少年期との決別
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西島秀俊さん出演の本作、私以前、西島さん出演作品を見まくった時期があったのですが、
そのときに本作、見たいと思ったのにレンタルDVDの取り扱いがなくて、
これまで見ないままでした。
それがようやく、見ることができて感激!!
しかもなかなかの作品ですよ。
14歳で交通事故にあい、昏睡状態となっていた豊(西島秀俊)。
10年を経て、突然目覚めます。
その時、父、母、妹の家族はバラバラになっていて、
豊は、父の友人、藤森(役所広司)と共に、元の実家で暮らすことに。
豊は、なんとか元の家族を取り戻したいと思うのですが・・・。
14歳から昏睡状態のままで、目覚めたときには24歳。
つまり、体は成人した大人なのですが、心は思春期の少年のままということなのです。
実際、まだ家族を失うには早すぎますね。
豊の家はささやかな牧場を開いていて、ポニーを飼っていたようなのです。
家族が出ていった後に、藤森がその家を借りて、釣り堀を開いて生活していました。
ポニーを飼っていたあたりは、産廃置き場になってしまっていました。
そんな有様で、豊は表面上は平気な顔をしつつも、
実は以前と同じように家族がいて、牧場があって、ポニーがいて・・・
そういう暮らしを取り戻したいと思っているのです。
宗教にハマって世界を巡り歩いている父。
父と離婚後に別の男と再婚し、新たな暮らしをしている母。
アメリカに渡った後帰国し、怪しげな男と風来坊のような生活をしている妹。
曲がりなりにも「牧場」的な環境を取り戻し、
後は一瞬でもいいから、家族みんながそろうときがあればいいなと思う豊。
それはややいびつな形ではありますが、かなうのです。
つまり豊が一度失ったものを取り返す。
それが彼の少年期の終わりなんですね。
そして、彼は今度こそ自立して自由な人生を歩み始めることができるはずだった・・・。
ところが。
なんとも皮肉な運命が彼を待っていました。
「目が覚めてからのことはやはり夢だったのか・・・」
と彼はつぶやきます。
確かに、実はこの物語は、ベッドの上で眠り続けている豊の「夢」にしかすぎない、
ということでも成り立つストーリーなのかも知れません。
いや、あなたはしっかり生きたよ。
短期間のうちに少年から大人になったよね・・・。
そう言いたくなってしまう私でした。
さてさて、20年以上前の作品。
当たり前ながら西島秀俊さん若いっ!!
今はすでに俳優としてもすっかり重みを増して、
落ち着いて頼りがいのある大人の役が多いので、
こういうやんちゃな感じの役がすごく意外で新鮮です。
こんな西島秀俊さんを見ることができるなんて、なんて幸せ♡
・・・うーん、でもやっぱり今の西島秀俊さんの方が好きだワ。
大人の魅力ですよね、やっぱり。
ステキな年輪の重ね方をしたなあ・・・。
他の出演陣も魅力的で、今見ても十分面白いです。
「ニンゲン合格」
1999年/日本/109分
監督・脚本:黒沢清
出演:西島秀俊、役所広司、菅田俊、りりィ、麻生久美子、大杉漣
皮肉な運命度★★★★★
家族愛度★★★☆☆
満足度★★★★☆