映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ネイビーシールズ 空港占拠

2025年02月14日 | 映画(な行)

孤軍奮闘

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空港占拠。
何やら他のドラマでも見たことがあるけれど、
ちょっと心惹かれるテーマではあります。

 

ポーランドのアメリカ秘密軍事施設が、テロリスト襲撃により壊滅的な被害を受けます。
ネイビーシールズ(米海軍の特殊部隊)のジェイク・ハリス大尉は、
テロの嫌疑がかかるアミン・マンスールをワシントンDCまで移送する任務に就きます。
ハリスは多くの部下をこの度失っていました。

さて、ハリスがマンスールを伴い空港に到着すると、
元米国軍人のジャクソン率いる武装集団が空港を占拠し、
マンスールの奪取を図ります。
マンスールだけが凶悪な爆弾を入れたコンテナの番号を知っているのです。

ハリスはテロを防ぐため、マンスールとその身重の妻を守り、



孤軍奮闘することに。

ヒーローの孤軍奮闘。
周囲は凶悪な敵ばかり。
どう考えても突破できそうにないけれど、突破してしまうのがドラマのいいところ。
ここではこちらの情報が、敵方に筒抜け。
誰かが裏切って情報を流しているのだとしか思えません。
果たして裏切り者は誰なのか、そこも見所です。

ハリスは部下をほとんど殺されてしまったという憤りを感じていて、
通常よりも怒り丸出し。
過度に凶暴なのがちょっと気になるところ。

この死屍累々の空港の後始末はどうするのよ・・・などと、下世話な心配までしてしまう。
こういうドラマの、常のことではありますが。

<Amazon prime videoにて>

「ネイビーシールズ 空港占拠」

2024年/アメリカ/103分

監督:ジェームズ・ナン

出演:スコット・アドキンス、マイケル・ジェイ・ホワイト、アレフシス・ナップ、トム・ベレンジャー

満足度★★.5


ナイトスイム

2025年02月08日 | 映画(な行)

何者かが潜む、水中のさらなる深淵

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難病に冒され、早期引退を余儀なくされた元メジャーリーカーのレイ・ウォーラー。
それでもまだ現役復帰の夢をあきらめきれません。

そんな時、水泳が理学療法によいと聞き、中古のプール付き物件を購入。
妻イブ、娘イジー、息子エリオットとともに越してきます。
庭にあるプールは、なぜか15年も使われていなかったようなのですが、
手入れして水を満たし、美しく整います。

しかし、妻や子どもたちは、なにか得体の知れない恐怖をそのプールで感じるようになります。

このプール、水道水ではなく、天然の湧き水で満たされるようになっている
というところがミソなんですね。
地中の奥深くと通じている。
その奥深くに潜む何者かは、通常のホラーに登場するただ「害」をなすものではなくて、
ギブアンドテイクなのです。

何かを強く望む者の欲望に寄り添って、
その代わりに周囲の人物の命を奪う・・・。

この場合、何が何でも元の健康を取り戻したいというレイの欲望が満たされる代わりに、
家族の命を差し出さなければならない・・・ということで。

父親が、自分の子どもの命を犠牲に自身の欲望を満たそうとするなどあり得ない、
と思うのですが、まあつまりその時には、
彼の精神もほとんどその魔物に操られているというわけ・・・。

メジャーリーガーとして活躍したレイは、
ひ弱でとても野球選手には向かないと思われる息子が歯がゆく、
また息子もそのことをコンプレックスに感じている・・・というような伏線も良しです。

 

<Amazon prime videoにて>

「ナイトスイム」

2024年/アメリカ/98分

監督:ブライス・マクガイア

出演:ワイアット・ラッセル、ケリー・コンドン、アメリ・オーファーレ、ギャビン・ウォーレン

 

スリル度★★★★☆

満足度★★★.5


眠りの地

2024年11月16日 | 映画(な行)

大企業のやり口を暴け

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実話をもとにしています。

葬儀社を営むジェレマイア・オキーフ(トミー・リー・ジョーンズ)。
近年、資金繰りに困っていて、会社の一部を大企業に売却しようと考え、
大手企業と契約を結ぼうとしたのですが、相手方からの書類が戻って来ません。
どうやら、相手方ローウェン・グループの悪意あるたくらみようなのです。

オキーフは代々つづく家業をこの巨大企業ら守るため、
訴訟を起こすことを決意します。
そこで、近年負けなしというカリスマ弁護士、ウィリー・E・ゲイリーを雇います。
正反対の性格の2人ですが、
大企業の腐敗や人種的不公平を共に暴いていくうちに、絆が芽生えはじめます。

ウィリーはこれまで契約関係の弁護経験がなかったのですが、
この度初めて取り組むことに。
本当に大丈夫なのか?と思いますが、本人はとにかくハッタリめいた強気な主張で
これまで勝ち抜いてきたので自信満々。
多大な賠償金を相手方に要求します。

さて、見ていて気づくのは、この裁判では契約のあり方について、
針の穴に糸を通すような小難しい法解釈を用いたりしない。
どうやって陪審員の関心と共感を呼び、味方に付けるかというのが主題。

この裁判所の地域は黒人が多い地域で、陪審員もほぼ黒人。
そんな中で、弁護士が黒人で、オキーフ自身も差別意識がないというのは有利な条件。
でも、もっと決定的な決め手は相手方にありました。
巨大企業の悪質なやり方をウィリーらは暴いていく・・・。

ということで、陪審員たちの気持ちは一気に反ローウェン・グループへと傾いていく・・・と。

訴訟の本題とは異なるところで、こうしたことが決定していって良いのかな?
と疑問に思わなくもないのですが、
それにしても大企業の悪質なやり口を目の当たりにしたら、
やっぱり小さな企業を勝たせるのが正義とも思えてきます。

陪審員制度って、どうなのか。
難しいところではあります・・・。

<Amazon prime videoにて>

「眠りの地」

2023年/アメリカ/127分

監督:マギー・ベッツ

原作:ジョナサン・ハー

脚本:ダグ・ライト、マギー・ベッツ

出演:トミー・リー・ジョーンズ、ジェイミー・フォックス、
   ジャニー・スモレット、ママドゥ・アティエ、パメラ・リード、アラン・ラック

大企業の真実度★★★★☆

陪審員重要度★★★★★

満足度★★★.5


奈落のマイホーム

2024年09月06日 | 映画(な行)

マンションごと、深い穴の中に・・・

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たまには韓国作品も見ましょうか、ということで。

 

平凡な会社員ドンウォン。
長い節約生活の末、ソウルの一等地にマンションを購入します。
念願のマイホームに、妻と息子とともに引っ越し、
同僚を招いて新築祝いのパーティーを行います。

ところがそんな時に、大雨でシンクホールが発生し、
あっという間にマンション全体が飲み込まれてしまいます。

ソリの合わない隣人マンスや会社の部下たちとともに地下500メートルまで落下した彼ら。
脱出するべく手を尽くしますが、さらなる雨で穴は水で満たされていきます・・・。

コメディタッチで、そんなバカなという事故。
でも結構迫力があって、意外と引き込まれてしまいました。

始め、全くソリが合わなかったドンウォンと隣人マンス。
けれど、こんな困難の渦中にあって次第に息が合って来ます。
普通に互いの生活、命を大事に思う気持ちをちゃんと持っている。
2人ともブルース・ウィリス並みの活躍をしますよ!

こう言う隣人愛、家族愛がしっかりしているところが、
なんだか見ていて心地よかったです。

ドンウォンの奥さんはちょうどその時買い物に出ていて無事。
しかし実は妻と一緒にいたはずの息子がマンションに戻ってきていて・・・。
息子は妻と一緒にいるはずと思い込んでいたドンウォンが、
そうではなかったことを知って愕然とし、
必死で探し出そうとするという展開が見事でした。

展開は若干無理矢理の所もありながら、ま、いいかと思える作品。

<Amazon prime videoにて>

「奈落のマイホーム」

2021年/韓国/114分

監督:キム・ジフン

出演:チャ・スンウォン、キム・ソンギュン、イ・グァンス、キム・ヘジュン

 

家族愛・隣人愛度★★★★★

危機一髪度★★★★☆

満足度★★★★☆


劇場版 ねこ物件

2024年08月30日 | 映画(な行)

前進なし

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テレビドラマ「ねこ物件」の劇場版、とのことですが、
私はテレビ版を見ていなかったので、初見ということになります。
でもまあ、状況は十分に説明してくれるので、OKでした。

2匹のねこと暮らす30歳、二星優斗(古川雄輝)。
祖父の死をきっかけに、ねこ付きシェアハウス「二星ハイツ」を始めます。
以前4人の同居人がいたのですが、
それぞれに夢を追い、新たなステージへ旅立っていきました。
・・・と、つまりここまでの紆余曲折の物語がテレビドラマだったということですね。
本作はその後のストーリー。

不動産会社の有美(長井短)は、優斗に二星ハイツの再会を促すのですが、
あまり乗り気ではない優斗。
もともと人とのコミュニケーションは得意ではなくて、
また始めからやり直すのがおっくうであるように見受けられます。
そんな時、幼い頃離ればなれになった弟の存在を思い出し
探し出そうと思いつきます。
確か弟もねこが好きだった。
ここのシェアハウスのことをもっと宣伝して、多くの人に知られるようになれば、
弟も気づいてやってくるかも知れない・・・ということで、
このねこ付きシェアハウスと自分の存在をSNSで全国にアピールし、入居者を募ります。
そしてこんな優斗をサポートするため、かつての入居者たちが帰ってきます。

ねこ物件は思った以上に反響があり、驚くほどの大人数が応募。
優斗は、その1人1人と面接をして・・・。

テレビドラマのファンだった方にとっては、
結局懐かしいメンバーがそろうのは、嬉しいことなのでしょうね。

でも、ドラマを知らない私にとっては、なんか違うという気がしてしまいました。
ここは是非とも、またワケありの様々な人々との出会いの場となってほしい・・・。
そうでなければ、優斗は前進できないのでは・・・? 
まあ、ねこ好きの人々にとっては、毎日のんびりまったりできればOK、
仲良しこよし同志で、あえて新しい環境は必要なしということ?

いかにもテレビドラマありきの劇場版。
なんだかなあ・・・。

ねこは普通に可愛いです。

<Amazon prime videoにて>

「劇場版 ねこ物件」

2022年/日本/93分

監督・脚本:綾部真弥

出演:古川雄輝、細田佳央太、上村海成、長井短、竜雷太

ねこの癒やし度★★★☆☆

満足度★★☆☆☆


ぬけろ、メビウス!!

2024年08月24日 | 映画(な行)

なんもいえない

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建築会社で働いていた櫻川優子。契約社員の5年ルールで、
正社員になる前に雇い止めを宣告されてしまいます。

そこで、かつてあきらめた教員になる夢をかなえるべく、24歳にして大学進学を目指します。
ところがそんな矢先に、イケメンの裕福な青年と出会い、ふと別の夢を見てしまいます。
優子には現在付き合っている彼氏がいるのですが・・・。

私、この優子のあまりのバカさに途中で見る気が失せて、もうやめようかと思ってしまいました。
この場合の「バカ」というのは、いわゆる偏差値的な優劣ではなくて、
生き方というか思考回路についてです。

イケメンの金持ち青年と付き合うにあたって、優子は自分を「優奈」と名乗り、
専門学校卒なのに大卒と嘘をつきます。
そうして結婚を前提としたお付き合いを始めて、彼の家族にまで会う。
まさか、と思いますよね。
学歴詐称だけならともかく自分の名前まで偽って、
どうやって結婚できるなどと思うのでしょう・・・。
このバカさに、全く感情移入できず、むしろムカつくばかり・・・。

ところが、この金持ち親子もまた、学歴だけで人を図ろうとするクズ親子。
お金持ちがみんなこうした思考をするわけでもないのに、
優子のバカさに加えてなんたる浅い描写。
あ~酷い映画・・・。

しかし、「せっかくだから最後まで見なきゃね」と自分を励ましつつ見たところ、
まあ、なんとか普通に軌道修正して、
優子は嘘がばれて失恋したあげく、頑張り始めるのでした・・・。

そもそも、現状に不満があるのだったら、
契約社員だったときからもう少し先のことを考えておきなよって話。

私は元気な女の子は好きだけれど、バカな女の子は嫌い・・・なんだな、つまり。

 

「抜けろ、メビウス!!」

2022年/日本/93分

監督:加藤慶吾

脚本:村上のん

出演:坂ノ上茜、藤田朋子、細田善彦、田中偉登、松原菜野花

おバカ度★★★★★

満足度★★☆☆☆


ナチスに仕掛けたチェスゲーム

2024年08月23日 | 映画(な行)

チェスにのめり込むほかなかった

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オーストリア作家シュテファン・ツバイクが1942年に発表し、
命をかけてナチスに抗議したとして世界的ベストセラーになった小説「チェスの話」の映画化です。

 

ヨーゼフは久々に再会した妻と共に、ロッテルダム港からアメリカへ向かう豪華客船に乗ります。

それ以前、1930年代のウィーン。
公証人の仕事をしていたヨーゼフですが、
ナチスドイツがオーストリアを併合するやいなや、ナチ将校に拉致されます。
そして、貴族の資金の預金番号を教えるよう迫られるのです。
しかしヨーゼフは回答拒否。
ホテルに監禁されることに。

・・・そんな過去を挿入しながら、船上の出来事も進んでいきます。

船上ではチェス大会が開かれていて、世界王者が乗客全員と対戦しています。
ヨーゼフが船のオーナーに助言をしたことから、
ヨーゼフと世界王者が対戦することになり・・・。

 

さて、ホテルに監禁されたヨーゼフはどうなったのか。
ホテルに監禁などと言うと、なんだか快適そうにも聞こえてしまいます。
けれど、本当にその一室に閉じ込められて一歩も外に出ることができません。
水も出て食事は運び込まれる。
けれど窓は開かず、ただ無為に時間が流れるだけ。
音楽も、本も無し。
このナチ将校は体に苦痛を与える拷問はしないといい、
しかし、何もすることがないという精神的拷問を、時間をかけて仕掛けてきたのです。

しかしあるとき、ひょんなことからヨーゼフは一冊の本を手に入れます。
とにかく活字に飢えていたから、どんなモノでもかまわないと彼は思った。
しかしそれはヨーゼフには全く興味の外であるチェスの対戦記録の本でした・・・。

彼は一度は絶望を感じたものの、しかしそれでもないよりはマシと、
監視の目を盗みつつ、パンでチェスの駒のようなものを作り、
チェス盤はトイレの床の市松模様を利用。
ヨーゼフはチェスの世界にのめり込んでいきます・・・。

つまりそれで、ヨーゼフは世界王者と対戦できるくらいにチェスが上達したというわけなのですが・・・。

チェスにのめり込みすぎたヨーゼフの世界がゆがんでいく・・・。
意外なラストに言葉を失います・・・。

 

本作の題名「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」ですが、
まあ、確かにナチスのおかげで酷い目にあう話ではあるけれど、
でも本作は、ナチスの非道さを主題としたものではなくて、
「自由を奪われる」ということの意味を言っているわけなので、
原題「チェスの話」のままの方が良かったのでは?

ナチ将校とチェス世界王者が一人二役、つまり同一人物が演じていたというのには、
私は気づきませんでした。
あまりにも様子が違うので・・・。
でもこのストーリー全体を考えてみると、一人二役は必然なんですね。

とてもよく練られている作品です。

<Amazon prime videoにて>

「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」

2021年/ドイツ/112分

監督:フィリップ・シュテルツェル

原作:シュテファン・ツバイク

出演:オリバー・マスッチ、アルブレヒト・シュツク、ビルギット・ミニヒマイアー、アンドレアス・ルスト

苦痛度★★★★★

混乱度★★★★☆

満足度★★★★☆


にしきたショパン

2024年08月17日 | 映画(な行)

芸術の頂点でなくても、人の心を動かすことができる

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幼馴染みの凛子と鍵太郞は、共に
だるま先生と呼ばれる高校音楽教師の元でピアノを学んでいます。
鍵太郞は、門下生の中でも一番の腕の持ち主で、作曲もこなします。
得意はラフマニノフ。
彼の家は母子家庭で金銭的に余裕がないため、音大に進むことはあきらめ、
間もなく行われるコンクールでワルシャワへの留学特典を得ることを目指しているのです。

一方、凛子は不器用でコツコツ努力するタイプ。
ショパンに憧れています。
音大進学希望。

さてところがそんな時に、あの阪神淡路大震災が起こります。
鍵太郞の母は亡くなり、自身は腕を負傷。
高度な技術を要するピアノは、弾けなくなってしまいます。

コンクールには鍵太郞の代わりに凛子が出場し、
なんと優勝し、ワルシャワ留学特典を得てしまった・・・。
凛子は鍵太郞に申し訳ない気持ちを抱きながら留学し、
数年後、帰国します。

しかし鍵太郞は、すっかり変わり果てていて・・・。

 

互いに淡い気持ちを抱いていた二人。
しかしこの二人の人生を震災がぶち壊す。

困難もありながら、二人が切磋琢磨して成長していくというような、
ゆるいロマンチックなストーリーを予想していたのですが、意外とシビアでした。

鍵太郞は、ピアノは弾けなくなったものの、
作曲の才能を生かし、とあるピアニスト専属の作曲を行うようになっていました。
しかもその彼女とは愛人関係に・・・。
そんなところへ凛子が帰国。
鍵太郞は凛子への気持ちを残していたのですが、
しかし自分の今の境遇を捨てれば生活が成り立たない・・・。
そんなジレンマに襲われて、凛子にはつらく当たることしかできないのです。

そしてまた、凛子は指に重大な神経疾患を発症し・・・。

 

芸術の頂点を目指すピアノ。
もちろんそういうものはあるわけですが、
でもそうではなくても聞く人の心を動かす音楽もある・・・。
例えば左手だけで弾くピアノというものもあったりして、
それが聴衆に深い感動をもたらしたりもします。

高校生の時の二人が、寄り添って弾くピアノの楽しさ・・・。
音楽はどんな状況に合っても私たちに寄り添うことができるのだな・・・。

<Amazon prime videoにて>

「にしきたショパン」

2020年/日本/90分

監督:竹本祥乃

脚本:竹本祥乃、北村紗代子

出演:水田汐音、中村拳司、ルナ・ジャネッティ、泉高弘

挫折度★★★★★

満足度★★★☆☆


凪の島

2024年07月31日 | 映画(な行)

島の人々に見守られながら成長する凪

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小学4年の凪(新津ちせ)は、両親の離婚に伴い、
母の故郷、山口県の小さな島に越してきて、母と祖母と共に暮らしています。
普段はとても明るい凪ですが、アルコール依存症の父が母に暴力を振るう姿がトラウマとなり、
時々過呼吸を起こします。
そんな凪の状況を知った上で、温かく接してくれる島の人々。

凪と凪を取り巻く人々の物語です。

凪のおばあちゃんはこの島で医院を開いていて島の人々に頼りにされています。
その娘、すなわち凪の母は看護師で、毎日船で本土の病院に通って勤務しています。

島の小規模な小学校は複式のクラスですが、同じ学年の男子2人と凪はとびきり仲が良い。
若い担任教師も熱意に満ちています。

用務員さんはいつもむっつりした顔をしていて、
決して笑わないので「わらじい」などと呼ばれていますが、
笑わないことには理由があって・・・。

凪とその友達2人の様子が、元気で大好きでした。
いつも元気な凪なのですが、ときおりラインで連絡を取り合う父のことはちょっと複雑。
普段はやさしくていいお父さんなのですが、
お酒を飲むと母に乱暴をするので、離婚ということになってしまったのです。
でも今はお酒を断って、断酒会にも参加。
お母さんと復縁をしたそうなのですが、母には全くその気はなさそう。

終盤の凪の言葉が良かった。

「私はイヤでもお父さんの子供だけれど、お父さんとお母さんは今はただの他人。
だから2人のことは2人でちゃんと話し合って。」

離婚した両親の子供としては実にまっとうな言葉。
将来楽しみなお子さんですね!!

<Amazonプライムビデオにて>

「凪の島」

2022年/日本/107分

監督・脚本:長澤雅彦

出演:新津ちせ、島崎遥香、加藤ローサ、徳井義実、嶋田久作、木野花

島の人々の温かさ★★★★☆

満足度★★★★☆

 


西成ゴローの四億円

2024年05月25日 | 映画(な行)

孤独でニヒルな男が・・・

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大阪のドヤ街と呼ばれる西成地区。
日雇い労務者の土師悟朗(上西雄大)は腕っ節が強く、周囲から頼られていました。
このゴローは、殺人罪で服役した過去を持ち「人殺しのゴロー」の異名を持っています。
しかしゴローは断片的に記憶を失っていて、自身の殺人事件のことも覚えてはいないのです。
それでも徐々に記憶に蘇ってくることもあります。

かつて自分は政府諜報機関の工作員だったこと。
妻と娘がいたこと・・・。
そしてその娘が難病のため心臓移植を必要としているけれども、
治療のため4億円が必要と知ります。
そこへ工作員時代の同僚が現れ、ゴローに闇の仕事を持ちかけます。

あらすじだけ見ると、悪くはないですよね・・・。
ゴローが娘の手術代を稼ぐために、
とにかくどんな汚れ仕事でも引き受けてお金を稼ごうとする物語。

作中に人物が登場する都度、その人物の財産や借金、現在の所持金などが
いちいち表示されるのもユニークです。

でもなんというか全体のテイストが、いかにも猥雑、ワイルド。
コテコテのなにわの半グレだかヤクザだかの
強がったおっさんたち&ねーちゃんたちのオンパレード。
そしてゴローの捨て身なニヒル味満載。
なんか私はこういうの苦手。
間違えて見てしまった・・・。

で結局まだ2億くらい稼いだだけなのに終わってしまった、
と思ったらなんとこれ2部作の前編だったのですね。
続きがある!

ゴメンナサイ。
私はもう見ないです。
気になる方はご自分でご覧ください・・・。

あ、ゴローが起こしたといわれる殺人事件の真相は別にあると思うのですが、
後編でそのあたりは明らかになるのだと思います、多分。

 

<Amazon prime videoにて>

「西成ゴローの四億円」

2021年/日本/104分

監督・脚本:上西雄大

出演:上西雄大、山崎真実、津田寛治、仁科貴、奥田瑛二

 

満足度★★☆☆☆


ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

2024年03月11日 | 映画(な行)

ぬいぐるみは、黙って受け入れてくれる

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京都にある大学の「ぬいぐるみサークル」。
「男らしさ」や「女らしさ」というノリが苦手な大学生・七森(細田佳央太)は、
そこで出会った同じ学部の麦戸(駒井蓮)と心を通わせます。
彼らを取り巻くサークルの人々のやさしさとは・・・?

さて、ここのぬいぐるみサークルというのは、
「ぬいぐるみを作る」のではなく、
「ぬいぐるみと話す」サークルなのでした。

各々が、ぬいぐるみに自分の語りたいことを話しかける、
つまり独り言ではありますが、そういう場所。
サークルのきまりで、他の人がぬいぐるみに話しかけることを聞いてはいけない
ということになっているので、
普段は各々イヤホンやヘッドホンなどをつけて音楽を聴くようにしているのです。

なぜわざわざそのような事をしているのか。

彼らは実際の人に向かい合って「語る」ことにためらいを感じるのですね。
自分が話したことで相手を不快にさせたり、
落ち込ませたりすることがあるとマズいと思うので・・・。
または、自分が変なヤツと思われたりするのもイヤ。
そもそも、語りかける相手がいない・・・などなど。

つまり、皆やさしいのでしょう。

七森は、「恋愛」というものがよくわからない。
人を友人として好きになることはあっても、
異性であれ同性であれ、性的な意味で愛したいという気持ちが起こらない。
そんな自分の方がおかしいのか?と思い、
サークルの1人と付き合ってみたりもするのですが・・・。

こういうのを何というのでしたっけ。
以前NHKのドラマにもあったなあ。
あ、アセクシュアルでした!
人の心の有りようは本当に様々で、
そして、どんなあり方だってOKなんですね。
自分らしく生きましょう。

でも、自分の思いは、ぬいぐるみに語りかけるのも良いけれど、
やっぱり実際の人に語りかけるのもいい。
少なくとも、ここのサークルの皆さんは、聞いてくれそう・・・。

<WOWOW視聴にて>

「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

2023年/日本/109分

監督:金子由里奈

原作:大前粟生

脚本:金子鈴幸、金子由里奈

出演:細田佳央太、駒井蓮、新谷ゆづみ、細川岳、真魚

やさしさ度★★★★★

満足度★★★.5


逃げきれた夢

2024年02月12日 | 映画(な行)

人と正面から向き合うこと

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定時制高校教頭を務める末永(光石研)。

元教え子・平賀南が働く定食屋を訪れ、記憶が薄れていく症状が出て、
支払いをせずに立ち去ってしまいます。

妻との仲は冷え切り、娘は始終スマホにを見ていて会話にはなりません。
旧友石田とも疎遠になってしまっています。
末永は、この病を機に、これまで適当にしていた人間関係を見つめ直そうとします。

末永はごく普通に真面目に仕事を続けてきたつもり。
高校の生徒たちともうまく向き合ってきたと思っています。
けれど、生徒に、いつでも何でも相談するようにと言ってみるものの、
生徒たちはそんなことばは単なるうわべだけのモノとわきまえているようです。
そしてまたそのことを生徒から言われて、確かにその通りだと思い当たってしまう末永。

記憶が薄れていくという症状が現れ、末永は退職を決意します。
それは、症状が酷くなる前に好きなこと、
これまでできなかったことをしようというような思いからではありません。
まあ、普通に、仕事で大きなミスをして迷惑をかけないように、とのことなのでしょう。
(実際の心境は語られないのですが)。
つまり、特別にやりたいことなど何もないのです。
けれどこのときになって、自分はこれまで
誰とも正面から向き合ってこなかったことに気づくのです。

さてさて、これはこの物語の末永の話。
けれど、多くの人がこんな風なのではないかなあ・・・と思えるのです。
少なくとも私はそうかも知れない。
たとえ病がきっかけではあっても、そうしたことに気づいて、
新たな一歩を踏み出せたのなら、それでオーライなのかも。

実に淡々と進む物語ですが、大切なことをいっていますね。

<Amazon prime videoにて>

「逃げきれた夢」

2023年/日本/96分

監督・脚本:二ノ宮隆太郎

出演:光石研、吉本実憂、工藤進、坂井真紀、松重豊

 

男の生き方度★★★★☆

満足度★★★.5

 


ノッティングヒルの洋菓子店

2023年12月22日 | 映画(な行)

親友の夢を引き継いで

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パティシエのサラと親友イザベラは、
長年の夢だった自分たちの店をオープンするところです。
店舗も借りて、いよいよ準備に取りかかろうとするとき、
サラが突然の事故で他界してしまいます。
悲しみと喪失感で何をする気にもならないイザベラと、サラの娘・クラリッサ。

しかしやがて彼女たちは、疎遠になっていたサラの母・ミミをも巻き込んで、
再び開店に向けて動き始めます。
しかし、肝心のパティシエがいない・・・。
そんな時、ミシュラン星二つレストランで活躍するシェフ・マシューが現れます。
かつて恋人だったサラから逃げた男・・・。
イザベラの反感を買いつつも、パティシエとして協力することに。

クラリッサは、もしかするとマシューが自分の父親なのでは?と思いますが・・・。

本作の原題は「Love Sarah」なのですが、
「ノッティングヒルの洋菓子店」とはよくしたもので、うまい邦題だと思います。
何しろノッティングヒルといえばあの名作なので、
つい興味を引かれてしまいます。

ロンドンの人気デリ「オットレンギ」の全面協力を得たそうで、
本当にどれもおいしそうで、見ているだけなのがつらく感じるくらいです。

さて、最愛のかけがえのない人を失った時の喪失感・・・。
どんな場合もそれはつらいですね。
しかも全く予期せぬ突然のことであれば。
けれど、そんなこともないわけではない、というのが現実というもの。

残された人々は、一時はもう立ち上がることもできないように思われるのですが、
けれど人生は否応なく続いていくので、それでも生きなければならないのです。

サラ1人分の穴を、関係する娘と母と元恋人が補い、
彼女らはサラの夢を引き継いで立ち上がる。

でも、この近所には同じような店が何軒もあって競合しており、客足は鈍いのです。
そこで、店の特色を出すアイデアが・・・、
というところもひねりがあって楽しいですね。

ロンドンも様々な国の人々が住み、多様化しているということなのでしょう。
日本人が好むお菓子というのも出てきてビックリ。
うーん、でもここは「どら焼き」くらいにしてほしかったな。
日本由来のものではあるかもしれないけれど、
海外でわざわざ食べたいものではない・・・。

ともあれ心温まる一作であります。

 

<Amazon prime videoにて>

「ノッティングヒルの洋菓子店」

2020年/イギリス/98分

監督:エリザ・シュローダー

脚本:ジェイク・ブランガー

出演:セリア・イムリー、シャノン・ターベット、シェリー・コン、
   ルパート・ペンリー=ジョーンズ、ビル・パターソン

立ち直り度★★★★☆

食べたい度★★★★★

満足度★★★★☆


映画ネメシス 黄金螺旋の謎

2023年12月13日 | 映画(な行)

メネシスか? ネメシスか?

* * * * * * * * * * * *

テレビドラマシリーズの映画化。
横浜の探偵事務所ネメシスを巡る物語。
私はテレビドラマも見ていましたが、残念ながら関心は薄く、
映画版も軽くスルーしていました。
そもそも、「メネシス」なのか、「ネメシス」なのかもいまだによく覚えておらず、
この度映画検索で「メネシス」と打ったら出てこなかった・・・。

さて、本作。
相変わらずの探偵事務所。
社長・栗田(江口洋介)、天才探偵(?)風真(櫻井翔)、
探偵助手アンナ(広瀬すず)は健在ですが、
近頃依頼がめっきり減って、誘拐されたペットの犬を探し出してほしいという依頼に飛びつく始末。

そんな頃、アンナは親しい人々が次々に殺害されていくという
悪夢を繰り返し見るようになります。

ゲノム解析による操作によって誕生したというアンナのディープな秘密と、
そのデータのことが根底にある事件が始まります・・・。

ストーリーは悪くはなくて、出演者も豪華。
これがなぜさほど受けないのか・・・?
それが最大の謎ではあります。

思うに、探偵事務所の3人の役割づけが中途半端というか、
天才探偵は実はポンコツなのに、ポンコツになりきれていない。
では社長の役割は?と言えば、よく分からない。
アンナの特殊能力も生かし切れていない・・・。
つまり人材を使い切れていないのかも。

テレビドラマもさほど人気があったわけでもないのに、映画化というのも謎の一つ。

 

「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」

2023年/日本/99分

監督:入江悠

脚本:泰建日子

出演:広瀬すず、櫻井翔、江口洋介、勝地涼、真木よう子、橋本環奈、佐藤浩市

 

満足度★★.5

 


ノースマン 導かれし復讐者

2023年09月14日 | 映画(な行)

毒母!!

* * * * * * * * * * * *

舞台は9世紀。
スカンジナビア地域のとある島国。

10歳アムレートは、父オーヴァンディル(イーサン・ホーク)王を
叔父・フィヨルニルに殺され、
母・グートルン(ニコール・キッドマン)王妃も連れ去られてしまいます。
一人で祖国を脱出したアムレートは、父の復讐と母の奪還を心に誓う。

数年後、アムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)は
ヴァイキングの一員となっています。
フィヨルニルがアイスランドの農場を営んでいることを知り、
奴隷に変装してアイスランドに向かう・・・。

本作は、シェイクスピアの「ハムレット」のもととなった
12世紀の作家・サクソの「アムレート」伝説を元にしています。
ヴァイキングが力を振るった時代の生活や文化がリアルに再現されています。

人々が迷信や暴力、略奪等の混沌の中で生きていた時代。

オーヴァンディルが支配していた国を、その義弟・フィヨルニルが奪ったわけですが、
その後さらにまた別の者が国を奪い、
フィヨルニルは祖国から逃れてアイスランドの辺境の地で農場を営んでいる、
という皮肉な運命も、実にさらりと語られます。
でもまあ、大きな農場の当主として、そこそこ支配的立場にあるわけです。
そこに奴隷としてやって来たアムレート。
しばらくは正体を隠し、復讐のチャンスを狙います。

しかし、驚くべきは終盤の、母・グートルンの吐く言葉。

彼女は決して亡き王にも行方不明の息子にも心残りなどなく、
というよりもそもそも王殺しを焚きつけたのが彼女で、
つまりは彼女は自らの欲望のままに、やりたいようにやって生きていたというわけ。
コワイコワイ・・・。

私には、復讐譚よりもこの魔女的王妃像が心に刺さったのでした。

男の付属物でありがちな、こんな時代の女性にして、
ここまで「自己」中心の強烈な個性には圧倒されてしまう。

ま、それもいいか。

 

<WOWOW視聴にて>

ノースマン 導かれし復讐者

2022年/アメリカ/137分

監督:ロバート・エガース

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ニコール・キッドマン、
   クレス・バング、イーサン・ホーク、ビョーク、ウィレム・デフォー

暗黒の時代度★★★★★

毒母度★★★★☆

満足度★★★.5