映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

シビル・ウォー アメリカ最後の日

2025年01月04日 | 映画(さ行)

絵空事ではない

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近未来、連邦政府から19の州が離脱したアメリカ。

テキサス州、カリフォルニア州からなる西部勢力と政府軍の間で内戦が勃発。
各地で武力衝突が起こります。
就任3期目の権威主義的大統領は、勝利が近いことをテレビの演説で訴えますが、
その実、ワシントンD.C.の陥落が目前に迫っています。

戦場カメラマンのリー(キルステン・ダンスト)を始めとする4人のジャーナリストが、
大統領の単独インタビューを行おうと、
ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出ます。



これは戦場と化した道路を行く、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにする過酷なロードムービー。
米国内の分断と、来たるべき再選大統領の独裁化を思うと、
どうにも絵空事とは思えない空恐ろしい作品です。

私は、めちゃめちゃになった米国の未来人が、
タイムトラベルをしてトランプ氏を狙撃しようとしたというのが、
あの2024年7月13日の事件の真相では?などと思ったりしています・・・。

かつてはアメリカも国内2分して争ったという歴史もありますし、
こんな話もあり得ないとは思えない・・・。

本作でさらに恐ろしいのは、いつしかイデオロギーも何も関係なく、
ただ闇雲に人々が殺し合うような場面があること。

集団リンチや虐殺・・・。

平和はあって当たり前のものではない、ということを心しなければなりません。

<Amazon prime videoにて>

「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

2024年/アメリカ/109分

監督:アレックス・ガーランド

出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、
   スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン

来たるべき近未来度★★★★☆

満足度★★★☆☆


白蛇:縁起

2025年01月03日 | 映画(は行)

時を超え、巡り会う

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中国古代の4大民間伝説の一つ「白蛇伝」のヒロイン、白娘の前世の物語。
中国・米国合作、フル3DCGで描く長編アニメです。

2019年9月に中国語版(日本語字幕)で小規模公開。
2021年に、日本語吹き替え版が公開されました。

その主人公の吹き替えをSnow Manの佐久間大介さん(さっくん)が担当していまして、
まあつまり、それを目当てに視聴したというわけ。

本作、この1月10日から一週間のみ、
へび年にちなんで上映されると言うニュースがありまして、
ぜひ見に行こうと思っていたのですが、
何のことはない、Amazon prime videoですぐにでも見ることができるのでした。

前置きばかり長くなりました。

舞台は唐の時代末期、国師が、人々に蛇を大量に捕まえさせていました。
美しい少女、しかし白蛇の妖怪である白(ハク)は、
国師を殺害しようとするも、失敗。
辛くも逃げ出しますが、記憶をなくしてしまいます。

白は、捕蛇村の少年宣(セン)に救われ、
記憶を取り戻すために宣と共に旅に出ます。
そうして2人は次第に心を接近させていく・・・。

まずは、映像が素晴らしく美しくて魅了されます。
ひらひらと風に揺れる布の表現がステキ。
特に、白がまとう薄物が美しい・・・。
3Dアニメのお醤油顔の美青年も、いいものですね♡♡♡

もとより白は妖怪なので、永遠に近い生があるのです。
しかし、人間である宣の命には限りがある。
でも輪廻により、時を超えていつしかまた2人は巡り会う・・・。
東洋の思想が根底にある美しい物語。

宣が歌をうたうシーンもあって、そこはもうさっくんお手の物。
吹き替えもまったく違和感なく、ステキでした。

特にさっくんに興味がないという方もぜひどうぞ。

中国語版のエンディングのあとに、日本語版のエンディングがあって、
そこにSnow Manの曲「由縁」が流れますので、お聞き逃しなく。
いい曲ですよ~♡

<Amazon prime videoにて>

「白蛇:縁起」

2019年/中国・アメリカ/99分

監督:ホアン・ジャカン・チャオ・ジー

出演(日本語版吹き替え):三森すずこ、佐久間大介、杉田智和、悠木碧、佐倉綾音

 

映像美★★★★★

東洋度★★★★☆

満足度★★★★☆


私にふさわしいホテル

2025年01月01日 | 映画(わ行)

作家の聖地

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中島佳加代子(のん)は、とある出版社の新人賞を受賞したものの、
大物作家・東十条(滝藤賢一)から酷評を受けてしまいます。
そのために、デビュー作も出せず、小説を発表する場すら得られなくなってしまいました。

そんなある日、加代子は憧れの「山の上ホテル」に宿泊し、
一人前の作家気分を味わうことに。
その時、あの憎き東十条が上階に宿泊していることを知ります。

東十条は明日が締め切りの小説を仕上げるために宿泊しているのです。
加代子は、策を巡らして東十条の執筆を邪魔し、
文芸誌の原稿を落とさせることに成功しますが・・・。

文壇への返り咲きを狙う加代子と、
彼女に原稿を落とされたことを恨む東十条の、因縁の対決が始まります。

えーと、まずこの「山の上ホテル」のこと。
東京都千代田区神田駿河台に実在します(現在は休業中)。
本館は1937年ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計により、
佐藤振興生活館として建てられ、1954年にホテルが開業。
神田という出版社の多い地域に近いため、
作家の滞在やカンヅメによく使われたとのこと。
川端康成、三島由紀夫、池波正太郎・・・等々。
つまり、作家にとっては聖地なんですね。

それはともかく、文壇の権威である大物作家の一言で、
将来を踏みにじられたと感じている加代子の復讐劇。
・・・と言うと何やらドロドロしていますが、
本作はユーモアたっぷり、コミカルに進行していくのでご安心を。
そこはやはり、茫洋としながらも芯の強い感じ、のんさんにぴったりの役です。

加代子担当の編集者は、加代子の大学時代の先輩でもある遠藤(田中圭)。
東十条担当でもあるので、冷静中立のようでいて、
ちょっぴり加代子に加担しているのがステキ。

とぼけているようで、さすが業界の権威で百戦錬磨、
したたかでもある大物作家・東十条も滝藤賢一さんも、はまり役。

また、橋本愛さんが書店員役で、のんさんとのツーショットは、やはり感慨深い。

楽しめて余韻が残る、ステキな作品です。

<シネマフロンティアにて>

「私にふさわしいホテル」

2024年/日本/98分

監督:堤幸彦

原作:柚木麻子

脚本:川尻恵太

出演:のん、田中圭、滝藤賢一、田中みな実、橋本愛

 

文壇の闇度★★★☆☆

バイタリティー度★★★★★

満足度★★★★☆