映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

レイン・フォール/雨の牙

2009年04月30日 | 映画(ら行)
陽のあたる女と闇に住む男の接点

          * * * * * * * *

さてと・・・、
うーん、これはどう料理していいのか、実のところちょっと悩んでしまう。
そもそも、グラン・トリノのすぐあとに続けてみたりしたのが間違いですね。
グラン・トリノであまりにも鮮烈な感動を受けてしまったので、
妙にこちらが平板に思えてしまった・・・。

ジョン・レイン(椎名桔平)は、日系アメリカ人で、
もと米軍特殊部隊員の暗殺者。
彼は、国土交通省の官僚川村の暗殺に関わるが、
もう一つの目的、彼が持っていると思われるメモリースティックを入手することができなかった。
CIAアジア支局長、ホルツァー(ゲイリー・オールドマン)も、
そのメモリースティックを狙っている。
ジョンは、川村の娘みどり(長谷川京子)と逃避行をすることになるが・・・。

まあ、もともと、この椎名桔平観たさで観た作品なのですが。
たしかにそれは素敵でした。
アクションシーンはそう多くありませんが、切れがあってカッコイイ。
暗殺者といえばもっと冷徹なイメージがあるけれど、
意外と、そうでもないのですよ。
なんだか、奥底に人の良さがにじみ出てしまう。
このあたり、ちょっとジェイソン・ボーンに似ていますね。
CIAに追われるあたりも。
しかし、ここのヒロイン、みどりとの関係は、
こういう作品にしては淡すぎるような気が・・・。
この淡白さはやはり、日本のイメージなのかなあ・・・。

どちらかというと、常に冷静、ストイックな風に見えるジョンが、
ほんの一瞬、その激情をほとばせる・・・、
そうした後でのさりげない別れ・・・とした方が良かったのではと思えるのですが。
そうすると、かえってありきたりでしょうかね・・・?

まあとにかく、なんだか物足りなさが残ってしまう、という印象でした。

2009年/日本/111分
監督・脚本:マックス・マニックス
出演:椎名桔平、長谷川京子、ゲイリー・オールドマン、柄本明


4/25公開『レイン・フォール』予告編



グラン・トリノ

2009年04月28日 | クリント・イーストウッド
典型的頑固親父の下した決断

            * * * * * * * *

ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は
朝鮮戦争の帰還兵であり、元フォード車の自動車工。
今は年金暮らしですが、長年連れ添った妻を亡くしたところ。
しかし、これが典型的に頑固で気難しい。
気持ちの通じない二人の息子や、
おへそにピアスの孫も気に入らないし、
となりに越してきたアジア系移民の一家も気に入らない。
この固執ぶり、頑固ぶりには、思わず笑ってしまいます。
でも、日本でもよくいますよね。
こういう感じのお父さん。
何もかも面白くないと、いつも苦虫を噛み潰したような顔をしている。
多分奥さんが生きていた頃は、
奥さんがすべて仲立ちをして、うまく取り繕ってくれていたんでしょうね。
家族や、隣近所のお付き合い。
でも、その緩衝材がなくなってしまうと、どうしていいか分からない。
いきなり孤独に落ち込んでいってしまいます。

さて、隣家にいるのはアジア系モン族の一家。
タオというおとなしい少年と
スーという凛とした姉がいる。
タオは不良仲間に強制され、
ウォルトが一番大切にしている車、グラン・トリノを盗もうとするのですが、
ウォルトに見つかって失敗。
そんなことから、タオとウォルトのおかしな交流が始まります。

この姉のスーが良かった。
・・・近頃の映画はどれも女性の方がたくましい。
彼女が弟を見守る目、ウォルトの孤独を見抜く目、
愛も度胸もたっぷり。

時には隣家に、モン族の一族が大集合。
そんな場に招かれたウォルトは
次第に自分の家族よりも、モン族の皆に親しみを感じるようになっていくのです。

この映画はこの隣家との異文化コミュニケーションの部分が丁寧に描かれていて、
そこに、なんともいえないおかし味があります。
しかし、楽しんでばかりもいられなくなるのは、
タオに付きまとう不良たちの存在。


先日『暴力に暴力で対抗することのむなしさ』・・・などという話をしました。
この作品は、それよりもなお鮮やかに、そのことを訴えています。
血気はやるウォルトは、暴力に暴力で対抗してしまったために、
結局悲劇を大きくしてしまいました。
そのことを痛切に感じたからこその、最後の決断だったんですね。
カッコイイです。男ですねえ・・・。
そして・・・、泣けます。
この終り方はずるいよ~、と思ってしまいます。
泣けて、放心状態のうちにエンディングです。
なんというか、
まさに、映画ってこういう風にあるべき、という見本のように思えます。

ちょっと笑えて、スリルがあって、
かっこよくて、そして悲しい。
サービス満点過ぎるといえばそうなのですが、
テーマもしっかりしていて分かりやすい。
へんに小難しいものよりは、
誰が見ても良くわかって、楽しめる。
こういうのを目指すのは悪いことではないと思うんですね。

まことに充実した2時間を過ごせました。

クリント・イーストウッド監督、もちろん、今も渋くかっこいいですが、
若いお姿もまた見てみたくなってしまいました。
オードリーシリーズの次はクリント・イーストウッドと行きましょうか。
西部劇がみたいなあ・・・。

2008年/アメリカ/117分

監督・製作:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー



「グラン・トリノ」日本版予告編 GRAN TORINO Trailer Japanese



「夕子ちゃんの近道」 長嶋 有

2009年04月27日 | 本(その他)
夕子ちゃんの近道 (講談社文庫)
長嶋 有
講談社

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主人公の「僕」は、
ある日ふらりとやってきた「フラココ屋」という古物店で働くことになり、
そこの2階にタダで住み始めます。
倉庫代わりのその部屋は、荷物が一杯で布団一枚敷くのがやっとという狭さ。
その店はめったにお客が来なくて、
何も買わない瑞枝さんという女性が常連で遊びに来たりする。
隣の家の朝子さんと夕子ちゃんという姉妹。
ほとんど1人で店を切り盛りする店長。
店長のマエカノ(?)らしき日本語ペラペラのフランス人、フランソワーズ。
これらの人々が、交流していく、ごく日常を描いています。

最後まで名前の明かされない「僕」について、
文中、「背景みたいに透明」という表現があります。
それまで読んでいて、
私が彼に感じていた思いをそのままずばりと当てられたようで、
くすっと笑ってしまいました。
また、時々仕事で会う同業者たちからは、「暗い店員」とも。

彼にはほとんど自己主張がないように感じるのです。
人との付き合いも、拒まないけれど自分から特に求めることはしない。
いつまでも、畳一分のスペースで過ごしている辺り、生活感も希薄。
どうやら、彼には実はきちんと帰る場所もあるようなのですが、
成り行きでここに居ついている。
しかし、最後まで、
本当は彼は何者で、どうしてこんなことになっているのかは、語られません。
周りの人々のそれぞれユニークな生活は語られるのに、
語られないこの「僕」の身辺が、
実にミステリアスで、一番興味がありますね。

昨今近所付き合いや友人関係が希薄とよく言われるのですが、
この作品中の人々も、お互い基本的には干渉しあいません。
しかし、時には本音をちらりと漏らして悩みを打ち明けてみたり・・・。
適度な距離を持ちつつ、和を築いていく。
まさに、現代的なコミュニケーション、という気がします。
こういうの、現代風の映画に合いそうですけどね。

この作品中一番ユニークなのは、
やはり表題にも名前が出ている夕子ちゃん。
定時制の高校生です。
駅までの近道を教えてくれる。
それは人の家の敷地を通り抜けたり、塀をよじ登ったりする、
かなりの難コース。
コミケで、コスプレをしたりもします。
インスタントコーヒーをインスタンシコーシーといったりする。
ちょっと理解しがたいところもある女子高生感覚。
この感じもなんだかいいんだなあ。
そして、この本では唯一、事件というべきことを起すのも彼女。

この文庫のしおりがしゃれています。
フラココ屋の広告入り。
実際ちょっとのぞいてみたいお店です。

満足度★★★★☆

アクロス・ザ・ユニバース

2009年04月26日 | 映画(あ行)
ほんものの”ストロベリーフィールズ”

          * * * * * * * *

これは本当は劇場で見たかったのですが、見逃してしまった作品。
全編ビートルズの曲を使用したミュージカル、
ということでとにかく興味があったわけです。
この作品のポスターやDVDのパッケージなどを見ると、
ずいぶん陽気でにぎやかな、お気楽作品に思えてしまうのですが、
実際に見てみると、これはほろ苦い青春のストーリー。

ビートルズが実際に活躍していた時代、1960年代が舞台です。
青年ジュードが、イギリスのリバプールから父親を探しにアメリカに渡ってきた。
父親には会えたけれども、それは感激の対面などではなく・・・。
しかし、彼は学生のマックスと知り合い、親友となり、
その妹ルーシーと恋に落ちます。
やがて、3人はニューヨークに移り住み、気ままな生活。
ところがある日マックスに徴集礼状が届く・・・。

ビートルズの時代は、アメリカのベトナム戦争時代でもあります。
当時私自身はまだ反戦活動などするには幼すぎましたが、
なんとなくその頃の雰囲気を思い出した気がします。

曲はビートルズですが、
この映画では俳優さんが自分の声で語りかけるように歌います。
時にはアカペラ。
時にはコーラス。
時にはゴスペルで、
そして、当然、ビンビンのロックも。

ビートルズをつなぎ合わせるだけで、
こんなにもいろいろなストーリーの
いろいろな感情を語ることができるなんてすごい。
そして、こんなところでこの曲を使うのか!という驚き。
また更に、それとあわせたミラクルな映像もいいですね・・・。
やっぱり、劇場の大画面、大音響で見るべきでした・・・。
残念。
一場面一場面が素敵なんです。
ストロベリーフィールズ・フォーエバーの曲では、
私が今まで漫然と聞いていたこの曲の
本当の意味を見た気がしました。
ここのジム・スタージェスの表情なども素晴らしいです。
これは、サントラ盤CDを買うよりは
やはりDVDが欲しくなってしまうなあ・・・。

私はここまででも十分に満足ですが、
ものの解説によれば、
この映画は単にビートルズのノスタルジーではなく、
「9.11以来の暴力に暴力で対抗することへのNO」を現している・・・と。
そうですね、ベトナム戦争であれだけの犠牲を払いながらも、
やはりまた同じような道をたどってしまっている・・・。
そういうことへの抵抗の思いもこめられているわけです。

ジュードといえばあの曲・・・。
そしてルーシーといえば、あの曲・・・。
もちろん出てきますよ!

2007年/アメリカ/131分
監督:ジュリー・テイモア
出演:エヴァン・レイチェル・ウッド、ジム・スタージェス、ジョー・アンダーソン、デイナ・ヒュークス


19 Atraves Del Universo - Strawberry Fields Forever


ついでに、このゴスペルのレット・イット・ビーも
胸に迫ります。
ここでは二組のお葬式が交互に描かれています。
(実は混乱していた私)

Let It Be - Across The Universe - Carol Woods And Timothy T





おさんぽ

2009年04月25日 | インターバル


ここのところ、仕事が忙しくて、あまり本が読めません。
通勤のバスの中で読むくらい。
寝る前に本を開いても、2~3ページでもう寝入っています・・・。
休日出勤するほどではないので、映画は観に行っているのですが。
いつものペースで記事を更新できているのが奇蹟に近いですね。
しかし、ついにストックも尽きたので、
本日は少し気晴らしに
家の近所の公園をご紹介しましょう・・・。

これは先週の写真なんですが、
エゾリスと遭遇しました。


リスならまだいいのですが、
こんな看板もありますよ。
目の前を横切ったことがある・・・


幸いまだ出会ってはいない・・・


最近あまり見かけていませんが、
このイラストはお気に入り


この時期、とっておきのスポット
林の向こうはすぐ住宅街なのです。


特別出演
我が家のコーギー


春のお散歩は気持ちよいです。
ちなみに、こちらはまだ桜は咲いていません。
まだ、これでがまん。




「恋文の技術」 森見登美彦

2009年04月24日 | 本(恋愛)
恋文の技術
森見 登美彦
ポプラ社

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森見登美彦氏の新刊。
文庫化など待つ気にならず、買ってしまいました。
この本はすべて、大学院生守田一郎が書く手紙からなっています。
守田は京都大学の大学院生なのですが、
能登の研究所に飛ばされ(?)、
来る日も来る日も研究の日々。
片田舎ゆえに遊ぶところもなく、
彼はひたすら京都の友人・先輩・家庭教師の教え子、妹、
そしてかつて同じクラブにいた、今駆け出し作家の森見登美彦に、
手紙を書き綴る。
名づけて「文通武者修行」。

彼の書いた膨大な量の手紙を読むうちに、
彼の友人たちやその状況、出来事が
くっきりと浮かび上がってくるのです。

しかし、誰もみなユニークで楽しい。
とくにこの、私史上最大厄介なお姉様こと大塚緋沙子は、すごい。
傍若無人に周囲を支配し君臨している。
誰も逆らえない・・・。
守田は、無謀にもこの大塚嬢に反撃を試みるのですが・・・。
まあ、こう言うと、ただ威張っているだけのようにも見えるのですが、
やや、シニカルに構え人を良く観ている。
人をいびるのが趣味で、
特にこの森田に対してはついやりすぎてしまう。
なんだか、すごく興味深い人物像なんですねえ・・・。
もっと突っ込んでみてみたい気がしました。

さてしかし、本当に手紙を書きたかった相手は、
ひそかに思いを寄せている伊吹さん。
守田は何とかこの胸のうちを伊吹さんに伝えたい、と恋文をしたためるのですが・・・。
この本の中に、未完のラブレターもごっそり収録されていますが、
どれも失敗作。
笑ってしまいます。
でも、実際こういうことってありますねえ・・・。
別にラブレターでなくても、
何とか伝えたい思いがあって、それを文章に綴ろうと思うのだけれど・・・、
考えれば考えるほど支離滅裂になってゆく。
良い文章を書こうと焦れば焦るほど、ヘンテコな文章に・・・。

本当は、良いラブレターを書くためには、
虚心を捨て、ありのままのことをありのままに、素直につづる。
それが一番。


ラストは、なかなかいい感じになりそうなところで終わりますが・・・、
やや、物足りない気も・・・。
それは守田だけの視点であるためかも知れません。
先の大塚さんのことと同様、
他の人物たちの、守田目線ではない、ナマの人物像にじかに触れたい。
・・・そういう欲求不満が少し残るのでした。

満足度★★★★☆

「マイマイ新子」樹のぶ子

2009年04月23日 | 本(その他)
マイマイ新子 (新潮文庫)
高樹 のぶ子
新潮社

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この物語の舞台は昭和30年。
山口県防府市国衛。
主人公は9歳の少女、青木新子。
昭和30年といえば、「もはや戦後ではない」といわれ、
高度経済成長のスタートラインのような年。
まあ、正直な話が、私の生まれた年なのでして・・・。
だからこの新子ちゃんは私よりは結構お姉さんということになりますが、
この時代の雰囲気はとても良く分かります。

けれど、この作品はそんなノスタルジーに浸るためだけのものではありません。
何しろ新子のキャラがいい。
元気。
正義感が強くて、意地っ張りで、行動力もある。
学校の成績はいいけれど、
いつも通知表に「落ち着きがない」などと書かれるのがたまにキズ。

家族は、大好きなおじいちゃん、おばあちゃんと、
勤務地が遠いので普段は家にいないお父さん、お母さん、
そして4つ下の妹。

おじいちゃんとはとても気が合う。
この土地の昔の話、不思議な話、いろいろなお話をしてくれる。
妹は新子から見てもとてもかわいいのだけれど、
どうも、家族はみな妹に甘く、自分ばかりが損をしている気がしてしまう。
エデンの東のジェームス・ディーンのように、
家族はみな妹ばかり愛していて、
自分は嫌われているんじゃないかしら・・・などと悩む。

友人たちもたくさんいますよ。
同じ年のシゲル。
都会から転校してきた貴伊子。
父親が警官のタツヨシ・・・。
今風の変に賢い大人びた子どもたちではなく、
実に子どもらしい好奇心に満ち、
無邪気で、
そして、大人の世界とは一線を画すべきことを無意識に心得ている。
ああ、確かに、コドモのときの心ってこんなだったのかもしれない
・・・と思わせる何かがあります。

新子の冒険を揚げるときりがないくらいですが、
病院の霊安室に忍び込もうとしたり、
防空壕あとの洞穴を探検したり、
ヤクザの元へ敵討ちに出かけたり・・・
はたまた家出も決行。
どれも一緒にワクワク・ドキドキ、
微笑ましくて、つい、にんまりしながら読んでしまいます。
このような冒険を繰り返しつつ、
新子はいろいろなことを学んでいきます。
新子はおじいちゃんにしか愛されていないと思っていますが、
そんなことはもちろんなくて、
中でも大学の先生のお父さんは、
ゆったりと大きな心で新子を見てくれています。
こういう家族の中で育てば、なるほど、こんな素敵な子が育つわけだ・・・。

でも、最後にはちょっとショックな出来事が・・・。
私は本日そこを読んでいて、帰宅のバス停を乗り過ごしてしまいました・・・。

先日は「スラムドッグ$ミリオネア」の映画を見て、
インドの子どもたちのパワーに圧倒されたのですが、
確かに、日本も以前は同じ風だったんですよね。
時代を逆戻しすることはできませんが、
何とか、そういうエネルギーを子どもたちに取り戻してあげられたらいいのに、
と思います。

これがアニメ化されて公開が決まっています。
「マイマイ新子と千年の魔法」。
何しろ、原作がこのようにとてもいいので、期待できそうです。

満足度★★★★★


ミルク

2009年04月21日 | 映画(ま行)
マイノリティの意地と権利

* * * * * * * *

ゲイであることを公表しながら公職に就き、
マイノリティの権利を守るために戦った政治家ハーヴィー・ミルクの実話。
実のところ、さほど期待はしていなかったのですが、思った以上に胸が熱くなり、感動してしまいました。
同性愛。
それは今も偏見を持って見られますが、
当時、それが罪であったというのは、やはり抵抗感があります。
他の多くの人と違うために、嫌われ、辱められ・・・、
表ざたになれば自殺者さえ出る。
「自分たちだって、きちんとした仕事に就き、生きていく権利がある。」
こう宣言することは大変勇気がいるし、
また自身の身の危険もあることなんですね。
何より、彼のこの行動によって、
今まで決して社会に表立って出てこなかった人たちが、
勇気を持って前に出てきた。
ミルクの演説には力があります。
それは単に票集めのおざなりな言葉ではなくて、
自らの経験に基づく信念をそのまま言葉にしているからなんですね。
どこかの政治家にも聞かせてあげたい・・・。

たった一人の力でも、こんなに多くの人に影響を与えることができる、
というのはやはりすごいことです。
一人ずつ、理解者が増えていって、
それが次第に社会をも変える大きな力となる。
ちょっと勇気をもらう感じです。

ミルクは正確には市政執行委員。
スーパーバイザー。
日本での市議に近く、市民の選挙で選ばれ、行政の監視役を務めるとのこと。
何も同性愛関連の活動ばかりしていたわけではなくて
他にも、市民に納得のいく有益な活動をしていたようです。

ショーン・ペンが、素晴らしい演技を見せています。
繊細、チャーミング、
しかし時には大胆。
共演のエミール・ハーシュは、あのイントゥ・ザ・ワイルドの・・・!? 
全然イメージが違うのでちょっと驚き。
ああ、考えてみたら、それこそショーン・ペン監督作品でした。
それで納得。
実際、男性同士のナニのシーンもありますが、
さほど刺激的ではない。
まあ、題材だけ聞いて敬遠したくなった方も、観て損はないと思います。

2008年/アメリカ/128分
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、ジョシュ・ブローリン、ジェームズ・フランコ、ディエゴ・ルナ



映画「ミルク」予告編



スラムドッグ$ミリオネア

2009年04月20日 | 映画(さ行)
これぞ生きる力
          * * * * * * * *

クイズ・ミリオネアは万国共通なんですね。
インド版ミリオネア。
挑戦者はムンバイのスラム出身の青年ジャマール。
全く無学のはずの彼が、次々と正解を出し、
とうとうあと一問で2000万ルピーを獲得というところまで漕ぎつける。
ところが、この番組のホストが、これを面白く思わない。
不正をして正解を得たとして警察に連絡。
ジャマールは拷問まで受けてしまう!


そもそも、このミリオネアの仕組み自体が緊張感ありますよね。
その緊張感とあわせて語られる、ジャマールのこれまでの波乱に満ちた人生。
全く目が離せない展開です。
しかし、好きで冒険に富んだ人生を歩んだわけではありません。
インドという国の混沌。
その渦に巻き込まれ、親も住む家もなくし、
兄サリームと、同様に親をなくした少女ラティカ、
3人で肩を寄せ合ってどんなことをしても生きてゆく他なかった。
そんな中で、見聞きした様々な知識が運命的にクイズに出題されている。

こんな悲惨な生い立ちではありながら、
この子どもたちのなんと生命力に満ちていることか。
日本の教育が今目指している「生きる力」。
・・・笑っちゃいますね。
それはやはり学校で身に付けるものではないのだろうと思います。
こんな過保護のもとで付けられる「生きる力」って、どんなもんでしょう・・・?

格差といえばこのインドも、スラムの横に立ち並ぶ高層ビル。
相当根が深そうですが、それでも、さほど悲惨な感じがしない。
どんなことをしたって生きていける。
そういうたくましさが根っこにあって、
映画全体がエネルギーに満ちています。
特に、経済の落ち込みにあえぐ欧米・日本・・・、
こういう人々にとっては、何か失くしたものを見つけたような気がして、
心打たれるのでしょうね。
アカデミー賞最多部門受賞もうなずけます。

兄サリームは決断力あり、度胸もあって、
このままいけば良くも悪くも相当なところまで行ったと思われます・・・。
ラティカは美しいですねえ・・・。
子役の子もすっごくかわいかった!
ほとんど淡々と無表情のジャマールもまた、いい味出してました。
インドの人って、目鼻立ちがくっきりしていて、ステキ。
クイズのホストは、正解の結果を出すまでに、
もっと溜めた方がいいですね。
みのさんはやっぱりすごい・・・。

2008年/イギリス・インド/120分
監督:ダニー・ボイル
出演:デブ・パテル、アニル・カプール、イルファン・カーン、マドゥル・ミッタル

フランス版ミリオネアもあります→「ぼくの大切なともだち」

映画『スラムドッグ$ミリオネア』



ティファニーで朝食を

2009年04月19日 | オードリー・ヘップバーン
ティファニーで朝食を [DVD]

パラマウント ジャパン

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ティファニーのショーウィンドウを眺めながらパンをほおばって・・・

            * * * * * * * *

ホリー(オードリー・ヘップバーン)はニューヨークで気ままな1人暮らし。
ある日、階上の部屋に小説家ポール(ジョージ・ペパード)が越してくる。
ホリーはつまり、コールガールなんですね。
いつかティファニーのような高級でゆったりした場所で朝食をとる、
そんな幸せを夢見ている。

彼女は貧乏な家の育ちで、
今軍隊にいる兄が除隊した時に、一緒に暮らしたいと思っている。
豊かさにあこがれるけれど、手が届かない・・・。
ところがこんな生活環境にありながら、彼女の清廉さはどうでしょう。
しかし、そうかと思えば、気まぐれでとらえどころがない。
まるで妖精のよう。

こんな彼女に惹かれていくポールですが、
彼はといえば、何年も前に短編集を一冊出したきりで、
タイプライターにはリボンも入っていない。
パトロンの中年女性に頼りっきりの生活。

ニューヨークの退廃ですねえ・・・。
しかしどこかこの気品のある全体の雰囲気。
ヘンリー・マンシーニの音楽も一役買っています。

女が、裕福な生活を夢みる時、それはお金持ちとの結婚が一番の近道。
こういうところが、さすが一時代昔という気がします。
ティファニーのショーウィンドウを眺めながらパンをかじる。
この冒頭のホリーが一番彼女の真実に近い。
そして、この感覚は、現代女性でも十分に共感できますね。
いつかこんな生活を手に入れる。それを励みに、生きてゆく。
まあ、昨今の現実は厳しい格差社会。
なかなかこのような夢も実現しがたいですが・・・。


映画中では、ある時ホリーとポールがティファニーの店に入っていきます。
予算はたったの10ドル。
さあ、何が買えたのでしょう・・・?
この店員の対応が素敵でしたね。
多分これで、ティファニーの好感度がぐ~んとアップしたでしょうね。

同じアパートに住む日本人は、出っ歯でメガネ・・・。
いかにも当時の米国における日本人のイメージそのまま。
ちょっとがっかりですよ。
嫌味な役で何度も出てくる・・・。
さすがに、近頃はここまでのイメージはないようですが・・・。

そして、もう1人の重要登場人物(?)は
ホリーの部屋に住み着いている名前のない猫。
ストーリーに癒しとアクセントをくれました。

監督:ブレイク・エドワーズ
出演:オードリー・ヘップバ-ン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、バディー・エブセン




風に舞いあがるビニールシート

2009年04月18日 | 本(その他)
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)
森 絵都
文藝春秋

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全く、まだまだ読んだことのない作家はたくさんいて、
知らない楽しみが山のようにある。
今回は本当に、そういうことを実感させられました。
この方も、私にははじめての作家です。
この「風に舞いあがるビニールシート」は第135回直木賞受賞作。
6つの短篇が収められています。
どれも、自分だけの価値観を守り、
お金よりも大切な何かのために懸命に生きている人々を描いている。

これが、まさに、"それぞれ"なのです。
気分屋のオーナーパティシエに振り回される秘書。
行き場をなくした犬の里親を探すボランティアに励む主婦。
国連難民高等弁務官事務所に勤めるOL・・・。
一作一作、どれも出来が良くて甲乙付けがたい。
それぞれの人生の切片が鮮やかです。
時には、仏像の修復師などというレアな職業を描きながら、
それはかなり私たちの身辺から遠い話であるにも関わらず、
全然遠く感じない。
生身の人々が、なりふりかまわず迷いつつも、自分の道を歩んでいる。
それぞれの人生に感動します。


どれか一つを紹介したいのですが、どれも良くて、悩んでしまいます。

「ジェネレーションX」も、いいです。
中年に差しかかった野田は、ある商品のクレーム処理に向かう。
一緒に組んだのはメーカーの若手社員石津。
「今の若いもんは何を考えているのか良く分からない・・・新人類という奴か・・・」、
心の中でぼやく野田。
その石津は、車を運転する野田の横でひっきりなしにケータイをかけている。
「・・・ったく、これだから」
と忌々しく思いながら、
嫌でも耳に入ってくるその会話につい興味を引かれる。
明日、高校時代の仲間が集まることになっているようなのです。
石津は必死でその連絡調整を取っている。
彼らは何をしようとしているのか。
果たして本当に、メンバーはそろうのか。
初めて会った二人のジェネレーションギャップが次第に埋まっていき、
さわやかな感動へとつながっていきます。


表題の「風に舞いあがるビニールシート」
このユニークな題名にも心惹かれます。
ビニールシートで、何を連想しますか?
この春の季節にはおなじみのシーンでよく使いますね。
このストーリーでは、
暴風にかなたへ吹き飛ばされ、
虚空にその身を引き裂かれないうちに、
誰かが手をさしのべ、引き止めなければならない、
"難民"を象徴しています。
難民を支援することに使命を感じ献身する夫。
その夫と気持ちを一つにできない妻。
愛は確かなものでありながら、
お互いの価値観の相違から離婚したのですが、
その後、夫は事故で亡くなってしまう。
”妻”という立場で悲しみを悲しみきることができず、
いつまでも心の傷を引きずってしまう女。
でも、その優しく潔いラストに、思わずほおっとため息が出ます。
そこには私たちが普通に連想するビニールシートもあって、
これがまた心憎い演出になっていますね。

文句なしのおススメ作!

満足度★★★★★


ある公爵夫人の生涯

2009年04月17日 | 映画(あ行)
18世紀における女性の自己実現の考察

            * * * * * * * *

18世紀後半のイギリス。
やはりこの時代のコスチューム劇と来れば、キーラ・ナイトレイですね。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の始めのあたりから、
彼女はなんてこういう衣装が似合うのだろう、と感心していました。

さて、ここでのキーラ・ナイトレイは公爵夫人のジョージアナ。
彼女自身も貴族の家柄ではありますが、
断然格違いの、貴族の中でも最も裕福といわれる
デボンシャー公爵のもとに嫁いできた。
何回か顔をあわせただけ、親が決めた結婚でした。
幸せな結婚生活を夢みていたジョージアナでしたが、
それは結婚してすぐに裏切られます。

公爵には少しも彼女に対しての愛情はなく、
ただ、男子の後継者を生むことだけを期待していた。
それは女性に興味が薄いのかと思えば、さにあらず。
浮気は日常茶飯事。
愛人の生んだ子供を引き取って彼女に世話をさせるなどは序の口。
彼女の親友に手を出し、そのまま、妻妾同居になだれ込む・・・。

豪華なお屋敷とは裏腹に、砂漠のような結婚生活。

そんな中、黙して語らず。すべて見ないフリ、聞こえないフリの
たくさんの使用人たち。
実は厨房などで、皆で、公爵批判をしているのじゃないでしょうかねえ。
そんな裏側を想像してみるのも面白いですけどね。

そもそも、この屋敷には、公爵の他の家族が誰もいない。
犬が二匹いるだけで。
彼自身、まったく親には省みられないで成長した、そんな感じがしますね。
人の愛し方を知らない。
もう少し、公爵側の心理を掘り下げてみたら、
また別の物語が生まれるかもしれません。

ともあれ、久し振りに「産む機械」なんていう言葉を思い出しました。
まったく、古今東西長い歴史の中で、
女性はただひたすらに、子どもを産むための道具としてしか、
みなされていませんでした。
しかし、どの時代でも、女性にはちゃんと人格はあったんです!
特に、このジョージアナのように聡明で自立心のある女性なら、
このような状況は耐え難いに違いありません。
それでつい、自分を真に愛してくれている相手に心が動いても、
それを責めることはできないでしょう。

しかし、それにもまして、
女であれば自分の産んだ子どもはやはりかわいく、自分以上に大事なのです。
その子どもを盾に取るやり方にも腹が立ちます。
結局彼女は女としての幸せには目をつぶらざるをえなかった。
逆に言うとそのおかげで、社会的な活動ができた、ともいえるのですが・・・、
その辺はちょっと複雑な思いがしますね。

これは実話なのだそうですが、
このような公爵夫人のスキャンダルだからこそ、
今まで記録として残っていたわけですねえ。
そして、もう一つの注目は、
このジョージアナの実家スペンサー家の末裔の1人が
ダイアナ元王太子妃である、と。
嫁いだ先の夫は、妻を顧みず愛人に夢中。
本人は社交界の華。
周囲から絶大な人気を得ている。
・・・などというあたり、そっくりで、なにやら因縁めいています。

キーラ・ナイトレイはとても良かったのですが、
彼女の愛人にも、もう少し華が欲しかったですね。
・・・ちょっとそこが残念でした・・・。

2008年/イギリス・フランス・イタリア/110分
監督・脚本:ソウル・ディブ
出演:キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、シャーロット・ランプリング、ドミニク・クーパー、


映画キーラ・ナイトレイ最新作『ある公爵夫人の生涯』予告編



ザ・マジックアワー

2009年04月16日 | 映画(ま行)
三谷幸喜ワールド
             
         * * * * * * * *

このストーリーの舞台は港町、守加護(すかご)。
一時代昔の話かな?と思ったら、
ちゃんとケータイなども出てきたので、一応現代劇だったらしい・・・。
備後(妻夫木聡)は、ギャングのボス手塩(西田敏行)の情婦マリ(深津絵里)に手を出したのがばれて、殺される寸前。
しかし、5日以内に幻の殺し屋、デラ富樫を探し出せば許してもらえることに。
ところが、さがす当てもない備後は、
売れない俳優村田(佐藤浩市)をデラ富樫に仕立てることにする。
村田には、これは台本のない映画の撮影だと言い含める。

この、ギャング側から見れば、有能な殺し屋。
村田から見れば映画の撮影。
どちらともとれるセリフやシチュエーションの数々。
このあたりがとても面白い作品となっています。
ことに、ベテラン佐藤浩市が、
あえて、売れない俳優のオーバーアクションの演技を演じるというのも、
ユニークですね。

そしてまた、この映画は過去の名作映画のオマージュになっているとのこと。
いや、多分そうなのだろうとは思ったのですが、
これは結構マニアックなので、私には良く分かりませんでした。・
・・というか、分かる人のほうが少ないでしょう・・・。
とにかく、映画好き、映画へのこだわりを持った方のための作品。
そうでない人にとっては、まあ、そこそこ面白いコメディー作品。
ということで、見る人によって評価には差がでそうです。
・・・私は後者かな?

題名のマジックアワーとは、夕暮れのほんの一瞬、
世界が一番美しくなる瞬間のこと。

映画というのは、そういう一時を私たちに切り取ってみせるもの。
・・・ということなのだと思います。

2008年/日本/136分
監督・脚本:三谷幸喜
出演:妻夫木聡、佐藤浩市、深津絵里、綾瀬はるか、西田敏行


ザ・マジックアワー



レッドクリフ Part Ⅱ-未来への最終決戦-

2009年04月14日 | 映画(ら行)
さて、お待ちかね、レッドクリフPart Ⅱ、赤壁の戦いの続きです。
曹操軍VS孫権・劉備連合軍。

曹操軍では疫病が蔓延し、死者も多く出ている。
あろうことか、曹操はその死体を孫権軍のほうへ流し込む。
孫権軍側でも疫病が発生。
そこでなんと、劉備が自軍を引き上げてしまうんですよ。
孔明だけを残して。
ただでさえ、圧倒的に兵の数は曹操側のほうが多かったのに、
更に減ってしまった孫権軍。
さて、この危機をどう乗り越えるのか・・・。

あいかわらず、金城武の孔明は茶目っ気たっぷりです。
彼が3日で10万本の弓矢を手に入れた方法。
いやー、面白かったですね。
これも含めてですが、今回彼は、気象予報士として活躍しました。(?)
風水というのは、そうか、もともとお天気予報だったんですね・・・多分。
自然の気を読む。
それが自然を味方につけ、勝利へつながる。
そういうことなのだと思います。
今回の戦いは、水との戦いになるのでは・・・、と思ったのですが、
意外にも、「火」でした。
どこまでも火・・・また火。
すっかり長江は火の川に。

全体を通しては、確かに面白くはあったのですが・・・。
Part Ⅰが非常に面白かっただけに、
Ⅱに対しての期待も、相当ハードルが高くなってしまっていました。
・・・それでなんだかちょっと拍子抜けの感。
つまり、Ⅰは、Ⅱのための偉大なる序章であったわけですが、
ところがⅡになっても、まだだらだらと開戦にこぎつかない。

こういってはなんですが、周揄の妻小喬、孫権の妹尚香のエピソードは
なくても良かったのでは・・・? 
もっとスパッとスピーディーかつダイナミックに
戦闘にきりこんでくれたほうが、ストレスがなかった。

2009年/アメリカ、中国、日本、台湾、韓国/144分
監督・脚本:ジョン・ウー
出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ



映画レッドクリフパート2 予告編



「グイン・サーガ126/黒衣の女王」 栗本薫

2009年04月13日 | グイン・サーガ
黒衣の女王 グイン・サーガ126
栗本 薫
早川書房

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「グイン・サーガ126/黒衣の女王」 栗本薫 ハヤカワ文庫

トントントンと、話は進みますね。
もう、イシュトバーンがパロに来てしまった。
 いよいよリンダとのゴタイメ~ンです。
といっても、あの若き日の二人の誓い以来ではなく、
 ナリスの死のときにも逢っているんだよね。
でも、そのときは大変な混乱の中で、
 ゆっくりした対面ではなかった。
 その時の話も含めて、
 初めて二人がじかに思いを話し合うことになったわけです。
リンダというのはこうしてみると
 ごく普通の「女」なんだなあ、という気がしますね。
イシュトバーンと結婚なんてとんでもない、と思っている。
 しかし、以前結婚を誓った仲でもあり、
 また、その頃よりいっそうたくましく男っぽくなったその彼に、
 魅力を感じてもいる。
 そしてまた、未だに結婚したいと思っているなどと聞かされては
 ついうれしくなってしまう。
・・・そういう心の揺れは、まさに、
 普通に女性の中にある気持ちだものねえ。
どちらかというと、
 あっさりとナリスと結婚してしまった時の方が意外な気がしたんですが・・・。
うん、あの時のほうがちょっと唐突感があったなあ・・・。
そういうのも、リンダの案外ないい加減さが出てる感じです・・・。
 しかし、本当にリンダはナリスが好きだったのでしょうか?
 献身的な愛は分かるのだけれど・・・。
 そんなにいつまでも喪服を着ていたくなるほど
 本当に愛していたとは思いがたい・・・。
う~ん、でもまあ、本人が愛とはそういうものだと信じているわけだから・・・。いいんじゃない?

よく考えると、ここでそんなにリンダが結婚を拒む理由もないような気もするんだけどね・・・。
そうそう。パロの歴史とはいっても、いつかは終わるものなんだから・・・。
いっそゴーラとパロがこの際一つになって平和になればOK、って言うのはダメなのかな???
パロの人たちの意地というのがあるんだろうねえ・・・。
この、普通の「女」のリンダには、普通の女の幸せをまっとうさせてあげたいねえ。
何しろ、未だに処女のはずです・・・。
 むごすぎます・・・。

いつまでたっても、国の格式だの礼儀作法だのにとらわれない、
 イシュトは好きですね。
まあ、そういう破天荒なところが魅力なので。
 これが変に常識人になってしまったら、目もあてられないです。
オオカミが飼い犬になっちゃいましたーってね。

それから、今回意外に思ってしまったのは、
 イシュトはマリウスがナリスの弟だということを知らなかったのですねー。
そういえば、そこはパロの中でもトップシークレットなのですね。 マリウスがケイロニアとも関係しているということも含めて。
読者としてはもう、当たり前すぎるくらいに当たり前のことだったのに、このイシュトがそれを知らなかったとは・・・。
しかし、そこにまた、面白みがあるわけか・・・。
う~む、結局イシュトとリンダって、どうなるのでしょう?
「このあとどうなってゆくんだか、私にもさっぱり読めない」
 と栗本さん自身言ってます・・・。
ひゃ~。
 地道に2ヶ月先を待ちましょう・・・。

満足度★★★★☆

いよいよ、TVアニメも始まりました!

グインサーガ予告トレーラー