福岡、東京、パリを結ぶ女の一代記
* * * * * * * * *
かつての「冷静と情熱のあいだ」の著者二人が、
再び、一つのストーリーを女性側と男性側から綴ったストーリーです。
ボリュームたっぷり、上下二巻×2。
江國香織さんが女性側から書いたものがこの「左岸」。
辻仁成さんが男性側から書いたものが「右岸」。
福岡、東京、パリ。
舞台を移しながら語られる、男と女の一代記となっています。
どちらから読むか迷いますが、
ここはやはり女性の立場で江國香織さんから行く事にしましょう。
さて、「左岸」です。
福岡市。
主人公茉莉は2つ上の兄惣一郎と、
隣家に住む幼馴染の九の3人でいつも遊んでいました。
聡明な惣一郎を茉莉も九も大好きで、
三人でいればいつも幸せで何も怖いものがなかった。
ところが、惣一郎は人並み外れて早熟で、ある日突然自殺してしまいます。
茉莉と九、二人の幸せな子供時代はそこで幕を閉じ、
劇的な人生の波に二人は飲み込まれていく・・・。
この二人は、惣一郎を軸に心の奥底でつながっているのですが、
実際にはほとんど接点がなく時間が流れていきます。
なんと冒頭は、17歳の茉莉が男と駆け落ちをして東京に出てくるというところから。
もちろん、九ではありませんよ。
でもその男とはまもなく別れ、別な男と福岡に舞い戻ってきます。
まあ、奔放と言えば奔放。
どんな時も彼女は本気ですが、
実はいつも心の底に九を置いている、そんな気がします。
しかし九の方も、ある日自分の思いを茉莉に告げたきり、
放浪の旅に出てしまうのです。
なかなか、この二人一緒のシーンが出てこないので、やきもきさせられますが、
けれども茉莉は着実に自分の人生を歩んでいきます。
でも、なぜか彼女とつきあう男性はぐうたらになって身を持ち崩すか、死んでしまうかどちらか・・・
という両極端で、結局長続きはしないのです。
そんな中で生まれた一人娘さきの成長を見つめながら、
年齢を重ねていく・・・。
茉莉自身の母親と茉莉との相克。
そして茉莉と娘さきとの相克。
母と娘の二重写しが物語に厚みを加えます。
それから今作を強くイメージ付けているのが博多弁。
茉莉は絵のモデルとして時にはパリに渡ったりもするのですが、
この博多弁こそが、彼女をファンタジックな存在とせず、
きっちりしたたかに生きる生身の女とすることに貢献しています。
約半世紀に渡る物語となりますが、
あの、一人で「うったうったうー」と唱えながらダンスを踊るエキセントリックな少女が、
こういうふうに年を取る・・・ということが、
ものすごく説得力がある気がします。
確かに、こういうふう以外にはならないですよね。
取ってつけたようなハッピーエンドにはならないのですが、
でも何やら素晴らしい充足感が残ります。
朝の連続テレビドラマにもなりそうな、女の一代記。
読みごたえたっぷりでした。
さてところで、実は九には不思議な力があります。
今作ではあまりそのことには触れられていないのですが、
私たちは「右岸」ではまた全く別の景色を見ることになります。
今現在、まだその半ばほどまで読んだところですが、
果たしてそのラストは・・・??
つい期待してしまいます。
「左岸 上・下」江國香織 集英社文庫
満足度★★★★☆
左岸 上 (集英社文庫) | |
江國 香織 | |
集英社 |
左岸 下 (集英社文庫) | |
江國 香織 | |
集英社 |
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かつての「冷静と情熱のあいだ」の著者二人が、
再び、一つのストーリーを女性側と男性側から綴ったストーリーです。
ボリュームたっぷり、上下二巻×2。
江國香織さんが女性側から書いたものがこの「左岸」。
辻仁成さんが男性側から書いたものが「右岸」。
福岡、東京、パリ。
舞台を移しながら語られる、男と女の一代記となっています。
どちらから読むか迷いますが、
ここはやはり女性の立場で江國香織さんから行く事にしましょう。
さて、「左岸」です。
福岡市。
主人公茉莉は2つ上の兄惣一郎と、
隣家に住む幼馴染の九の3人でいつも遊んでいました。
聡明な惣一郎を茉莉も九も大好きで、
三人でいればいつも幸せで何も怖いものがなかった。
ところが、惣一郎は人並み外れて早熟で、ある日突然自殺してしまいます。
茉莉と九、二人の幸せな子供時代はそこで幕を閉じ、
劇的な人生の波に二人は飲み込まれていく・・・。
この二人は、惣一郎を軸に心の奥底でつながっているのですが、
実際にはほとんど接点がなく時間が流れていきます。
なんと冒頭は、17歳の茉莉が男と駆け落ちをして東京に出てくるというところから。
もちろん、九ではありませんよ。
でもその男とはまもなく別れ、別な男と福岡に舞い戻ってきます。
まあ、奔放と言えば奔放。
どんな時も彼女は本気ですが、
実はいつも心の底に九を置いている、そんな気がします。
しかし九の方も、ある日自分の思いを茉莉に告げたきり、
放浪の旅に出てしまうのです。
なかなか、この二人一緒のシーンが出てこないので、やきもきさせられますが、
けれども茉莉は着実に自分の人生を歩んでいきます。
でも、なぜか彼女とつきあう男性はぐうたらになって身を持ち崩すか、死んでしまうかどちらか・・・
という両極端で、結局長続きはしないのです。
そんな中で生まれた一人娘さきの成長を見つめながら、
年齢を重ねていく・・・。
茉莉自身の母親と茉莉との相克。
そして茉莉と娘さきとの相克。
母と娘の二重写しが物語に厚みを加えます。
それから今作を強くイメージ付けているのが博多弁。
茉莉は絵のモデルとして時にはパリに渡ったりもするのですが、
この博多弁こそが、彼女をファンタジックな存在とせず、
きっちりしたたかに生きる生身の女とすることに貢献しています。
約半世紀に渡る物語となりますが、
あの、一人で「うったうったうー」と唱えながらダンスを踊るエキセントリックな少女が、
こういうふうに年を取る・・・ということが、
ものすごく説得力がある気がします。
確かに、こういうふう以外にはならないですよね。
取ってつけたようなハッピーエンドにはならないのですが、
でも何やら素晴らしい充足感が残ります。
朝の連続テレビドラマにもなりそうな、女の一代記。
読みごたえたっぷりでした。
さてところで、実は九には不思議な力があります。
今作ではあまりそのことには触れられていないのですが、
私たちは「右岸」ではまた全く別の景色を見ることになります。
今現在、まだその半ばほどまで読んだところですが、
果たしてそのラストは・・・??
つい期待してしまいます。
「左岸 上・下」江國香織 集英社文庫
満足度★★★★☆