映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

孤独な天使たち

2014年01月30日 | 映画(か行)
同じ魂の形で



* * * * * * * * * *

内向的な14歳の少年ロレンツォ。
彼は学校のスキー旅行に行くと親に嘘をついて、
地下室へ籠もり、1周間を気ままに過ごそうと計画しました。
しかし、そこへ予期せず現れたのが異母姉のオリヴィア。
彼女はヤク中となっており、
クスリを抜くためにここで過ごそうとします。
反発するロレンツォでしたが、置いてくれなければ秘密をバラすといわれ、
やむなく二人の密やかな隠遁生活が始まります・・・。



触るとトゲが刺さりそうな、ピリピリして人を寄せ付けようとしない少年。
ヘッドセットで音楽を聞き、外界を遮断すれば、
そこもある意味ひとりきりの地下室ではあります。
でも、本当に誰とも触れ合わないことを願っているのではないはず・・・・。
彼は一夜だけ1人で過ごすのですが、
なんとなく寂しくて、犬の置物を引き寄せたりするのがご愛嬌。
しかしその翌日、闖入してくる姉。
彼らの父がオリヴィアの母を捨て、ロレンツォの母と一緒になったという関係です。
子供の頃にあったきりだった二人。
反目する二人だったのですが、
共に生活するうちに互いの孤独な魂が引き合い、共感へと変わっていく。

 

同じ父を持つ姉弟の魂の形は、やはりよく似ているのかもしれません。
ヤク中の姉、引き籠もりの弟。
互いを憐れみながらも、口には出さず、
寄り添いながら次第に立ち上がる力をわけあっていく・・・。
少年のどこかうつろだった目が、
ラストシーンでは力がこもっているように感じられました。
世の中から逃げるのではない。
挑んでいく。
たった一週間で変わっていく彼の成長ぶりが、
非常に自然で説得力を持っています。
いいものを見たなあ・・・、と思える作品。



孤独な天使たち スペシャル・エディション [DVD]
ヤコポ・オルモ・アンティノーリ,テア・ファルコ
Happinet(SB)(D)


「孤独な天使たち」
2012年/イタリア/97分
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
原作:ニコロ・アンマニーティ
出演:ジャコポ・オルモ・アンティノーリ、テア・ファルコ、ソニア・ベルガマスコ、ベロニカ・ラザール

青春度★★★★☆
満足度★★★★☆

オレたち花のバブル組

2014年01月29日 | 本(その他)
バンカーとしてのプライド

オレたち花のバブル組 (文春文庫)
池井戸 潤
文藝春秋


* * * * * * * * * *

絶好調ドラマ『半沢直樹』(堺雅人主演)原作本第2弾! 
東京中央銀行のバブル入行組・半沢直樹に押しつけられた「頭取命令」
――それは巨額損失を出した老舗ホテルの再建。
銀行内部の見えざる暗躍、
金融庁の「最強の検査官」との対決。
出向先での執拗ないじめ。
次から次へと襲い来る逆境を、半沢はおのれの正義で迎え撃つ。
オレたちは絶対に負けられない。
まとめて面倒みてやる。
やられたら倍返しだ! 
"バブル組"の男たちのプライドが胸を熱くさせる。


* * * * * * * * * *

さて、半沢直樹第2弾です。
巨額損失を出した伊勢島ホテルの再建。
それがこの度の半沢の任務ですが、
やはり一筋縄ではいかない、いろいろな裏がある。

出向先のタミヤ電気での辛い状況で、また病気が再開しそうになる近藤。

金融庁査察官・黒崎のキョーレツな個性。
オネエ言葉はドラマ上の演出かと思っていましたが、
本の中でも同じです!!

そして、大黒幕の大和田常務。
いやあ、あのドラマの緊迫シーンがよみがえります。


半沢と同じくバブル世代の渡真利の言葉にこんなのがあります。

「バブル時代、見境のないイケイケドンドンの経営戦略で銀行を迷走させた奴ら
ーーーいわゆる"団塊の世代"の彼らにそもそも原因がある。
学生時代は、全共闘だ革命だとほざきながら、
結局資本主義に屈して会社に入った途端、
考えることをやめちまった腰抜けどもよ。
奴らのアホな戦略のせいで銀行は不況の長いトンネルにすっぽりと入っちまったっていうのに、
ろくに責任もとらないどころか、ぬけぬけと巨額の退職金なんかもらってやがる。・・・」


団塊世代に向けたキョーレツなパンチ。
私自身は団塊世代よりもう少し後の世代ですが、
確かにねえ・・・と、思ってしまうところがあります。
しかしまあ、今さらそんなことを言っても、後の祭り。
世の中全体がそれを是としてしまっていたわけですから。


ラストはみなさまも知っている通り。
「勝負に勝って試合に負けた」というような状況ですね。
けれど、この戦いは半沢が昇進を狙って始めたものではない。
自分の境遇はさておいても、バンカーとしてのプライドが示す方向へ突っ走った結果であるわけなので、
彼としても本望でしょう。
次なる職場へ行っても、頑張れ!半沢直樹。


さて彼の奥様、花さんは、
本の中では結構つっけんどんで、半沢をねぎらう風などもありません。
まあたしかに、ここで甲斐甲斐しく夫をねぎらう妻なんていうのが出てきたらしらけます。
それこそは、「団塊世代の妻」像かも。
バブル世代の妻というのはこんなふうのほうがリアルなのか・・・? 
でもTVドラマの花さんは確かにつっけんどんではありますが、
ちょっとカワイイところもあって、良かったですよね。


「おれたち花のバブル組」池井戸潤 文春文庫
 Kindle版にて
満足度★★★★☆

銀のエンゼル

2014年01月28日 | 西島秀俊
5枚じゃなきゃダメなのか



* * * * * * * * * *

本作も西島秀俊さん出演作、というだけで
何のリサーチもなく見た作品でしたが・・・
いやあ、びっくりと言うか、これは見なくちゃダメでしょう!!
 という作品でした。
 鈴井貴之監督作品。
って、つまりあの「水曜どうでしょう」の企画・構成を手がけている方で・・・
そうそう、だから北海道が舞台で、大泉洋さんも出ているのです!!
えーと、2004年作品だから、まだそう足しげくは映画館に行っていなかった頃のものだね。
 だから見逃していたのも、勘弁ね・・・という感じです。


北海道の片田舎の町。
 国道沿いにあるコンビニエンス・ストアが舞台。
 オーナーはちょっと気の弱そうな北島(小日向文世)。
 このオーナーの家族と店員、そして店にやってくる様々な人たちの人間模様を描く
 ハートウォーミングストーリーだね。


ある時北島の妻で店長の佐和子が交通事故で入院。
 今まで店のことも一人娘・由希(佐藤めぐみ)のことも妻に任せっきりだった北島が、
 やむなく店の深夜勤務に立たなければならなくなった。
 おまけに高校生の娘が東京の大学に行きたいと思っていることを、
 周囲の皆が知っているのに父親の自分だけが知らなかったことにショックを受ける。
 娘ときちんと話そうとしても、部屋に鍵をかけ、
 こもった娘はまるで父親を無視。
いやあ、父親の悲哀をひしひしと感じるねえ・・・。
仕事一筋の父親で、実際こういう家庭は多いと思うよ・・・。
お父さんというのは大変だあ・・・。


で、西島さんの役どころは?
店の深夜番のバイト店員だね。
 これが、物静かで真面目な青年なんだけど、なんだか謎の男・・・。
 北海道の人ではなくて、町が雪一面になった景色を見たら、帰るなんて言ってる。
 何故か日中は林の木を切っていたりするのさ・・・。
なんなんでしょう、それ?
ふふふ。まあ、それは見ていればわかる。
 このミステリアスな店員というのが、本作のサイドストリーでもある。
じゃ、大泉洋さんは?
彼は、このコンビニに荷物を運んでいるトラックの搬送員。
 熱い人情家で、「六木」という名前なのをロッキーと呼んでくれ、なんて言ってる。
 それがまあ、この北島家のひび割れを修復するのに一役買うという、
 ナイスな役であります。


うーん、北海道でこれから本格的な冬に向かうという季節なのに、
 なんだか暖かい作品なんだよね。
はい、ホットバナナもなんだか食べてみたくなります・・・!
あ、それから、「銀のエンゼル」の意味は?
あの、チョコボールのハコに付いているマークのことだよね。
 金のエンゼルなら1枚。
 銀のエンゼルなら5枚でおもちゃの缶詰がもらえるっていう。
 金はまず滅多に出てこなくて、銀ならたまに当たる。
 そこで銀のエンゼルを集めるのだけれど、なかなか集まらないし、
 やっと5枚目と思った時には、はじめにあったったものがどっかへ行っちゃってる。
 結局いつまでもそれを求めているだけで、
 5枚揃うなんてことはないのじゃないか、と思える。
 5枚ぜんぶ揃えることなんかめったにないってことなんだな。
つまり「銀のエンゼル」というのは「幸せ」の象徴ということかあ・・・。
3枚、4枚・・・それくらいのことでも十分幸せってことだよ。

ロード・トゥ・エンゼル Road to Angel in the Box [DVD]
鈴井貴之,大泉洋
インディーズ・メーカー


「銀のエンゼル」
2004年/日本/110分
監督:鈴井貴之
出演:小日向文世、佐藤めぐみ、山口もえ、浅田美代子、西島秀俊、大泉洋
北海道の地元度★★★★★
ハートウォーミング度★★★★☆
満足度★★★★☆

ウォールフラワー

2014年01月26日 | 映画(あ行)
それぞれの迷い道



* * * * * * * * * *

16歳チャーリー(ローガン・ラーマン)は、高校入学初日からひとりぼっちです。
それは彼が以前に心を病んで入院していたためかもしれません。
周囲と馴染めず、食堂でもランチはひとりきり。
しかし彼は壁の花のようにひっそり息を潜めて毎日をやり過ごそうと思っています。
そんな彼に手を差し伸べたのは、上級生の“変人”グループ。
中でも、陽気なパトリック(エズラ・ミラー)と
その義理の妹のサム(エマ・ワトソン)に彼は惹かれます。
彼らに手を引かれるようにして、チャーリーは人の輪の中に入っていく力を得、
自分の居場所を見出していくのですが・・・。
それでも執拗に現れる幻覚が彼を悩ませる。
これはなんなのだろう。
せっかく高校生活がうまく回り始めているのに・・・。



ただ単に気弱な少年の成長の物語というだけではなくて、
ちょっと意外な影の事実が発覚するあたり、
なかなか練られたストーリーだと思いました。
そしてまた、チャーリーを救い上げた上級生たちもまた
青春の迷路をさまよっているのは同じ。
愛に、進路に、自らのアイデンティティに・・・、
一人ひとりが迷い傷つきながらも前進しようとするステキな青春の物語です。



車上で立ち上がり腕を広げ風を受けて、
トンネルを抜けてやがて夜の街へ。
なんてステキなシーンなのでしょう。
ちょっぴり甘酸っぱい青春の高揚を感じます。



エズラ・ミラーはあの「少年は残酷な弓を射る」の少年でしたね。
人の顔を覚えるのが苦手な私も、
さすがにあまりにも印象深かったので覚えていました。
こちらの明るいパトリックのほうが私は好きです。
ただ単に明るいのではなくて、実は複雑な感情を持ち合わせているわけです。
エマ・ワトソンは、今更いうまでもなくあの「ハリー・ポッター」のハーマイオニーですが、
本当にすっかり大人っぽくなりました。
チャーリーがひと目で彼女を好きになる、
そういうところにも説得力があります。
(「ブリング・リング」では、もっとリアルな今どきの少女像を演じていましたが)
おなじみの子役スターが、一人前の俳優として
しっかり育っていくのを目の当たりにすると
私までも嬉しくなってしまいます。



ウォールフラワー
2012年/アメリカ/103分
監督:スティーブン・チョボウスキー
原作:スティーブン・チョボウスキー
出演:ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、メイ・ホイットマン、ジョニー・シモンズ

一人ひとりの青春度★★★★☆
満足度★★★★☆

「オレたちバブル入行組」池井戸潤

2014年01月25日 | 本(その他)
痛快エンターテイメント

オレたちバブル入行組 (文春文庫)
池井戸 潤
文藝春秋


* * * * * * * * * *

話題沸騰のドラマ『半沢直樹』(堺雅人主演)原作! 
バブル期に大手銀行に入行し、今は大阪西支店融資課長の半沢直樹。
支店長の命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産した。
すべての責任を半沢に押しつけようと暗躍する支店長。
四面楚歌の半沢に残された手は債権回収しかない――。
夢多かりし新人時代は去り、気がつけば辛い中間管理職。
しかも入行以来いいことなしのバブル世代。
しかし嘆いてばかりじゃ始まらない。
顔を上げろ、プライドを捨てるな、そのうち負け分を取り戻してやる! 
働く者すべての勇気を奮い起こさせる痛快エンターテインメント。


* * * * * * * * * *

なんで今さら・・・という感じですが、
「ロスジェネの逆襲」を是非読みたいと思い、
それにはやはりTVドラマだけじゃなくて、
はじめから読んで見なくちゃね、ということで読みました。


この場合、登場人物がしっかりTVでイメージができていたので、
とても読みやすく感じました。
印象としてはTVドラマより本の半沢直樹のほうがもっとキョーレツのような・・・。
そこのあたりが堺雅人さんの持ち前のキャラで、
一見ソフトでありつつ、実はキョーレツという深みが感じられて、
TVドラマ版もやはり良かったのではないかと思います。


ドラマでもさんざん感じたことではありますが、
立場の弱いものを踏みつけにしてなんとも思わない、
踏みつけられる方がバカと言わんばかりの一部の人々
には
やはり憤懣遣る方なく感じてしまいます。
だからこそ、倍返し、10倍返しが心地よい。
・・・でもやはり、やり過ぎなのでは?
と思う部分もある・・・。
いや、深く考えないほうがいいのでしょう。
紹介文にもある通り、これは「痛快エンターテイメント」なのだから。
ほんのひと時溜飲を下げて、
明日からまたがんばろう・・・!と。

「オレたちバブル入行組」池井戸潤 文春文庫
Kindleにて
満足度★★★☆☆

アベンジャーズ

2014年01月24日 | 映画(あ行)
イタい・・・



* * * * * * * * * *

アメコミヒーローが終結するアクション大作。
たまにはあっけらかんと楽しめるこういう作品もいいか
・・・と思ってみたわけですが、
いやあ、こんな作品をわざわざ劇場に見に行かなくてよかった・・・と
つくづく思いました。
というか、DVDでもほとんど苦痛・・・。



そもそも、ここに登場するアメコミヒーローって、
どれも私には馴染みがありません。
アイアンマン、キャプテンアメリカ、ハルク、
神の王の息子であるソー(なんじゃこりゃ~!!)
ブラックウィドウにホークアイ・・・。







みなさん、正直に言ってください。
キャプテンアメリカの衣装、あまりにもダサい。
そう思いませんか? 
よく恥ずかしくもなくこんなコスプレショーに出る気になるな・・・と、
私は俳優の良識を問いたい。
ストーリーもほとんどないも同然でしたし。


たった一ついいと思ったのはあの、
巨大なワラジドラゴンみたいの(名前知らない)が空を泳ぐ造形。
先日の「マン・オブ・スティール」(スーパーマン)あたりが我慢の限界でしたね。
アレはアレでそこそこストーリーは楽しめたのです。
でもこれは私には無理でした。

「日本よ、これが映画だ」・・・???
こんなもん、映画じゃありませんよ。

アベンジャーズ [DVD]
ロバート・ダウニーJr.,クリス・エヴァンス,マーク・ラファロ,クリス・ヘムズワース,スカーレット・ヨハンソン
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


「アベンジャーズ」
2012年/アメリカ/144分
監督:ジョス・ウェドン
出演:ロバート・ダウニー・Jr、クリス・エヴァンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン

陳腐度:★★★★★
満足度★☆☆☆☆

ビフォア・ミッドナイト

2014年01月22日 | 映画(は行)
年月が愛を風化させていく・・・と思わせて、実はロマンチックの見本



* * * * * * * * * *


同監督と同俳優で、実際の年月を経て作られているラブロマンスシリーズの第3作です。
一作目1995年「ビフォア・サンライズ」
二作目2004年「ビフォア・サンセット」
そして2013年本作。
私は前2作をDVDで見ていたので、
この度の公開を楽しみにしていました。



ドラマティックな恋の末、双子の娘に恵まれ、
パリで暮らしているジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルピー)。
友人に招かれ、ギリシャの海辺の町にバカンスに来ています。
ジェシーはシカゴに元妻と暮らしている息子のことが気がかり。
セリーヌは環境運動家としての仕事に不安を覚えています。
その夜、友人たちが双子を預かってくれることになり、
二人だけでロマンチックな一夜を過ごすはずでした。
しかし、些細な事から口論となり・・・。



セリーヌはこれまでの鬱憤が爆発したように不満を並び立てます。

いつも自分ばかりが育児と家事でクタクタ。どうして男ばかり自由なのか。
いつぞやのあの女と浮気したでしょう。
今の私と初めて列車の中で会ったとしたら、声をかける?


あんなにドラマチックな恋をして、一緒になった挙句が、
やっぱりこうなってしまうのか・・・。
極めて現実的であります。
どう転ぶかわからない、延々と続く二人の会話の応酬が
なかなかスリリングでもあります。
でもね、少なくてもオバサンにはセリーヌのその気持、よくわかります。
多くのこの年令の女性が陥る所ですね。
現実だったら、本当に二人の仲はこれっきりかも知れません。
・・・でもこれ、一見普通の恋人たちのドキュメンタリー風ドラマでありながら、
実はやっぱり、架空のラブロマンスなのです。
ラストシーンで、それを確信しました。
こんなにロマンチックに話を修復しようとするオトコなんているはずがありません。
・・・が、私は不覚にもここで涙がこぼれてしまいました。
うそだよ、こんないいオトコいるわけない、と思いながらも、
どこか夢見ているのかもしれませんねえ・・・。
負けました・・・。
見事にいい年したオバサンの乙女心を刺激してくれました・・・。



前2作、見たとはいえブログを始める以前で、
ほとんど忘れているので是非また見たいと思います。
若い二人を、それこそタイムマシンで時を遡るようにして
見るというのもよさそうです。


「ビフォア・ミッドナイト」
2013年/アメリカ/108分
監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー、シーマス・デイビー=フィッツパトリック、ジェニファー・プライアー、シャーロット・プライアー
現実度★★★★☆
ロマンス度★★★★☆
満足度★★★★☆

「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」 奥泉光

2014年01月21日 | 本(ミステリ)
愛すべき、トホホな准教授

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
奥泉 光
文藝春秋


* * * * * * * * * *

地位も才能もないが、やる気もなく志も低い准教授・桑潟幸一、
通称クワコーを、毎月毎月、襲う怪事件。
何とかしないとヤバイじゃんクワコー、
と首をつっこむ文芸部の変人女子たちにいじられながら、
首吊り幽霊の謎ほか、春のキャンパスを騒がす3つの事件にクワコーが挑む。
芥川賞作家が贈る脱力+自虐のユーモア・ミステリ。


* * * * * * * * * *

クワコーこと桑潟幸一准教授。
千葉県権田市「たらちね国際大学」勤務。
40歳。独身。
給料月額手取り110,350円。
以前同じ著者の「モーダルな事象~桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」にも登場しています。
それは私も読んだのですが、
かなり昔で私のブログ記事にもなっておらず、
中身も全然思い出せないという体たらく。
いやあ、残念・・・。
でも、本作はかなりユーモア性が前面に出ておりますが、
前作はそこまでではなかったような気がします・・・。
准教授ではなく、助教授というところが、時代を表していますね・・・。


さて、このクワコーですが、ほんとにトホホな男。
どう見ても間違って准教授になったとしか思えない
知識・教養のなさ、やる気のなさ。
小心。
・・・しかしですねえ、読んでいるうちに
あんまり情けなくて、逆に好きになってしまいます。
給料110,350円というのもあんまりなのですが、
彼は憤慨しながらも、しかし実は自分の働きに見合っているのでは?
などと思ったりする。
他で雇ってくれるところがあるはずない、とも思っているので、
地道にスーパーの見切り品や規格外の格安野菜を買い求め、自炊したりする。
それがまた、意外と器用そうで、美味しそうに思えたりするんですよね・・・。


大学では文芸部の顧問を引き受けることになり、
そこに出入りする部員たちがまた個性派揃いで笑ってしまいます。
さて、ここまで読んでもピンと来ないと思うのですが
奥泉光作品なので一応ミステリなのです。
本巻には3編が収録されていますが、
一作目はクワコーの研究室に4月にだけ起こる怪異。
さっそくクワコーも赴任早々、
4階の窓ガラスがノックされる音を聞いたり、おかしな笑い声が聞こえたり。
気の小さいクワコーなので、震え上がってしまいますが・・・。
この謎を解決するのがクワコーではなくて、文芸部員のジンジンこと神野仁美。
いつも黒ずくめの服を着て、口数少なく、
しかし声を発したかと思えばなんとも人を喰った礼儀知らずの発言。
しかしてその正体はなんとダンボール住まいのホームレス女子大生探偵!!
他の部員たちも礼儀知らずは同じこと、
教師を教師とも思わず、クワコーの研究室は彼女らの部室兼用。
・・・しかしですね、意外とみなクワコーの事が好きみたいなのです。
本作ではジンジンだけではなく皆にも幾度も窮地を救われるクワコーなのでした。
特に最近女子大から共学となったこのたらちね国際大学の黒一点の学生・モンジのセリフが
おかしくておかしくて、
「マジっすか、ちょーウケる、てか・・・」

傑作のオススメです。

「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」奥泉光 文春文庫
満足度★★★★★

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮

2014年01月20日 | 映画(ら行)
王室側からの革命を目指した男



* * * * * * * * * *

18世紀後半、デンマーク王室のストーリーです。
英国からデンマーク王クリスチャン7世に嫁いできたカロリーネ。
互いの家どうしが決めた結婚で、
もちろん会うのも初めてだった国王。
それでも期待いっぱいにやってきたカロリーネでしたが、
国王はとんでもない変なヤツだったのです・・・。
ちょうどマリー・アントワネットがフランスに嫁いだのも似たような次期・状況でしたね。
はじめて夫となる人を見て、ちょっとがっかりだったことも・・・。


このクリスチャン7世は、
まあ、変人というよりは精神を病んでいたようです。
そんな彼のために、ドイツ人ストルーエンセ(マッツ・ミケルセン)が
侍医として常に付き添うこととなりました。

しかし彼は当時出始めた啓蒙思想の持ち主。
貴族が宗教で民衆をがんじがらめにし、搾取している世の中を
何とか変えたいと思っている。
聡明な王妃カロリーネは、彼のそういう思想を受け入れるうちに
次第に男性としても意識し、抜き差しならない関係になっていきます。

一方王は王でストルーエンセには絶大な信頼をおき、
彼の助言に従い様々な改革を行いますが、
それは他の貴族たちにとってあまりにも急進的で自分達の地位をも危うくすることだったため、
反感を募らせていきます。
彼ら貴族たちにとって危険なストルーエンセ排除の切り札が、
王妃と彼の不倫ということに・・・。



フランス革命以前にほんの一時でも
このような改革が王室側からあったというのがまず驚きです。
デンマークの歴史など、今まで何一つ聞いたこともなかったものですから・・・。
しかもこのようなロマンスがらみというのもスゴイですね! 
映画的脚色は大きいと思いますが・・・。
二人がダンスで互いの思いを確認しあうシーンが、素晴らしかった・・・!


歴史的には、ストルーエンセが王を丸め込んで政治権力をほしいままにした、
という認識が一般的のようです。
この映画のようであったとすれば、すばらしい近代精神の先駆者であったというべきですが・・・。
でも、確かに急ぎすぎたきらいはあります。
あまりにも急進的だったがゆえに、
ストルーエンセは排除され、その反動でデンマークはまた中世の暗黒政治へ・・・。
しかし、ストルーエンセの思想は次のフレゼリク王に受け継がれ、
宮廷クーデターの末、農民改革などが行われた・・・と、
まあ、ややネタバレ的になりますが、
そういう大きな歴史の流れとなっていくのです。




そこを実にうまく切り取った波乱に満ちた愛の物語。
気に入りましたねえ・・・。
こういうのは大好きです。
ただ、この副題「愛と欲望の王宮」というのにはやや不満。
「欲望」というのはなんだか違うような気がします。
少なくともこのストーリー上でストルーエンセは、
権力を欲したわけではないですよね・・・。

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮 [DVD]
マッツ・ミケルセン
アルバトロス


「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」
2012年/デンマーク/137分
監督:ニコライ・アーセル
出演:マッツ・ミケルセン、アリシア・ビカンダー、ミケル・ボー・フォルスガード、トリーネ・ディアホルム

歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★★

永遠の0

2014年01月18日 | 映画(あ行)
若い方には是非



* * * * * * * * * *

本作は見ないつもりが、
他にタイミングよく見たいものがなかったため、見ました。
原作は読んで十分堪能したのですが、
いかにも「感動作」という触れ込みが、
あまのじゃく気味の私に二の足を踏ませていたのです。
でもまあ、黒田官兵衛でもありますし・・・(?)


司法試験に落ち続け、人生の目標を見失いかけた青年・健太郎。
彼の祖父が太平洋戦争で特攻により戦死したと知り、
フリーライターの姉とともに、
祖父・宮部久蔵を知る人を訪ね、当時の話を聞くことになります。
「凄腕のパイロットだったが、海軍一の臆病者」
多くの人が宮部久蔵をそのように言います。
けれども更に訪ね歩くうちに、次第に明らかになってきた祖父の実像とはーーー?



メカに弱い女子としては、
実際に映しだされるゼロ戦や空母、作品理解のためにはとても助かりました。
そして岡田准一さんの宮部久蔵、これがまたいいですね!! 
乗馬の武者姿もカッコイイけれど、
戦闘服でゼロ戦に乗る姿もカッコイイ。
ミーハー的見地からはトク丸です。
そしてもちろん、宮部久蔵その人がまた、カッコイイ。
あのような時代で、それを口にすることがタブーとわかっていながら
「死にたくない」と口にする。
それこそが逆に勇気の明かしなのです。
彼はどういう家庭で育ったのかな?
そんなことも知りたくなってしまいました。



それにしても、先に本を読んで、
本作の一番大きな“秘密”を知ってしまっていた、
ということが、この度の感動を半減させてしまったのは確かだと思います。
まだ本を読んでいない、特に若い方には、是非見ていただきたい作品。
本を読んだ方なら、無理に見なくても・・・。

「永遠の0」
2013年/日本/144分
監督:山崎貴
原作:百田尚樹
出演:岡田准一、三浦春馬、井上真央、濱田岳、新井浩文、吹石一恵

戦争を知る度★★★★☆
満足度★★★☆☆

「銀の匙 10」荒川弘

2014年01月17日 | コミックス
ごちそうがイッパイ!!

銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


* * * * * * * * * *


ストーリーでは、ちょうどお正月。
実家に帰るのが嫌で寮で年越しをする八軒ですが、
思いの外賑やかで・・・。
手打ちの蕎麦やら、つきたてのおモチが・・・。


そして新学期。
八軒が育てた豚がまた肉となって戻ってきます。
今度はベーコンとソーセージを作って販売までしようと、
皆で作業をしたり値段を考えたり。
農業といえば作物や家畜を育てることばかりがイメージとして浮かびますが、
経営的ノウハウも、と言うよりそれこそが、
生活を成り立たせる上で重要ということですね。
こういう視点が描かれているところが、本作のいいところです。
ここに出てくるソーセージ、そしてホットドッグ。
うわ~、美味しそう! 
溶けたチーズをかけたポテト!!
ひゃ~、よだれがわいてくる!!


そしてまた、学校をやめた駒場をしきりに気にかける八軒。
バイトの掛け持ちで忙しい駒場は、
以前の友人たちと顔を合わせるのも気まずく避けている様子ですが、
全然気にせず、未だ自分に何かできないかと気にしている八軒。
こういうおせっかいなところが周りの皆にも伝染しているようです。


まだ高校一年の彼、彼女らですが、
しっかりと自分の将来を見つめて考えているのがまぶしく感じられます。
いろいろすごく器用なのに未だに就職が決まらない大川先輩の先行きも気になります!!


ところで私、全然想像できないのですが、
八軒の実家で、ロシア人の嫁を迎えた父親の反応はどうなのでしょう??? 
どんな顔して彼女に対応してるのか、是非見たい!!

「銀の匙 10」荒川弘 小学館少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆

僕が星になるまえに

2014年01月16日 | 映画(は行)
大自然の中で自分の死と向き合う時



* * * * * * * * * *

今人気急上昇中のベネディクト・カンバーバッチ初主演作品
・・・ということでなければ、この地味な作品、
日本では日の目を見なかったかもしれません。



末期ガンに冒された青年ジェームズ(ベネディクト・カンバーバッチ)が、
3人の親友と共に「世界で一番好きな場所」へ旅をする物語です。
それは車の旅ではなくて、ウェールズの大自然の中をゆく
トレッキング&キャンプの非常にゆっくりとした旅。
しかし、ジェームズの体力はもうほとんど尽きかけているため、
カートに乗せたり、おぶったり、困難な道行でもあります。
途中、アクシデントでテントを燃やしてしまったり、
カートを失ってしまったり、
ほとんど遭難のような状況で目的地のパラファンドル湾にたどり着きます。
そこでジェームズは、ある決意を皆に打ち明けるのです。



おそらく学生時代ぐらいから付き合いのある、仲の良い4人組だったのでしょうね。
はじめのうちははしゃぎ回り、まるで小学生のキャンプのようだったのですが・・・。
大自然の中を行くと、次第に心の鎧も消え失せて、
本音がむき出しになっていくようです。
互いの今現在の人生の有り様を非難し、罵り合ってしまうことも・・・。
ついイライラと仲間を批判するジェームズに対して、
「そういうおまえは今まで何をしていたんだ」
とまで、つい言ってしまう。
けれども互いの本音をさらけ出したあとに、
それぞれの抱える痛みの共感が戻ってきます。



ジェームズの、自分だけに未来がないという悲しみ、憎しみ、無念・・・
そういうものがひしひしと伝わってきます。
いや、これ本当に演技なのですよね。
どう見ても実際の末期ガン、
余命いくばくもない青年そのものに思えてしまう。
そして彼らを見守る友人たちの心境も・・・。
非常にクオリティの高いドキュメンタリー風作品だと思います。

「僕が星になるまえに」
2010年/イギリス/92分
監督:ハッティ・ダルトン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、J・J・フィールド、トム・バーク、アダム・ロバートソン
自分を見つめる旅度★★★★☆
満足度★★★★☆

ジャッジ!

2014年01月14日 | 映画(さ行)
広告業界では“無茶”と書いて“チャンス”と読む!?



* * * * * * * * * *


落ちこぼれ広告マンの太田喜一郎(妻夫木聡)が、
ひょんなことから世界一のテレビCMを決めるサンタモニカ国際広告祭の審査員を務めることになります。
パーティーの同伴者として同僚のひかりをニセの妻に仕立てて同行。
しかし、自社のちくわのCMが受賞しなければクビと聞き、
ボー然とする喜一郎。
様々な裏の駆け引きが横行するこの賞の受賞するのは誰???



コメディということで、いつぞやの作品のように(特に名を伏す)
あまりにもくだらなかったらイヤだなあ・・・と一抹の不安を持って見たのですが、
これが杞憂で、すごく楽しめました!!


まずは妻夫木聡さん演じる喜一郎ですが、
馬鹿正直でお人好し。
一生懸命なんだけどどうもパッとしない。
あのトヨタのCMで彼が演じているのび太くんのイメージ。
それというのも、本作の脚本を描いている澤本嘉光氏は
ソフトバンクのお父さん犬シリーズや、
トヨタのドラえもんシリーズのCMを手がけた方。
それで、本作では「トヨタ」が実名で登場したりするのも楽しいですよ。


また、俳優陣の布石が絶妙。
自分の為にならないことはどーでもいい、テキトーな上司・大滝一郎
(本当は彼が審査に行くはずだった)に豊川悦司。

同僚の「優秀な方のオオタ」こと大田ひかりに北川景子。

資料室に追いやられている、うさん臭い社員にリリー・フランキー。

日系ブラジル人・カルロスに荒川良々。
ライバル社で受賞を狙う大沢はるかに鈴木京香。

みなさんそれぞれの役にハマって楽しそう。


審査員の外国人たちも怪しげな人がいっぱい。
でも、義理も人情もある愉快な展開となっていきます。
本作には喜一郎が「ちくわのCMを通す」という立場を置いても、
本当に優れたものを見出そうという、
(まあ、馬鹿正直ということなのですが)
そういう意志を通そうとするところがしっかりとした芯になっていて、
だからいいのです。
今、世界で日本をPRしようとすればこういうことか
・・・というのも興味深いですね。
また、喜一郎とひかりの恋の進展も見どころの一つ。
まあ、このへんはお定まりですけれど。
コメディではあっても、見る側との深い共感や感動が大切なのだなあ
・・・と、改めて思いました。

「ジャッジ!」
2013年/日本/105分
監督:永井聡
脚本:澤本嘉光
出演:妻夫木聡、北川景子、リリー・フランキー、鈴木京香、豊川悦司、荒川良々

ユーモア度★★★★★
国際度★★★★☆
満足度★★★★★

「星籠の海 上・下」島田荘司

2014年01月13日 | 本(ミステリ)
鞆の浦、星籠の秘密

星籠の海 上
島田 荘司
講談社


星籠の海 下
島田 荘司
講談社


* * * * * * * * * *

瀬戸内海、松山沖に浮かぶ興居島の湾に、連続して死体が流れ着く―
奇妙な事件の調査を依頼された御手洗潔は、石岡和己とともに瀬戸内へ。
解決への鍵を求めて訪れた場所は、
古代より栄えた「潮待ちの港」、鞆の町を擁する広島県の福山市だった。
しかし、御手洗たちの到着直後に発生した死体遺棄事件にはじまり、
鞆もまた不穏な気配を漂わせていた。
これは瀬戸内を揺るがす一大事の兆しなのか!?
古からの港町に拡がる不穏な団体の影―
怪事件の続く「時計仕掛けの海」に、御手洗潔が挑む!
圧倒的な面白さ!
ミステリー界の最先端に立つ巨匠が放つ渾身の一撃!(上)


複数の死亡事件の背後に見え隠れする、ある団体の影―疑惑の究明に動きながら、
御手洗潔は事件関係者の大学助教授とともに、
幕末に老中首座を務めた福山藩主阿部正弘と、
かつて瀬戸内を制した水軍の秘密に迫っていく。
そこに、鞆に暮らす革職人一家が襲われる凄惨な事件が発生。
これを糸口に、御手洗の推理で炙り出される事件の全容。
そして「潮待ちの港」の歴史に秘された奇跡とは―!?
御手洗潔、国内編最終章。(下)


* * * * * * * * * *


待ってました! 
久しぶりに御手洗潔と石岡くんのコンビ登場。
瀬戸内海を舞台に、事件は戦国時代や幕末にも関連し、
非常に読み応えのあるミステリとなっています。


広島県の福山市、鞆(とも)の町が主な舞台となりますが、
この鞆の浦は古代から海上交通の拠点として栄えたところ。
というのも、瀬戸内海の潮の流れに関係するのですね。
その潮の流れを熟知していたの村上水軍で、
そのために織田信長が毛利氏を攻めあぐんだ・・・。
信長が持っていたという巨大な鉄の船。
それを破るために考案されたと思われる村上水軍の武器=星籠(せいろう)。
そしてそれがまた、幕末、ペリーが乗ってきた黒船に対抗するために
その資料が掘り起こされたのでは・・・と、
展開する歴史ミステリ、
私的にはここが一番面白かった。
歴史は、つまり科学だなあ・・・などと1人納得してしまいました。
いつもこんなふうに、歴史や科学を説いてくれる島田荘司マジック
だから好きなのです!!


また本作は、それとは別に、
オウム真理教まがいのカルト宗教組織の危険性を訴えるストーリーでもあります。
国際的にも勢力を伸ばしているその教祖の正体は、
そして本当の狙いは・・・。


更には、
演劇俳優を目指して上京するも、夢敗れる男女。

福島から転居してこの地に来たけれども周りの子と馴染めず、
虐めにあっている少年、そしてその少年に手を差し伸べようとする男。

様々な人々の思いや行動が錯綜。
けれどそれが最後にしっかりと収束してゆく。
さしもの御手洗も最後の最後に諦めの心境に達した時に起きる奇跡。
なんとも劇的で感動に満ちています。
鞆の浦の風景も素晴らしいようですね。
そういえば一昨年私は広島へ行ったのですが、
そこへは寄りませんでした。
う~ん、残念。
この本を読んでいれば絶対に寄ったと思うのですが・・・
まあ、いつかのお楽しみということにしましょう。

「星籠の海 上・下」島田荘司 講談社
(Kindle版にて)
満足度★★★★★

春よこい

2014年01月12日 | 西島秀俊
それでも愛せるか?



* * * * * * * * * *

佐賀県の唐津市が舞台だね。
海辺の町。地方色豊かなのがなんだかいい。
小学生のツヨシは、母(工藤夕貴)と、ちょっとボケたおじいちゃんとの3人暮らし。
 お父さんは4年前から居ないのだけど、その頃まだ幼かったので、顔もよく覚えていません。
 お父さんに会ってみたい・・・と願うツヨシですが・・・。
実はその父(時任三郎)は、4年前殺人を犯し、そのまま家族を捨てて逃亡してしまった。
 今は指名手配中で、交番に写真が貼ってあったりする。
そのため、ツヨシはクラスのみんなと馴染めず、虐められているんだね。
だけれどツヨシは、父を恨みに思うこともなく、つい交番の写真をしげしげと眺めてしまう。
そんな光景をみて不憫に思ったのが新聞記者の利夫(西島秀俊)。
実はツヨシの担任教師が、利夫の妹なのだった!! 
 だから妹からツヨシが虐められているという話を聞いていたんだね。
それで、交番の父の指名手配写真を見ているツヨシのことを記事にしてしまったんだ。
 美談としてね。
しか~し、この小さな町の人々の反応は利夫の予想外のものだった。
ようやく記憶の薄れていた事件が、また生々しく蘇ってしまったんだよね。
 ツヨシはますますいじめを受けるし、母も職を失ってしまう。
ひゃー、善意のつもりが全く裏目に出てしまったという・・・。
 利夫さん、考えが至りませんでした!!


そんなわけで、利夫はツヨシの母にお詫びのため足繁く通うようになり・・・
 それとなく気になる存在になっていくんだな。
始めは全くの拒絶だけだったんだけどね。
しかし、本作は家族の絆の物語だ。
 愛する家族が罪を犯したとして、
 そしてそのために罪のない自分まで周囲から阻害されたり嫌な目に合わされたりすることになって、
 それでもあなたはその家族を愛せるだろうか

 ・・・ということを訴えているわけですね。


実は私は時任三郎さんのファンでもあるのさっ!
へえ、初耳ですが。
だって、これまで見た映画にはあんまり出てこないもんね・・・。
本作の時代設定は昭和末期、昭和63年・・・とかになってましたっけ?
だから、実際結構古い作品なのかとはじめ、思ったのですけどね。
 それにしては西島さんがそんなに若いわけではない。
確かにほんの5年ほど前の作品だもんね。
けど、なんだかノスタルジーを感じたのは、つまりは映画作りのうまさなんだろうか。
それもあると思うし、この海辺の町の雰囲気でもあるんだろうな。
西島秀俊さんも時任三郎さんも結構長髪なのがね、
 最もその頃の雰囲気を醸し出してるんじゃないかな。
そうかも。でも、そういう「ひと昔」じゃなきゃ成り立たない部分があるのだな。
えー?そうなの?
新聞記者が、ツヨシを隠し撮りして実名で記事にしちゃった。
 そんなこと今じゃありえないでしょ!!
ああ、そうだよねー。
 なんかあの写真とってるところで違和感を覚えたんだ。
 今なら肖像権ってのがあって、たとえ記事にしなくたって、
 本人に黙って写真を撮るなんていうのもほとんど犯罪行為だよねえ・・・
時代は変わるものです。
うーん、で、話としてはわかるんだけど、
 残念ながらなんだか伝わってくるものが薄いというか・・・。
 あんまり胸に迫らなかったなあ・・・。
残念でした。せっかく大好きな俳優二人揃いだったのに。

春よこい [DVD]
工藤夕貴,西島秀俊,時任三郎
ビクターエンタテインメント


「春よこい」
2008年/日本/108分
監督:三枝健起
出演:工藤夕貴、西島秀俊、時任三郎、宇崎竜童、吹石一恵

一昔前の日本度★★★★★
西島秀俊の魅力度★★★☆☆
満足度★★☆☆☆