かなわぬ想いこそが至福
* * * * * * * *
先日、「ベルサイユの子」をみて、ギョーム・ドパルデューを知り、
遅まきながら、この作品を見てみました。
遅まきながらといえば、彼は2008年10月に病没しており、まさに手遅れなのですが・・・・。
原作は、文豪オノレ・ド・バルザック。
むろん読んだことなどありませんが、
なるほど、文豪とはこういうことを言うのかと、
恥ずかしながら今さら認識を改めてしまった、この作品であります。
19世紀初頭。
パリの社交界の華、ランジェ公爵夫人は、モンリヴォー将軍に出会います。
恋のゲームのように思わせぶりな言葉やしぐさでモンリヴォーを翻弄する夫人。
モンリヴォーはこれまでに感じたことのない強烈な恋心を彼女に抱くのですが、
夫人は決して一線を越えようとしない。
業を煮やしたモンリヴォーは、その権力にまかせて夫人を拉致。
なんと彼女の額に焼き印を押そうと迫る。
結局それは未然に終わり解放されるのですが、
そこから夫人の情熱が燃えたぎり始めます。
今度は逆に彼女からモンリヴォーに接近をはかるのですが、完全に無視されてしまう・・・。
これは何なのでしょう。
ラブストーリーといってしまうのはあまりにも陳腐。
悲恋・・・?いえ、それも違います。
ともかくこの二人の間には肉体関係はないし、当然そんなシーンもない。
にもかかわらず、この強烈に甘美な官能かげんときたら・・・
情愛の大きなうねりの中で、私たちこそが翻弄されてしまいます。
お互いに求めてやまない二人は、
しかしすれ違い、
ついに彼女は海を経た外国の修道院へ入ってしまうのです。
彼女を捜し求め、やっとそこへたどり着いたモンリヴォー。
戒律の厳しい修道院は面会もまかりならないながら、
ついに鉄格子ごしの対面を果たします。
尼僧姿のランジェ公爵夫人・・・、
これがまたいよいよ手が届かなさそうという感じで、燃えますね。
かなわないとなると余計に心はかき立てられるもの・・・
これはほとんど“M”の物語なのかも知れません。
求めれば求めるほどかなわず、
隔てられ、そして自分からもまた隔てることで思いを強めていく・・・。
そのかなわぬ強い思いこそが至福であるかのような・・・。
蝋燭の仄暗い明かりに照らし出されるなまめかしく白い夫人の肌。
ドレスの艶。
幻想的な彩りで、この不可思議な人の心を浮かび上がらせてくれました。
ほとんど嘆息・・・。
すごい物語があるものです。
2007年/フランス・イタリア/137分
監督:ジャック・リベット
原作:オノレ・ド・バルザック
出演:ジャンヌ・バリバール、ギョーム・ドパルデュー、ミシェル・ピコリ、ビュル・オジエ
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先日、「ベルサイユの子」をみて、ギョーム・ドパルデューを知り、
遅まきながら、この作品を見てみました。
遅まきながらといえば、彼は2008年10月に病没しており、まさに手遅れなのですが・・・・。
原作は、文豪オノレ・ド・バルザック。
むろん読んだことなどありませんが、
なるほど、文豪とはこういうことを言うのかと、
恥ずかしながら今さら認識を改めてしまった、この作品であります。
19世紀初頭。
パリの社交界の華、ランジェ公爵夫人は、モンリヴォー将軍に出会います。
恋のゲームのように思わせぶりな言葉やしぐさでモンリヴォーを翻弄する夫人。
モンリヴォーはこれまでに感じたことのない強烈な恋心を彼女に抱くのですが、
夫人は決して一線を越えようとしない。
業を煮やしたモンリヴォーは、その権力にまかせて夫人を拉致。
なんと彼女の額に焼き印を押そうと迫る。
結局それは未然に終わり解放されるのですが、
そこから夫人の情熱が燃えたぎり始めます。
今度は逆に彼女からモンリヴォーに接近をはかるのですが、完全に無視されてしまう・・・。
これは何なのでしょう。
ラブストーリーといってしまうのはあまりにも陳腐。
悲恋・・・?いえ、それも違います。
ともかくこの二人の間には肉体関係はないし、当然そんなシーンもない。
にもかかわらず、この強烈に甘美な官能かげんときたら・・・
情愛の大きなうねりの中で、私たちこそが翻弄されてしまいます。
お互いに求めてやまない二人は、
しかしすれ違い、
ついに彼女は海を経た外国の修道院へ入ってしまうのです。
彼女を捜し求め、やっとそこへたどり着いたモンリヴォー。
戒律の厳しい修道院は面会もまかりならないながら、
ついに鉄格子ごしの対面を果たします。
尼僧姿のランジェ公爵夫人・・・、
これがまたいよいよ手が届かなさそうという感じで、燃えますね。
かなわないとなると余計に心はかき立てられるもの・・・
これはほとんど“M”の物語なのかも知れません。
求めれば求めるほどかなわず、
隔てられ、そして自分からもまた隔てることで思いを強めていく・・・。
そのかなわぬ強い思いこそが至福であるかのような・・・。
蝋燭の仄暗い明かりに照らし出されるなまめかしく白い夫人の肌。
ドレスの艶。
幻想的な彩りで、この不可思議な人の心を浮かび上がらせてくれました。
ほとんど嘆息・・・。
すごい物語があるものです。
ランジェ公爵夫人 [DVD] | |
ジャック・リヴェット | |
アルバトロス |
2007年/フランス・イタリア/137分
監督:ジャック・リベット
原作:オノレ・ド・バルザック
出演:ジャンヌ・バリバール、ギョーム・ドパルデュー、ミシェル・ピコリ、ビュル・オジエ