映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジャイアンツ

2011年01月10日 | ジェームズ・ディーン
ジェームズ・ディーンは永遠に

ジャイアンツ [DVD]
ジェームス・ディーン,エリザベス・テーラー,デニス・ホッパー
ワーナー・ホーム・ビデオ


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ジェームズ・ディーン最後の出演作です。
全部で201分、DVDなら2枚組という長大な作品ですが、
これがまた実にドラマチックな人生ドラマですね。


20世紀初頭のアメリカ西部テキサスが舞台です。
テキサス州ベネディクトの広大な牧場に、
東部から嫁いできた若妻レズリー(エリザベス・テイラー)。
彼女は聡明で活発。見るからに活き活きとした魅力に富んでいます。
そんな彼女が見たテキサスは、いかにも考えが古く思われる。
女性は政治の話しに口を出せないこととか、メキシコ人を人並みに扱わない偏見・差別の根強さとか・・・だね。
そんなことでしばしば夫ジョーダン(ロック・ハドソン)と意見が合わず、口論になる。
そんなとき、彼女は言うのです。
「私がこういう女だって、始めから解っていたでしょう? 
私は始め猫をかぶっていた?」
そうなんですよー。
お互い一目惚れしたようなのに、かみ合わない会話・・・。
それでも結婚しちゃった。
あえて、夫に合わせようとしないレズリー、私は好きですね。
たぶん、そういうと思った・・・。


あれ? それで、ジェームズ・ディーンはどこに出てくるの。
はい、それが、彼はこの大きな牧場のしがない下働き、ジェット。
いかにも無教養で品のない田舎者って感じです。
もともとジョーダンはこの男が気に入らなくて、追い出したいと思っていた。
でも、彼の姉がジェットを気に入っていて、
彼女の遺言により、この牧場の一部が彼に譲られた。
そしてジェットは若く溌剌としたレズリーに密かに思いを寄せていくんですね。
私は夫との関係が破綻したレズリーが、
ジェットに惹かれていく物語かと思ったんですよね。
しか~し、夫婦の絆は強かったんですよ! 
不倫物語ではなかったのです!!
この夫婦には一男二女ができ、時がどんどん過ぎ去っていく。
一方ジェットは譲り受けた土地で石油を掘り当て、
とんでもない富と名声を手に入れる。
しかし、彼は孤独のまま、ちっとも幸福そうではない。
ラストでは、レズリーがこの地に嫁いでから25年が立っています。
夫婦の危機を乗り越えながら、25年を共に過ごしすっかり馴染んでいる夫婦。
今はあまりにも簡単に離婚があるけれども、
こうして苦難を乗り越えて育む愛もあるという・・・、
今時逆に新鮮な気がしてしまうドラマなんですね。
天涯孤独なジェットをここまで支えてきたのはある一つの思い・・・。
これがまた胸を突かれますねえ。
いってみればテキサス版の“風と共に去りぬ”だなあ。
この土地に根付いた人々の人生ドラマ。
レズリーが育った東部は緑があふれる美しい街なんです。
しかし、このテキサスはだだっ広いばかりで、見渡す限りの荒野。
緑はほとんどない。
私ならノイローゼになりそうだ・・・。
でも、彼女は強いんです。
意地悪な小姑にも屈しない。
でもその小姑があっけなく死んでしまったので、ちょっと悪い気がしてしまいました・・・。


ジェームズ・ディーンは、前2作では家族とうまくいかない孤独なティーンエイジャーと言う役どころで、
今度は違うと思ったのですが・・・。
結局同じなのかも知れません。
虚勢を張り自分の弱いところをつつみ隠して、
孤独に打ち震える純粋なコドモのような青年・・・。
やっぱり、ジェームズ・ディーンのイメージそのままだね・・・。


この作品、20代の俳優さんたちが、終盤50歳くらいを演じますよね。
うん。今でこそメイクの技術とかCGでどのようにでも出来そうな気がするけど、
これは1956年の作品でしょ。
それにしてはとても自然に年とってました。
昔のメイク技術もバカにしたものではないよ。
24歳で亡くなってしまったジェームズ・ディーンの将来の姿をかいま見ることが出来た・・・ということで、何だか不思議な感じです。
この撮影終了後に、自動車事故で亡くなったということなんですね。
1955年9月30日。
それは日本で「エデンの東」が公開される直前のことだったそうです。

でも、フィルムの中では永遠に生き続ける。
俳優さんはそういう意味でシアワセだと思います。
いや、もう“フィルム”もなさそうなんだけど・・・
はあ、じゃ、なんていえばいいんでしょ。
ディスク?・・・味気ない世の中だなあ・・・。

1956年/アメリカ/201分
監督:ジョージ・スティーブンス
原作:エドナ・ファーバー
出演:エリザベス・テイラー、ロック・ハドソン、ジェームズ・ディーン、デニス・ホッパー

理由なき反抗

2011年01月09日 | ジェームズ・ディーン
お父さん、強く正しい家族のリーダーを務めていますか?

理由なき反抗 特別版 [DVD]
ジェームス・ディーン,ナタリー・ウッド,ジム・バッカス
ワーナー・ホーム・ビデオ


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「エデンの東」に続くジェームズ・ディーン主演作の第2作ですね。
17歳ジムは家庭内の不和から、つい反抗的態度に出てしまいます。
冒頭は、酔いつぶれた彼が警察署に連れてこられるシーンから。

シンバルをたたく猿のオモチャが落ちていて、
彼はそれに新聞紙を掛けて寝かせようとしたりしている。
本当は心の優しい子ということが解るよね。
ジムはとにかく自分の父親がふがいないと思っているんだね。
母親は独善的で、高圧的。
夫の言うことにはいちいち文句をつけるし、夫はそれにいいなり。
アメリカでは強く正しい家族のリーダー、という
確固とした理想の父親像というのがあるよね。
そう、今でこそ離婚された情けない姿の父親像はあふれているけれど・・・
まあ、それも本来の理想の父親像があるからこそ、その裏返しなんだろうなあ。
アメリカはともかく日本でも今はこういう父親像、どこにでもあるって感じ・・・。
だね・・・。
ともかく、ジムはそんな父親が嫌で嫌でしょうがない。
彼は友人たちから“チキン”と呼ばれることに異常に反応してしまうんだ。
チキンってのは、ひよっこ・・・まあ、“弱虫”みたいな感じかな。
それというのも、彼自身父親のことをそのように思っているからなんだね。
自分は決してそんな風にはならない、自分は違うぞ、と思っている。
それでつい、“チキン”と呼ばれることが嫌さに、
不良少年グループの挑発に乗って“チキン・ラン”をすることになってしまうわけだ。
その“不良”って言葉、何だか懐かしい気がするね。
そうだねえ。今はあんまり言わないかな。
ツッパリ?・・・というのも古いか。ヤンキー?
はは。アメリカではまさかヤンキーとはいわないよね。
まあ、いつの時代もティーンエイジャーは親に反抗するもんなんだよ・・・。
素直ないい子ばかりだったら気持ち悪い。
ここでジムに同調し仲間になるのがジュディとプレイトウだけど、
彼女らも結局家庭でうまくいっていないわけだ。
愛情不足・・・。
17歳くらいって、端から見るとオトナに近いけれど、
実はまだ子供で、親はしっかりと支えてあげないとダメ、ということかなあ。
その加減が実に難しいところだと思うんだけどね。
しっかりと相手の人格を認めつつ、愛と信頼を持って接するべきだ・・・。
言うのは簡単なんだけどねえ。
その年頃ってつまり、一人の人間としてのアイデンティティ確立の時なんだよね。
親としては何とかそれを助ける方向に働きかければいいんだろうな。
ジムってさ、いい奴だよね。
気持ちがまっすぐで、友達には思いやりがあって。
なのにどうして親を相手にするとああなってしまうのか・・・と、思わずにいられないけれど。
親もまた不完全な人間である、ということを受け入れられないのが、
やはりまだ子供だということなんだよ・・・。
なるほど・・・。


チキン・ランは、二人で崖に向かって車を走らせて、
先に車から降りた方が“負け”なんだね。
出来るだけぎりぎりまで乗っていた方が“勇気がある”ということだ。
しかし、この時相手のバズは失敗し車もろとも崖から転落してしまう。
ここのシーンは有名だよね。
私も、理由なき反抗というと、このシーンだけ、しっかり覚えていたよ。
でも、このドラマのさらに重要なシーンは、
終盤ジムたち3人が無人の屋敷に忍び込む当たりからだね。
忍び込んだその邸宅のからのプールではしゃぎ回る彼らは、やはりまだ無邪気な子供だ・・・。
そしてプレイトウというのが、本当に気の弱い孤独な子なんだ。
その彼が拳銃を持ち出す。
こういう子が拳銃を持つと怖い。簡単に暴走してしまうよね。
そうして、悲劇が起こる・・・。

若く繊細というジムの役柄、ジェームズ・ディーンにはまり役。
ステキです・・・。

1955年/アメリカ/111分
監督・原作:ニコライ・レイ
出演:ジェームズ・ディーン、ナタリー・ウッド、サル・ミネオ、デニス・ホッパー

エデンの東

2011年01月08日 | ジェームズ・ディーン
兄弟間の相剋、父への複雑な感情



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さあ、ジェームズ・ディーンシリーズをはじめまーす!
といっても3作だけだから、一気に連続でいっちゃいますねー。
この作品ね、実はTSUTAYA DISCASで1位で予約登録しても、
なかなか順番が回ってこなかったんだよ。
そうしたら、たまたま「午前10時の映画祭」でやってた!!
だから、ちゃんとスクリーンで見ることが出来たんだ。
ラッキーだったな。
うん、結構席も満席に近くて盛況だったね。
まあ、中高年、特にオバサンがほとんどだったけど・・・。
まあ、人のことはいえないので・・・。

さてこの「エデンの東」がジェームズ・ディーンの初主演作。
この作品で彼は一挙にスターダムに押し上げられるんだね。
この役柄とジェームズ・ディーンのイメージが実にぴったりだったからね。
態度は粗暴だけど実はナイーブで孤独な美青年・・・
思い切り母性本能をくすぐるんだよねえ・・。だからだよ。


オホン。
まずは「エデンの東」というこの題名の意味は・・・?
これは、ジョン・スタインベックの小説が原作なんだけれど、
旧約聖書のカインとアベルの物語を下敷きにしているんだね。
カインとアベルはアダムとイブがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟。
ある時二人はヤハウェの神に捧げ物をするのだけれど、
神はカインの供物を無視して、アベルの供物ばっかり褒めたんだね。
アベルに嫉妬したカインは、アベルを殺してしまう。
その罪により、カインはエデンの東の土地へ追放されてしまう。
そこから取った題名ということだね。
兄弟というのは人生で始めに出会うライバルなんだよね・・・。
人類初の殺人事件かあ・・・。
カインとアベルの名前はしばしば兄弟間の相剋を表す代名詞みたいに使われるよ。
そうなんだね。この作品で父親の名がアダム。
二人の息子がケイレブ(通称キャル)とアロン。
ということで、かなり原点を意識しているんだな。


舞台設定は1917年カリフォルニア北部。
父アダムは信仰深く、常に正しいことを行おうとする人物として描かれる。
兄アロンはそれにそっくりなんだね。
だから父親には受けがいい。すべて彼の期待通り。
だけど、弟キャルは粗暴でひねくれていて、だめな奴
・・・と、父親は思っている。
兄、弟って言うけど、この作品では双子ということになってるね。
うん、似てないから二卵性だね、きっと。
たぶん、年のせいでこうなってしまったのではなくて、
生まれながらの相違ということを強調したかったんだと思う。
それから、二人の母親は死んだと聞かされていたのだけれど、
実は、彼らが生まれてまもなく家を出て、今は近くの街でいかがわしい酒場を経営している。
この映画の冒頭は、そういう噂を聞いたキャルが母を訪ねるシーンから始まっているわけだ。
その母というのは、型にはまらないというか奔放な人なわけだね。
うん、つまり、あまりにも堅苦しくて“正しい”夫に耐えられず、家を出たんだね。
そのとき夫が引き留めようとしたので銃で撃った・・・というから半端じゃない。
キャルはその母の気性を強く受け継いだといえるわけだ。
そうだからこそ、父に受け入れられないのだということも解ってくる。
でも、彼には自分自身の存在をまず受け入れてくれる存在が必要だったんだよ。
自己がきちんと形成されるためには、やはりそれは大切なことなんだよね・・・。


父は、レタスを冷凍保存して売り出すことを考えた。
冷凍・・・というよりは冷蔵だね。
今なら当たり前の話だけど、当時それは斬新なアイデアだ。
でも、列車が雪崩のために不通になってしまい、氷がとけて貨物列車何両分ものレタスが腐ってしまう・・・。
相当な財産を失ってしまうんだ。
そこでキャルはある人の言葉を思い出す。
今の戦争(第一次世界大戦)に、まもなくアメリカも参戦するだろうけれど、
そうなると穀物の需要が伸びて儲かる、と。
彼は父親を喜ばせたいあまりに、母からお金を借りて大豆相場に手を出す。
そしてそれは見事に成功するわけだ。
父の誕生日、彼はその儲けたお金をプレゼントとして用意する。
そして兄のアロンもまた・・・。
ここのところがまさしく、カインとアベルが神に供物を捧げる場面と重なるわけだね。
まあ、だから結果も想像がつくよね・・・。


でもこの作品では、兄の恋人アブラという女性が唯一キャルを理解していて、
次第に二人が惹かれていく、というところがまたステキだよね。
そうだね、あの観覧車の二人のシーン、いいよねえ・・・。
女としてはさ、やっぱりあのまじめ一方の堅苦しいアニキより、
ちょっぴり危険な香りがするオトートの方がいいよなあ・・・。
気持ちが揺れ動くのも無理はない・・・。


この作品以来、できのいい兄とだめな弟、兄の恋人に密かにあこがれる弟・・・
そういう構図を持つ物語がたくさん誕生したと思う。
これも世界共通、古今の人の普遍的な物語でもあるんだろうなあ。
私が連想するのは吉田秋生さんの「カリフォルニア物語」だけど・・・。
ああ、これもカリフォルニアなのか。
やっぱりエデンの東を意識した作品なんだね。


まさに、名作。すごくいい物語なんだけどね、私が気に入らないのは音楽。
あの有名なメインテーマの旋律はいいよね。
けどこの映画全体のバックミュージック、これがどうにもオーバーというか重すぎるというのかな、なんか違和感を覚えちゃう。
いや、当時としてはこれが普通だったとは思うけどね。
うーん、音楽だけでもろに古色蒼然としてしまうんだなあ・・・。
他のシーンは充分いけるとおもうけど。
音楽だけ入れ直したら、もっと良くなると思うけどなあ・・・。
そんなことしたら、エリア・カザンの冒涜だって言われちゃうって・・・。

エデンの東 [DVD]
ジェームス・ディーン,ジュリー・ハリス,レイモンド・マッセイ
ワーナー・ホーム・ビデオ


1955年/アメリカ/115分
監督:エリア・カザン
原作:ジョン・スタインベック
出演:ジェームズ・ディーン、ジュリー・ハリス、レイモンド・マッセイ、ジョー・バン・フリート