「旅先でビール」 川本三郎 潮出版社
文学・映画・演劇など多方面にわたる評論家。
60代男性のエッセイ。
これがまた、年輪を感じさせるしっとりと落ちついた風情のあるエッセイです。
旅をして、非日常を味わうのがお好きなようです。
特に列車の旅。
わが北海道にも来ていただいていて、この本にあるのは、
「室蘭」、「遠軽・生田原・留辺蕊・足寄」そして、「函館」。
北海道に住んでいながら、私の知らないことも、ずいぶんと詳しく書いてあります。
室蘭はかつて製鉄で大変賑わいました。
今も続いているとはいえ、街はすっかり寂れた印象です。
日曜なども商店街はシャッターが下りたままの店が多く、
まるでゴーストタウンのようだと某作家が表現して、物議をかもしました。
そんな寂しい街の様子も、旅の風情のうちの一つとし、他の魅力あるたたずまいを紹介。
特に観光地でないところでも、いろいろと見るべきものはあるのだなあ・・・と感心。
著者の職業柄、映画に関係する話も多いのですが、
邦画の名作など・・・、う~ん、ちょっと残念ですが、
ようやくこの5・6年、映画を見始めた私にとっては、守備範囲から外れておりまして、
なかなか実感として納得できるものがなかったのが残念。
さて、川本氏は行く先々、駅前の食堂や居酒屋で飲むビールをこよなく愛しています。
普段の生活の中ではさすがに昼間からビールを飲むことはあまりないけれど、
旅先は、「非日常」であるので、昼間からビールを飲むことに抵抗感がない。
駅前の店は、そもそもそんな旅行者が多いので、
一人で入っても、そっとしておいてくれて居心地がいい。
列車の中や旅先で飲むビールは確かに格別です。
ふらりと、どこかに旅してみたいなあ・・・。
やっぱり、列車がいいですね。
満足度★★★★