映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

トキワ荘の青春

2025年02月21日 | 映画(た行)

俳優界の「トキワ荘」的作品

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本作、1996年作品ですが、2021年デジタルリマスター版とされたものを拝見しました。

 

手塚治虫をはじめとした日本を代表する漫画家たちが若き日々を過ごし、
東京都豊島区に実在した伝説的アパート「トキワ荘」の日常を描きます。

昭和30年代。
トキワ荘に住む手塚治虫のもとへ、各漫画雑誌の編集者たちが日々通い詰めています。
その向かいの部屋に住む漫画家・寺田ヒロオ(本木雅弘)は、
出版社へ持ち込みを続けています。

やがて、手塚治虫はトキワ荘を去りますが、
入れ替わりにやって来たのが「藤子不二雄」の2人。
引き続き、石ノ森章太郎、赤塚不二夫ら、若き漫画家の卵たちが入居。
寺田を中心に「新漫画党」を結成します。

この頃の漫画を懐かしく思う世代は、多分私あたりが最後なのでは?
今名前をあげたのはその後ますます活躍して、今も名高い方々ですが、
他にもつのだじろうさん、水野英子さんなども出てきて、これは本当に懐かしい。
石ノ森章太郎さんはいまだに私の中では「石森章太郎」さんです。

 

4畳半一間、トイレや台所は共用。
お風呂は銭湯へ。
作中、家賃は3000円と言っていたな。
昭和ですねえ・・・。

さて、夢を追う若い人たちが集まったトキワ荘ですが、
でも誰もが頂点まで上り詰めることができるわけではありません。
挫折し、去って行く者もいるわけで・・・。
そこで寺田ヒロオさんが本作の主人公になっているところに意味があります。

寺田ヒロオさんの漫画はあまりにも優しくきちんとしていて、
子どもたちの人気を集められなかった・・・。
ナンセンスなギャグや、派手で刺激的なストーリーとは無縁・・・。
良心的さが故に、時代の波に乗れなかったというべきなのか。

 

ところで、ほぼ30年前の本作の、出演俳優が興味深い。
当時でもすでに活躍して人気があった、きたろうさん、時任三郎さん、桃井かおりさん。
他に、古田新太さん、生瀬勝久さん、阿部サダヲさん・・・。
その若き日の姿を拝むことができます。
(当時どれだけの知名度を得ていたのか、よく分かりませんけれど・・・)

そしてまた、今の私は存じない方々・・・。
すなわち、本作は俳優界の「トキワ荘」であるのかも。
その後力を付けて売れっ子になっていく人たち。
夢かなわず、去って行った人たち・・・。

そんなことでも、見る価値のある作品だと思います。

 

「トキワ荘の青春」

1996年/日本/110分

監督:市川準

出演:本木雅弘、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、阿部サダヲ、さとうこうじ

青春度★★★★☆

昭和度★★★★★

満足度★★★★☆


劇場版 トリリオンゲーム

2025年02月19日 | 映画(た行)

ロードマップの続き

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2023年テレビドラマ「トリリオンゲーム」の劇場版。

世界NO.1企業の時価総額と同等の資産一兆ドルを稼いで、
この世のすべてを手に入れようとする男の物語です。

主な人物関係は、テレビ版の時と同じ。
テレビ版の続き、オリジナルストーリーとなっています。

様々な事業に挑戦し、予測不能な作戦で成功を重ねてきた
天王寺陽(ハル)(目黒蓮)と、平学(ガク)(佐野勇斗)。
トリリオンゲーム社を日本トップクラスの大企業に成長させました。
そして、破天荒なハルの次なる目標は、日本初のリゾート開発。
瀬戸内海のとある島に壮大なカジノ施設を作ろうというのです。

さてカジノ施設となると、まあ私もそうだけれど実際のところあまり歓迎したくはない・・・。
まあその善し悪しはともかくとして、設置に住民の反対がありそうなことは予見されます。
やんわりとではありますが、
ハルがそういうことを乗り越えていくあたりも描かれていたのは良かった。

 

今回のラスボスとなる世界のカジノ王、ウルフ・リー(石橋凌)は
「信じられるのは金だけだ」と言います。
けれど、ハルには信じられるものがもう一つある。
そこが、彼の強さの秘訣で、本作のキモなのであります。

ハルが、持てるものすべてを賭けた最後の大勝負がなんといっても一番の見所でしょう。
本当に、ドキドキさせられます。
シシド・カフカさんもスゴイ存在感を放っていましたね。
役の上でも、最大のキーパーソン。
シリーズを通した中でも異彩を放っています。
ステキです。

 

相変わらずぐだぐだで、サッパリ進展しないのは、ハルとキリカ(今田美桜)。
予告編にあったキス寸前のシーンの結末は・・・やはり、です。

そしてまた、ガクと凛々(福本莉子)の方も相変わらず
・・・と、思いきや・・・?!

言うまでもなく、目黒蓮さんのアクションシーンはカッコイイ!! 
ただただ、見とれます。

この度めでたくtimeleszの新メンバーとなった原嘉孝さんも出ています(少しだけれど)。

目黒くんと佐野くんも、本作公開前の番宣でコンビで登場することが多く、
一層絆を深めることができたのではないかな? 
私はむしろそういうことで胸を熱くしてしまいました。

テレビドラマのラストで、ハルが2年間姿をくらましていたということになっていたのですが、
その2年間、何をしていたかということが最後に明かされます。
決してカジノの研究をしていたわけではありません。
むしろ、カジノはハルの次なる目標のための手段。
ハルの「夢ノート」も、壮大な夢であふれていそうです。

 

総じてドキドキハラハラ、スケールも大きい・・・ということで、
TVドラマを見ていなかった方も十分楽しめると思います。

 

<シネマフロンティアにて>

「劇場版トリリオンゲーム」

2025年/日本/118分

監督:村尾嘉昭

原作:稲垣理一郎、池上遼一

出演:目黒蓮、佐野勇斗、今田美桜、福本莉子、シシド・カフカ、
   田辺誠一、石橋凌、吉川晃司、原嘉孝

ドキドキハラハラ度★★★★★

満足度★★★★★

※めめ様にただただ見惚れていた私は、映画の善し悪しの判断基準がバグっておりますので、
そこのところお含み置きください・・・。


ツイスターズ

2025年01月11日 | 映画(た行)

科学で自然災害に立ち向かえるか

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確か以前、似たような作品を見た・・・と思ったのですが、
それは1996年「ツイスター」でした。
・・・というか、それからすでに30年近く経っているということに驚き・・・。

本作は、その続編といってもいいものなのですが、直接のつながりはありません。
「ツイスター」同様、竜巻のメカニズムを解析しようとする研究者と、
ただ竜巻を追いかけ間近に見ることを楽しもうとする人たちが登場し、
対立したり協力したりするという骨子が同じになっています。

ニューヨークで自然災害を予測し、被害を防ぐことを仕事としている
気象学の天才、ケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。
故郷オクラホマで史上最大規模の巨大竜巻が連続して発生していることを知ります。
そこへ、学生時代の友人、ハビ(アンソニー・ラモス)が訪ねて来て、
オクラホマの竜巻の調査に参加してほしいと頼まれます。

ケイトは学生時代竜巻に関してつらい過去があって、
現場からしばらく離れていたのでした。
けれど、ハビのたっての願いということで、彼に協力することに。

オクラホマで調査を始めたケイトの前に現れたのは、
ストームチェイサー兼映像クリエイターという、軽そうな男・タイラー(グレン・パウエル)。
ここがまさに現代を表わしているわけですが、
つまりタイラーは、竜巻を追いかけ、その姿を映像に捉えてSNSで発信、
ということで人気を得ているのです。

ケイトとタイラーははじめ反発し合いますが、次第に心を通わせていきます。
そして、かつてケイトが手がけていた重要な竜巻についての案件を再び試みようとします・・・。

 

恐いもの見たさで、竜巻の生の映像が配信されたとしたら、
やっぱり見たくなってしまうのは分ります。
でも、それで建物が破壊されたり、人命が失われたりすることもあるので、
お祭り騒ぎのようにしてもいられない・・・。

ケイトは、子どもの頃から、気象、特に竜巻のことを「読む」ことに長けているのです。
けれど、実際身をもってその恐ろしさを体験している。
だから、実際の調査に加わるようになるのは必然ですが、
本作はさらに踏み込んで竜巻を「手なづけ」ようとします。

科学は天災と戦う力になるのか・・・。
本作の科学は、実用に足るのかどうか分りませんが、そうであったらいいなあ・・・と。
でも、そうした場合の弊害がまたありそうで、恐いですけどね。

<Amazon prime videoにて>

「ツイスターズ」

2024年/アメリカ/122分

監督:リー・アイザック・チョン

出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモス、キーナン・シブカ

竜巻の迫力度★★★★☆

満足度★★★☆☆

 


罪と悪

2024年12月20日 | 映画(た行)

本当の悪意は見えないところにある

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とある地方都市。
13歳、正樹が何者かに殺され、橋の下に捨てられるという事件が発生。
正樹の同級生である春、晃、朔の3人は、
正樹が時々遊びに行っていた先の老人「おんさん」が犯人に違いないと考えます。
そして家に押しかけ、もみ合いの末、おんさんを殺してしまうのです。
春は、死体と共に家を焼き、自分1人でやったことにすると告げて、
晃と作を逃がします。

 

22年後。
刑事になった晃(大東駿介)が父の死をきっかけに町に戻ってきます。
朔(石田卓也)は実家の農家を継ぎ、その双子の弟・直哉は引きこもりとなっています。
春(高良健吾)は22年前の事件により少年院送りとなり、
戻って来てから建設会社を起こし、地元のチンピラもどきの若い衆の面倒を見ています。

そんなところで、22年前と同様、橋の下に捨てられた少年の遺体が発見されます・・・。

22年前に彼らが考えた事件の真相は、実は間違っていた・・・。
ことは地元のヤクザもからんで複雑な様相を呈してきます。


春が1人で罪を背負ったから、
1人は念願の刑事になれたし、もうひとりは平和に農業を営んでいられる・・・。
ずっと秘密を守り通し自責の念に駆られながら生きてきた晃と朔。
この度初めて2人は春に感謝を伝え、友情が復活するかに思えたのですが・・・。

友情の物語かと思いきや、意外な展開で驚かされました。
本当の悪意は見えないところにある・・・。

<Amazon prime videoにて>

「罪と悪」

2024年/日本/115分

監督・脚本:齊藤勇起

出演:高良健吾、大東駿介、石田卓也、村上淳、椎名桔平、佐藤浩市

友情度★★★★☆

どんでん返し度★★★★☆

満足度★★★.5


蝶の眠り

2024年11月29日 | 映画(た行)

最後の愛の行方

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フランスの女流作家マルグリッド・デュラス晩年の恋を描いた、
ジャンヌ・モロー主演の映画「デュラス 愛の最終章」をモチーフにしています。

50代の人気作家松村涼子(中山美穂)は、
自身が遺伝性のアルツハイマーに冒されていることを知ります。
魂の死を迎える前に、小説以外の何かをやり遂げようと、
大学で講師として働き始めることに。
学校近くの居酒屋でバイトをしている韓国人留学生の青年、チャネと出会い、
なりゆきで犬の散歩を頼み、
そしてまた、執筆活動を手伝ってもらうことにします。

そんな中で、次第に惹かれ合っていく2人。
そして、涼子の症状も徐々に進行していきます・・・。

50代といっても、中山美穂さんですものねえ・・・。
恋愛もぜんぜんムリじゃない。
というか、恋しない方がおかしいくらい。

離婚歴のある涼子は、アルツハイマーの診断を受け、
自らの遠くない将来を淡々と受け止めているのです。
まだ、己としての意識がしっかりとあるうちにできることをしよう・・・。
そして、新たな仕事を始めたのと同時に、
予期せぬこととして恋をすることになるのですね。

年下の、異国の青年。
自分の将来を考えれば、今、この刹那の恋でかまわないと彼女は思うでしょう。
でも、青年にとっては・・・?

美しい物語。
大人の恋ですな。

原点がフランスの物語。
そして、日韓合作、ということで、どこか軽く乾いた雰囲気。

これが純国産であれば、もっと情念がこもってドロドロした感じになりそうです。
そうじゃなくてよかった・・・。

<Amazon prime videoにて>

「蝶の眠り」

2017年/日本・韓国/112分

監督・原案・脚本:チョン・ジェウン

出演:中山美穂、キム・ジェウク、石橋杏奈、勝村政信、永瀬正敏

大人の恋愛度★★★★☆

満足度★★★☆☆


トスカーナの幸せレシピ

2024年09月21日 | 映画(た行)

適量

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三つ星シェフとして知られるアルトゥーロは、仲間とのトラブルで傷害事件を起こし、
更生のため社会奉仕としてアスペルガー症候群の若者たちに
料理を教えることになりました。

生徒の中に絶対味覚を持つ青年・グイドがいて、
若手料理人コンテストの出場を決めます。

渋々ながら、アルトゥーロがコンテスト会場に付き添いで向かうことになりました。
グイドにとっては初めての旅行です。
ところがその時、アルトゥーロに大きなチャンスとなる仕事が舞い込み、
グイドの元を離れなければならなくなるのですが・・・。

アスペルガー症候群のことなど何も知らないアルトゥーロは、始め戸惑ってばかり。
皆いかにも変わっていて、それぞれのこだわりがあって、
どう接して良いのかも分りません。
特にグイドは並外れた味覚の持ち主ではありますが、
人に触れられるのを極端に嫌います。
でもアルトゥーロは、彼らには特別に配慮しすぎることなく、
普通に人と話すのとあまり変わらず接します。
そもそもそういうデリケートさを持ち合わせていない(?)。
でも結局そのフランクさが良いのですよね。

本作は、こんな師弟2人が次第に信頼関係を結んでいくという物語です。

ところで本作の原題は、「Quant basta」。
「適量」という意味です。

アルトゥーロは、よく「調味料を適量加える」というのですが、
グイドにはその曖昧な「適量」というのがよく分らないのです。
計量してはダメなのかと問うのですが、アルトゥーロは首を振ります。
しかし様々なことがあって、最後にグイドはその曖昧な「適量」の意味を学ぶ。

だから本来この題名は、そうしたことを象徴したとてもよい題名なのですが、
邦題の「トスカーナの幸せレシピ」は、あまりにもどこにでもありそうな凡庸な題名。
残念です。

グイドは確かにちょっと変わっているけれども、
知れば知るほど普通に友人付き合いできると感じるようになりますね。
まあ、そういうことです。

 

<Amazon prime videoにて>

「トスカーナの幸せレシピ」

2018年/イタリア/92分

監督:フランチェスコ・ファラスキ

出演:ピニーチョ・マルキオーニ、バレリア・ソラリーノ、ルイジ・フェデーレ、ニコラ・シリ、ミルコ・フレッツァ

満足度★★★★☆


父と息子の地下アイドル

2024年09月11日 | 映画(た行)

息子の意志を継ぐ父

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WOWOW新人シナリオ大賞受賞作。

 

妻を亡くし、ひとり息子とは疎遠になっていて、
さみしく暮らす高校教師、千堂(松重豊)。
かつては子どもたちに熱血指導をしていましたが、今の子どもたちには通用しません。

ある日突然、音信不通だった息子・勝喜の事故の知らせが入ります。
勝喜は病院で眠ったまま、植物状態に・・・。

病室で呆然とする千堂の元に、派手な衣装を着た3人の少女がやって来ます。
この3人は勝喜がプロデュースする地下アイドル「オトメがたり」。
まだデビューして間もなく、まったく人気もないのですが・・・。
でも勝喜が活動できなくなれば、新しい曲もなく、解散するほかないでしょう。
しかし、千堂は息子勝喜に変わってアイドルプロデューサーになることを決意。
幸い息子の部屋に新曲の録音がいくつか残っていたのです。

「地下アイドル」という言葉さえ知らなかった千堂ではありますが・・・。

 

疎遠のまま意識がなくなってしまった息子の、意欲を燃やしていた仕事。
少女たちが夢を見ていたその仕事をなんとか引き継ぎたいと千堂は思ったのですね。
というか始めは少女たちに懇願されて無理矢理に、ではありましたが。

地下アイドルのことなど何も知らない千堂が頼ったのが、
受け持ちのクラスの不登校・引きこもりのオタク少年というのもよろしい。
人は誰かの役に立っているという認識が、生きる力を与えます。

 

地下アイドルというのも、私はテレビドラマなどで知るだけですが、
どうやったら多くの人に知ってもらえるのか、そして資金集めの方法、ファンサービス等々・・・、
単にキラキラした世界ではなく大変なことですね。

そうした様々なことを織り込んで進んでいくストーリー、
さすがシナリオ大賞受賞作です。

楽しませていただきました。

 

<Amazon prime videoにて>

「父と息子の地下アイドル」

2020年/日本/94分

監督:横尾初喜

脚本:光益善幸

出演:松重豊、若月佑美、今井悠貴、芋生悠、瀧本美織、井之脇海

地下アイドルを知る度★★★★☆

満足度★★★.5


デスパレート・ラン

2024年07月27日 | 映画(た行)

走れ、エイミー

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夫に先立たれたエイミー(ナオミ・ワッツ)は、
なんとか平穏な生活を取り戻そうとしていました。
その日、小学生の娘を学校に送り出しましたが、
しかし高校生の息子は、登校を渋り部屋を出てきません。
仕方がないとして、とりあえずランニングに出たエイミー。
森林の中を抜ける心地の良いコースです。
しかし、あちこちからスマホに電話がかかってきたり、かけたり、
走りながらも忙しい。

そんな中、エイミーはかなりの距離を進んだあたりで、
息子が通う高校で銃撃犯が立てこもりをしていることを知ります。

彼女はスマホからの情報や、知人友人、警察、あらゆる情報を駆使。
どうやら息子はエイミーが出かけた後に、登校したらしいのです。
息子は父を亡くした後落ち込んでいて、
いじめを受けていたらしいことも分ってきます。

 

一刻も早く高校へ向かいたいのですが、ここは街から離れた森の中。
街は混乱に陥り、助けも移動手段もない中、
エイミーは一台のスマホを頼りに、犯人の人質になっているらしき息子の元へ走り出します。

そんな中、警察からの電話で、家に銃があるか、息子は薬を服用していないかなどと問われます。
まさか、それはつまり息子が犯人ということなのか・・・?
崖から突き落とされたような気になってしまうエイミーですが、
それでも痛めた足をひきずりながら、走り続けるエイミー・・・。

まさに母は強し。
高校では大変なことが起こっているのですが、
本作の画面はほとんど森の中を駆け抜けるエイミーの姿があるのみ。
力になってくれる警官や車の修理業者、友人知人、皆、声だけの出演。

エイミーはあちこちから情報を得て、なんと犯人を突き止め、
犯人に電話までしてしまう。
これ、リーアム・ニーソンがやりそうな役でもありますね。

高校生で、とてもわかりやすく母に反抗し、そして後には依存している息子に、
あまりにも幼さを感じてしまいましたが、ま、いいか。

<Amazon prime videoにて>

「デスパレート・ラン」

2021年/アメリカ/84分

監督:フィリップ・ノイス

出演:ナオミ・ワッツ、コルトン・ゴボ、シエラ・マルトビー、クリストファー・マラン

危機感度★★★☆☆

満足度★★★☆☆


ドライブアウェイ・ドールズ

2024年06月25日 | 映画(た行)

クレイジーなアメリカ縦断

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数々の名作を送り出して来たコーエン兄弟ですが、
本作はイーサン・コーエン初の単独監督作品です。

 

日々の生活に行き詰まりを感じたジェイミー(マーガレット・クアリー)と、
マリアン(ジェラルディン・ワナサン)。
車の配送(=ドライブアウェイ)をしながらアメリカ縦断のドライブに出ます。
しかし配送会社が手配した車のトランクに謎のスーツケースがあり、
その中にとんでもないブツが入っていたのです。

スーツケースを取り戻そうとするギャングたち、ジェイミーの元カノの警察官、
そしてなぜか上院議員が入り乱れての迷走。
事態は思わぬ展開に・・・。

ジェイミーとマリアンは双方レズビアンながら2人にはその感情はなくて、いい友人関係。
ジェイミーが痴話げんかのあげく別れることになったスーキーが、
なんと警察官というのが後に分って、のけぞります・・・。

なんとも破天荒、おおらかなセックスシーン、そして、スーツケースの中身・・・。
イヤもう、笑うしかないでしょう。

最後に出てきた上院議員がマット・デイモンで、しかもかなり危ないヤツ・・・。
世も末。

これも笑い飛ばして、憂さ晴らし。

いいんじゃないでしょうか。

せっかくなので、もう少しロードムービー感がほしかったのですが、
この2人はレズビアンバーにしか行かないみたいなので、
あんまり旅行感なかったです・・・。

が、友人関係だった2人の間に芽生える感情があって・・・。
つまりこれはラブストーリーだったのか?

ま、何でも良いか。

 

<シアターキノにて>

「ドライブアウェイ・ドールズ」

2024年/アメリカ/85分

監督:イーサン・コーエン

脚本:イーサン・コーエン、トリシア・クック

出演:マーガレット・クアリー、ジェラルディン・ワナサン、ビーニー・フェルドスタイン、
   ジョーイ・ストロニック、C・J・ウィルソン、マット・デイモン

 

とんでもない度★★★★☆

ブラックコメディ度★★★★☆

満足度★★★☆☆


天使のいる図書館

2024年06月19日 | 映画(た行)

図書館を愛する人に

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奈良県葛城エリアが舞台です。

大学を卒業したばかりの新人女性司書、吉井さくら(小芝風花)が図書館に赴任してきます。
彼女は人の感情がよく分らなくて、コミュニケーションを取るのが苦手。
「泣ける本が読みたい」という来館者に「拷問史」の本を差し出したりするので、
先輩も彼女の扱いに困り始めています。

そんなある時、さくらは老婦人・礼子(香川京子)と知り合います。
さくらは彼女と共に葛城地域を巡るようになり、地域の歴史や文化を再発見。


そしてまた、なぜかよく見かける謎の青年(横浜流星)を、
ストーカー?と思ったりもするのですが・・・。

令子はこの地での若い頃のことが心残りとなっている様子。
さくらはその思いをどうにかしてあげたいと思うようになります。

・・・ということで、とある新人司書の成長物語。

そもそも人の心の機微が分らず、小説もほとんど読んだことがないというさくらが、
なんで司書になったのかというのには納得いきませんが、
(たまたま資格が取れたからという話ではあった)、
心の成長物語ということではまずまずだったのでは?

そして奈良の小都市の空気感が、なんとも居心地良く感じました。

2017年作品で、小芝風花さん、横浜流星さん共に初々しくてステキでした!

<Amazon prime videoにて>

「天使のいる図書館」

2017年/日本/108分

監督:ウエダアツシ

原案:山国秀幸

脚本:狗飼恭子

出演:小芝風花、横浜流星、森永悠希、香川京子、森本レオ

 

お仕事ドラマ度★★★★☆

満足度★★★☆☆


ディア・ファミリー

2024年06月18日 | 映画(た行)

お約束の感動作

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世界で17万人の命を救ったIABP(大動脈内バルーンバンピング)
バルーンカテーテル誕生にまつわる実話を映画化したものです。

1970年代。
小さな町工場を経営する坪井宣政(大泉洋)と妻・陽子(菅野美穂)。
娘・佳美(福本莉子)は生まれつき心臓疾患を抱えていて、
幼い頃に余命10年を宣言されます。
どこの医療機関でも治すことはできないと言われ、
宣政は、娘のために自ら人工心臓を作ることを決意。
とはいえ、医療の知識も経験もありません。
宣政と陽子は必死で勉強し、有識者に頭を下げ、資金繰りをし、
何年も開発に奔走しますが・・・。

まずは、医療知識ゼロの所から始めて、
周囲の人々にはあきれられ、変人と思われ、
それでも娘のためにと無理難題に取り組み続ける。
その姿にはただ圧倒されてしまいます。

このような医療器具の開発には、医師としての発想や意図が必要なのはもちろんですが、
それを具体的な形に作り上げる「もの作り」の技術も必要なわけですね。
だから双方のガッチリした連携必要なのだけれど、
この場合は結局医師の側(大学)に裏切られる形になってしまうわけです。

完璧なる挫折・・・。

けれどその挫折をも乗り越え、別の形ではありけれどまた動き出すという、
ここのところが実話ならではで、
フィクションならこういう展開は通常ないだろうとも思います。

確かテレビドラマの「下町ロケット」で、
町工場である佃製作所が、心臓の新型人工弁「ガウディ」を開発する
という話があったと思うのですが、
本作の実話の部分がヒントとなって作られたストーリーなのかなと思いました。

本作を感動的に盛り上げているのはもう一つ、家族愛のことです。
妻は夫の現実離れしているような提案をするっと受け入れ、応援し手助けします。
佳美の姉(川栄李奈)も妹(新井美羽)も、そんな両親を尊敬し、応援。
一家が一団となって佳美をいたわり、その未来へ向かってやるべきことをやろうとする。
皆がポジティブで温かい。
まあちょっとベタではあるけれど、この物語にこのポジティブさは必要です。

松村北斗さんもおいしいところの役で、ナイスでした。
実に松村北斗さんはいつも良い役を引くなあ・・・。

 

<シネマフロンティアにて>

「ディア・ファミリー」

2024年/日本/116分

監督:月川翔

原作:清武英利

脚本:林民夫

出演:大泉洋、菅野美穂、福本莉子、川栄李奈、荒井美羽、上杉周平、満島真之介、有村架純、松村北斗

 

執念度★★★★★

家族愛度★★★★★

満足度★★★★☆


魂のまなざし

2024年06月08日 | 映画(た行)

情念に生きる

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モダニズムを代表する画家のひとり、
フィンランドの画家、ヘレン・シャルフベックを描く伝記映画です。

1915年。
高齢の母と共に田舎で暮らす画家、ヘレン・シャルフベック53歳。
画家としては、世間からは忘れられた存在ながら、
当人は情熱を失わず絵を描き続けています。

そんなある日、ある画商が訪ねて来て大きな個展を開催する話が持ち上がります。
そしてその個展でヘレンは再評価され、瞬く間に時の人に。

そしてまたヘレンは、画商が紹介した19歳年下の青年エイナル・ロイターと出会います。

まあ当然、作中にヘレン・シャルフベックの絵がいくつも紹介されますが、多くは人物画。
自画像も多いです。
写実的なモノではなくて、かといってピカソほど抽象的なモノでもない。
私的には好きな絵です。

絵がほとんど売れなくても、自分のやり方を信じ何枚も何枚も描き続ける情熱。
これは続けられること自体が才能かもしれません。

さてしかし、本作で中心になるのはヘレンが19歳年下の青年エイナルに向ける愛情。
彼は無邪気に(といっても30過ぎではあるけれど・・・)ヘレンに好意を向け、
画家としても尊敬しています。
若い肉体は美しくたくましい・・・。
ヘレンはそんな彼に魅せられて欲してしまいます。
でも自分の年齢を考えるとそのようなことは言えない・・・。
触れたい、抱きしめたい・・・。
そんな思いばかりが募っていきます。
エイナルも画家志望ではあるので、ヘレンはエイナルを留学に送り出すのですが、
ある時届いた手紙に打ちのめされるのです。
そこには、彼が18歳の女性と婚約した、とあるのでした・・・。

エイナルはおそらくヘレンの気持ちには気づいていたはず。
それなのに・・・。

おばちゃんだっていくつになっても、人を好きになる情熱くらい残っていますともさ。
うん。
けれどこの情念こそが、彼女の絵のエネルギーとなったのかも知れません。

なんとも切なくもあるストーリー。

<Amazon prime videoにて>

「魂のまなざし」

2020年/フィンランド、エストニア/122分

監督:アンディ・J・ヨキネン

原作:ラーケル・リエフ

出演:ラウラ・ピルシ、ヨハンネス・ホロパイネン、クリスタ・コソネン、ピルッコ・サイシオ

失われない情念度★★★★☆

芸術度★★★★★

満足度★★★★☆


トリとロキタ

2024年06月05日 | 映画(た行)

理不尽な現状

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アフリカからベルギーのリエージュにやって来た少年トリと少女ロキタ。
2人は偽りの姉弟として暮らしています。
年上のロキタは社会からトリを守り、
しっかり者のトリは、時々不安定になるロキタを支えています。

ロキタにはビザがないため、正規の職に就くことができず、
ドラッグの運び屋をしてお金を稼いでいます。
しかし移民の仲介業者に借金があって、ほとんどそちらに取られてしまい、
故郷の母に送金したくてもほんのわずかしかできません。

ビザを取得するための面接では、トリとの姉弟関係をうまく言いつくろうことができずに失敗。
なんとしてもビザを取得して、まともな職に就きたいと思うロキタ。
やむなくロキタは偽造ピザを手に入れるため、さらに危険な仕事を始めるのですが・・・。

 

本当の姉弟ではないこの2人が、
どのように出会い、どのようないきさつで姉と弟を演じることになったのか、
本作ではそのことには触れられていません。
でも、異国の地にやってくるという2人にとって極めて困難な道のりの間に、
2人は互いに助け合い、強い信頼と親愛の情で結ばれるようになったに違いありません。
その絆は実際の姉弟以上のように思われます。

それにしても、移民という立場の弱いものにつけ込んで
搾取しようとする人々の悪辣さには腹が立ってなりません。
本作はもちろんフィクションですが、実際にもこんなことが普通に行われていそうです・・・。
本作もなんとも言えずショッキングなラスト・・・。
世界はなんとも理不尽で悲しい・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「トリとロキタ」

2022年/ベルギー・フランス/89分

監督:ジャン・ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ

出演:パブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ、アルバン・ウカイ・ベティム

 

姉弟愛度★★★★☆

社会の矛盾度★★★★★

満足度★★★★☆


ティル

2024年04月27日 | 映画(た行)

実在の、あってはならないこと

* * * * * * * * * * * *

1950年代、アメリカでアフリカ系アメリカ人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなった
実在の事件「エメット・ティル殺害事件」の映画化です。

ずっしりと重いです。

1955年、イリノイ州シカゴ。

夫を戦争で亡くしたメイミー・ティルは、空軍で唯一の黒人女性として働きながら
14歳の息子エメットと平穏に暮らしていました。

ある日エメットは初めて母と離れて、南部、ミシシッピ州マネーの親戚宅を訪れます。
エメットは家の近所の飲食雑貨店で、白人女性キャロリンに向けて口笛を吹いたことで
白人の怒りを買い、白人の集団に拉致されリンチを受け死亡してしまいます。

息子の変わり果てた姿と対面したメイミーは、
この悲惨な事件を世間に知らしめるべく、行動を起こします。

シカゴで暮らしていたメイミーとエメットは、
多少の差別を受けながらも、暮らし向きは良かったのです。
メイミーは出身地である南部の、酷い人種差別のことをよく分っていたのですが、
シカゴ生まれ育った息子は何も分っていません。
くれぐれも、あちらでは白人の前で小さくなっているように・・・と、息子に言い聞かせます。
でもエメットは従兄弟たちと会って遊べることが嬉しくて舞い上がっています。
そんな息子の様子に一抹の不安を覚えるメイミー。

しかし、彼女の不安は的中。

それにしても、こんなことがあって良いのかと思ってしまいます。
エメットは、店の女性に映画スターみたいにキレイだね、と言ったのです。
そして思わずヒュ~と口笛を吹いた。
彼女は、黒人に親しく話しかけられたこと自体にショックを受け怒りを感じたようです。
そもそも黒人を同等に話をする対象と見なしていない。
彼女の話を聞いた者たちが、夜中にエメットの所へ銃を持って押しかけてきたのです。

その時彼らは顔を隠しもしていません。
エメットを差し出さなければ家族も殺されてしまう・・・、
それは単なる脅しではなく、現実に差し迫った脅威でした。
そしてこのことは警察などなんの頼りにもならないのです。
警察もグルと言ってもいいくらい。
もどってこないエメットは後に川に浮かんだ遺体として発見されます。

南部の黒人に全く人権はない。
このことは後の裁判でも思い知らされます。
こんな社会を変えたい。
そのやむにやまれぬ思いが、メイミーを立ち上がらせたのですね。

言葉をなくすような、重い歴史上の事実です。

 

<Amazon prime videoにて>

「ティル」

2022年/アメリカ/130分

監督:シノニエ・チュクウ

出演:ダニエル・デッドワイラー、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェイリン・ホール、
   ヘイリー・ベネット、フランキー・フェイソン

 

歴史発掘度★★★★☆

人権無視度★★★★★

満足度★★★★☆

 


ドミノ

2024年03月23日 | 映画(た行)

現実と虚構が入り組んだ世界

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公園で一瞬目を離したすきに娘が行方不明になってしまった、刑事ローク(ベン・アフレック)。
その心痛のため、カウンセリングを受けながらも、現場の職務に復帰します。

銀行強盗を予告するたれ込みがあり、現場に向かったロークは、
そこに現れた男が娘の行方を知っていると確信。
しかし、男は簡単に周囲の人々を操り、妨害するため、ロークは男を捕まえられません。
ロークは占いや催眠術を熟知するダイアナに協力を求めます。
彼女によると、ロークの追う男は、相手の脳をハッキングしているというのですが・・・。

何でしょう、言ってみれば催眠術の強力なもの・・・。
相手の目を一瞬見るだけでその人物を操り、自分の思うままに行動させることができる、
そのような能力を持つ人々がいるわけです。

恐ろしいですね・・・。
ごく親しい友人でも人に操られて殺人鬼にもなり得るということで・・・。
誰も信じられないし、実は自分自身も操られていて、
自分が見ているものは、現実ではないのかも知れない。

次第に、現実と虚構が迷宮のように入り組んできます。
そんな世界感がスタイリッシュに描かれますが、
まあ、こんな世界観はすでにどこかで見たような・・・。

しかし、ロークの真実、娘が行方不明という最大の問題にも実は裏があって・・・
というめまいのするような仕掛けには、ちょっと虚を突かれました。

<Amazon prime videoにて>

「ドミノ」

2023年/アメリカ/94分

監督:ロバート・ロドリゲス

出演:ベン・アフレック、アリシー・ブラガ、J・D・パルド、ハラ・フィンリー

 

現実逆転度★★★★☆

幻惑度★★★★☆

満足度★★★☆☆