恋多く、生きる力に満ちた女
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1934年、夫・勇太郎(香川照之)と子どもたちとともに満州牡丹江に渡った森田波子(常盤貴子)。
雄大な大陸の風景に夢を膨らませます。
その10年後。
陸軍中佐・大杉(布袋寅泰)の庇護の元、勇太郎は森田酒造を成功させ、
波子も豊かな生活をしていました。
そんなとき、波子は商社員(実は関東軍秘密情報機関の諜報員)氷室(伊勢谷友介)と出会い、心ひかれます。
しかし氷室は家庭教師のロシア人エレナと恋仲になってしまいます。
嫉妬した波子は、名を伏せて、エレナはロシアのスパイだという密告状を氷室に届けます。
そしてエレナは氷室の手で処刑されてしまう・・・。
そうこうするうちに、日本が敗戦。
波子は子供らを連れ、身一つで牡丹江を脱出。
なんとしても生き抜こうと決意を固めます。
満州で日本人は、戦時中でも比較的暮らし向きも豊かだったようです。
美しき人妻・波子は真っ赤なドレスに身を包み、男たちを翻弄する。
恋多く、生きる力に満ちた女。
スカーレット・オハラのようでもありますね。
牡丹江を出た波子らは新疆にしばらく滞在しますが、そこで氷室と再会します。
氷室は愛する人を自らの手で処刑してしまったことに絶望しており、
生きる気力も失ってアヘンに浸り、廃人同様となっていました。
そんな氷室を引き取り、薬を抜くために手を尽くす波子・・・。
そしてようやく禁断症状が落ちついた頃に二人は体を重ねるのですが・・・。
なんとその様子を子どもたちが見てしまうのです。
「お母さんはふしだらだ!」という子どもたちに波子は言う。
「私たちは生きていかなければならないのよ。
生きることは、人を愛するということなの」
実はこのとき、夫の死亡が確認されてはいるのですが、
それにしてもあらわな姿をバッチリ目撃された波子。
しかし少しも悪びれず、このように言うわけです。
すごい。
なんだかその勢いに、無理矢理納得させられてしまう子どもたち・・・。
確かにこの人は、日本に帰ってもそれなりにきっと成功して豊かな暮らしを手に入れるだろう。
そう確信させられますね。
なかなかドラマチックな物語でした。
<WOWOW視聴にて>
「赤い月」
2003年/日本/111分
監督:降旗康男
原作:なかにし礼
脚色:井上由美子、降旗康男
出演:常盤貴子、香川照之、伊勢谷友介、布袋寅泰、大杉漣
歴史の中の出来事度★★★★☆
女の強さ度★★★★★
満足度★★★★☆