月のように死んで、生まれ変わる
月の満ち欠け | |
佐藤 正午 | |
岩波書店 |
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新たな代表作の誕生!
20年ぶりの書き下ろし
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる
──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか?
三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、
幾重にも織り込まれてゆく。
この数奇なる愛の軌跡よ!
さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。
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先に読んだ、「鳩の撃退法」があまりにも面白くて、
直木賞受賞作である本作も、図書館予約も文庫化も待ちきれなくて、購入してしまいました。
(ただし中古品・・・つくづく最近の私はケチです。)
さて、でも読みはじめてすぐに、「鳩の――」とは文章の雰囲気が異なっていることに気づきました。
もっと、しっとり静かな印象です。
ことの始まりは三角(みすみ)という青年が、
バイトしているレンタルビデオショップの前で人妻の瑠璃と出会うところなのですが、
本作は多少時系列が入れ違っています。
この2人はいつしか愛し合うようになります。
三角は言う。
「瑠璃も玻璃も照らせば光る」という言葉のように、
僕はあなたがどこで生まれ変わっても、すぐにあなただと分かる。
瑠璃はまた、言う。
「月の満ち欠けのように、死んでも何回でも生まれ変わって、あなたと会う」
そんな言葉を交わした少し後に、瑠璃は事故で亡くなってしまうのです・・・。
ということで、本作はこの瑠璃の「満ち欠け」の物語・・・。
うーん、しかし、なんだか私には手放しで感動は出来なかった・・・。
愛し合う2人が引き裂かれたりした時に、
「また互いに生まれ変わっていつの日か必ずまためぐり逢おう・・」
と誓うような物語とか映画は見たことがあり、それはそれで納得がいくのですけれど、
本作、男性側は生き続けてどんどん年をとっていって、
女性側だけ若くして、というよりも幼くして覚醒し、三角と対面を図るも叶わない。
そしてなぜか事故などで命を落とし、次の生まれ変わりにつなげていく・・・。
なんだか無駄に命が失われれていくような気がしてしまう。
・・・第一、小学生の子と中高年の元恋人(?)が巡り合って互いを認めたとして、
どうしようというのか・・・?
この女性側の思いは、見ようによってはストーカーめいてもいて、
なんとも私には受け入れがたいのでした・・・。
三角と瑠璃のはじめての出会いとそれから気持ちが接近していって結ばれるという
一連のシーンはすごく好きでしたが・・・。
これは美しい思い出だけのほうが良かったなあ・・・。
「鳩の撃退法」こそ、直木賞をとるべきでした。
結局、焦って入手しなくても良かったでのす・・・。
「月の満ち欠け」佐藤正午 岩波書店
満足度★★★☆☆