映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

会津への旅 その6

2013年09月30日 | インターバル
3日目。
いささか、会津の歴史も昨日で食傷気味となりまして・・・
この日残った半日は、喜多方へ行くことにしました。

きれいに整備された喜多方駅。


駅から近いというだけで選んだお店ですが・・・。
構えはとても古く、昔ながらの「食堂」風。
気取らないところがいいですね。




とっても美味しかったのですが
札幌でラーメンを食べつけている身からすると
「特別」というほどではないかな・・・?

ともあれ、ラーメンを一杯食べただけで、
あとは帰路につきました。

会津若松市のマンホール


北海道人には柿の木が珍しく感じられるのです。
北海道には通常柿の木がないので…


郡山駅


福島空港に怪獣とウルトラマン!!




福島は、あの円谷監督の出身地だそうで・・・
だから、待合室にこれがある。
知りませんでした~。


ともあれ、心地よく疲れながらも3日目夜、無事帰宅。
おみやげはこれ。




せっかくの「会津まつり」期間だったのですが
そのイベントにはほとんど触れず、ひたすら会津の歴史をたどっていました。
でも、会津のみな様の熱意に触れ、とても楽しく過ごせた3日間でした。

そうそう、会津は野口英世のゆかりの地でもあり、
野口英世記念館や青春通りなどというのもあったのですが
今回はスキップしてしまいました。
お許しを。



会津への旅 その5

2013年09月29日 | インターバル
まだ二日目~
白虎隊の悲劇の地、飯盛山であります。

この日は、散々歩き回って既によれよれ。
しかし、当然ながら、白虎隊の終焉の地ははるかに長い階段の上にあります。
でも、その階段の横にスロープコンベアがあるではありませんか!!
有料ですが、迷わずそちらを利用(^_^;)


白虎隊のお墓











自刃の地から鶴ヶ城を見たもの

丸部分、はるかに見えるのが鶴ケ城ですね。
白虎隊の少年たちは、ここから鶴ヶ城が火に包まれている、と見て
絶望し、あとに続けとばかり集団で自刃しました。
でも実際は、手前の町並みが燃えていて、
その時鶴ヶ城は無事だったのです。

日新館でいろいろな知識を身につけた彼らですが、
このような精神構造をも、そこで身につけたというのには
複雑な気持ちがします…。






不思議な形の さざえ堂



江戸時代後期に建てられた六角三層の仏堂です。
渦巻き!!


白虎隊記念館にも、もちろん寄りまして
気分はすっかり幕末。
う~ん、重い・・・。
そして、疲れた・・・。

会津への旅 その4

2013年09月28日 | インターバル
二日目、次に訪れたのは、御薬園


歴代会津藩主の別荘・庭園です。
様々な薬草も栽培されています。
季節によって色々な趣きが楽しめそうな、美しい庭園です。















キノコも!


皇室にゆかりのある旅館を移築した「重陽閣」



そして、会津武家屋敷
会津藩家老・西郷頼母の邸宅を復元したもの。








鎧などの展示もあり


西郷頼母といえば、
戊辰戦争のおり、奥方や子どもたちが「敵の手にかかるよりは・・・」
ということで、集団で自刃したという悲壮な話が残っています。
その、人形による展示もありましたが、そこは写真に撮るのはやめました…。

水車による精米小屋を復元したものがあり、
実際に動いていて、これはなかなか素晴らしかった!!

池には鯉が沢山。


何故かカマキリも!

会津への旅 その3

2013年09月27日 | インターバル
二日目は、まちなか周遊バスに乗って市内の名所を回りました。

「ハイカラさん」と


逆回りの「あかべぇ」



二種類のバスがあって、500円のフリーパスで
一日何度も乗り降りすることができます。


まずは、鶴ケ城
鶴ヶ城は、戊辰戦争で会津軍が立てこもったお城。
官軍の砲弾を浴びてボロボロになったのでした。


土井晩翠が作詞した「荒城の月」は
この鶴ヶ城がモデルだそうです。
荒れ果てたお城…
なるほど、すごく納得できます。

お城の上から




ゆるキャラも・・・


城内の麟閣

千利休の子、少庵が蒲生氏郷のために建てたといわれる茶室があります。


お城のほど近くにあったのが、これ。
山本覚馬・新島八重生誕地

そこは更地の駐車場で、
この看板だけが立っていたのでした…

でも、近くの民家の前に密やかにこの記念碑が

ご好意で置かせてもらっているので、うるさくしないように、
との注意書きあり。
はいっ!気をつけます!


それから、たまたまですが
私の好きな秋月悌次郎さんの碑も見つけました。
(この日はあちこち回ったので、どこでこれを見たのだったか
 忘れてしまった!!)




そして、これは外せない、
ハンサムウーマン八重と会津藩 大河ドラマ館


撮影可ゾーンにて






「八重の桜」ファンには、とてもうれしい展示があり、堪能しました。






会津への旅 その2

2013年09月26日 | インターバル
一日目の続き…
そろそろ夕方近くになってしまったので、
「七日町通り」というノスタルジックな建物、お店が並ぶ通りへ。


七日町駅

なかには駅カフェも


ステキなお店が並んでいます。







駅近くの阿弥陀寺には、新撰組・斎藤一のお墓があります。
「藤田家の墓」とありますが、藤田五郎と名前を変えていたそうで…。




この日9月21日から23日の3日間
ちょうど「会津まつり」が開催されていまして
街はとても賑わっていました。
けれど夕方5時を過ぎた頃から
パタパタとお店が閉まり始め、人通りもめっきり少なくなってきました。

昨年安芸の宮島でも感じたことですが
健全な地方都市!
さっさと仕事はやめて、お家へ帰ってゆっくりしましょう!
こういうのは悪くないですね。

会津への旅 その1

2013年09月25日 | インターバル
このたび、会津若松市へ行ってまいりました。
昨年は広島の厳島神社。
今年は会津の鶴ヶ城。
モロに、大河ドラマのミーハー旅行なのですが、
でも何も知らずに行くよりは、少しでもその時代のことを知っていくほうが
ぐんと興味を増します(^_^;)
ということでご勘弁を…


さて、福島県の会津若松市。
我が札幌からは
千歳空港→福島空港→郡山→会津若松
という経路です。


郡山からこの列車に乗って


会津若松駅




「あかべこ」と「白虎隊像」に迎えられて…





この日はまず、「日新館」を訪れました。


日新館は、人材育成のため設立された会津の藩校。
多くの優秀な人材を輩出しました。
学問ばかりでなく、武道や武士としての作法なども・・・
掃除も自分達でしたそうで、
これが、「掃除当番」の始まりかあ・・・と納得。








池では水練も


敷地8000坪と、思ったよりも大きな施設なので驚きました。
元々は鶴ヶ城のそばにあったのですが、
別のところに復元したものです。

「ならぬことはならぬものです」
という「什の掟」


今の子どもたち向けには、こんな感じ


お侍さんの子弟は、今の受験生以上に身につけなければならないことがあって
大変そうです…。


※会津の旅が6日間続きます!!
 なお、写真に写り込んでいるのはただの通りすがりの人たちですので、誤解なきよう。
 

すーちゃん まいちゃん さわ子さん

2013年09月24日 | 映画(さ行)
恋愛・結婚・仕事に揺れる30代



* * * * * * * * * *

益田ミリさんのコミック「すーちゃん」シリーズの映画化。
恋愛・結婚・仕事に揺れる30代女性の日常を描いています。



すーちゃん(柴咲コウ)は、カフェに勤め、調理を担当しています。
近頃、ここのチーフマネージャーのことが気にかかる。



まいちゃん(真木よう子)は、OA機器メーカーに勤めるキャリアウーマン。
つきあっている彼には妻子があって、落ち込み気味。



さわ子さん(寺島しのぶ)はWEBデザイナー。
母とともに祖母の介護をしています。




三人はかつてのバイト仲間で、10数年経った今も親しく、
時折集まっては食事をしたりおしゃべりしたり・・・。
女の人生は、やはり結婚が大きな分かれ道。
30代独身ともなれば、どうしてもそのことがプレッシャーになります。
男性は結婚で人生が大きく変わるなんてことはないのに、
なぜ女性ばかりがそこで人生の転換を図らねばならないのか・・・。
結婚と出産は切っても切れない事だから仕方ないとは思いながら、
割り切れない思いがします。
・・・と言いながら、実は私は結婚し子供ができてもずっと同じ仕事を続けてきました。
これはただ単に制度に恵まれていたというだけのことなのですが、
逆に制度さえしっかりしていられれば、誰にでも可能ということなのですよ。
まだまだ男中心の社会。
変える余地は十分すぎるほどあるのです。




本作、不倫に揺れるバリバリのキャリアウーマンというのが真木よう子さんの役どころで、
らしいなあ・・・と思ったのですが、
一番意外な結末に収まったのも彼女でした。
結婚のために、大きく人生の方向転換を図る彼女。
う~ん、でも彼女ならそれこそ子育てしながらでも頑張って仕事を続けていけたのではないかなあ・・・、
とちょっと残念でした。
ここのお嬢さんたちには「どちらか」という選択しかないのでしょうか?
もっと当たり前に、男と女が働きながら子供を育てていく、
そういう社会は依然として遠そうですねえ・・・。

すーちゃん まいちゃん さわ子さん [DVD]
柴咲コウ,真木よう子,寺島しのぶ
ポニーキャニオン


すーちゃん まいちゃん さわ子さん [Blu-ray]
柴咲コウ,真木よう子,寺島しのぶ
ポニーキャニオン


「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」
2012年日本/106分
監督:御法川修
出演:柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ、木野花、銀粉蝶
30代女性の日常度★★★★☆
満足度★★★☆☆

「さくらゆき 桜井京介returns」 篠田真由美

2013年09月23日 | 本(ミステリ)
中年の桜井京介だけど

さくらゆき 桜井京介returns (講談社ノベルス)
篠田 真由美
講談社


* * * * * * * * * *

パーティ会場で衆人環視の毒殺。
書斎に置かれた浴槽の中の死体。
学校に届いた脅迫状に記された謎の言葉……。
蒼が桜井京介が神代教授が、再び魅惑的な謎を解き明かす。
書き下ろし短篇「さくらゆき」ほか三編を収録。


* * * * * * * * * *


待ちに待った、建築探偵シリーズの続編。
もう一ヶ月も前にでていたのですね・・・
。全然気づいていなくて、見過ごすところでした。
最近書店のノベルスの棚はほとんど若い人向けの物が多くて、
あまり見ていなかったですからねえ・・・。


さて、続編。
「一応完結しておきながら、続編ってどうなのか・・・」、
については、本作巻末で何故か神代教授があとがきとして述べておりますが、
いやいや、ファンとしては全然文句はありません。
その後の登場人物と出会えるだけで、十分幸せ。


短編3作と、書きおろし!一作。
時はなんと一気に進んで2012年。
神代邸に京介と蒼が相変わらず居候。
蒼はなんと高校のスクールカウンセラーなどをしている34歳!! 
京介は自称「家政夫」40代。
あらら・・・お年を召しましたこと。
でも皆さんお元気そうで、感無類。
本巻には登場しませんが、深春は二児のパパに。
うーむ、このようなことばかり印象に残っていまして、
肝心のミステリの内容はどうでも良くなってしまっているという・・・。
著者には申し訳ないのですが、そういうことです。
そして本作で登場した印象的な少女、庄司ゆき。
著者は今後この少女をまた登場させようと目論んでいるようですが・・・。
本作で、女はあくまでも脇役。
あまり目立つと返って嫌われますよ・・・。


とにかく、桜井京介ファンのためのサービスみたいな本です。
ついでに本作で、高校生から見た40代桜井京介。

コットンシャツにジーンスの服装や、
ろくに床屋にも行かずに放ってあるような、肩に届きそうなくらいの油気のないぱさぱさの髪や、
低くもかすれてもいない声を聞くと
大学生でもおかしくないくらい若く感じるけど、
身にまとう空気はさらっと乾いていて、
でも冷たいという感じではなくて、
年寄り臭いといえば聞こえが悪いけれど、
押しつけがましいとかずうずうしいとかエネルギッシュとかいう言葉の対局とでもいうか。
気がついてみるとすごく目鼻立ちの整った、美しい顔の人だった。
高すぎない鼻筋がすうっと通って、
顎のラインが絵に書かれたみたいにきれいだ。
肉の薄い頬が白くて、
でも貧相に見えないのは唇のふくらみがバランスをとっているからだろう。
その顔に、妙に無骨な黒縁の眼鏡をかけているのが、
はっきりいって似合わない。


長々と引用してしまいました。
つまり、相変わらず、なのでした。
あまり想像がつかないのですが、
俳優さんに例えると誰になりましょうか・・・?
まあ、それぞれの好みで勝手に想像すればよいのですね!

「さくらゆき 桜井京介returns」篠田真由美 講談社ノベルス
満足度★★★★☆

三年身籠る

2013年09月22日 | 西島秀俊
父親の自覚を身につけるまで



* * * * * * * * * *

えーと、今作の原作・脚本・監督を務める唯野未歩子さんって、
なんだか最近見たことのある名前、と思ったら
この間見た「いたいふたり」のなつさんだね。
そうなんだあ。才能のある方なんだなあ・・・。
ん~、でも本作の主人公は最近何かと話題の中島知子さんだし。
いまさらながら話題性のある作品だよね・・・。
まあ、そういうこと。
彼女についてのおかしな話題がまだなかった時の作品です。
さて、今作は題名がすべてを物語ってるよね。
三年身籠る・・・? 
つまり3年間ずっと妊娠中ってこと? 
あー、京極夏彦にそんなのがあったよねえ。
あ、いやいや、本作はそういうミステリでも怪談でもなくてね、
まあそれは寓話みたいなもので、
とにかく27ヶ月妊娠状態だった若妻とその夫や家族の様子をコミカルに描いているのです。


女系家族というのかな、とにかく女ばかりの家に育った冬子(中島朋子)は妊娠9ヶ月。
ちょっとのんびり屋。
しかし、夫・徹(西島秀俊)は父親になるなどという自覚はまるでなく、
夜毎愛人と遊び歩いている・・・。
そんな夫の浮気を冬子はさすがに気づくのだけれど・・・。
問題はそこから。
子供がいつまでたっても生まれてこない。
妊娠18ヶ月。
徹は愛人にフラレて目が覚めたか? 
超身重の妻を気遣い始める。
しかしこの子は本当に自分の子供なのだろうか?
もしかしたら冬子が以前に付き合っていた男が宇宙人か何かで、
そのせいでこんなことになったのでは・・・?
などと妄想をふくらませたりして。
この子が生まれてこないのは実は自分の浮気のせいではないか・・・と薄々気づいてもいるわけだ。
ところがこの長い妊娠のことが世間で話題になってしまい、
何かと身辺がうるさくなってきた。
二人は人里離れた山中に移り住み・・・
妊娠27ヶ月! 
しっかり浮世離れしてきた徹は、家のことや料理、超々身重の冬子の世話もお手の物。
いつかきっと生まれてくる子供を心待ちにしている。
父親の資格十分!!
いやまあ、そこでも一波乱はあるんだけどね・・・


なんでしょう、つまりこれは男が父親の自覚を身に付けるまで3年もかかるってことなのか。
徹の変わり方がテーマなんだろうと思うね。
でも実のところ、さっさと生まれて実際に手のかかる赤ちゃんを目にしたほうが
よほど早く父親の自覚が芽生えるんじゃないかって気がするけどねえ。
はは、それを言っちゃあ、おしまいだ・・・。
冬子の妹・緑子が面白かったねえ。
彼女も女ばかりの家に育ったせいか、父性に憧れてるわけだ。
それで親子ほど年の離れている男が恋人。
いや、確かに最初はどうかと思ったけど、なかなかこれが“大人”の人物だよね。
うん、冬子と緑子は一見性格がぜんぜん違うように見える。
だけど、男に父性を求めるあたり、二人はそっくりだと彼は言うよね。
この姉妹の家系が女系家族っていうのには、なにか意味があるんだろうか。
はじめの方でさ、彼女たちの間で、
男は缶やビンの蓋を開けるときにしか役に立たないって思われてたよね。
そうそう、笑っちゃった。
確かに子供生むときに男なんて何の役にも立たないわけだけど・・・
いやでも、やっぱり男は必要だ、家族は男女で築くべきものだって、
そう言いたいんじゃないかな・・・。
なるほど。
27ヶ月お腹にいた赤ちゃんは、生まれてすぐに歩けてしまう1歳半、というのはどう?
そりゃいいけどさ・・・、その間ずっとお腹の中というのが辛すぎるよ~。
やっぱり卵で産んで、あとは適当に温めておけば生まれてくるっていうのがいいなあ・・・。
それだと全く親の自覚は芽生えないかもね・・・

三年身籠る [DVD]
唯野未歩子,唯野未歩子
東映ビデオ


「三年身籠る」
2005年/日本/99分
監督・脚本:唯野未歩子
出演:中島知子、西島秀俊、奥田恵梨華、塩見三省、木内みどり
家族再生度★★★☆☆
西島秀俊の魅力度★★★★☆
満足度★★★☆☆

許されざる者

2013年09月20日 | 映画(や行)
一元的には語れない正義、人を殺める側の痛み



* * * * * * * * * *

1992年クリント・イーストウッド監督・主演作品のリメイク。
本作の製作が発表された時には、ひどく意外な感じがしたものでした。
あれを日本で…?! 
でも出演に渡辺謙、佐藤浩市と来たら、
自然に期待は高まってしまいます。


舞台は明治初期北海道。
北海道というのがまた、ミソですよね。
広大な大地を馬が駆けまわる。
先住民が居て、開拓者がいる。
考えてみれば西部劇の舞台とそっくり。
ストーリーは元作品をほぼ忠実になぞっています。
まあ、こちらを参照にしてくださいませ。
→クリント・イーストウッド版「許されざる者」



かつて人斬り十兵衛と呼ばれるほどに、
人を殺しまくった釜田十兵衛が渡辺謙さんの役どころです。
これはもう、他の誰にもできない、
まさしく渡辺謙さんピッタリの役。
しかし、今は亡き妻と、もう殺人はしないと約束しているのです。


そこへ儲け話を持ってきたのは、かつての仕事仲間、金吾。
これが柄本明さんで、初めてこのポスターを見た時に、
思わず、「あ、モーガン・フリーマン!」と思ってしまった。
まさに和製モーガン・フリーマンの風格であります。


そして、もう一人この話に加わるのが、
山育ちのチンピラ兄ちゃん風、柳楽優弥さん。
ひゃ~、あの、大好きだった「誰も知らない」の美少年が、
こうなりますか・・・。
しかし、なかなかいいじゃないですかね。
ここに、ウラナリの美青年が出てきてもリアリティがないし。
おそらく、ご本人自身が「美少年」のイメージから脱却したかったのだろうなあ
・・・と、それは感じられます。




それから、意外な登場人物、滝藤賢一さんは、
新聞記者・・・というか、今でいうライターですね。
この方、近頃TVドラマでよく目立つ。
私などよく名前も存じ上げなかったので、
職場の同僚と「ワンさん」と呼んでいましたが、
ようやく最近名前を覚えたところです。


そして、作中の敵役、大石一蔵が佐藤浩市さん。
さて、ところが色々な映画評を見ると、
この人物の背景が見えない、人物描写が浅い・・・というような意見が多い様に思いました。
(俳優の問題ではなくて、脚本の問題と注釈をつけながらですが。)
私も、そこにはうなずける気がしました。
(とはいえ佐藤浩市さんは迫力はあったのだけれど、
どこか悪人にはなりきれない感じが微妙にあるかな?) 
悪人と言うか、そうせざるを得ないポリシーみたいなもの。
虐げるもの、虐げられるもの。
搾取する側、搾取される側。
そして生きようとする側、殺す側。
これらが渾然となり、複雑な模様を描いていく。
これは元作品でも同じです。
そんな中で、正義とは何なのか
一元的には語れない難しさをテーマにしていると思うので、
大石の描き方も、もう少し深めて欲しいところではあります。




そして、普通西部劇やチャンバラでは
実にあっけなく人を殺し、人が死ぬのですが、
本作は切られた方の痛みはもちろん、
人を殺す方の“痛み”をしっかり描いているのです。
余程の気力と覚悟がなければ人を殺めることはできない。
クリント・イーストウッド版も良かったのですが、
本作はそれ以上に泥臭く重厚に、
まさしく東洋風味でレベルアップしていると思います。



北海道上川町でのロケは、
ライフラインもないところに資材を運び込んだり、
クマ対策で電気柵をめぐらしたり、
大変だったようです。
そして寒さも。
よく映画作品の雪のシーンで、
ちっとも寒そうではなくて物足りなかったりすることも多いのですが、
本作はまさしく凍てつく北海道の風景、
スタッフの皆様のご苦労が忍ばれますが、報われていると思います!!




「許されざる者」
2013年/日本/135分
監督:李相日
出演:渡辺謙、佐藤浩市、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里

重厚度 ★★★★★
開拓期の北海道度★★★★☆
満足度★★★★★


「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」 村上春樹

2013年09月19日 | 本(その他)
周囲の人とは少し違う、あまり普通とはいえない部分を持つ自分

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
村上 春樹
文藝春秋


* * * * * * * * * *

良いニュースと悪いニュースがある。
多崎つくるにとって駅をつくることは、
心を世界につなぎとめておくための営みだった。
あるポイントまでは…。


* * * * * * * * * *

言わずと知れた大ベストセラー。
ちょっと天邪鬼の私はそういうのは避けたい気持ちもありながら、
でもやっぱり村上春樹作品は気になってしまいます。
とはいえ今どきでは「やっと」ですが、
このたび手に取りまして・・・そして、堪能しました。


まず、「色彩を持たない多崎つくる」とは・・・。
彼は高校の頃、4人の友人がいました。
男3人女2人のこのグループは、
まるで正五角形のように乱れなく調和した関係に思われた。
ところが、ある日突然、他の4人から絶好を申し渡されたのです。
どう考えても自分に何か非があったとは思えないにも関わらず。
その四人の名前にはアカ、アオ、クロ、シロというように
何かしら「色」の文字が入っていた。
だから、「色」の文字を持たないつくるは思うのです。
皆それぞれ個性があって魅力的だ。
しかし、自分は何の色も持たないつまらない人間なのだ。
自分は空っぽの人間だ。
だから、人は一旦親しくなっても自分の魅力のなさに気付いて
そのうち去っていってしまうのではないか・・・。


理由もわからず、友に見放されたつくるは、
まるで夜に船から突き落とされたように感じます。
夜の海をたった一人で泳がなければならなくなった・・・。
そのことが彼に影を落としたまま、年月が過ぎ・・・。
36歳になったつくるは、
付き合い始めた女性・沙羅に初めてこのことを打ち明けるのです。
彼女は言う。
いま、友人達に会ってその時の理由を確かめるべきだ、と。
そのことをきっかけに、つくるは友人達を訪ね歩くことになるのですが、
そのことが「巡礼」ということになるのでしょう。
でも「巡礼の年」にはもう一つ意味があって、
それは本作で重要なモチーフ、フランツ・リストのピアノ曲の題名。
それは「1Q84」の中の「シンフォニエッタ」と同様、
作中のいたるところで流れる象徴的な曲なのです。
もちろん、私はその曲を知るよしもありませんが、
やはり聞いてみたくなりますね・・・。


つくるの巡礼は遠くフィンランドヘまでも足を運ぶことになりますが、
そこでのクロとの邂逅が終着点でもあります。
密やかにハグをする二人に、私は
五角形の均衡が崩れた結果、一つの点となって収束したように思われました。


つくるは4人の友人達と別れる以前の少年期から
自分のことをこんな風に感じていたという記述があります。

「目立った個性や特質を持ち合わせないにもかかわらず、
そして常に中庸を思考する傾向があるにもかかわらず、
周囲の人々とは少し違う、
あまり普通とはいえない部分が自分にはある(らしい)。」


それこそが彼の、そしてこのストーリーの魅力といっていいかもしれません。
そして実はどんな人の中にもこんな気持が実はあるのではないかなあ・・・と。
だからつくるは特別であって特別ではない。
私達が彼を好きに思えるのは、それだからこそなのかもしれません。


さて本作、誰もが、えっ!!ここで終わってしまうの?と思うはずです。
もちろん私もその一人。
でも本作でわかってきたのは、つくるは「駅」の役割ということでした。
人々が大勢集まるけれども、やがて去っていってしまう場所。
それを考えると結論は見えているのかもしれません。
いやしかし、だからといって、それに固執する必要もないですよね。
もちろん。
想像の余地がありすぎて悩んでしまうラスト。
おそらくどちらにしても不満が残ってしまうのでしょうし、
これはこれでヨシとしましょう。


勝手な想像ついでに・・・、
本作では学生時代につくると親しくしていたけれど
突然彼の元を去ってしまった灰田についての真相も語られないままです。
私は灰田は既に亡くなっているのではないか思うのです。
人はそれぞれある種の色を持っているが、
ごくごくまれに「ある種の色と、ある種の光の濃さを持っている」人間がいるという。
灰田は自分の命と引き換えに、それを見る能力を身につけたのではないか。
その能力で、つくるこそがその特殊な色と光を持っていることを確かめたかったから・・・・。
たぶんこれが正解だと思うのですが・・・。


「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹 文藝春秋
満足度★★★★★

ボクたちの交換日記

2013年09月18日 | 映画(は行)
夢は叶うとは限らないけれど



* * * * * * * * * *

売れないお笑いコンビ“房総スイマーズ”は、
結成12年目なれど、泣かず飛ばず。
なんとかこの現状を変えたいと思い、
お互いの本音をぶつけあうために「交換日記」を始めます。
提案したのはムードメーカーの孝志(小出恵介)。
高校時代の彼はいつもクラスメートの笑いの中心にいました。
ネタを書くのは洋平(伊藤淳史)の方で、
クラスメートの孝志に誘われこの道に足を踏み入れたのです。



「このノートで交換日記を始めよう」孝志の提案に、洋平はたった一行、
「嫌です。」


まあ、それでもとにかく交換日記は始まりました。
これまで自分達のことをあまり真剣に話したことがない二人。
二人の日常や思いを綴ったこのノートは、次第に重みを増していきます。
そして、二人はお笑いコンテスト“笑軍”に出場することになりますが・・・・。



テレビでもてはやされる芸能人はほんの一握り。
それすらも、人気があるのはほんのいっときなどということもある、大変厳しい世界ですね。
長くずっと夢を追いながらかなわないもの、
チャンスを掴んで才能を開花させるもの・・・。
お笑い芸人の内情を知る内村監督ならではの作品かもしれません。



この二人はそれぞれに善き伴侶を得るのですが、
それはちょっと出来過ぎかもしれません。
でもまあ、こういう女性が支えているからこそ、
たとえ夢を捨てたとしても頑張ることができるということなのでしょう。
ホロリとさせられる良作。

「ボクたちの交換日記」
2013年/日本/115分
監督:内村光良
原作:鈴木おさむ 「芸人交換日記“イエローハーツの物語”」

ボクたちの交換日記 [DVD]
伊藤淳史,小出恵介,長澤まさみ,木村文乃,川口春奈
ジェネオン・ユニバーサル


ボクたちの交換日記 [Blu-ray]
伊藤淳史,小出恵介,長澤まさみ,木村文乃,川口春奈
ジェネオン・ユニバーサル


男の友情★★★★☆
人生の哀愁★★★★☆
満足度★★★☆☆

クロワッサンで朝食を

2013年09月16日 | 映画(か行)
クロワッサンはスーパーでなく、パン屋で買うものよ。



* * * * * * * * * *

老齢人口の増加は、世界共通であるらしく、
いかに“老い”を生きるか、
そういうテーマの作品がとても多いですね。
いえ、自分がそういう年齢になりつつあるからこそ、
気になってしまうのかもしれません。


エストニアで、長い介護生活の末、母親を看取ったアンヌ。
ちょっと放心状態だったのですが、
あこがれのパリで、家政婦の仕事があると聞き、パリにやって来ました。
その家の主は高級アパートに一人住まい、実に気難しい老女フリーダ。
彼女はエストニア出身で、自由奔放に生きてきたのですが、
まあ、言い換えれば身勝手で、わがまま。
友人らしい友人もいなく、孤独です。

しかし、かつての年下の恋人ステファンだけが、
彼女のことを気遣い、彼女のもとに家政婦をよこしたのでした。
まあつまり、ステファンはフリーダの若きツバメであったわけですが、
その彼も今では立派な中年。



さてフリーダは、アンヌが来た早々、
「家政婦なんか要らない」と、クビを言い渡します。
アンヌがステファンにそれを告げると、
今までもそんな調子で何人もの人が辞めていったことが明かされます。
しかし、このまま何もせず逃げ出すのか、とも。
それで、もう少し頑張ってみようかなと引き返すアンヌ。


パリのご婦人が、クロワッサンを食べたいといえば、
どんなものがいいかもよくわかっていなかったアンヌも、
まあ、田舎育ちで仕方ないのですが・・・。
ああ、そういえばアンヌはフリーダの家で外靴を脱いだのですが、
脱がなくてもいいのだと教えられていました。
日本人でもやってしまいそうです。
少なくとも、部屋履きには絶対履き替えたい! 
エストニアでは室内で靴を脱ぐのが普通だそうで、
親近感が湧いてしまいました。



まあとにかく、少しずつフリーダがアンヌに心を開いて行く、
そういうストーリーです。
でもそれは、単にフリーダがアンヌに歩み寄るというわけではないのですよね。
アンヌの方も、少しずつフリーダのこれまでの人生や、好みや、気性を理解し、
共感していくのです。


老いても自分らしく生きよう。
周りに迎合なんかしなくていい。
本作はそういうメッセージであると思いました。
作中アンヌはフリーダについ、こう言ってしまいます。
「あなたが今孤独なのは、過去のあなたの行いの責任よ。」
まさしく、事実です。
だからといって、いまさら自分を変えられるのか? 
過去を消すこともできないし・・・。
自分のことは自分で引き受けるしかないのだと、
厳しい現実ですが、そのことを受け入れた時にようやく心に平安が訪れる。
そういうものかもしれません。
ただし、既にフリーダにはアンヌとステファンという友人がいるのでした。
お金もあるし・・・。
ウラヤマシイくらいの老後なんですけどねえ・・・。



2012年/フランス・エストニア・ベルギー/95分
監督・脚本:イルマル・ラーグ
出演:ジャンヌ・モロー、ライネ・マギ、パトリック・ピノー、フランソワ・ブークラー
フレデリック・エポー

共感度★★★★☆
満足度★★★★☆

「さいはての彼女」 原田マハ 

2013年09月15日 | 本(その他)
自分で引いた“線”を越えよう

さいはての彼女 (角川文庫)
原田 マハ
角川書店(角川グループパブリッシング)


* * * * * * * * * *

25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。
猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、
絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。
失意のまま出かけた一人旅のチケットは行き先違いで、
沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別!?だが、
予想外の出逢いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。
人は何度でも立ち上がれる。
再生をテーマにした、珠玉の短篇集。


* * * * * * * * * *


この本を通してのテーマは旅。
都会の生活につかれた女が、
一人旅をして、自分を取り戻す・・・という、
まあ、ちょっと類型的な話かなあ・・・と、
面白くはあったのですが、思ってしまったのです。
でも最後の作品でちょっと「おっ」と思いました。


冒頭の一作「さいはての彼女」が、先の紹介文にある内容です。
北海道・女満別に降り立って、
涼香がであったのは、一人の女の子。
ハーレーダビッドソンにまたがり、ツーリングをしている
とびきり明るく元気でイキイキとした女の子です。
彼女のお陰で涼香は救われることになるのですが・・・。


ラストの「風を止めないで」は、この話の裏の物語といっていいでしょう。
娘を送り出して帰りを待っている母親。
そこでこの少女ナギの詳しい生い立ちも語られます。
実はナギには耳が聞こえないという障がいがあるのです。
子供の時、ナギは父親に言って泣きました。

耳の聞こえる人と、自分との間に見えない「線」がある、
と。

けれど父親は言います。
そんな「線」は、どこにもない。
もしあるとすれば、それは耳が聞こえる人が引いた「線」ではなくて、
おまえが勝手に引いた「線」なのだと。
いい言葉です。
でも世間では確かに、耳が聞こえる人が線を引いてしまっているのではないかな。
障害のある人に対して、線を引いてしまっているのは
たいていは健常者のほうだ・・・。
と、ちょっと苦い気持ちになりました。


けれどこの本の解説で吉田伸子さんが言っています。

「結婚しているとかしていないとか、
子供がいるとかいないとか、
仕事がどうとか家庭がどうとか、
そんなのはみんな自分が勝手に引いた「線」なのだ。
軽やかに越えていこうよ。越えられるよ。」


あ、なるほど、著者が言いたかったのはそっちのほうだったか、
と、納得した次第。


主婦でオバサンだけど・・そんなことにとらわれないで、
思い切ってやりたいことをすればいい。
そういうことでした!!

「さいはての彼女」原田マハ 角川文庫
満足度★★★☆☆

レッド・ライト

2013年09月14日 | 映画(ら行)
謎は謎のまま、信じさせてほしい



* * * * * * * * * *


物理学者であるマーガレット・マシスン(シガニー・ウィーバー)と
その助手トム・バックリー(キリアン・マーフィー)は、
超常現象を科学的に調査しています。
これまで多くのインチキ霊能者を看破した実績があります。
そんな中、しばらくマスコミから姿を消していた、
サイモン・シルバー(ロバート・デ・ニーロ)がまた活動を始めます。
彼は1960年~70年代、超能力者として一世を風靡していたのです。
早速彼も調査しようというトムに、
マーガレットは何故か怯えたように、彼は危険だから近寄らない方がいいという。
マーガレットの制止を無視し、
サイモン・シルバーに近づくトムの身の回りで
驚くべき現象が次々と起こり始めますが・・・。



インチキな超能力や霊能力を暴くのは爽快ではありながら、
どこか謎は謎のままに信じさせておいてほしい、
そんな気持ちもあるものですね。
作中でも、マーガレットが全ての超常的なことを否定しようとすると、
ではあなたは神を信じないのか?と問い詰められてしまう。


マーガレットもトムも、心の底に傷を持っていて、
自分の信じるところを貫くことで、それを乗り越えようとしていることが伺われます。
様々な超常的なことについて、
科学で証明できないことなどないと信じる事こそが、
自分の生き方を肯定することであると。
それはまるで霊能者に傾倒し依存しきってしまうことの、裏返しのようにも思えてきます。


では、どう考えても普通ではない後半の様々な事象は一体何なのか?
虚をつかれるラストに、
あ~なるほどと、作品としての構成の妙に納得させられました。



でもサイモン・シルバーの最も疑うべきところに
ようやく最後に気づくと言うのはちょっとお粗末かも知れません。
が、なんだかつい信じてしまいたくなるロバート・デ・ニーロの風格に免じて、
ヨシということにしましょう。

レッド・ライト ブルーレイ&DVDセット (2枚組)(初回限定生産) [Blu-ray]
キリアン・マーフィー,シガーニー・ウィーバー,ロバート・デ・ニーロ,エリザベス・オルセン,トビー・ジョーンズ
ワーナー・ホーム・ビデオ


「レッド・ライト」
2011年/アメリカ・スペイン/113分
監督:ロドリゴ・コルテス
出演:キリアン・マーフィー、シガニー・ウィーバー、ロバート・デ・ニーロ、
エリザベス・オルセン、トビー・ジョーンズ

オカルト度★★★☆☆
満足度★★★☆☆