・。



小夜子は普通に良い生活をしています。
夫は仕事が忙しいけれど家に寄り付かないわけではない。
娘は反抗期の年齢だけれど、普通に学校に通っている。
家はこじんまりとした新築で、セキュリティに守られている。
ふと娘が
「外からの侵入には万全だけど、内側で起きることには対応できないね・・・」
と漏らすのが印象的。



通常はまずまず幸福と言っていい状況ではありながら、なお、小夜子の心は虚ろなのです・・・。
それは妻として、母としての役割ではなく、
自分をただ一人の女性として見てくれる人がいないから。
特に何をやりたいというような、人生の目的がないから・・・。
自分の中でうずく何かを、満たしてくれるものがないから・・・。
まあ、わかる気がします。
そんなところで、自分の髪に丁寧に触れる男性が現れる。
それは完全に仕事上のことなのだけれど、彼女にはそうとは思えない・・・。



池松壮亮くんみたいな美容師が担当してくれるなら、
私だってせっせと通ってしまうかも・・・?!
でもね、やっぱり執拗につきまとい始める小夜子には薄気味悪さが漂います。



さて、その付きまとわれる海斗の方なのですが、
一見ごく良識ある仕事熱心な青年。
よく泊まりに来る彼女もいます。
けれど時折彼がハサミやナイフを手にするシーンがあって、
何かぞくぞくさせられるのです。
本来持っている暴力性を無理に包み込んででもいるかのような・・・。
それは結局爆発することはないのですが、
ちょっと危険な匂いのする男というのもいいですよね。
「MOZU」に出演している池松壮亮さんを東監督が見込んで、
本作に起用したというのに、納得です。
原作を読んでみたくなりました。

<WOWOW視聴にて>

だれかの木琴 [DVD]
常盤貴子,池松壮亮,佐津川愛美,勝村政信
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


「だれかの木琴」
監督・脚本:東陽一
原作:井上荒野
出演:常盤貴子、池松壮亮、佐津川愛美、勝村政信、山田真歩
主婦の虚ろ度★★★★★
満足度★★★★☆