どことなく鄙びた味のある正統派SF

* * * * * * * *
地球上の燃料を使い果たしてしまった未来。
月の裏側でヘリウム3という画期的な燃料が発見され、
その採取のために、たった一人赴任した男、サム。
彼は3年間の契約で孤独に耐えながら仕事を続けている。
話し相手はロボットのガーティだけ。
地球との交信は不調なので、
地球にいる妻と子供からのビデオレターを何度も繰り返し見ている。
でも、いよいよあと2週間で3年め。
次の要員と交代できる。
しかし、何故かこのところ頭痛がして集中力低下、幻覚が見えたりする。
そのため、事故を起こし倒れてしまうが、
かろうじて助け出されたようで、気がついたのは診察室のベッドの上。
そして、ベッドのそばには、自分とそっくりな男が・・・。

この映画は非常に低予算、短期間で作られたそうです。
登場人物はほとんど一人(一人3役?)だし、場面もほとんど月の基地内部。
宇宙人も出てこないし、派手な戦闘シーンもない。
まあ、地味と言えば地味な作りなのですが・・・。
でも私は、すごく面白かった!
はまりました。
これぞ正統派SF、という感じで、いろいろ考えてしまうのですよ。
多少ネタばらしですが、結局この自分そっくりの男というのはクローンなんです。
3年住んでいても気づかなかった地下に、
サムと寸分違わないクローンが無数に眠っていた。
彼らは記憶も共有しているのです。
望郷の念に駆られる切なさも同じ。
私ははじめのうちは、無機質なコンピュータに支配される話かと思っていたのですね。
しかし、そうではない。
ロボットのガーティは、人間を守ることを使命としている。
おお、ロボットの原則どおりです。
SFでも、何となくレトロ感があります。
この声が、ケビン・スペイシーだったんですね。
出演者に名前があったけれど、出てないじゃん、なんて思ってしまった。
ここでの本当の敵は人間であり、
人間性を無視した大企業の論理であるのです。
いいですねえ、硬派のこのテーマ。
それで結局、サムは無事に地球に帰ることができるのや否や、
とそういう展開になるのですが・・・。

私は、この作品の表で語られない部分の方に興味があります。
ここに出てくるサムは皆クローン、つまりコピーなのです。
では原本はどうしたんでしょうね。
ここで、地球にいる彼の娘が、
同じ家の中にいる自分の父親を呼ぶシーンを思い出すんですよね。
サムは、その結果までは見届けなかったのですが・・・。
妻が別の男性と結婚したということももちろん考えられます。
でも、そこにいる人物こそが原本のサムなのではないでしょうか・・・。
原本にとっては、コピーの運命などあずかり知らないことなのか・・・、
ちょっと怖くなってしまいます。
それからコピーの寿命の問題ですね。
何かの事故のために、あんなにたくさんのクローンがある訳じゃないですよね。
また、クローン同士、微妙に性格が違うというのもなかなか興味深いところです。
人の個性っていったい何なのでしょうね。
全く同じDNAでも、違う部分は出てくる。
それは、一卵性双生児を見てもわかることですが。
アポロの月面着陸映像をリアルタイムで見た私などにとっては、
あの月面の光景はとても懐かしく感じました。
全体的に低予算であるが故か、なんだか懐かしい感じのする作品で、
しかも、見る側の想像力を刺激する
大変魅力的な作品でした。
お金をかければいいというものではないですね。
2009年/イギリス/97分
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:サム・ロックウェル、ケビン・スペイシー、ドミニク・マケリゴット

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地球上の燃料を使い果たしてしまった未来。
月の裏側でヘリウム3という画期的な燃料が発見され、
その採取のために、たった一人赴任した男、サム。
彼は3年間の契約で孤独に耐えながら仕事を続けている。
話し相手はロボットのガーティだけ。
地球との交信は不調なので、
地球にいる妻と子供からのビデオレターを何度も繰り返し見ている。
でも、いよいよあと2週間で3年め。
次の要員と交代できる。
しかし、何故かこのところ頭痛がして集中力低下、幻覚が見えたりする。
そのため、事故を起こし倒れてしまうが、
かろうじて助け出されたようで、気がついたのは診察室のベッドの上。
そして、ベッドのそばには、自分とそっくりな男が・・・。

この映画は非常に低予算、短期間で作られたそうです。
登場人物はほとんど一人(一人3役?)だし、場面もほとんど月の基地内部。
宇宙人も出てこないし、派手な戦闘シーンもない。
まあ、地味と言えば地味な作りなのですが・・・。
でも私は、すごく面白かった!
はまりました。
これぞ正統派SF、という感じで、いろいろ考えてしまうのですよ。
多少ネタばらしですが、結局この自分そっくりの男というのはクローンなんです。
3年住んでいても気づかなかった地下に、
サムと寸分違わないクローンが無数に眠っていた。
彼らは記憶も共有しているのです。
望郷の念に駆られる切なさも同じ。
私ははじめのうちは、無機質なコンピュータに支配される話かと思っていたのですね。
しかし、そうではない。
ロボットのガーティは、人間を守ることを使命としている。
おお、ロボットの原則どおりです。
SFでも、何となくレトロ感があります。
この声が、ケビン・スペイシーだったんですね。
出演者に名前があったけれど、出てないじゃん、なんて思ってしまった。
ここでの本当の敵は人間であり、
人間性を無視した大企業の論理であるのです。
いいですねえ、硬派のこのテーマ。
それで結局、サムは無事に地球に帰ることができるのや否や、
とそういう展開になるのですが・・・。

私は、この作品の表で語られない部分の方に興味があります。
ここに出てくるサムは皆クローン、つまりコピーなのです。
では原本はどうしたんでしょうね。
ここで、地球にいる彼の娘が、
同じ家の中にいる自分の父親を呼ぶシーンを思い出すんですよね。
サムは、その結果までは見届けなかったのですが・・・。
妻が別の男性と結婚したということももちろん考えられます。
でも、そこにいる人物こそが原本のサムなのではないでしょうか・・・。
原本にとっては、コピーの運命などあずかり知らないことなのか・・・、
ちょっと怖くなってしまいます。
それからコピーの寿命の問題ですね。
何かの事故のために、あんなにたくさんのクローンがある訳じゃないですよね。
また、クローン同士、微妙に性格が違うというのもなかなか興味深いところです。
人の個性っていったい何なのでしょうね。
全く同じDNAでも、違う部分は出てくる。
それは、一卵性双生児を見てもわかることですが。
アポロの月面着陸映像をリアルタイムで見た私などにとっては、
あの月面の光景はとても懐かしく感じました。
全体的に低予算であるが故か、なんだか懐かしい感じのする作品で、
しかも、見る側の想像力を刺激する
大変魅力的な作品でした。
お金をかければいいというものではないですね。
2009年/イギリス/97分
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:サム・ロックウェル、ケビン・スペイシー、ドミニク・マケリゴット