映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「イノセント・ゲリラの祝祭 上・下」 海堂 尊

2010年01月31日 | 本(その他)
医療行政にもの申す!

            * * * * * * * *

イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)
海堂 尊
宝島社

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イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)
海堂 尊
宝島社

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トントンと文庫化されるのがうれしい、海堂尊の田口・白鳥シリーズ。
前作はジェネラル・ルージュこと速見医師の活躍が鮮やかでしたが、
今回は医療現場を離れます。
なんと、田口医師が厚生労働省白鳥より呼び出しを受け、
医療事故調査委員会に出席するため、日本権力の中心地、霞ヶ関に乗り込む。

そこで繰り広げられる厚労省官僚、医学教授らの会議は、
それぞれの既得権だけを守ろうとする全く実りのない会議・・・。
医療行政はもう崩壊の一途をたどるしかないのか・・・。
しかしそこへ殴り込みをかけたのが彦根。
彼はほの暗い過去を背負いながら、すさまじいまでの理論で切り込んでゆく。
医療のあり方を根源から考え直し、構築し直す。
著者海堂尊氏のメッセージが熱く語られています。
実際、自民・公明党で「異常死死因究明制度の確立を目指す議員連盟」というものが設置され、
海堂氏がそこで
「Aiセンターは21世紀の日本に必須のシステムである」という講演を行ったとのこと。
しかしこの話は、政権交代のため現在宙に浮いているということで、残念です。
でもこのように熱いメッセージが「フィクション」の形を通してでも広まっていくのは
なかなか意味のあることではないでしょうか。


私は、論議というのは苦手・・・。
考えがスルスルと言葉になって出てきてくれません。
口げんかなんて、すぐ言い負かされてしまって、
後になってからああ言えばよかったんだ、こういうふうに言えばよかったのに
・・・などと悔しい思いをする。
だから、じっくり考えられる文章の方が好きなんですよ。
TVなどでよくやっている政治討論会。
・・・さすが、しゃべるのが商売の方々はすごいですね。
感心してしまいます。
でもそれでさえも、そこまで人をうならせる理論を繰り広げられる方は、そう多くはないですが。


ここに登場する彦根氏には胸のすく思いがします。
この理論展開、切り返しの早さは相当頭がよくないとだめですね。
しかし、あまりにも攻撃的に理論を展開するので、
これでは理論では勝てても人はついてこないでしょう・・・。
まあこの場合、このように爆弾を投げ込むのが主目的なので、それでいいのでしょうけれど。


ということで、大変面白くは読みましたが、私が期待した方向とはちょっと違うような・・・。
どうも私は、先の「ブラック・ペアン」などのように、
白鳥の出てこない医療シリーズの方が好きみたいです。
田口センセは好きなんですが・・・。



ところで、これを読んで「あれ?」と思ったのは、なんだか読んだことがあるような・・・。
というのはたまたまですが、
2008年版「このミステリーがすごい!」に20周年記念寄稿として、
「東京都23区内外殺人事件」という短編が載っていたのです。
私はそれを読んでいたんですね。
この作品はこの短編をまるまる飲み込んで、元の作品の全面改稿という形で文庫化されています。
だから単行本でこの作品を読んだという方も、再度チェックしてみるのもいいと思います。
この短編部分がユーモラスで楽しいのですよ。

満足度★★★☆☆~★★★★☆(3.5ということで・・・)

サイドウェイ

2010年01月29日 | 映画(さ行)
人生時には、寄り道を楽しむべし



              * * * * * * * *

少し前に日本版「サイドウェイズ」をみました。
こちらもそれ以前に見てはいたのですが、記憶も定かでなかったため、もう一度復習です。

小説家を目指しながら国語教師をしているバツイチの中年男、マイルス。
彼が一週間後に結婚を控えた友人ジャックと共に、
カリフォルニアのワイナリー巡りの旅に出るお話。

ジャックは、一週間後に結婚というのに、ナンパに余念がない。
とうとうワイナリーで働くマヤと仲良くなってしまう。
そのように脳天気にはなれないマイルスは、
マヤの友人スティファニーに心惹かれながらも積極的にはなれず、
一人寂しくバーでワインをちびちび・・・。
彼は、仕上げた小説の出版の連絡を待っているところでもあるのですが・・・。



一週間の普段の生活から離れた休日。
そこで、この二人は何を失い、何を見つけるのか。
このストーリーは、ぜひワインを飲みながら楽しみたい・・・と、思ってしまいました。
酸っぱくてちょっぴり苦い、しかし芳醇な大人の休日を味わうために・・・。
そしてまた、いつかこの地ナパバレーを自分でも旅してみたいですね。


日本版とは、思ったより重なる部分が多いです。
どちらもそれぞれの味わいがあります。
人生の寄り道。時にはそれもよし。
非日常を体験し、また日常に戻ってゆく。
それは、日常を生きるための力を取り戻すことであり
また日常の大切さを再認識することでもあるのでしょうね。



2004年/アメリカ/130分
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、バージニア・マドセン、サンドラ・オー、メアリールイーズ・バーク



サイドウェイ(特別編) [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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Dr.パルナサスの鏡

2010年01月28日 | 映画(た行)
欲望の迷宮へようこそ!



              * * * * * * * *

ファンタスティックでありながら、どことなく怖いお話ですね。
人々の心の奥底の欲望を形にするという魔法の鏡“イマジナリウム”。
パルナサス博士は、この鏡を出し物にして旅の一座を組んでいます。
しかし気がかりなのは、
一人娘ヴァレンティナを16歳の誕生日に悪魔に引き渡さなければならないこと。
誕生日まであと3日というときに、トニーという男が一座に加わり、
博士は悪魔と最後の賭をすることに・・・。

何しろストーリーは二の次。
ヒース・レジャーの遺作、ということに惹かれて観たのですね。
この作品の制作中に亡くなったヒース・レジャー。
それで撮影は続行不能になってしまった訳ですが、
ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルという豪華絢爛の助っ人が、
トニー役ヒース・レジャーの後を引き継いだということです。
現実世界のトニーが、ヒース・レジャー。
鏡の向こうの世界のトニーが3人順繰りで出てきます。
それぞれ実に楽しそうで、のびのび演技している感じで、なんだかいいんですよ。








自分の望み、欲望・・・そんな物が形に表された迷宮。
へんてこりんでファンタスティックで夢のような、それぞれの風景。映像。
とても楽しめました。
もっといろいろな人の鏡の中の風景を見てみたかったなあ・・・。
でもそれは、その人の理想の世界かもしれないけれど、
自分の欲望をまざまざと見つめることでもあり、ちょっと怖くないでしょうか・・・?
私だったら、おいしいご馳走やお酒が並んでいたり、
なんてくらいならまだかわいいですが、
お金や宝石の山があったり、ドレスの並木道があったりしたら、ちょっと救いようがない・・・。
それでいうと、トニーは実はとても後ろ暗い本性を持ちながら、
雲に届きそうなたかーい竹馬で、歩くことが一番の幸せ、これが自分の望みだ
・・・と感じるあたり、意外にもすごくピュアだったりするわけです。
そういえば始めの方のクラゲがふわふわしてたのもよかった。
アニメの世界に紛れ込んだみたいな、あの浮遊感もなかなかいいです。




このストーリーは舞台は現代のロンドンなんですよね。
始め、この一座の馬車が出てきたので、ビクトリア朝?と思ってしまいましたが・・・。
博士は1000年も生きているので、感覚が時代遅れで古風なんですよ・・・。
それでこの神秘的かつ本物のミラクルがアピール出来ずに、食い詰めて行き倒れ寸前、
・・・などという皮肉めいた部分もいい。
そこをトニーが現代風にアレンジして、人を集めるようになっていく。
悪人なんだか、善人なんだか、とりとめのないヒース・レジャー。
この「鏡」というよりは「万華鏡」みたいな世界に、よくマッチしています。
なにより彼がなんだか楽しそうで、これが遺作でよかったなあ・・・と思います。
「ダークナイト」の「ジョーカー」は独壇場ですばらしかったですが、
ちょっとつらい感じがする。
このいたずらめいた夢のようなイマジネーション。
そして、図らずも友情共演となった豪華メンバー。
まさに花道を飾りました。

なんだか記念に手元に置いておきたい感じのする作品・・・。


2009年/イギリス・カナダ/124分
監督:テリー・ギリアム
出演:ヒース・レジャー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル、リリー・コール

「まほろ駅前番外地」 三浦しをん 

2010年01月27日 | 本(その他)
まほろ駅前番外地
三浦 しをん
文藝春秋

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さて続きです。
相変わらず、多田の事務所に居候している行天。
この2人のところに高校の同窓会の通知が舞い込んだ。
行く気がなかった多田ですが、商売の宣伝になるかも・・・と思い直し行ってみる気に。
ついでに行天も誘えば、彼は完全拒否!
このことで、険悪になってしまう2人。
・・・とこのようなゆるーいストーリー運びを背景に、
今回は、前巻で出てきた様々な人たちが主役のミニストーリー集になっています。
星、曽根田のばあちゃん、由良、岡老婦人。


戦後まもなく、若かりし頃の曽根田のばあちゃんのロマンス。
いいですねえ。
柳沢教授の「青年篇」を見るような感じでしたね。
今とは別人のようにきれいで青春ど真ん中・・・。
古いセピア色の写真を見るような。
誰もがこうして年をとるんですねえ。

由良少年の冒険もいいですよ。
心ならずも行天に引き回される由良君の一日。
相変わらず行天はホンモノの少年よりも子供のよう。
私は少年の出てくるストーリーがやっぱり好きなんですよ~。

ここのストーリーを見ているうちに、また少し行天の奇行が見えてきて、
そしてその根っこを知りたくなる。
彼の抱えるトラウマは決して解消されてはいないのです。
どうもこの本を見る限り、まだ語り尽くされない部分があるようで、
続きがありそうな感じですね・・・。
密かに期待していよう。


ただ一つ不満なのは、この本のカバー写真。
前巻ではリンゴがタバコをくわえている。
今巻では急須がタバコを・・・。
意図はわかりますよ。
多田・行天コンビはタバコ好き。
私は別に嫌煙権論者ではありませんが、
リンゴとか急須とか、「食べ物に関連するものとタバコ」の構図がどうも気になっちゃうのです。
私としては、これがどうにも残念。

まあとにかく、内容は問題ありません!
ただし、前巻から先に読む方がいいと思います。

満足度★★★★★

「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん 

2010年01月26日 | 本(その他)
まほろ駅前多田便利軒
三浦 しをん
文藝春秋

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第135回直木賞受賞作であるこの本。
以前に読んだのですが、このたびこの続巻が出ていまして、
再度、始めから読み直してみました。


庭掃除に、老人の見舞い等々、ほそぼそと便利屋を営む多田。
そんな彼のところに、高校時代の同級生行天(ぎょうてん)が居候として居着いてしまう。

この行天を一言で言えば変人。
しかし、愛すべき変人であります。
そもそも、この2人は同級であったというだけで、ちっとも親しかったわけではないのです。
何故か行天は、当時全く言葉を発したことがなかった。
ただ一度発したのは「痛い!」のひとこと。
これは聞くだけでも青ざめる教室内の事故による怪我だったのですが・・・・。
密かにその怪我の責任を感じている多田は、
行き場のない行天をやむなく彼の事務所件住居に居候させることに。


いろいろな便利屋の仕事をするうちに、
事件に巻き込まれたり、様々な人との交流が生まれたり。
そして行天のまさに仰天するような結婚生活の秘密が明らかに。
次第に彼の謎の性格とそうなってしまった原因の一端がわかってきます。

とんでもないお荷物。
厄介者。
友人とも呼べない関係・・・。
行天をそのように認識していた多田ですが、
いつの間にか彼の生活に行天の存在が溶け込んでくる。
多田自身も結婚に失敗した過去があり、その傷を引きずったまま過ごしていたのです。


作品中、家族と「血」に関わるストーリーがありまして、
ここがこの本の核になるのだと思います。
家族=血のつながり=癒し合い助け合うもの。
無意識のうちに私たちにはこういう構図があります。
けれども、考えてみれば便利屋の仕事は、その家族に頼れない部分の埋め合わせなのです。
自分の親の見舞い。
子供の塾の送り迎え。
現代においては前記構図は崩壊寸前。
そもそも、血のつながりが癒し合い助け合いを約束するものだというのも幻想なのではないか。
だったら始めから単に人と人としてのつながりの中に、それを求める方がいい。

子供に見放された老母。
親に放置されている小学生。
麻薬の売人。
風俗のオネーサンたち。
なかなか殺伐とした状況の登場人物たちでありながら、
それぞれが愛すべき人たちで、なんだか心が温まってくる。
はい、二度目でも十分に楽しく読み応えのある作品でした。
まずは行天の変人ぶりをお楽しみください。
・・・でも、きっと彼が好きになりますよ。
思うに、行天は子犬みたいなもんですね。
何となく多田になついてくっついてきちゃった。
無口で無邪気。
かと思えば人の思惑無視でとんでもないことをやらかす。
でも、悪びれずけろっとしていて・・・。
こちらの心の奥底まで見えているくせに、気づかないふり。
実に興味深い存在なのでした。

※番外編へつづきます!

満足度★★★★★


ショーシャンクの空に

2010年01月24日 | 映画(さ行)
リタ・ヘイワースだけが知っているアンディの「光」



              * * * * * * * *

この作品は好きという方が多いですね。
私も大好きです。
大好きついでにまた見てしまいました。

無実の罪で無期懲役として刑務所に収監されてしまったアンディ。
彼は元銀行の副頭取。
理知的で思いやりに満ちた彼は次第に周囲の人望を集めては行くけれども、所詮は囚人。
親切心で始めた刑務所経理の手伝いは、逆に汚職の手伝いになってしまう。
次第に生きる希望もなくした様に思われるのですが・・・。


この作品の語り手、モーガン・フリーマンの渋みが何ともいえませんね。
この作品を見て、ファンになったという方は多いのではないかと思います。

また、何十年もの服役ののちに仮釈放となる老人のエピソードが切ないです。
彼はすっかり刑務所内でしか生きることができなくなってしまっているのです。
社会に出ることが恐ろしい。
一般社会では、受刑者は白い目で見られるし、もう年もとっていて迎えてくれる家族もなし。
かろうじて住むところや仕事は世話をしてもらえるのですが、
それでも孤独と不安感で、とうとう自殺してしまう。
刑務所では、初めのうちは塀に自由を奪われていることに憎しみを感じるけれども、
次第に塀に囲まれていることが安心感になってゆく。
突然外へ放り出されると怖いのです。
こういうことが、なんだかリアルに感じられました。

そうしてこのまま行けば、アンディもそうなってしまっていたのかもしれない。
こういう閉塞感が、最後に驚きと感動につつまれる。
この映画の作りがとてもうまいですよね。
最後のどんでん返しまで、私たちにもアンディの「希望の種」のことを知らせない。
確かに伏線はあったのですけれど。


刑務所の中でなくても、
生きていくためには何かほんの小さなことでも、「希望」が無ければだめなんだなあ・・・。
そして、きちんと自分を支えてくれる友人も。


これはスティーブン・キング「刑務所のリタ・ヘイワース」が原作。
なるほど、元々の原作の勝利だったんですね。
たしかに、アンディの秘密は、彼の独房に張られたリタ・ヘイワースのポスターだけが知っていた訳ですから。

ずっと、塀の中の灰色の光景ばかりだったので、
ラストの真っ青な海辺の情景が目にしみます・・・!

1994年/アメリカ/143分
監督・脚本:フランク・ダラボン
出演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、ウィリアム・サドラー



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ワーナー・ホーム・ビデオ

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センチメンタル・アドベンチャー

2010年01月23日 | クリント・イーストウッド
ギターを抱えた子連れ渡り鳥

              * * * * * * * *

カントリー歌手を目指してナッシュビルのグランド・オール・オープリーのオーディションを受けようとする男のストーリーです。
この男、レッド(クリント・イーストウッド)は、酒場で歌を歌って稼いでいますが、
どうも持病を持っているようなんだよね・・・。
そして、自堕落で大酒飲み。
オーディションには、彼の甥ホイット(カイル・イーストウッド)もついて行くことに。
・・・というか、このホイットはまだ子供なんだけど、
よほどレッドよりしっかりしていて運転がうまいんだよね。もちろん無免許だし。
そこに、ホイットの祖父が生まれ故郷に帰って暮らしたいから、一緒に連れて行ってくれと、同行することになるんだね。
少年とギター弾きと老人のロードムービーの始まり始まり~。


ところで、名前を見て気づくと思うけれど、この少年、カイル・イーストウッドはクリント・イーストウッドの息子なんだね。
はい、彼は現在、ジャズミュージシャンとして活躍中。
その傍ら、時折映画にも出演していますね。
最近では、「夏時間の庭」とか・・・。
え~。それ見たけど気づいていなかったな。
この映画では、かわいくて利発そうな子だよね。
そう、主役はこの子の様にも思えるくらい。
うーん、イーストウッドって、結構親バカ・・・。
この作品では、イーストウッドがギター弾いて歌うシーンがたくさん。
おまけに、自分の子供の起用ということで、なんというか・・・。
自己宣伝たっぷりっていう気がしてしまうのね・・・。
そうだね、イーストウッドファンなら垂涎もの・・・かもしれないんだけれど。
いや、私も十分ファンのつもりだけれど、これではさすがに鼻につくかな・・・。
ストーリー自体は悪くないと思うんだけどね。
うん、結構ひなびた味出てるし、この少年も魅力あるよ。
何かの解説に
“この作品は人気が出なかったけれど、後年の「バード」を予告する佳作”
とあったよ。
うーん、では、その「バード」に期待することにしましょう。


ところで、この作品の原題は“Honkytonk Man”なんだけど、
邦題「センチメンタル・アドベンチャー」はひどいよね。
はい、これでは全然、内容の雰囲気を伝えてくれません。
やすっぽいアドベンチャー映画だと思ってしまう。
そのままだと、日本では意味が伝わりにくいのも確かかなあ・・・
題名は難しいね・・・。

で、結局さほどのオススメ作ではない?
いや、やはりイーストウッドの歌を聴きたいとか、
カイル・イーストウッドに興味があるという人ならいいんじゃないですかー。
そういう意味では価値がある。



←カエル・イーストウッド・・・なんちゃって。


1982年/アメリカ/124分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、カイル・イーストウッド、ジョン・マッキンタイア、ヴァーナ・ブルーム



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「Another」 綾辻行人 

2010年01月22日 | 本(ホラー)
Another
綾辻 行人
角川書店(角川グループパブリッシング)

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綾辻行人新作。このボリュームに、わくわくしてしまいますね。
著者は本格推理の作家として名を馳せていますが、ホラー系も多いですね。


夜見山北中の3年3組には不可解な言い伝えがある。
何も知らずにそのクラスに転校してきた榊原恒一は、
ある不思議な存在感を持つ少女に興味を覚える。
しかし、クラスの他のものにはその少女が見えていない様なのだが・・・。
そんな中、クラス委員長の少女が悲惨な死を遂げる。
でもそれは、後の謎と恐怖のほんの幕開けにしか過ぎなかった。


学校の七不思議とはよく耳にしますが、
これはそのスケールをさらに押し広げたものになっています。
夜見山というここの地名は「黄泉」につながっている・・・。
死にとても近いのです。
うう・・・、いやな設定ですよね~。

ことの始まりは26年前。
3年3組のある生徒が急死。
ショックを受けたクラスメイトの1人が、
「いや、死んでなんかいないよ。ほら、ちゃんとそこにいる。」
・・・と言ったことに端を発して、
クラスの皆はまるで本当にそこに本人がいるようにふるまって一年間を過ごし、
卒業したのだという。
そして、その卒業の集合写真の中には、
くっきりと亡くなったその生徒が一緒に写っていた・・・。

黄泉の世界との通路ができたとでも言うのでしょうか・・・。
それ以来、この学校の3年3組に時折降りかかる災難。
"それ"が始まった年には、3組の生徒やその家族に死者が続出するという、
これは単に『伝説』と言ってすませられない恐怖。
恒一は、この恐怖とどのように向き合って行くのか。
この年の「余計な1人」とはいったい誰なのか・・・。


このボリュームにもかかわらず、どんどん読まされてしまいます。
地下の人形館の中で突然出くわす、少女。
・・・いやあ、ドキドキしますね。
これは「呪い」というよりは、「現象」なのだという。
もうすでに人智の及ばない怪異・・・。
けれども、ここはさすが推理作家、理論の通るところは通す。
そして何より、作者が私たちに仕掛けた罠もちゃんとあって、
本格推理ファンも納得・満足の仕上がりとなっています。


さて、読後に考えてみれば、この現象は、とりあえずこのたびの決着はついたわけですが、
すべてが終わった訳ではないですね。
新年度の新しい3年3組では、また同じことが起こる可能性がある・・・。
いや、対処方法はわかっているのです。
・・・でも、本当にそれをするのでしょうか? 
考えるとこれも怖いです・・・・。
この学校は早く廃校にした方がいい。
あ、生徒数の減少で2組までになっちゃったと言うのが一番の解決策かな。
ま、余計なお世話ですが。

満足度★★★★★

よなよなペンギン

2010年01月21日 | 映画(や行)
飛べ、飛ぶんだっ、ペンギン!!



* * * * * * * *

“よなよな”・・・だったっけ、“なよなよ”だったっけ・・・?
映画のPRを見ただけでは記憶が定まらなかったのですが、
映画を見れば一目瞭然でした。
主人公の少女ココが、ペンギンの着ぐるみコートをきて、夜な夜な散歩をする。
だから“よなよなペンギン”ですね。


この作品、実はちょうど時間が空いて、よしこの隙に一つ映画が見られる!と思ったのですが、
年末年始で見たいものは結構見てしまっていました。
他に見たいと思っていたものは時間が合わず、
たまたま時間の都合がいいから、というだけで見たんですが・・・。
こんな完璧子供向け作品は久しぶりかな?
小さな子がいっぱい。
しかもほとんど女の子ですね。
そりゃそうですね。
お孫さん連れのおばあちゃんも多かった。
我が家の昔を思い出しました。
うちの娘たちを引き連れて、よく私の母も映画に行っていたなあ・・・。
ドラえもんとか、ドラゴンボール・・・。
なんだか周りの雰囲気もほのぼのしたところで映画が始まる。
予告編は、普段私が見るところでは全くお目にかからないお子様向けアニメ作品ばかり。
ひゃ~、なんだかこういうのも新鮮ですねー。


さてさて、本題。
CGアニメですね。
ペンギン少女ココが、ゴブリンの少年チャリーに導かれ、ゴブリン村に行きます。
そこは小さな平和な村だったのですが、
今まさに闇の帝王ブッカ・ブーの魔の手が迫っている。
その手先ザミーの意地悪に困らされている村人たち。
その村人たちが、ココを見るなり口々に叫ぶのです。
「勇者“飛べない鳥”が我らを救う!」
伝説の勇者に間違えられたココですが・・・・・・・・・。



少女の異世界冒険ファンタジー。
ブッカ・ブーの手先と思われたザミーが実は・・・というひねりがある以外は、
まあ普通に楽しいファンタジーで、やはり子供向けですね。
大人を感動させるにはちょっと物足りない。
ただ、この映像は美しく、まさにファンタジックです。
よなよな・・・というだけあって、シーンは終始夜なのです。
全体的に沈んだ色調の中で、明かりに照らされた部分のあでやかさ、まぶしさが強調される。
ラストに黄金に光り輝く龍が登場しますが、この神々しさがいっそう強調され、
すばらしい効果を上げていました。
ヨーロッパ調の街並みでありながら、七福神が乗る光り輝く宝船、こういう和風テイストもいい。


北海道旭川の旭山水族館では、水中を泳ぐペンギンがまるで空を飛ぶように見えます。
そうしてみると、このふしぎワールドでは空気が水のように濃密で、
もしかするとペンギンが空を切って飛ぶこともあるかもしれない・・・
まさにそういう飛び方なんだなあ・・・。
ぱたぱた羽ばたくのではなく。

ほんのひとときですが、私も童心に返りファンタジー世界に浸らせてもらいました。




2009年/日本・フランス/88分
監督:りんたろう
声:森迫永依、田中麗奈、太田光、田中裕二

「山へ行く/シリーズここではない★どこか1」 萩尾望都

2010年01月19日 | コミックス
山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)
萩尾 望都
小学館

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さて、順不同になってしまったのですが、
萩尾望都短編シリーズ「ここではない★どこか」の第一弾です。
今更気づいたのですが、このシリーズ、小説家の生方(うぶかた)氏がよく登場します。

この冒頭が表題の「山へ行く」ですが、ここで、生方氏が初登場。
特別な事件があるわけではありません。
彼は朝起きるなり、「そうだ、今日は山へ行こう」と思いつきます。
ハイキング程度の近所の山なのですが、とにかく山の麓まで自転車で出かけた生方氏。
ところが、妻と娘・息子からいろいろ連絡が入ったり、用事を頼まれたり。
編集者とばったり会って仕事を押しつけられたり。
日常の雑事がいつにもまして吸い寄せられてくる。

山が薄れていく・・・、
山に行けるんだろうか・・・
行くんだ。
山の静寂・・・
山のにおい・・・・・

しかし、結局山には行けずじまい。
夕方家に帰れば奥さんに
「お父さん!おトーフは?」
「あっ・・・・忘れた」
「あーあ!」
「・・・・今日は忙しくて・・・・・」
「なにもしてないじゃない」
という具合。
それでも彼は、
いつか山に入って山の空気を吸って山にとけて、
すっかり人間を忘れるひとときを手に入れよう・・・・・・・と思う。

こういうストーリーなんですけどね。
しかし、これって私にはすごく幸せな状況と思えるわけです。
賑やかな家族、近所の人、仕事関係の人、
そういう人とのつながりがしっかりあって、
忙しい忙しいとつぶやいて、
しかし理想はやや棚上げ・・・。
だけどこれって望みうる最高の幸福なんですよね。
誰もいない山の静寂。
それもいいけれど、人の中に自分の居場所がきちんとあること。
これは生きていく上ではとても大切です。


次の「宇宙船運転免許証」もいいですよ。
この生方氏のところに宇宙船運転免許証の更新のお知らせが届く。
宇宙船の、「運転」というところが、何とも微笑ましいのですが。
生方氏と今は亡き弟の少年時代、この免許証をもらった記憶がある。
30年が期限切れなので更新の手続きにくるようにとの通知・・・。
信じられないことだけれども・・・。
不思議なテイストの一篇ですね。


時には人生の深みに切り込み、
時にはSFチック、そしてまた時には怪談めいて・・・
自由自在のストーリー展開。
やはりこれは1・2巻とも読んでみるべきですね。

満足度★★★★☆

それでも恋するバルセロナ

2010年01月18日 | 映画(さ行)
サルでも恋するバルセロナ・・・?!



              * * * * * * * *

夏のバカンスでバルセロナを訪れた
クリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)とビッキー(レベッカ・ホール)。
クリスティーナは自由奔放、危険な恋を求めるタイプ。
一方ビッキーは、良識的で、安定した恋を求めるタイプで、すでに婚約者もいる。
こんな二人がバルセロナで出会ったのは、
危険な香りのするセクシーな画家、フアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)。
クリスティーナはともかく、ビッキーまでもがずるずると彼に惹かれてゆくのですが、
そこに現れたのが、彼の元妻マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)。
三角やら四角やら、わからぬほどに恋の糸はもつれにもつれて・・・。
色恋沙汰の苦みや渋みをウッディ・アレンが軽やかに描き出します。



これは下手をするとどろどろになりそうなところですが、軽いのがいいんです。
所詮色恋沙汰、人生の彩り。
大いに恋しなさい。
・・・というのはまさにこの作品中のフアン・アントニオの信条のようにも思えます。
全く節操が無いのですが、
ここまで突き抜けると、まあ、これもいいかという気になってしまいますね。
通常のモラルなど、吹き飛んでしまいそう・・・。
まあ、だからといって現実は現実。
第一そう簡単に、危険な恋のネタなど転がっていそうにありません。
けれど、ちょっぴりあこがれたりはしないわけでもないかな・・・?
そういう女心をうまくくすぐっている訳ですね。


さて、ハビエル・バルデム、恐るべしです・・・。
あの「ノーカントリー」の殺し屋役から、どうしてこの役を想像できるでしょう・・・。
確かに、危険な香りのセクシー男・・・。
同一人物とは思いがたい。
俳優ってすごいですね。
そして、この作品ではペネロペ・クルスがなんといっても光っています。
この情熱の人には思わず目が吸い付けられてしまう。
彼女と比べると、スカーレット・ヨハンソンすらかすんでしまい、
彼女が自由奔放な女性などには見えなくなってくる。



皆さん、黒髪は結構セールス・ポイントですよ!
豪華キャストというのは、俳優にとってはリスクが大きいですね。
下手をすると誰かに食われてしまう・・・。


夏。バカンス。バルセロナ。
この舞台が、誘惑の危険な香りをたっぷり醸し出しているのでした。
誰もが恋に落ちてしまいそう。

2008年/アメリカ・スペイン/96分
監督・脚本:ウッディ・アレン
出演:スカーレット・ヨハンソン、ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、レベッカ・ホール



それでも恋するバルセロナ [DVD]

角川エンタテインメント

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「スカーペッタ 上・下」 パトリシア・コーンウェル 

2010年01月17日 | 本(ミステリ)
スカーペッタ〈上〉 (講談社文庫)
パトリシア コーンウェル
講談社

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スカーペッタ〈下〉 (講談社文庫)
パトリシア コーンウェル
講談社

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おまちかね検屍官シリーズの最新刊です。
題名はそのものずばり、スカーペッタ。
このシリーズの第16弾です。
一番始めの「検屍官」が出たのが1990年ということで、もう20年も前なんですね。
ストーリーの舞台も時代と共に流れ、
始めの頃まだ幼かった姪のルーシーはすっかり大人になり(しかもやや問題あり!)、
スカーペッタの所属も転々とし、
ベントンの関係もとうとう結婚までこぎ着けた。
こういうことには実に感慨深いものがあります。

今回も、非常に現代を反映した問題がテーマとなっていまして、
それはインターネットなのです。
"ゴッサム・ガッチャ"というインターネット・サイトに載せられたスカーペッタの中傷記事。
これがのちに事件にも大きく関わってきます。
恋人殺しの疑惑がかかる青年から、スカーペッタに指名がかかります。
「僕は殺していない。自分の理解者にしか話はしない。」

この殺された彼女のパソコンを調べると、
頻繁にスカーペッタとメールのやりとりをしていた形跡がある。
しかも、そのスカーペッタからのメール文に次第に悪意が感じられる様になっている。
しかし、そのメール文も彼女のことも、スカーペッタには全く身に覚えのないこと。
誰かがスカーペッタを陥れようとしたとしか思えないのだが・・・。
ここではICTの天才ルーシーがいて、とても心強い。
削除済みのファイルからもとの文章を復元するなんて朝飯前。
メールの差出人を特定してゆくなどというプロセスは、私など読んでさえよくわかりません・・・。

こういうITがらみの事件は、実際にありそうでなんだかコワイですね。
全くの他人がいつの間にか自分になりすます・・・。
あずかり知らないところで、自分が陥れられる・・・。
ネット上の顔はどのようにでも繕える。
こういうリスクの可能性もあるということですね。
さて、そうして特定されてゆく、意外な真犯人とは???


・・・と、いつものように事件の行方も興味深いのですが、
さらにスカーペッタを取り巻く人物関係から目が離せません。
前回、長年スカーペッタの相棒というか助手的存在であったピート・マリーノが
とんでもない暴挙に出ました。
この巻では、それが後を引いてずっと音信不通であった彼らが、
この事件に関わることにより再会することになります。
本人たちも周りも、非常にナーバスになりながら、ぎこちなく以前の関係を取り戻してゆく。
でも、なんだかほっとします。
それで今更気づいたのですが、たぶん私、マリーノが好きなんですよね。
この物語のスカーペッタも、ベントンも、ルーシーもかっこよすぎます。
ルーシーの素行は若干問題ありですが、頭脳的にも肉体的にも理想的なのが彼ら。
ところがマリーノはかっこわるいのです。
飲み過ぎ食べ過ぎ、女房には逃げられ・・・。
ただし、事件の捜査は真摯でキレもある。
だからこそここまでスカーペッタと共にやってこられたわけですが。
こんなところが妙に親しみやすくて、憎めない。
だから、この巻できちんと復帰したマリーノにほっと胸をなでおろすのでした。

また、結婚によって逆に距離が開いてしまった感のあるスカーペッタとベントンの今後は・・・? 

まだまだこれからも目が離せそうもありません。

満足度★★★★★

ヴィクトリア女王/世紀の愛

2010年01月16日 | 映画(は行)
輝かしいヴィクトリア朝の歴史の中で



            * * * * * * * *

1837年にイングランド女王に即位したヴィクトリア女王。
その若き日々を描いた作品です。
それから1901年に彼女が亡くなるまでは、ヴィクトリア朝とよばれ、
イギリスが世界に向けてその国力を最も発揮した時代といえるでしょう。
ベルギー王の甥であり、彼女のいとこでもあるアルバートは、
叔父の命によりヴィクトリアの夫の座を狙って接近するのですが、
出会うなり真の愛情に目覚めることになる。



誰もがあこがれる王位ではありながら、
母親との確執、政治家とのかけ引きなど周囲の重圧にくじけそうになることも・・・。
そのようなものから彼女を守ろうとするアルバートは、
その姿形同様にハートもかっこいいのでした・・・。
落ち着いた色調の美しい映画ですが、
私はアルバートの魅力以外にはさほど感動・・・と言うべきところがなかったような。





むしろ私はこの時代に興味があります。
産業革命による経済の発展、その成熟期。
資本家と労働者、その階層がくっきりと分かれた時代であったでしょう。
イギリスがアフリカやアジアに植民地をどんどん広げていった時代でもあります。
議会政治と王制が平行しているのは今も同じですが、
現代への歴史につながる多くの要素を持つこの頃のイギリス。
もっと庶民からの視点のヴィクトリア女王ストーリーを見たかったですね。


ちなみにこの時期のトピックス・・・
1851年 ロンドン万国博覧会
1859年 ダーウィン 種の起源説 発表
1888年 切り裂きジャック事件

この頃活躍した作家・・・
コナン・ドイル、オスカー・ワイルド、
ルイス・キャロル、
シャーロット・ブロンテ、エミリー・ブロンテ

なんだか身近なものばかりで親しみがわきますね。
日本だと明治維新前後・・・。
今また人気上昇中の坂本龍馬が1836年生まれなので、同年代を生きていたということか。

脱線しすぎでごめんなさい。
今回はヴィクトリアの人生よりも歴史にロマンを感じてしまいました。


2009年/イギリス・アメリカ/100分
監督:ジャン・マルク・バレ
制作:マーティン・スコセッシ
出演:エミリー・ブラント、ルパート・フレンド、ポール・ベタニー、ミランダ・リチャードソン

シャッフル

2010年01月14日 | 映画(さ行)
シャッフルされた一週間。夫を救うことはできるのか?



           * * * * * * * *

主婦リンダ(サンドラ・ブロック)は、夫と二人の女の子のいる4人家族。
夫との関係は冷め果てているけれど、まあ、平凡な毎日。
そんなある日、夫が交通事故で死んだとの知らせが・・・。
あまりに突然のことで、呆然とするばかりのリンダ。
そして一夜が明ける。
なんとそこには何事もなかったように夫がいて、日常の朝。
悪い夢を見ていたのだろうか・・・。


一夜が明け、リンダが目覚めるたびに、周囲の状況が変わってしまっている。
そんなことが繰り返されます。
リンダは気がつくのです。
これは一週間が順不同で並んでいる。
一日ずつ、シャッフルされて体験しているのだと・・・。
娘がけがをしたのが火曜日。
夫の事故死の知らせを受けたのは木曜日
・・・連絡が遅れて事故は前日にあったと言っていた・・・。
葬儀があったのが土曜日。
事故があったのは、まだ体験していない水曜日・・・?

何とか夫がこの事故に遭わないようにすることはできないだろうか・・・。
リンダは考えます。

この夫婦は相当関係が冷え切っていたのですが、
夫を亡くしてて初めて知るその大切さ。
彼女は残されたわずかな日々で、夫との関係も修復していくのです。
さて、その運命の水曜日は・・・・。


スリリングな展開で、目が離せないのですが、
この結末には納得できないものが残りますね。
これでは何もしない方がよかったのではないか・・・???
結局、リンダが夫を殺してしまったようなものではないか・・・。

うーん、これは何もしなければまた違った状況で事故が起きたに違いない。
それが運命というもので、
夫の死は、どうしても避けることはできなかったのだ・・・と、
そう思うことにしましょう。
夫が残した、留守電のメッセージの意味。
これがちょっと感動的でした。

2007年/アメリカ/96分
監督:メナン・ヤポ
出演:サンドラ・ブロック、ジュリアン・マクマホン、ニア・ロング、ケイト・ネリガン



シャッフル [DVD]

クロックワークス

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ミラーズ

2010年01月13日 | 映画(ま行)
鏡の中から誰かがあなたを見つめている



          * * * * * * * *

もと刑事のベンは、火災で廃屋と化したデパートの夜警として勤めることになりました。
非常に大きな火災で、死者も多数出たというその場所。
あたりには、焼け焦げたマネキンなどがまだのこっている。
そこを夜一人で廻るのはただでさえ薄気味悪く怖いのですが、
ホールになぜか焼け残った巨大な鏡があって、
夜中にその前を通るのは、かなり不気味。
あるとき、その中にベンは焼けただれていく人々の像を見る。
鏡に意志があるのか、それとも鏡の向こう側にいる何物かの意志なのか・・・。
原因不明の死亡事故が起き、やがてそれはベンの家族にまで影響を及ぼしてゆく。


キーファー・サザーランドが、果敢に鏡の悪意あるメッセージの謎を読み取り、
行動してゆくサスペンスホラー。
この作品は韓国映画「Mirror 鏡の中」のリメイク。
モトのものの方が怖そうな気がしますが・・・。


ここでは鏡だけでなく、水面や窓ガラス、
あらゆる鏡面が怪しい世界と通じています。

あなたが鏡に向かって身繕いをする。
その鏡から離れたときに、あなたの顔がそこに残っていて、
じっとあなたを見つめている。
・・・うう、怖いです。
鏡の中の自分が勝手に動き出し、自分を傷つければ、
現実の自分は何もしないのに傷がついていく。
こんな殺人方法は、初めてですねえ・・・。


子供の頃、手鏡を目のすぐ下に持ってきてよく遊びました。
天井が写っています。
そのまま、立ち上がって歩いてみる。
まるで天井を逆立ちして歩いているような、不思議な感覚。
非日常のスリル。
鏡の中には、何か理解しがたい不思議な世界がある・・・。
そしてまた、鏡にまつわる怪談って多いですよね。
なにかしら、そのような刷り込みが私の中にあって、夜の鏡は苦手・・・。
そんなところへ持って、このストーリーを観てしまったので、
またちょっと、鏡をのぞくのが怖くなってしまいました。


このデパートは、それ以前は病院であったという設定がまた怖くて、
けれどつまり、
この怪異はそのあたりに原因があるということなんですね・・・。
ラスト、ベンがとにかく生還を遂げたと思ったのですが、
そこで私たちは思いがけなくまた大きな謎の世界に投げ出されます。
くわばらくわばら・・・。

2008年/アメリカ
監督:アレキサンドル・アジャ
出演:キーファー・サザーランド、ポーラ・パットン、エイミー・スマート


ミラーズ (完全版) [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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