怪作!
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幼少時、交通事故で頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。
それ以来若干精神に変調を来しています。
車への執着が人一倍。
そして人への愛情は持てない。
そんな時に彼女の身の上にある「事件」が。
そしてアレクシアは警察に追われるようになり、
行き場をなくし、消防士ヴィンセントと出会います。
彼は10年以上前に息子が行方不明となり、
いまだに彼の帰りを待ちながら孤独に暮らしています。
そして次第に老いていく自分の身に恐怖を感じている。
そんなところへ息子になりすましたアレクシアが訪れ、
2人は妙な共同生活を送り始めます。
周囲の人は、どうも本当の息子ではないようだ・・・?
と疑いを持つのですが、ヴィンセントは願望が妄執となり、
ひたすらアレクシアを息子として守ろうとします。
しかしやがて、アレクシアにはどうしても「男」とは思えない変調が・・・。
さてさて、一体どういう物語なのか、と戸惑う所ではありますが・・・。
頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたことで
「人間性」を失ってしまったかに思えるアレクシア。
もともと彼女は父に愛されていなかったようですが、
このことがあってからは、さらに疎まれるようになっていきます。
人に愛されないから愛し方も知らない。
人が命を失うことも、機械が壊れることと同じように捉えているのかも知れない。
ただし、それが犯罪であることは認識している。
そんな彼女がたどり着いたのは、いなくなってしまった息子に囚われてしまっている初老の男。
彼は始めアレクシアを本当に息子だと思ったのでしょうけれど、
次第に「違う」ことに気づいていったようではあるのです。
けれど、自分でも気づかないフリをして、ひたすら「息子」に愛を注ぐ。
こうなるともう、彼にとってはアレクシアは男でも女でもどうでもいい。
自分の性の対象ともならない。
なんと、こんな不可思議で奇怪な作品ながら「無償の愛」へとたどり着くわけで、
唖然とされてしまいます。
しかも、アレクシアはつまり人の「男」なしに妊娠したということで、
聖母マリアをも連想させるという・・・。
強烈な印象を残す作品。
<Amazon prime videoにて>
「TITANE チタン」
2021年/フランス・ベルギー/108分
監督:ジュリア・デュクルノー
出演:バンサン=ランドン、アガト・ルセル、ガランス・マルルエール、ライ・サラメ
奇々怪々度★★★★★
満足度★★★.5