教授、母を想う
* * * * * * * *
この作品、最新刊は31巻まで出ているのですが、
私がぼんやりしていて、この巻以降まだ読んでいませんでした。
が、ここで3巻もまとめて読めるのは存外の幸せであります。
この際、3巻連続でご紹介しましょう。
さて、この巻の表紙となっているのは、
206話「母のおもかげ」。
柳沢教授は、少年時にお母さんを亡くしているのですね。
お母さんのお墓参りに来た教授が、
お母さんの亡くなったときのことを回想しています。
当時から大人びた子で、お母さんに甘えたことなどないと思っていた良則少年。
父親が仕事で不在中に息を引き取った母の、
医師への連絡や、葬儀の手配、親戚への連絡をてきぱきとやりとげる。
妹や弟が泣き悲しんでいるというのに。
そんな息子を見た父親が、
亡き母の枕元に息子を呼び、
「母さんとちゃんと話をするように」
といって、二人きりにするのです。
僕は何事も無駄なくやって
ろくに母の顔も見ないで
でも いつもほつれがかがってあって
靴はぴかぴかで
僕は甘えることもしないで
でも いつも笑っていて
本当にきれいなお母さんです。
大人びた良則少年を理解し丸ごと受け入れて、
そしてちょっぴりおもしろがっていたようにも見受けられますね。
そうした大きな愛にきづいた良則少年。
いくつになってもお母さんは、おかあさん。
ちょっぴり切なさがこみ上げる一作でした。
「205話 ペンがない」
お母さんがデパートの試着室で着替えをして教授に
「おとうさん、どうかしらこれ」
と聞くのですが、教授はひとこと
「パンダのようですね」
さて、次の朝、お母さんは怒ってひと言も口をきかないのですが、
教授はぜんぜん気づいていない。
ところが出がけに、愛用の万年筆がなくなっているのに気がついて、
うろたえてしまいます。
いつもの時間より遅れて、髪を乱して出かけた教授を
娘の世津子が不思議そうに見送る。
実は怒ったお母さんが、隠してしまっていたんですね。
そのいきさつを聞いた世津子は
「そーいうところはわたしとヒロミツも 父さん母さんも同じなんだー」。
この万年筆は、お母さんがお父さんにプレゼントしたもので、
そのため余計に教授は愛着を持ってずっと使い続けていたわけです。
夫婦の機微といいますか、長い生活の呼吸が見えるようで、味わい深い一作。
でも結局最後まで、教授はお母さんが何故怒っているのか、
というか怒っていることにも気づいてなかったみたいですが。
でも、教授の「パンダ」発言には多分全く他意はないのでしょうね。
パンダみたいに太っているとか、
パンダみたいに可愛いとか、
どちらでもなくて、ただ単に見た目がパンダに似ている。
それ以上でも以下でもないのでしょう、きっと。
この場合、一度は腹を立ててしまったけれども、
お母さんはきっとそのことに気づいたのだと思います。
ところで本作のサブストーリー、
吉田准教授の教授への推薦の件が、
ラストページでニヤリとさせられるオチがあります。
他に、教授の孫、華子がお父さんのリストラを心配して、
何とか自分もお金を稼ごうと奮闘する
「204話 労働の価値説」も大好きでした。
「天才柳沢教授の生活 29」山下和美 講談社モーニングKC
満足度★★★★☆
天才 柳沢教授の生活(29) (モーニングKC) | |
山下 和美 | |
講談社 |
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この作品、最新刊は31巻まで出ているのですが、
私がぼんやりしていて、この巻以降まだ読んでいませんでした。
が、ここで3巻もまとめて読めるのは存外の幸せであります。
この際、3巻連続でご紹介しましょう。
さて、この巻の表紙となっているのは、
206話「母のおもかげ」。
柳沢教授は、少年時にお母さんを亡くしているのですね。
お母さんのお墓参りに来た教授が、
お母さんの亡くなったときのことを回想しています。
当時から大人びた子で、お母さんに甘えたことなどないと思っていた良則少年。
父親が仕事で不在中に息を引き取った母の、
医師への連絡や、葬儀の手配、親戚への連絡をてきぱきとやりとげる。
妹や弟が泣き悲しんでいるというのに。
そんな息子を見た父親が、
亡き母の枕元に息子を呼び、
「母さんとちゃんと話をするように」
といって、二人きりにするのです。
僕は何事も無駄なくやって
ろくに母の顔も見ないで
でも いつもほつれがかがってあって
靴はぴかぴかで
僕は甘えることもしないで
でも いつも笑っていて
本当にきれいなお母さんです。
大人びた良則少年を理解し丸ごと受け入れて、
そしてちょっぴりおもしろがっていたようにも見受けられますね。
そうした大きな愛にきづいた良則少年。
いくつになってもお母さんは、おかあさん。
ちょっぴり切なさがこみ上げる一作でした。
「205話 ペンがない」
お母さんがデパートの試着室で着替えをして教授に
「おとうさん、どうかしらこれ」
と聞くのですが、教授はひとこと
「パンダのようですね」
さて、次の朝、お母さんは怒ってひと言も口をきかないのですが、
教授はぜんぜん気づいていない。
ところが出がけに、愛用の万年筆がなくなっているのに気がついて、
うろたえてしまいます。
いつもの時間より遅れて、髪を乱して出かけた教授を
娘の世津子が不思議そうに見送る。
実は怒ったお母さんが、隠してしまっていたんですね。
そのいきさつを聞いた世津子は
「そーいうところはわたしとヒロミツも 父さん母さんも同じなんだー」。
この万年筆は、お母さんがお父さんにプレゼントしたもので、
そのため余計に教授は愛着を持ってずっと使い続けていたわけです。
夫婦の機微といいますか、長い生活の呼吸が見えるようで、味わい深い一作。
でも結局最後まで、教授はお母さんが何故怒っているのか、
というか怒っていることにも気づいてなかったみたいですが。
でも、教授の「パンダ」発言には多分全く他意はないのでしょうね。
パンダみたいに太っているとか、
パンダみたいに可愛いとか、
どちらでもなくて、ただ単に見た目がパンダに似ている。
それ以上でも以下でもないのでしょう、きっと。
この場合、一度は腹を立ててしまったけれども、
お母さんはきっとそのことに気づいたのだと思います。
ところで本作のサブストーリー、
吉田准教授の教授への推薦の件が、
ラストページでニヤリとさせられるオチがあります。
他に、教授の孫、華子がお父さんのリストラを心配して、
何とか自分もお金を稼ごうと奮闘する
「204話 労働の価値説」も大好きでした。
「天才柳沢教授の生活 29」山下和美 講談社モーニングKC
満足度★★★★☆